Vol.52, No.1 (2024)
【 目次 】
足白癬感染防御のために抗真菌活性を持続化した安全なアロマインソールの基礎的研究
- 表題:
- 足白癬感染防御のために抗真菌活性を持続化した安全なアロマインソールの基礎的研究(原著論文)
- 著者:
- 石島早苗(帝京大学・医真菌研究センター),比留間政太郎(比留間医院),大島浩智,鈴木 修,村井 隆((株)村井),笠井庄治(東邦レマック(株)),江澤邦夫((株)もんじゅ),関水和久,安部 茂(帝京大学・薬学部・カイコ創薬学研究室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.1,pp.3-12(2024)
足白癬患者の国内患者数は1500万人に達すると推定される。本研究は,環境からの再感染を防止する目的で精油の蒸気で靴内除菌する方法を検討した。シトラールとペリルアルデヒドの複合体であるペリシトールは気体で抗真菌活性を有するが,それをインソールに実用的に用いるために,1)インソールの抗真菌活性持続時間を保つ,2)インソールとしての安全性の確保を必要条件と考え検討した。抗真菌活性の持続には,屑革をラテックスで繋いだ素材を用いると徐放性が得られると判断した。安全性を考慮して濃度は国際香粧品香料協会の基準により定めた。試作した抗菌インソールを皮膚科専門医指導のもとで,約4週間の継続使用し評価した結果,炎症などの諸症状は全く出ず,参加者アンケートでは,インソールによる爽快感および消臭効果が得られることがわかった。
Key words:Tinea pedis(足白癬)/Aromatic insole(アロマインソール)/Sustained antifungal activity(抗真菌活性の持続化)/Pericitol(ペリシトール)/Essential oil(精油).
Focus Forming Unit法を用いた効率的な繊維製品の抗ウイルス評価方法の確立
- 表題:
- Focus Forming Unit法を用いた効率的な繊維製品の抗ウイルス評価方法の確立(原著論文)
- 著者:
- 上野貴之(倉敷紡績(株)・繊維事業部・技術部・技術課),佐々木正大,塩田達雄(大阪大学微生物病研究所・感染機構研究部門・ウイルス感染制御分野)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.1,pp.13-19(2024)
抗ウイルス性能を有する繊維製品は,2019年末から新型コロナウイルスが世界中に蔓延したことにより,消費者から多くの注目を集めている。繊維製品の抗ウイルス性試験においてウイルス感染価を測定する方法として,50% Tissue Culture Infectious Dose(TCID50)法やプラーク法がJIS L 1922:2016に規定されており,多くの試験機関や企業における品質管理試験で,これら2つの方法が利用されている。一方で,TCID50法やプラーク法は,マイクロプレートなどの消耗品や培地などを大量に使用し多くの検体数を処理することが難しいことや,細胞変性効果を利用した方法のために感染価測定に時間を要するなどの課題がある。そこで本研究では,抗原抗体反応を利用したFocus Forming Unit(FFU)法による,繊維製品でのインフルエンザウイルスの抗ウイルス活性測定方法の有用性を検証した。その結果,FFU法による抗ウイルス活性値はTCID50法による活性値と高い相関があり,繊維製品の抗ウイルスの評価ができることが示された。さらに,試料間の活性値の変動はFFU法の方がTCID50法よりも小さかった。FFU法は,TCID50法やプラーク法よりも,消耗品や培地の使用量が少なく済み試験期間も短くなるので,JIS L 1922:2016と比較して多くの検体を効率的に試験することが可能となる。
Key words:Antiviral activity of textile(繊維製品の抗ウイルス活性)/FFU assay(FFU法)/TCID50assay(TCID50法)/Influenza virus(インフルエンザウイルス)/JIS L 1922:2016.
化粧水含浸不織布で形成される空隙と隣接する液体がPseudomonas aeruginosaの増殖活性に影響を与える
- 表題:
- 化粧水含浸不織布で形成される空隙と隣接する液体がPseudomonas aeruginosaの増殖活性に影響を与える(原著論文)
- 著者:
- 喜多光代,臼倉 淳((株)マンダム 先端技術研究所),落合 徹(クラレクラフレックス(株) 不織布開発グループ),成松絢葉(クラレクラフレックス(株) 技術管理課)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.1,pp.21-28(2024)
本研究では,シート状化粧品において,防腐力低下の原因と考えられる微生物の増殖活性が変動する要因を解明することを目的とし,P. aeruginosaの増殖活性及び不織布中の分布を調査した。P. aeruginosaに対する防腐力は,化粧水と比較して,リヨセルまたはポリエステルに不織布重量比200%,400%,600%で化粧水を含浸した場合において低下した。リヨセル不織布を用いたクライオSEM観察及び増殖活性測定の結果から,P. aeruginosaの増殖活性は400%含浸不織布中で増大し,接種したP. aeruginosaは空隙に隣接する液体部分に局在することが明らかになった。また,2000%含浸時の不織布及び400%含浸時の原料繊維では空隙は減少し,増殖活性の増大は認められなかった。以上より,空隙及びそれに隣接する液体の比率が微生物の増殖活性を増大させることに重要な因子であり,不織布中ではこれらが好適な比率になることが示唆された。本知見は,より安心安全な微生物制御を実現するシート状化粧品開発に活用し,消費者満足に繋がることが期待されるものである。
Key words:Nonwoven Fabrics(不織布)/Void(空隙)/Liquid(液体)/Growth activity(増殖活性)/Cryo-SEM(クライオSEM).
家庭の安全・安心科学 [6]次亜塩素酸を利用した家庭用製品
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [6]次亜塩素酸を利用した家庭用製品
- 著者:
- 福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.1,pp.29-34(2024)
次亜塩素酸を用いた最も身近な製品は,次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする液体の塩素系漂白剤である。固体の塩素系漂白剤にはさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)と塩素化イソシアヌル酸(塩)がある。家庭で各種の次亜塩素酸水溶液を調製する電解水生成装置も普及している。また,汚れや微生物の伝播が起こりやすい食卓やドアノブ,便器などのモノを対象に,消毒を兼ねた拭き取り洗浄用として,殺菌効果のある薬液を不織布などに含浸させたいわゆる除菌ワイプが使用されている。さらに,近年では家庭用の室内空間の微生物制御を目的とする,次亜塩素酸水溶液を用いた超音波霧化器や通風気化装置も普及している。本稿では,各塩素系漂白剤や電解水の成分と作用効果,塩素系除菌ワイプの特長,および次亜塩素酸空間対策装置の安全性と有効性を解説する。
Key words:塩素系漂白剤/電解水生成装置/除菌ワイプ/超音波霧化器/通風気化装置.
天然物とその利用 [3]抗真菌薬を賦活化する天然物
- 表題:
- 天然物とその利用 -抗菌および抗真菌活性に関して- [3]抗真菌薬を賦活化する天然物
- 著者:
- 福田隆志(近畿大学農学部水産学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.1,pp.35-41(2024)
CandidaやAspergillusに起因する深在性真菌症(日和見感染型)は,1970年頃より増加傾向がみられた。また近年,悪性腫瘍や臓器移植などによる処置により免疫力の低下した患者や後天性免疫不全症候群が新たに出現したため,今後もその患者数が増加すると予想されている。現在,国内では代表的な深在性真菌症の治療薬(抗真菌薬)として,8剤が用いられている。これら抗真菌薬のうちアゾール系抗真菌薬は,安全性の高い優れた抗真菌薬として臨床での主役を担ってきたが,現在薬剤耐性菌の出現が大きな問題となっている。また,アンホテリシンBでは耐性菌問題こそ生じていないが,強い腎障害などの副作用問題があるため,一度に使用できる量には限界がある。そこで,これら問題を解決するため,各抗真菌薬の活性を増強するような分子の探索研究を行なった。その結果,微生物培養液中より計11種の目的の活性を示す新規天然物を見出すことに成功した。本稿ではそれらの構造,活性および作用メカニズムについて紹介する。
Key words:Natural products(天然物)/Antifungal drugs(抗真菌薬)/Miconazole(ミコナゾール)/Amphotericin B(アンホテリシンB)/Nectriatide(ネクトリアタイド).
会報 …42
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【 English Contents 】 Vol.52,No.1 (2024)
Vol.52, No.2 (2024)
【 目次 】
負イオンオゾン発生装置によるインフルエンザウイルス不活化効果の検討
- 表題:
- 負イオンオゾン発生装置によるインフルエンザウイルス不活化効果の検討(短報)
- 著者:
- 野村亜加音,清水彰則,弓削政郎(三菱電機(株) 先端技術総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.43-46(2024)
プラズマ放電により生成するイオンが殺菌・ウイルス不活化することが報告され,市販の家庭用電気製品にも広く利用されている。我々は,イオンと環境基準(0.05ppm)以下のオゾンガスを併用することによる,高速殺菌・ウイルス不活化処理技術を開発している。本研究では,細菌やウイルスの殺菌・不活化を目的とする負イオンオゾン発生装置を用い,開放系でのインフルエンザウイルス感染価低下効果について検討した。その結果,発生装置から1.7m離れた平板上に接種した供試ウイルスの感染価を,負イオンおよびオゾンで60分間処理することで,処理前に対して99.8%,さらに送風処理60分と比較して99.1%減少させる効果を確認した。本研究で使用した負イオンオゾン発生装置は,新型コロナウイルスのパンデミックの終息により経済活動が回復,人同士の接触が増える環境下でのオフィス環境やその他の環境での飛沫感染・接触感染対策に応用が可能であると考えられる。
Key words:The negative ions and ozone generation device(負イオンオゾン発生装置)/Influenza A virus H1N1(インフルエンザウイルス)/Virus titer reduction(ウイルス感染価低下)/Inactivating effect(不活化効果).
