Vol.51, No.1 (2023)
【 目次 】
室内塵中の皮膚糸状菌や好ケラチンカビと水虫症状
- 表題:
- 室内塵中の皮膚糸状菌や好ケラチンカビと水虫症状(原著論文)
- 著者:
- 浜田信夫(大阪市立自然史博物館),御厨真幸,永目知広((株)ダスキン・開発研究所),馬場 孝,阿部仁一郎((地独)大阪健康安全基盤研究所・天王寺センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.3-12(2023)
一般住宅の室内塵中のカビ汚染について,夏と冬に好乾性カビや一般カビが検出できるDG18培地と,皮膚糸状菌を含む好ケラチンカビが検出できるマイコセル(MYC)培地を用いて調査した。MYC培地で検出されたカビ数は,DG18培地でのカビ数の約1/10で,皮膚糸状菌以外に6属の好ケラチンカビが検出され,とりわけ,ChrysosporiumとScopulariopsisが多かった。好ケラチンカビは日和見皮膚感染症の原因菌と考えられる。室内塵のカビの季節変化を見ると,一般カビとは反対に,皮膚糸状菌や好ケラチンカビは,冬に増加する傾向があった。水虫の患者宅では,非患者宅に比較して,皮膚糸状菌が有意に多く検出されたが,患者宅の室内塵の約22%で検出されただけだった。理由として,床に脱落した皮膚糸状菌の優占種の1つのTrichophyton rubrumは乾燥で死滅しやすいためと思われる。水虫患者が通院することは少ないが,治療すると,室内塵からの皮膚糸状菌の検出率が,未治療の場合の約1/4に減少することもわかった。
Key words:Dermatophytes(皮膚糸状菌)/Fungal contamination(カビ汚染)/House dust(室内塵)/Keratinophilic fungi(好ケラチンカビ)/Ringworm(水虫症状).
各種ウイルスに対するアルコール系手指消毒剤の有効性評価
- 表題:
- 各種ウイルスに対するアルコール系手指消毒剤の有効性評価(短報)
- 著者:
- 髙見貴之,隈下祐一,松村玲子,平田善彦(サラヤ(株) バイオケミカル研究所),西田真実,小野拓人,藤本章裕,原田 裕(サラヤ(株) サラヤ微生物研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.13-16(2023)
COVID-19の感染予防策には,手指衛生が推奨されており,特に消毒手技が簡便であり,且つ場所の制約が受けない等,利便性に優れることからアルコール系手指消毒剤の利用が浸透してきている。手指衛生は,COVID-19だけでなく,他の多くの感染症から身を守るための基本的かつ最も重要な対策の1つである。そこで,市販のアルコール系手指消毒剤を用いて,各種ウイルスに対する有効性を網羅的に評価した。その結果,評価に用いた市販েরアルコール系手指消毒剤は,幅広いウイルスに対して有効であることが確認された。以上のことから,私たちの身の回りに潜む感染症のリスクに対し,市販のアルコール系手指消毒剤は感染予防に非常に有効であると考えられる。
Key words:Alcohol-based hand disinfectants(アルコール系手指消毒剤)/Virucidal activity(ウイルス不活化効果)/DVV & RKI guideline(DVV & RKIガイドライン)/EN 14476(ヨーロッパ標準法14476).
日本防菌防黴学会賞受賞論文:次亜塩素酸ナトリウムの理論的研究ならびにその現場使用に関する研究
- 表題:
- 日本防菌防黴学会賞受賞論文:次亜塩素酸ナトリウムの理論的研究ならびにその現場使用に関する研究
- 著者:
- 福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.17-26(2023)
著者は,公的研究機関の食品関連部門の研究員として,微生物制御技術の研究開発に22年間従事した後,研究の場を大学に移した。その間,一貫して食品製造設備・機器の洗浄技術ならびに次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)の作用機序の解明に取り組んできた。特に,NaOCl水溶液の濃度調整や使用方法は現場担当者の経験と実績で決められており,必ずしも科学的根拠に基づくものではなかった。このNaOClに対する担当者の暗黙知を,誰もが有効かつ効率的に使用できる形式知に変換する必要性があった。著者らの研究グループは,洗浄技術の研究を先行して開始し,その後にNaOClの活性因子である次亜塩素酸(HOCl)の界面での作用機序に焦点を当てた研究を行った。そして,両者の研究はやがて「洗浄・殺菌技術」として融合化することになる。さらに,pHを調整したNaOCl水溶液による洗浄・殺菌の対象をモノから室内空間に広げることで,現場で実践可能な有人空間での微生物制御技術の研究へと発展させた。
Key words:Sodium hypochlorite(次亜塩素酸ナトリウム)/Cleaning and disinfection(洗浄・殺菌)/Control of microorganism(微生物制御)/Gaseous hypochlorous acid(気体状次亜塩素酸).
サルモネラ食中毒予防のための衛生管理と簡易迅速検査法
- 表題:
- サルモネラ食中毒予防のための衛生管理と簡易迅速検査法
- 著者:
- 小西典子(東京都健康安全研究センター 微生物部),甲斐明美(公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生研究所 微生物試験部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.27-32(2023)
わが国におけるサルモネラ食中毒は,1999年のピーク時には年間の事件数825件が報告されたが,多くの対策が功を奏し,2012年以降は年間40件以下で推移している。最近の食中毒の原因食品は,卵類よりも肉類,特に鶏肉や野菜類およびその加工品が多く,複雑化している。この傾向は米国でも同じである。また,海外では食肉に限らず,野菜や菓子などによる広域的サルモネラ食中毒も報告されている。食品を対象とした細菌学的試験法には,公定法のほかにも種々あり,インハウスの衛生管理では簡易・迅速試験法が使われることが多い。簡易迅速試験法の概略と,それぞれの長所・短所を紹介する。2021年6月から本格的実施となったHACCPに基づく,あるいはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の中には,検証があることを忘れてはならない。簡易迅速試験法は検証のための非常に有用なツールと考えられるが,その使い方を間違えない様にすることも重要である。
Key words:Salmonella(サルモネラ属菌)/Foodborne disease(食中毒)/Simple and rapid method(簡易迅速法).