化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の不活化に対するフィトンチッド液の効果
- 表題:
- 化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の不活化に対するフィトンチッド液の効果(短報)
- 著者:
- 野村正人(フィトンチッドジャパン(株)・技術顧問(近畿大学名誉教授)),逢坂達也,谷井真理(フィトンチッドジャパン(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.47-50(2024)
森林浴の大きな効果として,リラクゼ―ション効果以外に消臭,および殺菌効果などがある。その効果に関与しているものに多くのテルペノイドを含むフィトンチッドの存在がある。今回,とくにフィトンチッドがさまざまな菌に対して消臭や殺菌効果があることに着目し,日常生活の中で感染が起きやすい化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes;JCM5674)の発育を抑えることができるかを試みた。その結果,生育時間の経過(0.5→2→24h)に関わらず,菌の発育が抑えられることを確認できた。このことからフィトンチッド液に含まれているテルペノイドが菌の生育を抑えて,不活化に関与しているものと考える。
Key words:Phytoncides(フィトンチッド)/Streptococcus pyogenes(化膿性レンサ球菌)/Inactivation(不活化)/Deodorizing(消臭)/bactericidal effects(殺菌効果).
家庭の安全・安心科学 [7]紫外線を使った身の回りにある電化製品と利用の注意点
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [7]紫外線を使った身の回りにある電化製品と利用の注意点
- 著者:
- 篠田浩一,馬渡一諭,高橋 章(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 予防環境栄養学分野)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.51-56(2024)
本稿では,紫外線殺菌の成り立ちから,紫外線殺菌メカニズム,紫外線製品の仕組み,紫外線製品利用の注意点,最新の紫外線殺菌研究まで述べた。電子工学の発展により,人々は地表の太陽光には存在しないUV-C波長の紫外線を殺菌に使えるようになった。現在では数多くの紫外線電化製品が身近に販売されており,一般家庭でも手軽に入手できる。基本的に紫外線を装置の外に放射する家庭用電化製品は少ないが,紫外線は扱いを間違えると皮膚や眼を痛めるため注意する必要がある。日本では家庭で安全に扱える電化製品としてPSEマークを製品に表示することが義務付けられている。紫外線製品を選択する際には,PSEマークの表示と,どの紫外線波長をどのように使って殺菌しているのかを確認することが重要である。もしもUV-C紫外線を装置の外に放射する製品であれば,くれぐれも人や動植物には安全基準以上の紫外線が当たらないよう細心の注意を払うべきである。
Key words:Ultraviolet disinfection(紫外線殺菌)/Ultraviolet light source(紫外線光源)/Far-UVC(遠紫外線)/Electric appliances(電化製品)/Product Safety Electrical Appliance and Materials(電気用品安全法).
家庭の安全・安心科学 [8]家族が風邪をひいた!安全な対策と方法は
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [8]家族が風邪をひいた!安全な対策と方法は
- 著者:
- 小林寅喆(東邦大学看護学部感染制御学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.57-59(2024)
風邪とは,一般に鼻腔から咽頭までの上気道における急性炎症であり,風邪症候群とよばれる疾患で,年齢を問わず健常な人も多く罹患する。風邪症候群の原因微生物のほとんどがウイルスであり,ライノウイルス,コロナウイルスなど各種ウイルスによる感染症である。これらのウイルスの中には,同一種のウイルスでも多くの型が存在するため,何度も繰り返し罹患する場合も少なくない。風邪症候群に罹患している人などからの咳やくしゃみ,会話から排出される飛沫を介して感染する。また,排出された飛沫が環境の高頻度接触面に付着して,飛沫中に含まれる病原体による接触感染も注意すべき感染経路である。すなわち風邪症候群の予防は主な感染経路である飛沫感染経路および接触感染経路の遮断である。家族の誰かが風邪をひいた時は,可能な限り罹患者との接点を最小限にすることである。また,適切な換気も重要な対策である。家庭内では重症化することもある高齢者や妊婦への対策は特に注意が必要である。
Key words:風邪症候群/ウイルス感染症/飛沫感染/接触感染.
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [4]抗菌ペプチドと皮膚常在菌叢
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [4]抗菌ペプチドと皮膚常在菌叢
- 著者:
- 冨田秀太(岡山大学病院ゲノム医療総合推進センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.2,pp.61-64(2024)
近年,抗菌ペプチドの産生や自然免疫システムとEGFRシグナルとの相互作用が明らかになり,皮膚の恒常性維持にEGFRシグナルが中心的に関与している。一方,EGFRシグナルの異常は様々ながんの発症・進展にも関与しており,EGFRを標的とした治療法は非小細胞肺がん患者や大腸がん患者の治療に承認されている。EGFR標的治療による副作用としてざ瘡様皮疹が知られているが,その発症メカニズムは未だに不明な点も多い。筆者らは,EGFR標的治療によるざ瘡様皮疹の発症と皮膚細菌叢の関連性を明らかにすることを目的として,EGFR標的治療をうけたがん患者および健常者の額からサンプルを採取し,16S rRNAシーケンシングにより,細菌叢を解析した。がん患者の細菌叢の変化を解析したところ,EGFR標的治療により,アクネ菌の相対量は87%の症例で減少しており,皮膚細菌叢のdysbiosisが皮疹の発症と関連していることを明らかにした。
Key words:Antimicrobial peptides(抗菌ペプチド)/Skin microbiome(皮膚細菌叢)/EGFR signal(EGFRシグナル)/Skin rash(皮疹)/Dysbiosis(ディスバイオーシス:細菌叢のバランス異常).
会報 …86
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<English> Vol.52,No.2 (2024)
Vol.52, No.3 (2024)
【 目次 】
天然系抗菌性物質の防菌防黴効果とその応用研究
- 表題:
- 日本防菌防黴学会研究賞受賞論文 天然系抗菌性物質の防菌防黴効果とその応用研究
- 著者:
- 森田 洋(北九州市立大学 国際環境工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.93-102(2024)
著者はこれまでに天然系抗菌性物質(い草,モウソウチク,ビワ,卵殻又は牡蠣殻由来焼成カルシウム,クモノスカビ産生物質,脂肪酸類)を対象に,室内や生活環境で問題となる真菌,細菌,アメーバ,ダニ等に対する新たな制御法を構築し,これらの制御ツールを活用した新規用途開発について研究を進めてきた。い草は細菌類に対して広く抗菌効果が認められ,抗菌活性は熱やpHに対して安定的であったことから,薬湯や日持ち向上剤,住宅建材への利用等を見いだした。直鎖型脂肪酸及び脂肪酸塩は炭素鎖の長さによって,その効力に大きな影響を与えており,炭素数10~12の脂肪酸塩がその制御に最も効果的であったことから,畳表防黴剤の実用化等の応用研究を進めた。また近年では分岐構造をもった脂肪酸類にも研究対象を広げ,この中でも特に分岐型脂肪酸は室内塵性ダニに対して高い防除効果を有していたことから,食品包装資材への応用研究も展開している。天然系抗菌性物質に万能なものはなく,多岐にわたる中から適切なものを選び,最も効果を発揮できる条件を見いだし,その応用事例を構築することが重要である。本研究がその一助となることを期待してやまない。
Key words:Juncus effusus var. decipiens(い草)/Fatty acids(脂肪酸類)/Control of microorganisms(微生物制御)/Mite control effect(ダニ防除効果).
家庭の安全・安心科学 [9]家族がノロウイルス感染!対策の備えはできていますか
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [9]家族がノロウイルス感染!対策の備えはできていますか
- 著者:
- 左近直美(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.103-108(2024)
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は毎冬流行するため,家族がいつ発症してもおかしくない。そして家族がノロウイルスに感染した場合,最も感染リスクが高いのは同居家族である。家庭内で胃腸炎が発生した場合,まずは家族による発症者のケアが優先される。特に小児においては空間を隔てることは難しいため,ノロウイルス二次感染は容易に発生する。そこで食品衛生,施設管理上実施している対策を生活の場である家庭環境に落とし込んだ対策を考えてみたい。
Key words:Norovirus/Household/Risk factor/Secondary infection.
家庭の安全・安心科学 [10]カット野菜製造時の微生物汚染とその対策
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [10]カット野菜製造時の微生物汚染とその対策
- 著者:
- 西村園子(ライオンハイジーン(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.109-115(2024)
今後,高齢者世帯や高齢の単身世帯,共働き世帯が増加し,省力化や時短を叶えるカット野菜の利用は広がると予想される。カット野菜では,微生物に対する耐性が低下し,微生物が増加しやすくなるため,洗浄・殺菌による細菌数低減は,衛生的な製品を製造する上で欠かすことができない。本講座では,カット野菜製造の各工程における課題とその対策について紹介する。製造工場で特にポイントとなるのは,ホール殺菌工程や異物・虫除去工程,本殺菌工程である。ホール殺菌や異物・虫の除去の工程では,殺菌剤と野菜洗浄剤の併用で,殺菌効果や虫除去効果の向上が期待できる。スライス後の,本殺菌工程には次亜塩素酸ナトリウムが利用されているが,殺菌処理後に品質劣化が見られることが報告されている。マイクロバブルオゾン水を用いた殺菌方法を開発し,本工程に応用することにより,殺菌効果の維持と低損傷洗浄の両立が可能となった。
Key words:カット野菜/マイクロバブルオゾン水/細胞損傷/品質/殺菌.
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [5]敏感肌と皮膚常在菌叢
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [5]敏感肌と皮膚常在菌叢
- 著者:
- 柴垣奈佳子((株)資生堂 みらい開発研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.117-120(2024)
敏感肌とは,通常の肌では感じられないような刺激に対して,様々な感覚刺激のある肌であるとされている。様々な種類の敏感肌があると考えられるが,本報告では,ごく低濃度の乳酸による刺激を感じられる顔の皮膚を敏感肌としてとりあげ,そのような肌では,水分量などの生理指標については非敏感肌と違いがみられない一方で,皮膚常在細菌叢については,非敏感肌と異なる特徴がみられることを見出した。敏感肌の常在菌叢の方が,多様性が低く,アクネ菌の優占度が顕著に高い。そして敏感肌では,皮脂分泌量が低くてもアクネ菌の割合が高いという特徴がみられた。このことから,少なくても乳酸刺激への感度で選抜される敏感肌には,皮膚常在菌叢が関与していることが示唆された。
Key words:Sensitive skin/Skin microbiome/Cutibacterium/Staphylococcus.
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [11]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その2)-正倉院関係全般について-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [11]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その2)-正倉院関係全般について-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.3,pp.121-125(2024)
文化財は先人が残した貴重な文化遺産であり,生物および微生物等による劣化を防止し,あるいは適宜修復等を実施し,後世に残していかねばならない歴史遺産でもある。長い年月の中で,カビ等の微生物を含めた生物等による劣化等にも対応しなければならないものである。今回,「文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その2)-正倉院関係全般について-」と題して,正倉院の由来,正倉院正倉,正倉院宝物,正倉院内の環境管理,正倉の建立および修理の経過,曝涼・曝書について,正倉院宝物の「曝涼」の歴史,正倉院の催しと森鴎外,および正倉院展について,微生物制御の立場を考慮し若干解説した。
Key words:Shosoin(正倉院)/Airing of clothes・airing of books(曝涼・曝書)/Ogai MORI(森鴎外)/Exhibition of Shoso-in Treasures(正倉院展)/Treasure(宝物).
図書紹介 『図解即戦力 食品衛生管理のしくみと対策がこれ1冊でしっかりわかる教科書−HACCP対応』 …116
会報 …140
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【 English Contents 】 Vol.52,No.3 (2024)
Vol.52, No.4 (2024)
【 目次 】
連続フロー式誘電泳動法システムと定量PCRを組み合わせたレジオネラ属菌の迅速検出法
- 表題:
- 連続フロー式誘電泳動法システムと定量PCRを組み合わせたレジオネラ属菌の迅速検出法(原著論文)
- 著者:
- 宮内佑子,池内保菜美,高井政貴(三浦工業(株)),川嶋文人(愛媛大学大学院農学研究科),森田智士,佐藤優成,円城寺隆治((株)AFIテクノロジー)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.141-146(2024)
本研究では,連続フロー式誘電泳動システム(CFDS)と定量PCR(qPCR)を組み合わせて,レジオネラ属菌(以下,レジオネラ)の生菌のみを分離し,定量する方法を検討した。CFDSとは,誘電泳動原理による電気計測およびマイクロ流体制御の複合技術である微粒子ろ過システムである。CFDSによるレジオネラの生菌と死菌の分離状態をCCDカメラで確認したところ,3.0 MHzから6.0 MHzの周波数領域で生菌の捕捉が顕著に観察された。そこで,22.0 Vpp,6.0 MHzにおけるレジオネラの捕捉率と,捕捉したレジオネラをqPCR法で測定した際の1 CFUあたりの16S rRNA遺伝子のコピー数を求め,得られた数値から本法におけるレジオネラの菌数を求めるための換算式を立てた。そして,9通りの濃度に調製した試料に対して本法と培養法による測定値を比較したところ,高い相関が認められた。
Key words:Dielectrophoresis(誘電泳動)/Legionella Species(レジオネラ属菌)/Rapid detection method(迅速検出法)/Quantitative PCR(qPCR).
家庭の安全・安心科学 [11]ジビエ料理・安全に楽しむために
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [11]ジビエ料理・安全に楽しむために
- 著者:
- 壁谷英則(日本大学 生物資源科学部 獣医学科 獣医食品衛生学研究室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.155-160(2024)
近年,全国的に猪や鹿など一部の野生動物の生息数が増加し,生息地の拡大が進んでおり,農林業や生活環境に対する甚大な被害が報告されている。これら野生動物の有効活用のため食用利用が進められている一方で,野生鳥獣肉を原因とするO157志賀毒素産生大腸菌(STEC)やE型肝炎ウイルスによる食中毒事例も報告されている。本稿では野生鳥獣肉のリスクとして,これまでの国内外の生物学的危害に関する報告事例を要約する。さらに,ジビエを安全に楽しむための試みとして「国産ジビエ流通規格認証制度」の概要を紹介するとともに,一般の消費者が注意すべき点を整理したい。
Key words:Gibier(ジビエ)/Zoonosis(人獣共通感染症)/Food poisoning(食中毒)/Shiga Toxin Producing Escherichia coli(志賀毒素産生大腸菌)/Campylobacter(カンピロバクター).
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [6]ニオイとヒト常在細菌叢
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [6]ニオイとヒト常在細菌叢
- 著者:
- 原 武史((株)マンダム 先端技術研究所 ライフサイエンス研究グループ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.161-164(2024)
ヒトのニオイには,体臭や口臭があり,これらのニオイの発生要因の一つに細菌代謝があげられる。これまで,様々な皮膚常在菌や口腔細菌に対し,様々なニオイ物質の発生への関与が示されている。また,近年我々は,細菌間相互作用によるニオイ物質の産生増強機構を発見した。本講座では,これまでの知見や最近の研究成果を交えながら,ニオイとヒト常在細菌叢の関係について概説する。
Key words:Body odor(体臭)/Halitosis(口臭)/Metabolism(代謝)/Bacterial communication(細菌間相互作用)/Volatile organic compounds(揮発性有機化合物).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [1]「食品製造における微生物安全保証の考え方」を構築するにあたって
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [1]「食品製造における微生物安全保証の考え方」を構築するにあたって
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.165-167(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
歯科医療分野における微生物制御 [1]開講にあたって
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [1]開講にあたって
- 著者:
- 中村圭祐(東北大学 大学院歯学研究科 先端フリーラジカル制御学共同研究講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.169-171(2024)
齲蝕(虫歯)や歯周病に代表される歯科疾患の多くは,口腔細菌によって引き起こされる。特に,硬組織である歯の表面は非剥離表面であるため,バイオフィルム(デンタルプラーク)が形成されやすく,これが疾患の原因となる。本講座では,口腔細菌に関する基礎知識から各種歯科疾患の発症における役割,そして口腔微生物制御の新しい技術など多岐にわたるテーマを各分野の専門の先生方に解説していただく。異分野融合による新しい医療技術の創出につながれば幸いである。
Key words:Dentistry/Dental plaque/Microbial biofilm/Dental diseases/Opening remarks.
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [1]微生物の多様性と分類
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [1]微生物の多様性と分類
- 著者:
- 龍田典子(佐賀大学・総合分析実験センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.4,pp.173-176(2024)
微生物(microorganism, microbe)とは,肉眼では見えないほど小さな生物の総称である。大部分の微生物の大きさはおおよそ数µm〜数十µm程度であり,まさに肉眼で見ることができない小さな生き物である。微生物の中には原核生物である細菌や古細菌,真核生物である真菌,原生生物など多様な種類の生物が含まれている。本稿では,微生物の多様性や分類に焦点を当て,系統学的な位置付けにも言及しながら,基礎的な内容について述べる。
Key words:Microorganism/Eubacteria/Archaea/Eukaryote/Classification.
会報 …180 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.4 (2024)
Vol.52, No.5 (2024)
【 目次 】
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [12]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その3)-高松塚古墳およびキトラ古墳について-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [12]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その3)-高松塚古墳およびキトラ古墳について-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.181-184(2024)
文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その3)-高松塚古墳およびキトラ古墳について-と題して,古墳とは何か,高松塚古墳(概要),高松塚古墳壁画50年の歩み,キトラ古墳(概要),キトラ古墳壁画をめぐる主な動き,高松塚古墳およびキトラ古墳の形状等の比較について,高松塚古墳およびキトラ古墳の壁画の保存に関しての提言-私見を交えて,高松塚古墳およびキトラ古墳の壁画の保存に関する他者の見解,および文化財保護の行方についてを取り上げ,微生物制御の立場を考慮し解説した。
Key words:Takamatsuzuka Tomb (高松塚古墳)/Kitora Tumulus(キトラ古墳)/Mural(壁画)/Protection of cultural properties(文化財保護)/Microbiological control(微生物制御).
家庭の安全・安心科学 [12]家族に安心な包装・脱酸素剤による食品の保存方法
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [12]家族に安心な包装・脱酸素剤による食品の保存方法
- 著者:
- 引地達也(三菱ガス化学(株) 機能化学品事業部門 企画開発部 生活衛生材料グループ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.185-192(2024)
脱酸素剤による製品の品質保持は,食品だけでなく医薬品,電子部品,文化財の保存にも適用されている。食品向けの実用的な脱酸素剤は,「エージレス®」として三菱ガス化学(株)によって1977年に開発されて以来,日本国内を始め,世界中で使用される食品包装技術となっている。脱酸素剤は,ガスバリア性の高い包装内に同封・密閉することで,包装内の酸素を吸収し,①油脂の酸化防止,②変色防止,③風味保持,④カビなどの微生物の生育防止,などの効果が得られ,食品の品質保持に貢献している。今回は,「家族に安心な包装・脱酸素剤による食品の保存方法」と題して食品包装に用いる脱酸素剤の特徴を中心に,脱酸素剤による酸化防止・微生物制御・環境負荷について解説を行う。
Key words:Oxygen absorber/Food packaging/Food preservation/Shelf life extension/Active packaging.