環境衛生のバリデーション [5]医薬品製造工場における防虫対策とこれからの展望
- 表題:
- 環境衛生のバリデーション [5]医薬品製造工場における防虫対策とこれからの展望
- 著者:
- 谷川夏樹(アース環境サービス(株) 学術部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.33-39(2023)
医薬品を製造する施設において,防虫管理は昆虫のみではなく,微生物管理の面でも重要な役割を果たす。防虫管理の活動内容はさまざまであり,施設の構造や運用状況,製造している製品の特徴,組織体制などにより内容が異なる。効果的で効率的な防虫管理を行うためには,昆虫そのものだけに注目するのではなく,虫が侵入するリスクがある場所や状況,昆虫が発生するリスクがある場所や状況に注目し,それらを管理する必要がある。また,最近では,その活動による対策効果に加え,管理基準やモニタリングポイントを根拠に基づいて設定することなどが求められるようになっている。本稿では,医薬品製造工場における最近の防虫管理の考え方について,防虫リスクアセスメントやその結果に基づく防虫プログラムの作成,モニタリングポイント設定,管理基準設定の事例を交えて紹介する。
Key words:Pest management(防虫管理)/Pharmaceutical manufacturing facilities(医薬品の製造施設)/Risk assessment(リスクアセスメント)/Microbial contamination(微生物汚染)/Pest countermeasures(防虫対策).
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [4]医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その3)-日本薬局方ならびに収載殺菌消毒剤等を中心として-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [4]医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その3)-日本薬局方ならびに収載殺菌消毒剤等を中心として-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.1,pp.41-46(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その3)-日本薬局方ならびに収載殺菌消毒剤等を中心として-と題して,日本薬局方とは(成り立ちからの経緯)に始まり,2021年6月に公布された第18改正日本薬局方(以下,日局18)に収載されている殺菌消毒剤およびそれらの来歴について述べるとともに,日局18に収載されている抗生物質・抗菌剤,抗結核剤,サルファ剤,および抗真菌剤を取り上げ,関連事項を交えて微生物制御の立場で詳細に解説した。
Key words:Japanese Pharmacopeia(日本薬局方)/Disinfectant(殺菌消毒剤)/Antibiotic・Antibacterial agent(抗生物質・抗菌剤)/Antituberculosis agent(抗結核剤)/Sulfa drug(サルファ剤).
会報 …50
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.1 (2023)
(5) Pest Management and Future Prospects at Pharmaceutical Manufacturing Facilities
(4) Microbe Control of Pharmaceutical Products and in the Associated Field: (3) -Sterilization Disinfectants Listed Mainly in Japanese Pharmacopoeia-
Vol.51, No.2 (2023)
【 目次 】
分岐型脂肪酸によるケナガコナダニの防除効果と食品包装資材への固定化
- 表題:
- 分岐型脂肪酸によるケナガコナダニの防除効果と食品包装資材への固定化(原著論文)
- 著者:
- 野瀬美穂,松岡幸祐,森田 洋(北九州市立大学・国際環境工学部),中島 淳,森田洋司(日星産業(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.51-59(2023)
ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)は小麦粉やカツオ節などの貯蔵食品に繁殖する。そこで,貯蔵食品を守るための,ダニ防除剤の効果を付与したパッケージの開発が求められる。本研究では,ケナガコナダニに有効な薬剤として分岐型脂肪酸に着目し,その殺ダニ効果,忌避効果,及び薬剤効果の持続性について調査した。今回検討した6種の分岐型脂肪酸の中で,2-ブチルオクタン酸(iso-C12)が最も高いダニ防除効果を示した($LC_{50}$:32 mM, $EC_{50}$:15 mM)。iso-C12処理24週後までケナガコナダニの生存数及び死亡数はほとんど変化せず,高い殺ダニ効果を持続させた。iso-C12処理28~72週後では逃避数が半数を超え,高い忌避効果を持続させた。さらに,iso-C12接触後のケナガコナダニの挙動を観察したところ,接触3時間後にほとんどの個体がImmobilized型の挙動を示した。また,iso-C12含浸不織布(レーヨン100%,60 g/$m^2$)は,iso-C12を他の素材に固定した際よりも高いダニ防除効果を示した。このことから,iso-C12含浸不織布が食品用パッケージの素材として最も適していると考えられた。
Key words:Tyrophagus putrescentiae(ケナガコナダニ)/Mite control effect(ダニ防除効果)/Branched chain fatty acid(分岐型脂肪酸).
抗菌加工による靴下の不快臭原因菌Staphylococcus epidermidis及び原因物質diacetylの抑制効果
- 表題:
- 抗菌加工による靴下の不快臭原因菌Staphylococcus epidermidis及び原因物質diacetylの抑制効果(原著論文)
- 著者:
- 濱田昌子,五味満裕(小林製薬(株)・中央研究所・基盤研究部),唐澤慧記(小林製薬(株)・日用品事業部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.61-66(2023)
本研究では,抗菌加工による靴下の不快臭原因菌及び原因物質に対する抑制効果を明らかにすること目的とし,抗菌加工繊維を用いた靴下使用モニターを実施した。モニターから回収した全ての抗菌加工繊維において,不快臭の一因であるStaphylococcus epidermidisの生菌数,原因物質の一つであるdiacetyl量が低減することが明らかになった。本検討により,抗菌加工により靴下の不快臭原因菌の増殖抑制を介して原因物質発生が抑制される可能性が見出された。
Key words:Malodor(不快臭)/Socks(靴下)/Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)/Diacetyl(ジアセチル)/Antibacterial processed fiber(抗菌加工繊維).
風呂水の衛生状態を推察するための疎水格子フィルタの活用事例
- 表題:
- 風呂水の衛生状態を推察するための疎水格子フィルタの活用事例
- 著者:
- 伊与 亨(北里大学医療衛生学部保健衛生学科),朝倉敬子(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野),大前和幸(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.67-70(2023)
疎水格子フィルタ(HGMF)を用いて,生菌数(TVC)や従属栄養細菌(HPC)の衛生学的指標を求める事例を紹介した。水試料として入浴後の風呂水を測定した場合,AOACや上水試験方法に準拠した標準法の幾何平均は,TVC 250CFU/mL,HPC 2,400CFU/mLであった。一方,HGMFを用いる手法(HGMF法)の幾何平均はTVC 1,200MPN/mL,HPC 1,700MPN/mLであった。HGMF法はHPC測定において標準法と非常に強い相関関係(決定係数0.917)を示したが,TVC測定におけるHGMF法と標準法の決定係数は0.701であった。
Key words:Hydrophobic Grid Membrane Filter(疎水格子フィルタ)/Total Viable Count(生菌数)/Heterotrophic Plate Count(従属栄養細菌数)/Bathwater(風呂水).
オゾン水によるSARS-CoV-2不活化のCT値による評価とその不活化機構の新展開
- 表題:
- オゾン水によるSARS-CoV-2不活化のCT値による評価とその不活化機構の新展開
- 著者:
- 中室克彦(摂南大学名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.71-79(2023)
オゾン水によるSARS-CoV-2不活化作用をより定量的なCT値で評価するためにウイルス懸濁液を遠心分離,透析,限外ろ過で精製し,増殖培地成分をターンオーバーさせないだけではなく,ウイルス懸濁液/オゾン水(1/$10^{2-3}$)の容量比を最小化した不活化試験と同じ条件下で得られた溶存オゾンの減衰曲線により補正した時間加重平均$C'T$値を得るべきである。また,SARS-CoV-2とインフルエンザA型ウイルスの感染機序に着目し,不活化作用におけるオゾンの標的分子の重要性に関して考察を加えた結果以下の結論を得た。従来から知られたオゾン水によるウイルスの不活化には,オゾンと反応性の高いアミノ酸や脂肪酸などのオゾン酸化による構造的破壊が寄与することが考えられた。さらに,SARS-CoV-2およびインフルエンザA型ウイルスのスパイクタンパク質に存在するチロシン,グリシン,スレオニン,セリンなどへのオゾンの酸化的攻撃がこれらウイルスの感染阻害および不活化に寄与する可能性を示した。
Key words:Ozonated water(オゾン水)/SARS-CoV-2(コロナウイルス)/Inactivation(不活化)/CT value(CT値)/Target site(標的部位)/Biomolecules(生体構成分子).
環境衛生のバリデーション [6]食品製造工場における異物混入対策とこれからの展望
- 表題:
- 環境衛生のバリデーション [6]食品製造工場における異物混入対策とこれからの展望
- 著者:
- 新居由莉(イカリ消毒(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.81-86(2023)
私たちが普段口にしている食品は,衛生的で安全安心に食べられることが当たり前となっています。さらに,2021年6月以降HACCPの考え方を取り入れた(もしくは基づいた)衛生管理が食品事業者様の責務となり,更なる安全管理が求められるようになりました。一方でSNSの普及により,情報はより広く,そして速く拡散するようになり,食中毒やケガにつながらない「異物(=HACCPで管理されないハザード)」であっても,企業ブランドに重要なダメージを与えるようになりました。多額の損害賠償や製品回収等を余儀なくされ,場合によっては廃業に追い込まれることもあります。今回は,年間25,000件以上の混入異物検査を行っているイカリ消毒(株)の検査状況から,食品事業者様が特に注意しなければならない3つの異物について,対策を交えながらご紹介させていただきます。
Key words:Foreign object(異物)/Inspection(調査)/Measures(対策)/Food Safety(食品安全)/Pest Control Operation(有害生物防除).
環境衛生のバリデーション [7]微生物試験法バリデーションの国際動向と今後の展望
- 表題:
- 環境衛生のバリデーション [7]微生物試験法バリデーションの国際動向と今後の展望
- 著者:
- 松岡英明(東京農工大学(名誉教授)),斉藤美佳子(東京農工大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.87-94(2023)
食品中の微生物試験法に関する国際規格では,ISO 16140シリーズが中心である。15種類の食品カテゴリーに加えて,その他のカテゴリーとして,ペットフード,環境試料,一次生産試料を加えた,計18種類のマトリクス中の微生物を検出あるいは定量するための試験法が対象である。我が国では厚労省の科学研究によって国際的に通用する一連の標準法(NIHSJ法)の開発を進められているが,参照しているのがISO法である。バリデーション(妥当性確認)に関しては,ISO 16140が手本となってきたが,近年,内容が広範になり,Part 1~Part 6まで分冊化して出版されている。因みに。Part 1は用語,Part 2は元々の規格でバリデーション,Part 3はベリフィケーション(検証),等となっている。現在,中心規格のPart 2の修正(Amendment,CD段階の文書化を目指している)の議論がISO TC34/SC9のワーキンググループWG3(バリデーション),WG2(統計学)を中心に盛んに行われている。WG2のエキスパートとして参加しながら得られる情報を基に国際動向と展望について概説する。
Key words:NIHSJ standard methods(NIHSJ標準法)/バリデーション(妥当性確認)/ベリフィケーション(検証)/ISO 16140 series(ISO 16140シリーズ)/Global harmonization(国際調和)/Statistical evaluation(統計学的評価).
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [5]医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その4)-各種抗菌剤関係全般について-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [5]医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その4)-各種抗菌剤関係全般について-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.2,pp.95-101(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,「医薬品等ならびに関連分野における微生物制御(その4)-各種抗菌剤関係全般について-」と題して,消毒・滅菌・除菌,および抗菌等の定義,抗菌加工製品等の市場動向,各種抗菌剤(無機系,天然系,有機系,その他),主な抗菌加工繊維製品ならびに抗ウイルス加工製品について解説した。また,各種抗菌剤等の抗菌・抗ウイルスメカニズム,抗菌・抗ウイルス加工に対する見解としての微生物制御の意義,常在菌,日和見菌,および善玉菌の役割,ならびにMRSA対応繊維についても合わせ解説した。
Key words:Disinfection(消毒)/Antimicrobial(抗菌)/Antimicrobial agent(抗菌剤)/Antimicrobial processed product(抗菌加工製品)/Antimicrobial mechanism(抗菌メカニズム).