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [7]皮膚免疫と皮膚常在菌叢
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [7]皮膚免疫と皮膚常在菌叢
- 著者:
- 御守里絵,浅田秀夫(奈良県立医科大学 皮膚科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.193-198(2024)
表皮は外界微生物からの攻撃に対して抗菌ペプチドを産生し,生体防御の第一線を担っている。われわれは,黄色ブドウ球菌刺激と表皮ブドウ球菌刺激において,ケラチノサイトから誘導されるβ-defensinサブタイプの産生パターンが異なることを見いだした。近年,上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬が種々の悪性腫瘍の治療に用いられるようになってきたが,一方で,この薬剤による様々なタイプの薬疹の増加が見られる。しかし,これらの病態の詳細なメカニズムについては未だ不明な点が多い。われわれは,EGFR阻害薬が黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対するケラチノサイトの自然免疫応答にどのような影響を及ぼすのかについて,in vitroおよび臨床検体を用いた研究を行った。その結果,EGFR阻害薬による薬疹の発症には,薬剤による自然免疫応答の撹乱と,それによって引き起こされる皮膚の細菌叢の乱れが密接に関わっている可能性が示唆された。
Key words:Human β-defensin(ヒトβ-ディフェンシン)/EGFR inhibitor(上皮成長因子受容体阻害薬)/Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)/Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)/Acneiform rashes(ざ瘡様皮疹)/Innate immune response(自然免疫).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [2]微生物制御における二律背反の問題と増殖抑制要因に基づくハードル理論の拡張と応用
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [2]微生物制御における二律背反の問題と増殖抑制要因に基づくハードル理論の拡張と応用
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.199-203(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
歯科医療分野における微生物制御 [2]デンタルプラーク
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [2]デンタルプラーク
- 著者:
- 中村圭祐(東北大学 大学院歯学研究科 先端フリーラジカル制御学共同研究講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.205-211(2024)
デンタルプラークとは,口腔細菌が歯の表面に付着して形成するバイオフィルムのことを意味する。初期定着菌と呼ばれる細菌が歯面に付着して増殖するとともに,歯面に直接付着できない後期定着菌と付着(共凝集)することでデンタルプラークが形成される。デンタルプラークを構成する細菌は,EPS(extracellular polymeric substance)と呼ばれるバイオフィルムマトリックスを産生して外部環境刺激(薬剤や宿主免疫)から身を守りながら共生状態を確立している。宿主の食習慣や免疫応答などの影響などによって生息環境が変化すると,デンタルプラーク中の細菌叢のバランスが崩れてDysbiosisが引き起こされる。このDysbiosisにより病原性を有する細菌(病原性共生菌)の割合が増加すると,齲蝕(虫歯)や歯周病といった歯科疾患が引き起こされる。本稿では,デンタルプラークの形成,バイオフィルムマトリックスの組成,そしてデンタルプラークのDysbiosisと歯科疾患との関わりについて概説する。
Key words:Dental plaque(デンタルプラーク)/Microbial biofilm(細菌性バイオフィルム)/Dental diseases(歯科疾患)/Oral microbiota(口腔細菌叢)/Dysbiosis.
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [2]細菌の胞子(内生胞子,芽胞)の多様性
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [2]細菌の胞子(内生胞子,芽胞)の多様性
- 著者:
- 桑名利津子(摂南大学薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.5,pp.213-220(2024)
“Bacterial spore”とは,一部の細菌が形成する特殊な構造持つ細胞で極めて耐久性が高い。その休眠と抵抗性については多くの研究がなされてきたが,そのほとんどがモデル生物であるBacillus subtilisまたは培養可能なClostridium属細菌によって解析されてきた。その他の芽胞形成細菌についての基本的な芽胞形成機構や,芽胞の特性についてはほとんど明らかにされていない。“Bacterial spore”は,日本語訳では細菌胞子(spore),内生胞子(endospore)とも呼ばれていたが,真菌やシダ植物の胞子とは役割が異なるため,それらと区別するために,芽胞(spore)という名称で呼ばれるようになった。本稿では,エンガルフメント(engulfment)により形成される内生胞子(endospore)を形成する細菌について説明する。また成熟した内生胞子および母細胞から放出された成熟した内生胞子のことを“Bacterial spore(芽胞)”と呼ぶ。
Key words:Bacterial spore/Endospore/Offspring cell/Diversity/Spore forming bacteria/Spore.
会報 …222 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.5 (2024)
Vol.52, No.6 (2024)
【 目次 】
インライン式の微細水滴を含んだ過熱水蒸気処理のソバ種実における殺菌と品質への影響
- 表題:
- インライン式の微細水滴を含んだ過熱水蒸気処理のソバ種実における殺菌と品質への影響(短報)
- 著者:
- 土佐典照,上野祐美,松林和彦(島根県産業技術センター 浜田技術センター),小川哲郎(島根県産業技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.223-227(2024)
アクアガス加熱装置によるソバ種実への殺菌効果について検討した。さらにアクアガスと過熱水蒸気を備えたインライン式装置を作成したので併せて試験を行った。また加熱処理したソバ種実について,RVAで製麺特性を測定した。この結果,アクアガス加熱装置で3分間処理するとソバ種実の一般生菌数はほぼ不検出となり,さらに本インライン式装置では30秒処理で一般生菌数や大腸菌群は不検出となった。また加熱処理したソバ種実について製麺特性を測定したところ,加熱時間が長くなると低下する傾向があった。以上のことから,ソバ種実を短時間で加熱殺菌処理が可能な本インライン式装置は有効と考えられた。
Key words:Buckwheat seeds(ソバ種実)/Aqua-gas treatment(アクアガス)/Superheated steam(過熱水蒸気)/Viable cell count(生菌数)/Rapid Visco Analyzer(RVA).
家庭の安全・安心科学 [13]家庭における感染症媒介虫類の対策と防除等の遍歴
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [13]家庭における感染症媒介虫類の対策と防除等の遍歴
- 著者:
- 安部八洲男(防疫薬総合管理研究会/(元)大阪青山大学健康科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.229-250(2024)
古くから,家庭にはいろいろな害虫獣類が侵入し,刺したり,咬んだり,感染症を伝播したりして人々を苦しめた。代表的には,ハエ,蚊,ゴキブリ,ノミ,シラミ,ダニ,更にはネズミ,ヘビなどである。これらの害虫獣類は現代では感染症を媒介することは少なくなり,単なる不快害虫となったものもあるが,蚊はマラリア,糸状虫症,日本脳炎,黄熱,デング熱などの恐ろしい感染症を媒介する。ノミはペストを,シラミは発疹チフスを媒介する。ハエやゴキブリはコレラ菌,赤痢菌,腸チフス,大腸菌などを体表につけて動き回り,これらの菌を家庭内のあちこちに拡散する。これらの害虫獣に対して採られてきた対策について古くから現代に至るまでの変遷について述べた。更には,現代における害虫獣対策と防除方法について具体的に説明した。また,害虫類を防除する時に使われる殺虫剤の利点,欠点について述べ,その安全性についての考え方について説明した。
Key words:Vector pest(媒介有害生物)/Household pest(家庭害虫)/Infectious disease(感染症)/Urban pest management(都市害虫管理)/Pest control(有害生物防除).
家庭の安全・安心科学 [14]家庭で弁当を作る時の危害分析と衛生対策
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [14]家庭で弁当を作る時の危害分析と衛生対策
- 著者:
- 吉田啓子((元)鎌倉女子大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.251-256(2024)
現在は,家庭での弁当を原因とする食中毒は稀である。家庭でも微生物性食中毒への理解が深まり,安全面や保存面に注意して作られている。しかし,弁当は安全,保存と同時に栄養面,嗜好面も大切な要素で,生活様式や環境は時代とともに変化する一方,衛生の基本を守り作る必要がある。そのためには,作る場面だけでなく食材購入から喫食まで一連の知識と実践が求められる。微生物汚染対策は,①品質の良い食材を購入して自宅まで持ち帰る,②必要に応じて冷蔵庫,冷凍庫に保管して早めに使用する,③作る時は,初期菌数を少なくするための工夫する,④調理してから喫食するまで,細菌の増殖条件(水分,温度,栄養分と時間)のコントロールをする,⑤調理をする場の衛生管理,ヒトの健康管理をすることが大切である。リスクを考える上では意外なところに見落としがあるため,家庭での実例を基に危害分析し,衛生対策を紹介する。
Key words:Making bento at home(家庭の弁当作り)/Hazard analysis(危害分析)/Initial bacterial count(初期菌数)/Cooking(加熱調理)/Storage temperature and time(保存温度と時間)/Cross contamination(交差汚染).
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [8]尋常性ざ瘡(にきび)と皮膚常在菌叢
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [8]尋常性ざ瘡(にきび)と皮膚常在菌叢
- 著者:
- 赤座誠文(日本メナード化粧品(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.257-263(2024)
尋常性ざ瘡(にきび)に関わる微生物因子として,一般的にCutibacterium acnesが考えられている。しかし,C. acnesはにきび患者だけでなく,健常人の皮膚にも存在する皮膚常在菌であり,にきびとの関わりを菌数の増加だけで単純に考えることはできない。これまでの検討の結果,C. acnesの中でも,特定のタイプがにきびと深く関与することが明らかとなった。また,皮膚常在真菌であるMalassezia spp.もにきびに関与することが報告されており,これらの制御がにきびの予防や症状緩和にとって有用と考えられている。一方で,これらの菌も皮膚常在菌叢の構成メンバーであり,他の皮膚常在菌と共存・競合しながら皮膚に常在していることを考えると,これらの菌単独ではなく,これらを含めた皮膚常在菌叢の乱れをにきびの増悪因子と捉えることもできる。
Key words:Acne vulgaris(にきび)/Skin resident microbiota(皮膚常在菌叢)/Skin microbiome(皮膚マイクロバイオーム)/Cutibacterium acnes(アクネ菌)/Malassezia(マラセチア).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [3]微生物安全保証のための芽胞形成細菌の取扱法と定量的評価法について
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [3]微生物安全保証のための芽胞形成細菌の取扱法と定量的評価法について
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.265-270(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し、生菌数の減少をD値に換算して求め、D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより、製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても、F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御、商業的無菌の保証が可能となり、微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [3]放線菌の胞子と抗生物質生産
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [3]放線菌の胞子と抗生物質生産
- 著者:
- 手塚武揚(東京大学・大学院農学生命科学研究科・応用生命工学専攻)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.279-283(2024)
放線菌はグラム陽性細菌に分類される原核生物であり,ゲノムDNAのGC含量が高いことを特徴とする。放線菌は抗生物質をはじめとする多数の生理活性物質を生産する産業微生物として知られているが,原核生物であるにもかかわらず,真核生物の糸状菌に似た複雑な形態分化を行うことから,原核生物における細胞分化のモデル生物としても重要な菌群である。本稿では,放線菌で主要な属であるStreptomyces属からStreptomyces griseusを,希少放線菌に分類されるActinoplanes属からActinoplanes missouriensisを例として取り上げ,放線菌の形態分化の特徴と形態分化に関わる遺伝子群の発現制御機構について概説する。また,制御メカニズムの研究から見えてきた,放線菌の形態分化と二次代謝の関連性や生態学的な役割について紹介する。
Key words:Morphological development(形態分化)/Secondary metabolism(二次代謝)/Actinomycetes(放線菌)/Transcriptional regulation(転写制御)/Electron microscopy(電子顕微鏡観察).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [1]ナノインプリントによる抗菌表面の設計と検証
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [1]ナノインプリントによる抗菌表面の設計と検証
- 著者:
- 宮内昭浩(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.6,pp.285-291(2024)
ナノインプリントはナノ・マイクロ構造を成型できるプレス加工技術で2000年代に装置,材料,プロセスが世界的に大きく進展した。現在,光学部品,電子デバイス,医療ツール等への応用が進んでいる。生物学への応用としては,細胞培養や単一細胞の選別輸送,抗菌表面の形成などが知られており,本稿では特に抗菌を中心に紹介する。抗菌表面の設計に関しては工学的なアプローチに加え,生物の体表構造を基本モデルとしたバイオミメティックデザインに関しても紹介する。
Key words:Nanoimprint(ナノインプリント)/Cell culture(細胞培養)/Antibacterial(抗菌)/Biomimetics(生物模倣)/Surface design(表面構造設計).