会報 …106
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.2 (2023)
(6) Countermeasure of Preventing Foreign Matter in the Food Manufacturing Facility and Prospects for the Future
(7) Global Trends and Future Prospects in Validation of Microbial Test Methods
(5) Microbe Control of Pharmaceutical Products and in the Associated Field (4): Overall of Various Types of Antibiotics Sterilizing Disinfectant
Vol.51, No.3 (2023)
【 目次 】
銀イオンを含む金属イオン液のヒドロキシルラジカル発生能と抗菌活性・ウイルス不活化活性の評価方法に関する研究
- 表題:
- 銀イオンを含む金属イオン液のヒドロキシルラジカル発生能と抗菌活性・ウイルス不活化活性の評価方法に関する研究(原著論文)
- 著者:
- 松山絵理奈,秀城 剛(アイティーエヌ(株)),韓 連煕(東北学院大学工学部),遠藤銀朗(東北学院大学工学総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.3,pp.107-116(2023)
本研究では,銀イオンを含む金属イオン液によるヒドロキシルラジカル発生を電子スピン共鳴法により分析した。ヒドロキシルラジカルの発生に広く用いられている二酸化チタンナノ粒子と比較して,同一濃度の銀イオンはより高いヒドロキシルラジカル発生活性を示した。また,銀イオンと二酸化チタンナノ粒子および亜鉛イオンを特定の濃度比で配合した混合金属イオン液を用いて抗菌試験をした結果,細菌希釈や培地調製に0.02%の低濃度食塩水を用いた場合に,大腸菌と枯草菌に対する高い抗菌活性を示した。ウイルスの不活化試験においても,細胞維持培地を脱塩処理した後にこの混合金属イオン液を作用させた場合に,対数減少値がほぼ3.0の高い不活化率を示した。したがって,銀イオンを含む金属イオン液の抗菌効果等の評価では,作用液中の銀イオンが安定して存在できる条件を考慮した方法の採用が必要と考えられた。
Key words:Silver ion(銀イオン)/Hydroxyl radical generation activity(ヒドロキシルラジカル発生活性)/Three metal solution(3種混合金属イオン液)/Antibacterial activity(抗菌活性)/Viral inactivation activity(ウイルス不活化活性).
カンピロバクター・ジェジュニの調理段階における三次汚染率と除菌・殺菌効果の解明
- 表題:
- カンピロバクター・ジェジュニの調理段階における三次汚染率と除菌・殺菌効果の解明(原著論文)
- 著者:
- 伊藤 智(神戸学院大学・栄養学部),岸本 満(名古屋学芸大学・管理栄養学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.3,pp.117-126(2023)
カンピロバクター食中毒予防対策を講じるため,調理段階の汚染実態を定量する必要がある。そこで低菌量を定量的に測定できるDirect-qPCR法を用いて,モデル実験後の生残数を測定し,三次汚染や除菌・殺菌効果を数値化することを目的とした。三次汚染調理モデル実験の結果,三次汚染率はまな板で3.07~5.38%で最も高かった。ほうれんそうでは,茹での方が生より汚染率が高かった。汚染発生率はまな板が最も高かった。除菌・殺菌モデル実験の結果,菌液を吸い取り,殺菌剤噴霧後に拭き取ることで,トレーの生残数が検出されなくなった。しかし全てのふきんで C. jejuni の生残が確認され,調理時の取り扱いに注意が必要であることが分かった。殺菌剤について,酸性電解水のほうがアルコールより生残数が少なくなった。またDirect-qPCR法は食中毒の原因食品調査などリスクアセスメントに有効だった。
Key words:Campylobacter jejuni(カンピロバクター ジェジュニ)/Direct-quantitative PCR(ダイレクト定量PCR)/Tertiary contamination rate(三次汚染率)/Disinfection(殺菌)/Risk assessment(リスクアセスメント).
マイクロプラズマ放電装置のインフルエンザウイルスに対する不活化に関する検討
- 表題:
- マイクロプラズマ放電装置のインフルエンザウイルスに対する不活化に関する検討(短報)
- 著者:
- 小林寅喆,勝瀬明子,金坂伊須萌,榎本美郷(東邦大学看護学部感染制御学),松尾淳司,山﨑智拡(北海道医療大学医療技術学部),安藤 仁,米山啓子,小澤功治((株)カルモア 技術部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.3,pp.127-130(2023)
プラズマ放電による空気中イオンが細菌やウイルスを殺滅することが報告され,市販の家庭用電気製品にも広く利用されている。しかし,これらの殺微生物効果は,限られた密閉空間での評価が多く,また,その主な作用はオゾンによるものと指摘されている。今回我々は,マイクロプラズマ放電装置を用い空気が流通する開放系でのインフルエンザウイルスの不活化効果について検討した。その結果,滅菌ガーゼに接種した試験ウイルスの感染価($TCID_{50}$/mL)の減少率は処理なしの対照に比べ1時間後93.2%,2時間後は99.3%と感染力価の低減効果が見られた。今回検討に用いたマイクロプラズマ放電装置は医療現場やその他環境からの接触感染経路による感染対策に応用が可能であると考えられた。
Key words:Plasma discharge(プラズマ放電)/Influenza A virus H1N1(インフルエンザウイルス)/Inactivating effect(不活化効果).
消毒・除菌剤の基礎知識および除菌評価試験
- 表題:
- 消毒・除菌剤の基礎知識および除菌評価試験
- 著者:
- 鈴木利彦,横山明浩,矢作一朗(ピジョンホームプロダクツ(株) 事業推進G)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.3,pp.131-134(2023)
現在 消毒・除菌剤の開発依頼が多々あります。背景として,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2(COVID-19))の世界的流行や台風や異常気象により水害があり菌が発生しやすい環境変化などが生じ公衆衛生対策は重要になっているため開発依頼が多く生じていると考えています。またエタノールを含む商品は消毒効果が高いですが管理上の問題や肌荒れ等様々な不具合を生じていると伺っています。依頼が多くあり消毒関係の市場は活発化されていますが,誤った効果効能訴求により回収事例があることも生じています。今回最近の消毒・除菌剤の基礎について情報をまとめ,除菌評価試験について調査をしました。本情報を一般開示し正しい製品開発や製品購入知識向上を促し産業の発展を促進することを目的としています。
Key words:Disinfectants and sanitizers(消毒剤・除菌剤)/Microbial classification(微生物分類)/Japanese quasi-drugs, cosmetics, miscellaneous goods(医薬部外品・化粧品・雑貨)/Preservative(防腐剤)/Sterilization evaluation test(除菌試験).
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [6]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その1) -食中毒関係全般について-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [6]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その1)-食中毒関係全般について-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.3,pp.135-142(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,「食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その1)-食中毒関係全般について-」と題して,食中毒とは,食中毒事件数および患者数の推移,従来からの食中毒の発生経緯と発生傾向,微生物等および細菌による食中毒,過去6年間の微生物および細菌による食中毒事件数等の発生経緯,ノロウイルスおよび寄生虫による食中毒,誤食しやすい有毒植物,キノコに対する注意事項,および食中毒に対する注意事項ならびに対策等について,微生物制御の立場を踏まえて解説する。
Key words:Food poisoning(食中毒)/Number of the cases on food poisoning(食中毒事件数)/Number of the patients on food poisoning(食中毒患者数の推移)/Norovirus and parasite(ノロウイルスおよび寄生虫)/Precaution and countermeasure against food poisoning(食中毒に対する注意事項ならびに対策).
会報 …146
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.3 (2023)
[6] Microbe Control of Overall Food and Related Field:(1) About the whole of Food Poisoning Relations
Vol.51, No.4 (2023)
【 目次 】
拭き取り洗浄によるステンレス鋼表面からの植物油の除去における動摩擦力と界面活性剤の役割
- 表題:
- 拭き取り洗浄によるステンレス鋼表面からの植物油の除去における動摩擦力と界面活性剤の役割(原著論文)
- 著者:
- 渡邉大貴,辻本 彩,福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科),林 沙英,落合 徹,新井田康朗(クラレクラフレックス(株)),髙橋和宏(岡山県工業技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.147-153(2023)
本研究では,レーヨン不織布を用いた拭き取り洗浄によるステンレス鋼平板上の植物油(以下,油と略記)の除去について,異なる荷重下で吸水量の関数として検討した。不織布への純水の吸水量と荷重を高めると,動摩擦力($F_k$)は増加し,拭き取り洗浄後の油の除去率は減少した。残存率は,ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を用いて油と水の界面張力($\gamma_{ow}$)を低下させることで著しく減少した。不織布による油の保持力は,SLS水溶液の吸水量の増加によって改善された。種々の拭き取り条件下において,拭き取り終点の平板(D)の油の残存量は,油塗布平板(C)の残存量よりも多く,全残存量(平板C+D)に対する平板Dの残存量の割合は70~78%の範囲にあった。不織布内に拭き取られた油は,拭き取り動作の方向に対して不織布の前方部に存在していた。0.3% SLS吸水不織布で横方向に拭き取り洗浄した後の平板Dの残存油は,2回目の垂直方向の乾拭きによって,隣の平板への油の移動を伴うことなく効率的に除去された。以上の結果は,$F_k$とSLSの界面活性の相乗作用がステンレス鋼平板からの油の除去と不織布内での安定保持に重要な役割を果たしたことを示すものである。
Key words:Wipe cleaning(拭き取り洗浄)/Nonwoven fabric(不織布)/Vegetable oil(植物油)/Kinetic friction force(動摩擦力)/Surfactant(界面活性剤).
体臭の原因とされる皮膚常在菌に対する分岐型脂肪酸塩の除菌活性
- 表題:
- 体臭の原因とされる皮膚常在菌に対する分岐型脂肪酸塩の除菌活性(原著論文)
- 著者:
- 飛田幸祐,林 琴美,森田 洋(北九州市立大学大学院・国際環境工学研究科),澤口 朗(宮崎大学・医学部),好田年成(日産化学(株)),中島 淳,森田洋司(日星産業(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.155-164(2023)
悪臭の原因菌とされるMoraxella osloensisなどの皮膚常在菌の増殖を抑制できる新規薬剤の探索を目的として,分岐型の脂肪酸カリウム塩に着目し,細菌への除菌活性を評価した。効果の高かったものは細菌汚染布を用いた除菌活性の測定試験を用いて洗濯洗剤への応用可能性について評価を行った。炭素数16の2-ヘキシルデカン酸カリウム(isoC16K)が最も高い除菌効果を示した。TEM観察によって,この薬剤の作用は主に細胞表面への直接的な作用機序で有することが示唆された。更に汚染布を用いた除菌活性測定試験を行ったところ,0.4(wt/v)%で使用することで布に付着した皮膚常在菌の生菌数を約6 log減少させることが明らかとなり,isoC16Kは新たな除菌液体洗濯洗剤の開発に貢献できると期待される。
Key words:Antibacterial activity(除菌活性)/Branched fatty acid salts(分岐型脂肪酸塩)/Anionic surfactants(陰イオン性界面活性剤)/Indigenous skin bacteria(皮膚常在菌)/Moraxella osloensis.
ガス置換包装による生鮮魚介類の保存性向上効果
- 表題:
- ガス置換包装による生鮮魚介類の保存性向上効果
- 著者:
- 佐藤 順(東洋大学食環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.165-171(2023)
本稿ではまずガス置換包装(MAP)の概要について紹介し,MAPの適用により細菌の増殖曲線を変形させることが可能であり,その結果,食品の保存性を向上しうることを述べた。また,生鮮食品,加工食品へMAPを適用した試験結果を紹介し,低温保蔵との併用により,その効果を発揮することを示した。次に,著者の最近の検討事例として,生鮮魚介類の保存性向上に及ぼす効果について紹介した。メバチマグロ(赤身),アトランティックサーモン,ブリおよび赤エビでは保存性向上にMAPが有効であることが認められ,それぞれ最適のMAP条件があることを示した。また,赤エビにおいては,優良誤認防止の観点から,生菌数や臭気における劣化の程度を考慮する必要がある。一方で,バナメイエビおよびブラックタイガーは初発菌数が高く,色調や臭気劣化抑制には多少の効果が認められたものの,細菌学的な抑制効果は認められなかった。
Key words:Expiration dates(消費期限)/Fresh seafoods(生鮮魚介類)/Modified atmosphere packaging(ガス置換包装)/Food loss reduction(食品ロス削減)/Growth curve(増増曲線).
ATPふき取り検査の効果的な衛生管理への活用と新規なATP+ADP+AMP(A3)法への進化
- 表題:
- ATPふき取り検査の効果的な衛生管理への活用と新規なATP+ADP+AMP(A3)法への進化
- 著者:
- 志賀一樹,場家幹雄(キッコーマンバイオケミファ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.173-181(2023)
ATPを指標として衛生状態をモニタリングする迅速検査は,製造設備の洗浄確認など食品業界で幅広く使用されている。ATP検査はその場で,簡単に約10秒程度で定量的に清浄度を確認することができるが,実際にATP検査を現場で実践的に活用するためには,正確な知識や,検証に基づいた基準値の設定,市販されているATP検査キットのそれぞれの特性の違いなどを把握する必要がある。本稿では,ATP検査の実践的な応用例や,使い方の注意事項等を説明する。特に培養法に基づいた菌検査や抗体法を使用したアレルゲン検査との違いを明確にしながら,現場でハザード管理にATP検査を活用する方法について実例を示しながら解説する。また,食品産業以外での使用例についても紹介する。さらに,近年,ATPだけでなく,ADPとAMPも同時に測定するA3法が開発された。A3法の従来のATP検査に対する優位性,およびA3法を活用した衛生管理の実際を解説する。
Key words:ATP test/Hygiene monitoring/Hazard management/Food residue detection/Rapid detection/ATP+ADP+AMP.