会報 …292 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.6 (2024)
Vol.52, No.7 (2024)
【 目次 】
トイレ用芳香洗浄剤が黒ずみの形成を遅延させる効果を評価するためのラボモデルの確立
- 表題:
- トイレ用芳香洗浄剤が黒ずみの形成を遅延させる効果を評価するためのラボモデルの確立(原著論文)
- 著者:
- 鳥井一宏,濱田昌子,五味満裕(小林製薬(株)・中央研究所),小矢野大知,前川大輔(小林製薬(株)・日用品事業部),中嶋絵里,西田倫希,射本康夫(一般財団法人日本繊維製品品質技術センター・神戸試験センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.293-300(2024)
トイレ便器内の黒ずみの形成を予防するトイレ用芳香洗浄剤の開発が望まれている。実際の家庭における黒ずみの形成遅延効果を評価するためには,多くの時間とコストを要するため,我々は簡便かつ短期間で評価が可能なラボモデルの確立を行った。トイレ便器内の栄養状態を調査し,便器喫水部の栄養条件を再現することで,ラボモデルにおいて黒ずみの形成が確認され,実際の家庭における黒ずみと形態的に類似した黒ずみの形成が確認された。また,各種除菌剤を含むトイレ用芳香洗浄剤の種類や濃度によって黒ずみの形成遅延効果に差が確認された。加えて,実際の家庭における黒ずみの形成遅延効果と比較し,ラボモデルにおいて黒ずみの形成遅延効果の高い洗浄剤は,実際の家庭においても高い黒ずみの形成遅延効果が確認された。以上より,本ラボモデルは,実際の家庭における黒ずみの形成遅延効果に対する有効性を短期間かつ簡易に評価する方法として活用できる可能性が示された。
Key words:Toilet(トイレ)/Biofilm(バイオフィルム)/Black dirt(黒ずみ)/Delay effect(遅延効果)/Laboratory model(ラボモデル).
抗菌/抗ウイルス製品の変遷
- 表題:
- 抗菌/抗ウイルス製品の変遷
- 著者:
- 冨岡敏一(関西大学微生物制御工学研究室非常勤研究員)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.301-308(2024)
コロナ禍を経て,当初清潔性を付与する「抗菌・抗ウイルス製品」が多く輩出されている。4年を経過した現時点で,それらの状況を見直し,今後の製品を見直す機会にあると感じ,統計手法を用いて現状の傾向を把握した。その結果,製品の種類によって違いはあるもののコロナ禍前に較べ2020年以降,特に抗ウイルス製品が急に出現しており,特に住宅設備,機械設備において顕著であった。それら製品の加工法も「練り込み」と「塗装・印刷」により構成されることが判った。また登録社が印刷業界で急増していることもその影響と考えられる。出願された特許と業界登録された製品の関連付けを突き合わせ,一致したものについてそれらの時期の差を開発期間と考える場合,上記製品群はコロナ禍直後に製品化されたものと,20年前に開発された技術を利用して製品化されたものが多いことが判った。
Key words:Anti-microbial goods(抗菌製品)/Antivirus goods(抗ウイルス製品)/Data based on patent(特許データ)/Data based on nongovernment organization SIAA(抗菌製品技術協議会データ)/Development period(開発期間).
家庭の安全・安心科学 [15]正しい衛生対策(手指・環境衛生)
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [15]正しい衛生対策(手指・環境衛生)
- 著者:
- 越智淳子,髙見貴之(サラヤ(株) バイオケミカル研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.309-314(2024)
2020年から感染が急速に拡大している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は,変異を繰り返しながら世界中で感染を引き起こしている。2023年以降,新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)罹患者は減少傾向にあるものの,ヘルパンギーナ,RSウイルス,インフルエンザウイルスなど新型コロナウイルス拡大期に減少傾向にあった病原微生物による感染症は絶えず発生している。ゼロにはならない感染症と共存していくためには適切な衛生対策が求められ,近年各メーカーから様々な衛生関連製品が販売されているが,重要なのはこれら衛生製品を適切な方法で適切に使用することである。そこで,本稿では,感染症を引き起こす要因について解説するとともに,感染症対策に重要な役割を果たす手指衛生および環境衛生のポイントについて述べる。
Key words:Infection prevention(感染予防)/Hand hygiene(手指衛生)/Environmental hygiene(環境衛生).
歯科医療分野における微生物制御 [4]歯周病と全身疾患の関係性
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [4]歯周病と全身疾患の関係性
- 著者:
- 天雲太一(東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野),中村圭祐,白土翠(東北大学大学院歯学研究科先端フリーラジカル制御学共同研究講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.315-321(2024)
歯周病では,歯面や歯石に付着した細菌及びその産生物質に対する宿主免疫応答によって,炎症性サイトカインが継続的に歯周組織に放出されるため歯周組織が破壊されていく。近年,歯周病は,口腔の健康のみならず糖尿病など全身の健康を脅かすリスクファクターになることが明らかになってきた。例えば,これらの細菌は歯周治療だけでなく歯ブラシなどの日常的動作によっても菌血症になることが報告されている。更に,細菌だけでなく,その産生物質及び炎症性物質の一部も血中に移行することで,全身的に血中の炎症性物質が上昇する。炎症性物質は血管内皮を傷害することで動脈硬化症のリスクファクターとなることや,早産・低体重児出産のリスクファクターになることがシステマティックレビューによって示されてきた。一方で,歯周治療,歯周病予防,口腔衛生状態の改善が,これら全身疾患の予防や症状緩和に重要であることもわかってきた。
Key words:Periodontal disease(歯周病)/Bacteremia(菌血症)/Arteriosclerosis(動脈硬化症)/Diabetes (糖尿病)/Premature birth(早産)/Low birth weight infant(低体重児出産).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [4]加熱殺菌を主とする食品製造における微生物安全保証の考え方
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [4]加熱殺菌を主とする食品製造における微生物安全保証の考え方
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.323-328(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品의 芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [2]サメ肌抗菌シートによる食中毒菌の抗菌効果
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [2]サメ肌抗菌シートによる食中毒菌の抗菌効果
- 著者:
- 照井祐介(国際医療福祉大学 薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.7,pp.329-331(2024)
細菌性食中毒は,日本では衛生管理が整っているものの未だ高い頻度で発生している。原因菌が食中毒を引き起こす機構は各々異なるが,いずれにしても食中毒を防ぐには,食品中に付着する細菌の増殖・バイオフィルム形成を抑制することが重要である。近年,サメの体表面加工が感染防御に対し,非常に理にかなった構造をしていることが明らかとなった。そこで,可塑性に富んだアクリル酸系樹脂を用いたサメ肌抗菌シートを作製し,食中毒菌に対する抗菌効果を検討した結果,静的培養条件において強く細胞増殖抑制効果を示すことを明らかにした。しかしながら,アクリル酸系樹脂のサメ肌抗菌シートは衛生・安全面から食品には使用できなかった。今回,食品にも使用可能なポリプロピレン素材の可撓性のある新たなサメ肌抗菌シートを作製したので,本稿では新しい抗菌シートを用いた食中毒菌に対する抗菌効果を報告する。
Key words:Antibacterial effects/Biofilm formation/Swarming motility/Shark skin pattern plate/Bacterial food poisoning.
会報 …332 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.7 (2024)
Vol.52, No.8 (2024)
【 目次 】
日本防菌防黴学会賞受賞論文:レジオネラ等細菌とそのバイオフィルムの生態学的および環境衛生学的研究
- 表題:
- 日本防菌防黴学会賞受賞論文 レジオネラ等細菌とそのバイオフィルムの生態学的および環境衛生学的研究
- 著者:
- 古畑勝則(麻布大学 生命・環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.333-345(2024)
我国で,はじめてレジオネラ症が発症したのは1980年10月28日である。その後,40年あまりを経過した現在でも発症数は残念ながら右肩上がりである。これまで感染源となる様々な人工的水環境をはじめ,身近な環境について微生物生態学的に研究を進めてきた。後半では,レジオネラ属菌のすみかとなるバイオフィルムについて検討を重ねたが,まだまだ道半ばである。バイオフィルムはとても奥が深く, 解明されなければならない課題は山積みである。今回の稚稿は,現状までのデータをまとめたものである。次の世代への架け橋になれば幸いである。
Key words:Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Biofilms(バイオフィルム)/Legionellosis(レジオネラ症).
家庭の安全・安心科学 [16]脂肪酸類による床材及び家庭用品への適用
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [16]脂肪酸類による床材及び家庭用品への適用
- 著者:
- 森田 洋(北九州市立大学 国際環境工学部 環境生命工学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.347-356(2024)
室内には多くの微生物(カビ,細菌等)や害虫(ダニ等)が生息しており,近年における住宅の気密性向上に伴い,家庭での対策はより重要な課題となっている。これらの微生物・害虫汚染を制御する有効な手法として,様々な天然物や化学物質などを用いた化学特防除法があるが,本講座では効果や安全性,持続性の高さから新たな手法として着目されている脂肪酸類に焦点をあてて,ラウリン酸カリウムによる畳表用防黴剤,2-ブチルオクタン酸によるダニ防除効果の高い食品包装資材,2-ヘキシルデカン酸カリウムによる除菌洗濯洗剤,直鎖型・分岐型脂肪酸塩によるコンタクトレンズの殺アメーバ剤への応用に係る研究事例について取り上げた。微生物種により効果の高い脂肪酸類は異なり,脂肪酸塩の鎖長が抗カビ効果や抗菌効果,抗アメーバ効果に大きな影響を与えていた。一方で室内塵性ダニに対しては脂肪酸塩では効果が低かったものの,脂肪酸で高い防除効果を発揮していた。
Key words:Fatty acids(脂肪酸類)/Tatami mat(畳表)/Food packaging materials(食品包装資材)/Sanitizing liquid laundry detergents(除菌洗濯洗剤)/コンタクトレンズ(Contact lenses).