食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [18]ハードルテクノロジーの概念と食品の長期保存
- 表題:
- 食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [18]ハードルテクノロジーの概念と食品の長期保存
- 著者:
- 濱中大介(鹿児島大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.183-187(2023)
食品の保存性向上や高度な安全性を確保するためには,様々な技術を適切に組み合わせる“ハードルテクノロジー”を円滑に機能させることが重要である。ほとんどの場合において,物理的あるいは化学的な技術を適切に併用し,低い投入エネルギーの組み合わせによって許容されるレベルの微生物学的な安全性を確保することを目的としたものである。食品の保存を検討する場合,一部のグラム陽性細菌が形成する芽胞は,ストレスに対して高い耐久性を示すため,非常に厄介な存在であるが,ハードルの適切な設定によって制御は可能となる。本講座では,代表的な非加熱処理の一つである静水圧(高圧)処理について,$100\text{ MPa}$以下の圧力レベルでの実施を目標として,いくつかの補助剤との併用による芽胞の弱体化処理と食品保存に対する効果について,これまでに筆者らが実験的に検証した内容について論述する。
Key words:Hurdle Technology(ハードルテクノロジー)/High hydrostatic pressure treatment(高圧処理)/Bacterial spores(細菌芽胞)/Shelf life extension(保存期間延長).
環境衛生のバリデーション [8]殺菌消毒薬の微生物に対する有効性試験法 -手指消毒薬-
- 表題:
- 環境衛生のバリデーション [8]殺菌消毒薬の微生物に対する有効性試験法 -手指消毒薬-
- 著者:
- 奥西淳二(丸石製薬(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.189-197(2023)
新型コロナウイルス感染症が発生して以降,殺菌消毒を目的とした医薬品等の製品や,除菌等を目的としたいわゆる雑貨品が汎用されているが,これらの感染対策に用いる製品は,開発時の基本的な性能確認,あるいは新興感染症や様々な感染症の発生時に消毒対象とする微生物への効果を調べる目的等,様々な機会で有効性の評価が行われる。本講座では,殺菌消毒薬のうち特に手指消毒薬で微生物に対する有効性を調べる際に,試験法の選択にあたっての基本的な考え方,実使用を想定した反応条件や負荷物質等の条件設定における留意点について述べると共に,国内外の試験法,特に欧米で標準化されているin vitro,およびin vivoの試験法を中心に概説を行う。
Key words:手指消毒薬/有効性/標準試験法.
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [7]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その2)-食品の腐敗と保存の歴史的経緯等をふまえて-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [7]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その2)-食品の腐敗と保存の歴史的経緯等をふまえて-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.4,pp.199-204(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,「食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その2)-食品の腐敗と保存の歴史的経緯等をふまえて-」と題して,保存の歴史,腐敗と発酵,低温殺菌法,火入れ,食品腐敗微生物・発酵微生物・食中毒菌の関係,各種食品中の腐敗微生物,制御対策,ならびにオゾンの食品腐敗分野等への適用について,微生物制御の立場を踏まえて解説した。
Key words:Spoilage(腐敗)/Food spoilage microorganisms(食品腐敗微生物)/Preservation(保存)/Historical background(歴史的経緯)/Ozone(オゾン).
海外文献抄録 …坂上 吉一…172
会報 …208
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.4 (2023)
(18)The Concept of Hurdle Technology and the Possibility of Long-term Storage for Processed Food by Multiple Combination of Microbicidal Techniques
(8) Effective Testing Method for Sterilizing Disinfectant -Finger Disinfectant-
[7] Microbe Control in Overall Food and in Associated Field (2): On the History of Corruption and Preservation of Food
Vol.51, No.5 (2023)
【 目次 】
2-ブチルオクタン酸含浸不織布袋による小麦粉へのケナガコナダニの侵入阻止
- 表題:
- 2-ブチルオクタン酸含浸不織布袋による小麦粉へのケナガコナダニの侵入阻止
- 著者:
- 野瀬美穂,森田 洋(北九州市立大学大学院国際環境工学研究科),中島 淳,森田洋司(日星産業(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.211-218(2023)
ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)は室内塵性ダニの一種であり,小麦粉などの広範囲の食品から発見されている。室内塵性ダニの防除法として知られているスプレー剤などは食品に直接使用できないため,ダニ防除効果を持つ食品保存用パッケージの開発を目指した。ダニ防除効果を持たせる薬剤として,先行研究で効果が認められた2-ブチルオクタン酸(iso-C12)に着目した。iso-C12は不織布に含浸させることでより高いダニ防除効果を発揮することが分かっているため,3種類の素材の異なる不織布を用いて忌避試験を行い,より適した素材を選定した。忌避試験の結果,レーヨン50%・ポリエステル50%の不織布で最もiso-C12のダニ防除効果が発揮されることが明らかとなった。そこで,同不織布を用いて侵入阻止試験を行ったところ,ダニの侵入を99.1%阻害した。さらに袋状に形成した不織布で簡易的な実証試験を行った結果,iso-C12処理不織布袋では相対忌避率が100%を示し,居住空間で実証試験を行った結果でも92.3%の相対忌避率を示した。また,ケナガコナダニの体色はiso-C12(0.77 v/v%)を処理することで褐変した。本研究では,iso-C12含浸不織布袋が食品の保存に有用であることが示唆された。
Key words:Tyrophagus putrescentiae(ケナガコナダニ)/Mite control effect(ダニ防除効果)/2-butyloctanoic acid(2-ブチルオクタン酸)/Wheat flour(小麦粉)/Nonwoven fabric(不織布).