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [9]皮膚常在菌叢の次世代シーケンシング(NGS)解析法
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [9]皮膚常在菌叢の次世代シーケンシング(NGS)解析法
- 著者:
- 高崎一人((株)ファスマック 事業開発部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.357-367(2024)
環境に生息する微生物へのアプローチとして,以前は個々の微生物を分離・培養し,その微生物が有する諸性質を明らかにしてきたが,次世代シーケンサーの登場により,培養を経ずに環境に生息する微生物を網羅的に解析することが可能となった。既に,土壌,海洋,河川,腸内や皮膚など様々な環境を対象とした次世代シーケンス解析が行われ,その膨大なデータを有効活用し,環境改善,健康,医療や創薬などに役立てる試みもはじまっている。次世代シーケンサー登場前後から微生物のゲノム解析に携わってきた経験を活かし,皮膚科学の分野で活躍する皆様に役立つことを心掛けながら,皮膚常在菌叢の解析方法や最近の知見などを紹介する。
Key words:Next generation sequence(次世代シーケンス)/Skin microbiome(皮膚常在菌)/Amplicon analysis(アンプリコン解析).
歯科医療分野における微生物制御 [5]口腔マイクロバイオームの代謝と口腔および全身の疾患と健康への関与
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [5]口腔マイクロバイオームの代謝と口腔および全身の疾患と健康への関与
- 著者:
- 鷲尾純平,髙橋信博(東北大学大学院歯学研究科 口腔生化学分野)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.369-378(2024)
う蝕・歯周病などの細菌性口腔疾患の発症・増悪には,口腔マイクロバイオーム(OMB)の代謝産物が直接関与するため,その予防にはOMB代謝活性の制御が重要である。OMB代謝の制御物質として,糖アルコール,フッ化物,カテキン等が研究されてきた。近年では,OMBによって食品成分が代謝され,その代謝産物が多様な生物活性を示すことが明らかになりつつある。OMBはエタノールからアセトアルデヒドを産生することで口腔や上部消化管で発がん作用を持つ一方,食物由来の硝酸塩を,抗菌のみならず血圧低下作用を持つ亜硝酸塩へ還元することが明らかとなり,OMBが口腔や全身の健康に貢献する可能性に注目が集まっている。さらに,硝酸塩代謝は細菌の相互作用で制御されることも明らかになってきた。そこで,本稿では,1.OMBを構成する代表細菌の代謝とその調節,2.OMB代謝制御成分の作用機序,3.OMBによる食品成分代謝と代謝産物の作用機序,4.OMBと口腔環境の相互作用について概説する。
Key words:Oral microbiome(口腔マイクロバイオーム)/Metabolism(代謝)/Metabolites(代謝産物)/Nitrite(亜硝酸塩)/Health(健康).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [5]充分な加熱殺菌ができない食品製造における芽胞形成細菌の制御
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [5]充分な加熱殺菌ができない食品製造における芽胞形成細菌の制御
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.379-382(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [3]微粒子投射処理によって形成される微細凹凸の抗菌性能
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [3]微粒子投射処理によって形成される微細凹凸の抗菌性能
- 著者:
- 西谷伴子((株)サーフテクノロジー)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.8,pp.383-387(2024)
薬剤耐性菌が世界的に猛威を奮っている中,表面形状での抗菌・殺菌技術に注目が集まっている。バイオミメティクスをはじめとした表面構造の形成技術などの研究が盛んに進む中で,微粒子投射(Fine Particle Bombarding:FPB)処理によって形成される微細凹凸形状が抗菌性能を有することを確認した。FPB処理は,作業が容易で低コストであり,大面積への処理も可能であることから,食品製造機器を中心に採用が拡大している。基材にステンレスを使用し,平滑面と微細凹凸を有するFPB処理面の抗菌性能評価を実施したところ,FPB処理面においては,大腸菌と黄色ブドウ球菌の菌数の減少が顕著であった。基材物性に関わらない,形状での抗菌効果であることも確認している。食品製造現場への適用などにも触れながら,FPB処理面の抗菌性能について解説する。
Key words:Fine Particle Bombarding(FPB)(微粒子投射処理)/Antibacterial effect(抗菌効果)/Surface shape(表面形状)/Antimicrobial resistance(AMR)(薬剤耐性).
会報 …388 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.8 (2024)
Vol.52, No.9 (2024)
【 目次 】
家庭の安全・安心科学 [17]家庭でできる口腔ケア
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [17]家庭でできる口腔ケア
- 著者:
- 村井浩紀(サラヤ(株) 商品開発本部 サラヤ総合研究所 微生物研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.389-393(2024)
家庭における微生物汚染とその対策としてオーラルケアをテーマにするのは少々違和感があるかもしれないが,口腔内で起こる様々なトラブルは紛れもなく微生物汚染よって起こるものである。口腔内には約700種類の細菌が存在し,ヒトを宿主とする細菌叢としては最大級コミュニティが築かれているといえる。口腔内の微生物汚染によって起こるトラブルとして代表的なものがう蝕と歯周病であり,それぞれ異なる微生物の汚染によって引き起こされることがこれまでの研究によって明らかになってきた。う蝕・歯周病の対策は将来の口腔機能を守り,全身の健康を維持するために必須であり,予防手段として家庭でのオーラルケアが重要な役割を果たしている。本稿では家庭でできるオーラルケアによって微生物汚染を防ぐポイントをご紹介したい。
Key words:Oral care/Self-care/Caries/Periodontitis/Oral bacteria.
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [10]尋常性乾癬と皮膚常在真菌叢の関わり
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [10]尋常性乾癬と皮膚常在真菌叢の関わり
- 著者:
- 中島沙恵子(京都大学大学院医学研究科・炎症性皮膚疾患創薬講座 特定准教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.395-399(2024)
皮膚表面には細菌,真菌,ウイルスなどから構成される皮膚常在微生物叢(皮膚マイクロバイオーム)が存在し,免疫細胞とのクロストークを介して宿主の恒常性維持や感染防御に寄与している。尋常性乾癬患者の皮膚では皮膚マイクロバイオームのバランスの乱れ(ディスバイオーシス)が観察され,疾患の病態への関与が示唆されている。皮膚常在真菌は,皮膚に定着することでIL-17A産生能をもつT細胞を局所に誘導する。皮膚常在真菌の一つであるCandida albicans(C. albicans)が定着した皮膚では真菌抗原特異的なIL-17産生エフェクターCD4陽性T細胞が誘導され,マウス乾癬皮膚炎が増悪する。すなわち,皮膚常在真菌の一つであるC. albicansが宿主皮膚免疫細胞に影響を与えることで,尋常性乾癬の病態において炎症反応の誘導や増悪に関与する可能性が示された。
Key words:皮膚マイクロバイオーム/尋常性乾癬/Candida albicans/IL-17産生エフェクターCD4陽性T細胞.
歯科医療分野における微生物制御 [6]フッ化物配合歯磨剤の効果的な使用方法
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [6]フッ化物配合歯磨剤の効果的な使用方法
- 著者:
- 石塚洋一(東京歯科大学 衛生学講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.401-407(2024)
今日,齲蝕に対抗するために,多くの齲蝕予防戦略が用いられており,中でもフッ化物応用は,半世紀以上にわたる研究に支えられ,齲蝕予防としての効果が明確に確立されている手段である。今回は,これまで最も広く使用され,多くの人にとって,最も身近なフッ化物応用法であるフッ化物配合歯磨剤の効果的な使用方法を紹介する。齲蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の効果には,製品のフッ化物濃度,使用頻度,使用量,すすぎ方など,さまざまな要因が影響する。フッ化物配合歯磨剤は,歯科医師や歯科衛生士だけでなく,患者や一般の生活者も毎日使用する。せっかく使用するならば,その効果を十分に得たいものである。フッ化物配合歯磨剤の最適な効果を得るために,製品の選択だけでなく,個人の行動も重要であることが知られている。日々のセルフケアを楽しく,効果的に行っていただくためにも,フッ化物配合歯磨剤の効果的な使用方法が広まることが期待される。
Key words:Fluoride(フッ化物)/Fluoride toothpaste(フッ化物配合歯磨剤)/Fluoride retention(フッ化物保持)/Toothbrushing routines(ブラッシングルーティン)/Fluoride concentration(フッ化物濃度).
食品製造における微生物安全保証の考え方 [6]非加熱殺菌の食品製造における芽胞形成細菌の制御
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [6]非加熱殺菌の食品製造における芽胞形成細菌の制御
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.409-415(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [4]大気圧低温プラズマを用いた防汚機能を有する胆管ステントの開発
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [4]大気圧低温プラズマを用いた防汚機能を有する胆管ステントの開発
- 著者:
- 関口 淳(大阪公立大学 工学研究科/リソテックジャパン(株)),山本雅史(香川高等専門学校 電気情報工学科),合川公康(埼玉医科大学 国際医療センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.417-423(2024)
バイオミメティクスとは生物が持つ機能や性能を模倣する技術のことで,例えば,水を弾くハスの葉の超撥水性を利用した防水用品への応用はよく知られる。我々が着目したのは,油汚れを弾くカタツムリの殻の表面構造である。カタツムリの殻には200nm~400nmのナノポーラス構造があり,このナノホールに水が入り込むことで,表面に薄い水の膜(水膜)が形成され,油汚れを寄せ付けない。このような構造を超ナノ親水構造と呼ぶ。前報では,このようなナノ構造をナノインプリント法で作製し,胆管ステントの内壁に適用することを検討した。しかし,この方法では,フィルム表面にナノ構造を作り,これを丸めてチューブとするため,製作に手間がかかる。また,ナノインプリント法のモールドは,電子線リソグラフィー技術により製作するため,高価であり,量産には向いていなかった。そこで,我々は,大気圧低温プラズマによるPE製胆管ステント内壁への微細構造の直接形成による防汚機能付与のための要素技術の構築を目指して,直径の異なるPEチューブ内壁に様々なプラズマ条件で微細構造を形成し,その構造や防汚機能の効果を検討したので報告する。
Key words:バイオミメティクス/カタツムリの殻構造/超ナノ親水/胆管がん/胆道閉鎖症/胆管ステント/大気圧低温プラズマ法.