DAMをカチオン性モノマーとした機能性ポリマーの抗カビ効果と化粧品防腐剤への応用
- 表題:
- DAMをカチオン性モノマーとした機能性ポリマーの抗カビ効果と化粧品防腐剤への応用
- 著者:
- 湯田彩乃,惠良真理子,森田 洋(北九州市立大学・国際環境工学部),仁科 彰((株)日本触媒)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.219-225(2023)
化粧品は栄養価が高く,常温で保存され長期間にわたり使用されることが多いことから,防腐剤が不可欠となる。本研究では,化粧品に汚染するAspergillus属およびFusarium属に対して,カチオン性モノマーとしてDAM(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)を用いた5種類の抗菌性ポリマーの抗真菌作用を検討した。その結果,A. brasiliensisに対しては,DAM/tert-アクリル酸ブチル(BA)が60/40の時に最も効果が高く,最小発育阻止濃度(MIC),最小殺カビ濃度(MFC)はいずれも0.63 wt%であった。また,同ポリマーを用いてA. nigerおよびF. oxysporumに対して菌糸体の成長阻害試験を行ったところ,両カビに対して十分な効果を示すことが明らかになった。また添加ポリマー濃度の増加に伴いエルゴステロール量の減少が認められたことから,作用機序はエルゴステロール生合成阻害による可能性も示唆された。更に添加ポリマー濃度の増加に伴い,分生子頭の直径が小さくなり,隔壁間の距離が長くなることも明らかとなった。保存効力試験を行った結果,本ポリマーはメチルパラベンと同等以上の効力を有し,メチルパラベンと併用することでさらにその効力が高まった。以上の結果より,DAM/tert-BA(60/40)は化粧品防腐剤としての応用可能性が期待できる。
Key words:Antifungal polymers(抗カビポリマー)/DAM(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)/Aspergillus brasiliensis(アスペルギルスブラシリエンシス)/Antifungal effect(抗カビ効果).
短時間接触における各種アミノ酸の塩素要求量
- 表題:
- 短時間接触における各種アミノ酸の塩素要求量(短報)
- 著者:
- 関 秀行,石川真美((株)ピュアソン),福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.227-231(2023)
21種類のL-アミノ酸を対象に,5分間の接触時間における塩素要求量を測定した。100 mg $Cl_2$/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて,5 mg/Lのアミノ酸水溶液(pH 8.0~8.5)を滴定した。塩素要求量は,1モルのアミノ酸あたりに消費された遊離塩素のモル数の比率(mol $Cl_2$/mol)で表した。塩素要求量は,0.52~2.71 mol/molの範囲にあった。塩素要求量が1.0 mol/molを超えるアミノ酸の中で,反応性の順番はシステイン>リシン>シスチン>アルギニン>グルタミン>アスパラギン>トリプトファン>グルタミン酸>アスパラギン酸であった。次亜塩素酸の消費の多くは,チオール基と$\alpha$-および$\varepsilon$-アミノ基で起こっていると考えられた。また,$\alpha$-アミノ基の塩素化で生成したN-クロラミン種の加水分解で再生した次亜塩素酸が,見かけ上塩素要求量を減少させていることも示唆された。
Key words:Chlorine demand(塩素要求量)/Amino acid(アミノ酸)/Sodium hypochlorite solution(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)/Chloramine(クロラミン)/短時間接触(Short contact time).
足湯における糸状菌汚染調査
- 表題:
- 足湯における糸状菌汚染調査
- 著者:
- 石﨑直人,古畑勝則(麻布大学生命・環境科学部),橋本一浩((株)エフシージー総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.233-236(2023)
足湯における糸状菌の汚染状況を知るために,2022年3月から11月にかけて,静岡,神奈川,群馬,栃木などの関東近郊の足湯施設で採水した浴槽水100件を対象に糸状菌の分離を試み,分離株の同定を行った。全体では84施設から採取した100試料中27試料(27.0%)から様々な糸状菌が分離された。これら29株は12属に同定された。このうち,Penicillium属とCladosporium属に多く,それぞれ9株(31.0%),8株(27.6%)が該当し,優占種であった。その内訳は,Penicillium属では,P. oxalicumが3株,P. chrysogenumが2株であった。また,Cladosporium属では,C. cladosporioidesが3株,C. halotoleransが2株,C. anthropophilumが1株であった。また,Aspergillus属では,A. restrictusとA. sydowiiが1株ずつ分離された。この他,Bjerkandera adustaが2株,Cystobasidium slooffiae, Exophiala dermatitidis, Meira nashicola, Neodevriesia lagerstroemiae, Parengyodontium album, Schizophyllum commune, Simplicillium sympodiophorumなどが各1株同定された。
Key words:Fungus(糸状菌)/Hot water of footbath(足湯)/Contamination(汚染).
食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [10]次亜塩素酸水の活用
- 表題:
- 食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [10]次亜塩素酸水の活用
- 著者:
- 加藤信一(サラヤ(株) バイオケミカル研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.237-239(2023)
次亜塩素酸水は次亜塩素酸($HClO$)を主成分とする塩素系製剤であり,食品製造現場においては主に次亜塩素酸ナトリウム($NaClO$)の代替として食材の殺菌などに利用されている。しかし,次亜塩素酸を含む水溶液であっても食品添加物に該当しない場合,単純に代替して使用するだけでは十分な殺菌効果が得られない場合もある。本稿では,次亜塩素酸水の特徴,種類および有効な使用方法について概説する。また,これまでに実際の現場で提案してきた活用例についても紹介する。
Key words:Hypochlorous acid water(次亜塩素酸水)/Food additive(食品添加物)/Food production site(食品製造現場)/Cleaning and sterilization process(洗浄殺菌プロセス)/Chloric acid(塩素酸).
食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [19]閉講にあたって
- 表題:
- 食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [19]閉講にあたって
- 著者:
- 谷口 暢(サラヤ(株)・丹後フーズ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.241-242(2023)
コロナ禍においても,消費者が求める「食の安全・安心」に対する関心は益々高まっている。厚生労働省はすべての食品製造業者に対してHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析重要管理点)制度を義務化(2021年6月1日)した。加えて,食品製造業者によっては,国際標準化機構(International Organization for Standardization)の品質マネジメントシステムISO9001や一般社団法人食品安全マネジメント協会(Japan Food Safety Management Association)のJFS規格などの自主的導入によって,食品の衛生・安全性や品質の管理,さらに,完全なトレーサビリティシステム(Traceability system)の構築を目指している。この機会に,HACCPとトレーサビリティについて概説する。
Key words:Food safety and security(食の安全・安心)/Food sanitation(食品衛生)/Quality management(品質管理)/HACCP(ハサップ)/Traceability(トレーサビリティ).