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [4]やや偏ったカビの基礎知識
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [4]やや偏ったカビの基礎知識
- 著者:
- 槇村浩一(帝京大学医真菌研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.9,pp.425-429(2024)
カビ(真菌)は我々にとって非常に身近な微生物であり,その多様性と機能は驚くべきものである。カビは細菌や植物とは異なり,動物と共にオピストコンタに属する極めて近縁の真核生物であることがDNA塩基配列の解析から明らかになっており,これが真菌症対策を困難にしている根本的な理由となっている。カビには,かび,酵母,きのこが含まれる。カビはクローンに相当する無性胞子と,配偶子に相当する有性胞子の二種類の胞子を形成する生活環を有し,かつては各々に別の学名が与えられていた。カビの菌種は約12-15万種が認識されており,毎年新たに約2000種が記載されている。その中でヒトに感染する病原真菌は少数であり,現状では1000程の種数が確認されている。これらカビの学名は現在再構成の過程にあるため,慣れ親しんだ菌についても再分類のため学名が変更されることがある。しかし,学名は本質的に真菌分類上の「学説」を端的に示したものであるから,分類学研究の進捗に伴って今後も変更(更新)され続けるのは宿命である。
Key words:黴菌/オピストコンタ/かび/酵母/きのこ/学名.
会報 …430 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.9 (2024)
Vol.52, No.10 (2024)
【 目次 】
シリコーンシーラントの内部に伸張したCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす弱アルカリ性次亜塩素酸ナトリウムとモノクロラミンの効果
- 表題:
- シリコーンシーラントの内部に伸張したCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす弱アルカリ性次亜塩素酸ナトリウムとモノクロラミンの効果(短報)
- 著者:
- 髙橋和宏(岡山県工業技術センター),福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.431-435(2024)
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)とモノクロラミン(NH2Cl)の弱アルカリ性水溶液(pH 8.5;1,000 mg/L)が,シリコーンシーラント内部で増殖させたCladosporium sphaerospermum菌糸の脱色に及ぼす影響について検討した。C. sphaerospermumの胞子を寒天培地に散布し,その上にシリコーンシーラント試験片を置き,25℃で6日間培養することでC. sphaerospermum菌糸が増殖した試験片を得た。C. sphaerospermumの菌糸は試験片表面を覆うとともに内部へ約100μm伸長し,3日間の培養でその一部は約600μmの深さまで伸長した。このシリコーンシーラント試験片をNaOClおよびNH2Cl水溶液に浸漬し,脱色効果を5分間隔で撮影した。この画像の輝度値の反転値から脱色効果を定量的に評価した。NaOCl水溶液に9時間浸漬した試験片はほぼ完全に脱色された。一方,NH2Cl水溶液への浸漬3時間後の脱色率は約8%,6時間後の脱色率は約17%,9時間後の脱色率は約21%,15時間後の脱色率は約35%にとどまった。脱色曲線から算出された一次脱色速度定数は,NH2Cl水溶液に浸漬するよりもNaOCl水溶液に浸漬した方が8.4倍高かった。弱アルカリ性NaOCl水溶液はNH2Cl水溶液よりもシリコーンシーラント内部で増殖したC. sphaerospermum菌糸の脱色に効果的であった。
Key words:Silicone rubber sealant(シリコーンシーラント)/Cladosporium sphaerospermummycelium(クラドスポリウム スフェロスパーマム菌糸)/Decolorization(脱色)/Sodium hypochlorite(次亜塩素酸ナトリウム)/Monochloramine(モノクロラミン).
家庭の安全・安心科学 [18]家族が食あたり!食品の摂食による感染性胃腸炎:病院へ行くまでの対処法と受診の準備
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [18]家族が食あたり!食品の摂食による感染性胃腸炎:病院へ行くまでの対処法と受診の準備
- 著者:
- 阪口義彦(徳島文理大学薬学部微生物学教室),佐々木正大(大阪大学微生物病研究所ウイルス感染制御分野),谷口 暢(サラヤ(株)・(株)ポエマ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.437-443(2024)
突然,自分自身や家族が腹痛やひどい下痢などの食あたり(食中毒)になると心配になる。何が原因なのか,病院へ行った方が良いのか不安になる。一般的に感染性胃腸炎の主症状が下痢・腹痛であるために,家庭内で常備している下痢止めや整腸剤を使用したくなる。食品の摂食による感染性胃腸炎は季節関係なく年間を通して発生し,原因となる病原体の違いによって異なった症状を呈する。また,薬によっては感染性胃腸炎の治癒に逆効果となることから,十分な知識を持って使用することが大切である。そこで,本講座では,感染性胃腸炎の簡易識別と下痢便,病院へ行くまでの対処法と注意点,受診に役立つ情報や感染性胃腸炎の予防方法などについて概説する。
Key words:Food poisoning(食中毒)/Infectious gastroenteritis(感染性胃腸炎)/Diarrhea(下痢)/Abdominal pain(腹痛)/Coping method(対処法).
歯科医療分野における微生物制御 [7]ラジカル殺菌技術を応用した口腔微生物制御
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [7]ラジカル殺菌技術を応用した口腔微生物制御
- 著者:
- 白圡 翠(東北大学大学院歯学研究科 先端フリーラジカル制御学共同研究講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.445-452(2024)
口腔微生物とそれらに関連する歯科疾患は,口腔内に留まらず全身へ及ぼす様々な影響について報告されている。口腔微生物制御の重要性がより明確になる一方,歯科疾患の罹患率は未だ高く,高齢層ではう蝕・歯周病ともに近年増加傾向である。活性酸素の一種であり過酸化水素の光分解によって生じるヒドロキシルラジカルを応用したラジカル殺菌技術は,歯周病原細菌やう蝕関連細菌をはじめとする様々な口腔微生物およびそのバイオフィルムを効果的に殺菌できることを報告してきた。現在,本殺菌技術を応用した歯周病治療器は治験を通してその優れた治療効果が証明され,医療機器として承認を受け,今春販売を開始したところである。また,う蝕治療や近年問題となっているインプラント周囲炎,義歯装着者の口腔衛生状態向上を目的とした義歯洗浄への応用を視野に更なる研究を進めており,本殺菌技術はこれまでにない網羅的な口腔微生物制御法として期待される。
Key words:Hydrogen peroxide/H2O2(過酸化水素)/H2O2 photolysis(過酸化水素光分解)/Hydroxyl radicals(ヒドロキシルラジカル)/Periodontal disease(歯周病)/Peri-implantitis(インプラント周囲炎)/Dental caries(う蝕)/Denture(義歯).
食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [7]芽胞形成細菌制御のための殺菌管理指標菌の選定・管理の実際
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [7]芽胞形成細菌制御のための殺菌管理指標菌の選定・管理の実際
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.453-459(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [5]昆虫に学ぶ新しい抗菌・抗ウイルス技術
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [5]昆虫に学ぶ新しい抗菌・抗ウイルス技術 ~技術開発の現状と今後の展望~
- 著者:
- 吉川 弥,出口朋枝,荒木圭一,平瀬辰朗((株)KRI)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.10,pp.461-471(2024)
昆虫の翅表面にはナノサイズの微細突起構造があり,この構造により菌や真菌に物理的なダメージを与える事で抗微生物機能を発揮するという概念がある。株式会社KRIではこの概念を簡易なプロセスで人工的に再現する技術を開発した。この技術で形成した機能表面は,薬剤による化学反応や熱,光等のエネルギーを用いずに長期的な抗菌/防カビ/抗ウイルス効果を発揮する事ができる。本稿では,昆虫の翅の抗微生物機能と翅の微細構造デザインとの関係,その結果から導かれた抗微生物性能を発揮するための微細構造のデザイン要項,そしてその要項に基づき形成したナノ構造の抗微生物活性について議論した。更に本技術の今後の展望として,任意の微生物を選択的に不活化する技術構築の可能性に触れ,技術実現に有用なツールとなり得るマイクロリアクターを用いたフロー合成方についてご紹介する。
Key words:Antimicrobial activity(抗微生物活性)/Antiviral(抗ウイルス)/Biomimetics(生体模倣)/Nano structure(ナノ構造)/Micro reactor(マイクロリアクター).
会報 …472 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.10 (2024)
Vol.52, No.11 (2024)
【 目次 】
各種払拭用具によるフローリングの真菌除去効果試験
- 表題:
- 各種払拭用具によるフローリングの真菌除去効果試験(原著論文)
- 著者:
- 遠藤利恵,御厨真幸,今西正博,荻野文敏((株)ダスキン),浜田信夫(大阪市立自然史博物館)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.11,pp.473-479(2024)
各種払拭用具を用いた清掃による真菌除去効果を検証するため,室温27℃,相対湿度90%で真菌汚染されたフローリング床を調製して,モデル実験を実施した。払拭用具別の除菌効果を比較すると,床の平坦面より汚染の著しい溝については,菌体を直接かきとれるモップの方が不織布より除菌効果が高かった。モップで週2回以上払拭すると,菌体を除去するだけでなく,胞子の形成を抑制する効果があることがわかった。
Key words:Fungal contamination(真菌汚染)/Wipe cleaning(拭き掃除)/Flooring(フローリング)/Mop(モップ).
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [5]糸状菌の生産する二次代謝物とその利用
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [5]糸状菌の生産する二次代謝物とその利用
- 著者:
- 加藤直樹(摂南大学 農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.11,pp.481-487(2024)
糸状菌(カビ)は,キノコや酵母などともに真核微生物である真菌に分類され,日本酒や味噌,醤油など我が国の伝統的な発酵食品製造に欠かせない麹菌(コウジカビ)に代表されるように,私たちの生活に不可欠な有用微生物である。優れた物質生産能と同様に重要な糸状菌の特徴として,よく発達した二次代謝が挙げられる。二次代謝物は生物種に特異的であり,糸状菌は,複雑な化学構造と多様な生物活性を示す二次代謝物を産生する。化学的多様性を産み出す生合成基盤を概説するともに,抗生物質ペニシリン,免疫抑制剤シクロスポリン,高脂血症治療薬スタチンなど医薬品,農薬として利用されているものや,アフラトキシンなどカビ毒として農作物を汚染し,私たちの健康被害を及ぼすものについて紹介する。
Key words:Filamentous fungi(糸状菌)/Secondary metabolite(二次代謝物)/Drug discovery(創薬)/Mycotoxin(カビ毒)/Natural product biosynthesis(天然物生合成).
食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [8]芽胞形成細菌制御から微生物安全保証へのステップアップへ
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [8]芽胞形成細菌制御から微生物安全保証へのステップアップへ
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.11,pp.489-496(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [6]ナノスパイクを用いた微生物制御
- 表題:
- ナノ・マイクロ構造による新しい抗微生物技術 [6]ナノスパイクを用いた微生物制御
- 著者:
- 伊藤 健(関西大学システム理工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.11,pp.497-502(2024)
生物は環境の変化に適するように進化を遂げてきた。生物の体表には,その生物独特の微細な表面構造を持つ。ナノレベルの凹凸は,1つの構造でいくつもの機能を発現するため,それにインスパイアされた新しい材料が誕生する可能性を秘めている。本稿では,その機能の一つである抗微生物性について取り上げる。抗微生物性の中には,抗ウイルス性,抗菌性,殺菌性,抗バイオフィルム性などが挙げられる。私達は規則的な配列を持つナノ構造体を「ナノスパイク(NanoSpike)」と命名し,その抗微生物作用について研究を行っている。本稿ではこれまでに得られた結果について紹介する。
Key words:ナノ構造体/抗ウイルス性/抗菌性/殺菌.
JMoC和文ダイジェスト
- ・エタンブトールは抗酸菌の発育を抑制し,環境水からのレジオネラ検出精度を向上させる …井上 浩章 他…503
- ・定量リアルタイムPCR法を用いたBacillus subtilis芽胞細胞DNAの局在性と抽出効率について …中野 みよ…505
日本防菌防黴学会会則 …507 / 運営細則 …509
会報 …520 / カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.52,No.11 (2024)
Vol.52, No.12 (2024)
【 目次 】
誘電泳動法システムと定量PCRを組み合わせたレジオネラ属菌迅速検出法の浴槽水への適用検討
- 表題:
- 誘電泳動法システムと定量PCRを組み合わせたレジオネラ属菌迅速検出法の浴槽水への適用検討(短報)
- 著者:
- 宮内佑子,池内保菜美,高井政貴(三浦工業(株)),川嶋文人(愛媛大学大学院農学研究科),古畑勝則(麻布大学生命・環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.12,pp.521-525(2024)
著者らは,これまでに連続フロー式誘電泳動システム(Continuous-Flow Dielectrophoresis System:CFDS)と定量PCR法(以下,qPCR法)を組み合わせた手法(以下,本法)を用いたレジオネラ属菌(以下,レジオネラ)標準菌株(JCM7571)の生菌の定量性について検討した。本研究では,浴槽水等の実試料を用いて,培養法,qPCR法,および本法によるレジオネラ検出の比較を行い,実試料への適用の可否を検証した。その結果,実試料に対してCFDS処理を行うことによってqPCR法の感度および特異度が上昇することを確認した。このことにより,本法は浴槽水等のレジオネラ検出法として有効な手段であると考えられる。
Key words:Dielectrophoresis(誘電泳動)/Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Rapid detection method(迅速検出法)/Quantitative PCR(qPCR)/Bath water(浴槽水).
歯科医療分野における微生物制御 [9]抗菌性材料の歯科医療応用
- 表題:
- 歯科医療分野における微生物制御 [9]抗菌性材料の歯科医療応用
- 著者:
- 目代貴之(大阪大学,東北大学),野崎浩佑(東京科学大学(旧東京医科歯科大学))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.12,pp.527-534(2024)
抗菌材料とひとことでいっても,日常的に使用され製品となっている材料は様々ある。本講座では,抗菌という概念から,抗菌材料を視点として,近年の抗菌をキーワードとした文献数を示すことで,抗菌に関して世界の研究者の動向を調査する。さらに,材料の説明として,簡単に金属材料,無機材料,有機材料に関して示すとともに,特に歯科材料として使用されている材料を示すとともに,生体で使用される材料であるバイオマテリアルなども話題に盛り込みながらまとめる。これら材料の中でも,特に金属材料を視点とした金属材料が起こす腐食に関して細菌の視点から述べ,歯科領域ではインプラント材料を中心とした抗菌材料の研究を紹介するともに骨補填材に関しても述べる。さらに,材料の表面処理のアプローチによる抗菌性獲得に関する研究に関しても紹介する。最後には,材料の世界的動向も示しつつ,抗菌を取り巻く状況なども示し,抗菌材料の話題として締めくくる。
Key words:歯科材料/抗菌性付加/機能性材料.
食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [9]微生物安全保証によるこれからのリスクマネジメント
- 表題:
- 食品製造における微生物安全保証の考え方-特に芽胞形成細菌制御を中心に [9]微生物安全保証によるこれからのリスクマネジメント-F値応用の食品の微生物安全保証の導入と新しい芽胞菌評価方法や制御法-
- 著者:
- 中西弘一(ナノ・マイクロバイオ研究所・中西技術士事務所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.12,pp.535-541(2024)
芽胞形成細菌制御のための新しい微生物安全保証の考え方と実際を解説。最適殺菌条件設定や制御のためのF値を応用し定式化した。個々の増殖抑制要因(ハードル)のD値からF値を求める評価方法の実際を紹介する。これはF値の新たな役割に着眼し,生菌数の減少をD値に換算して求め,D値のトータルをF値として微生物的安全性を評価する手法である。非加熱食品はもとより,製品の特性上十分な加熱殺菌を行えない食品においても,F値の応用により科学的裏付けのある製品の芽胞形成細菌制御,商業的無菌の保証が可能となり,微生物に対する危害発生予想率107分の1の安全性の設定が可能となる。その具体的な進め方を9回に分け紹介する。
Key words:Spore firmed bacteria(芽胞形成細菌)/Control(制御)/Microorganism safe guarantee(微生物安全保証)/Food manufacture(食品製造).
「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [6]カビをもってカビを制す 〜真菌による植物病原菌の生物防除〜
- 表題:
- 「胞子」をつくる細菌と真菌の基礎講座 [6]カビをもってカビを制す 〜真菌による植物病原菌の生物防除〜
- 著者:
- 飯田祐一郎(摂南大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.12,pp.543-549(2024)
ヒトや動物が病気になるように,植物もまた病気による被害を受けている。私たちの食を支える農作物は,植物病原菌,特に真菌によって大きな損失を被っており,一見すると病気がない水田や畑でも,病害虫を防除するための化学農薬なしでは,ほとんど収穫することができない。しかしながら,化学農薬を主体とする従来の防除法は,環境への影響や耐性菌の発生が問題となっており,持続可能な農業生産システムでは生物農薬の利用が期待されている。天敵昆虫や微生物を用いた生物農薬は,化学農薬とくらべて環境への影響が少ないとされる一方,防除効果が病害の発生程度や環境要因に影響を受けやすく不安定であることが知られている。また,安定的な防除効果を得るために必須な作用機作が未解明である場合も多い。そこで,本稿では真菌を用いた「カビを食べるカビ」,「害虫を食べるカビ」,「カビ同士の養分競合」という三者三様の生物防除メカニズムについて紹介する。これらの真菌は単純に病原菌を抑制しているだけではなく,植物との複雑な相互作用を通じて,それぞれ全く異なる作用機作を示す。
Key words:Biocontrol(生物防除)/Biopesticide(生物農薬)/Phytopathogenic fungi(植物病原菌)/Mycoparasitic fungi(菌寄生菌)/Entomopathogenic fungi(昆虫寄生菌).
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [11]ヒト皮膚常在菌のin vitro評価研究
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [11]ヒト皮膚常在菌のin vitro評価研究
- 著者:
- 本山ユミ((株)豊田中央研究所),曽我直樹(トヨタ自動車(株)),池内暁紀((株)豊田中央研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.52,No.12,pp.551-556(2024)
皮膚には多種多様な微生物が共生し,互いのバランスを維持しながら安定した皮膚常在菌叢を形成している。皮膚常在菌叢は,皮膚組織と相互作用しながら皮膚のバリア機能をサポートするとともに,免疫応答の調節にも関与するなど,皮膚の健康を支える重要な役割を担っている。そのため,皮膚常在菌叢の共生バランスの乱れは,皮膚トラブルを引き起こす要因となる。例えば,アトピー性皮膚炎では,S. aureusの異常増殖による共生バランスの崩壊が指摘されている。そこで我々は,3D表皮モデル上にS. aureus(病原菌)とS. epidermidis(常在菌)を適度な割合で播種し共生状態を形成させることで,病原菌-常在菌-皮膚の相互作用を反映したin vitro評価モデルを構築した。本稿では,この「3D表皮共生モデル」の内容について紹介させて頂くとともに,本モデルの活用例として,共生バランスを調整する植物成分を探索した結果についても報告する。
Key words:Skin microbiome(皮膚常在細菌叢)/Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)/Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)/3D human skin model(3次元培養皮膚モデル)/Natural plant extracts(天然植物抽出物).
会報〔第49回評議員会議事録・第52回通常総会議事録〕 …560
会報 …568 / カレンダー …和文目次裏