食品の微生物危害要因と対策 [1]はじめに~微生物管理の考え方に基づく食品危害の防止
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [1]はじめに~微生物管理の考え方に基づく食品危害の防止
- 著者:
- 宮島 誠((元)日油(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.243-255(2023)
食品とは人間が日常的に摂取する食物の総称とされ,その微生物危害とは,品質すなわち食品が持つ本来の価値が,置かれた環境,すなわち食品そのものを含めたその品質に影響が及ぶ範囲における,微生物の活動により生じた望ましくない状況,ひと言でいえば汚染により,低下させられた状態と考えられる。微生物による汚染の原因と対策を考えるにあたっては,『微生物と賢くつき合う』,そのためには,細菌やカビを,絶滅させるのではなく管理する,具体的には,微生物による害のない状態の製品や環境をつくることを目的として,汚染状況や改善のための処置が与える影響を定量的に解析し,結果に基づいて必要な制御を行なう,との考え方が必要である。それに基づき,この10年間に当学会より出された,食品危害とその防止に関連すると思われる論文や特集講座などの情報を,年ごとに列挙した。これらの情報と学会主催の講座やシンポジウム,さらに今後の最新情報とが相まって,より確実な汚染防止へと繋げられるよう祈念して,本講座開講の一文とするものである。
Key words:Food/Microbial harm/Environment/Sanitation/Microbial control.
食品の微生物危害要因と対策 [2]チルド食品(袋物惣菜)の微生物危害要因と対策
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [2]チルド食品(袋物惣菜)の微生物危害要因と対策
- 著者:
- 小林哲也((地独)北海道立総合研究機構食品加工研究センター,北海道大学大学院水産科学院)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.5,pp.257-265(2023)
袋物惣菜とは,樹脂製容器への密封と加熱殺菌,10℃以下での保存を組み合わせることで1ヶ月前後保存できる惣菜を指す。原則10℃以下で保存するチルド食品のうち,乳製品と食肉製品は食衛法によって製造基準や微生物規格が定められている。また,惣菜や麺類,漬物等は各々の衛生規範にそれらの指針が記載されていた。一方,袋物惣菜の製造基準や微生物規格は示されておらず,HACCPに基づく衛生管理を行うための管理基準の設定が難しい。10℃以下で増殖する細菌のうち,重篤な食中毒を引き起こすE型ボツリヌス菌の芽胞は,90℃で10分間の加熱で殺滅できる。セレウス菌芽胞はE型ボツリヌス菌芽胞よりも耐熱性が高く,保存中に発芽・増殖する可能性がある。いくつかのPaenibacillus属細菌も10℃以下で保存する加工食品の腐敗原因菌である。袋物惣菜の製造における管理基準の設定には,このような芽胞形成菌の性状や制御に関する知見が重要である。本稿では,10℃以下で増殖するBacillus属細菌やPaenibacillus属細菌の性状や制御について紹介する。
Key words:Refrigerated processed foods(冷蔵加工食品)/Psychrotrophic spore forming bacteria(耐冷性芽胞形成菌)/Bacillus spp.(バシルス属細菌)/Paenibacillus spp.(パエニバシルス属細菌).
-フッ素含有ナフトキノン類の抗菌作用-
会報 …278
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.5 (2023)
(10) Utilization of Hypochlorous Acid Water
(1) Preface 〜Prevention of Harms toward Foods Based on the Way of Microbial Control
Vol.51, No.6 (2023)
【 目次 】
創立50周年 記念特集号 ①
図書紹介 『HACCPを支える食品微生物の自主検査』 …坂上 吉一…286
図書紹介 『ウイルス学者の絶望』 …坂上 吉一…290
会報 …364
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.6 (2023)
50th Anniversary Commemorative Special Issue ①
Vol.51, No.7 (2023)
【 目次 】
創立50周年 記念特集号 ②
細菌の生態と特徴
- 表題:
- 細菌の生態と特徴
- 著者:
- 桑名利津子,高松宏治(摂南大学薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.369-387(2023)
細菌は肉眼で観察できないほど小さな単細胞生物である。アントニー・レーヴェンフックが自作の顕微鏡で微生物を観察したのが約350年前。そして,ロバート・コッホが1876年に炭疽菌を発見してからわずか150年で細菌学は大きな発展を遂げた。顕微鏡観察技術と培養技術を基盤として,生体分子分析技術,遺伝情報の解析技術,医療や食品生産などの産業への応用技術が創出された。特に近年のゲノム解析技術は,培養に依存することなく膨大な細菌種の存在を明らかにした。その結果,細菌界全体の系統分類の見直しにつながり,2021年に門レベルの再編が行われた。また,腸内細菌叢がヒトの健康と密接に関わることや,生態系における細菌の多様性も明らかにされつつある。本稿では,1.細菌の生態と発生系統,2.細菌の特徴と形態,3.細菌の培養と増殖,4.ヒトの健康や環境と関わる細菌,5.細菌に関する最新のトピックスについて取り上げる。
Key words:Phylogenetic classification(系統分類)/Evolution(進化)/Cell morphology(細胞形態)/Microscopy(顕微鏡観察)/Metagenome(メタゲノム).
ウイルスの生態と特徴
- 表題:
- ウイルスの生態と特徴
- 著者:
- 野島康弘(一般財団法人北里環境科学センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.389-393(2023)
本稿では,それらウイルス感染症に関係するウイルスの構造と形態の特徴と生活環,ウイルスの分類やヒトに感染するウイルスの種類やトピックス等,ウイルスに関する基礎的な知識について記載したい。
Key words:Pathogenic viruses(病原ウイルス)/Viral infections(ウイルス感染症)/Utilization of viruses(ウイルスの利用).
真菌がヒトの生活に及ぼす健康影響
- 表題:
- 真菌がヒトの生活に及ぼす健康影響
- 著者:
- 渡辺麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所),豊留孝仁(帯広畜産大学,千葉大学真菌医学研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.395-404(2023)
屋外および屋内の空気中には様々な真菌胞子・菌体が存在しており,感染症やアレルギーを引き起こし,食品で腐敗やカビ毒汚染の原因となる。ヒトや動物へ真菌感染症を引き起こす真菌は,土壌や大気中,水系などの環境中に普遍的に存在している。主な真菌症の原因菌としては,皮膚糸状菌,カンジダ,アスペルギルスが広く認識されている。また何らかの理由によって屋内での真菌濃度が高くなった場合に,居住者への吸入曝露量が多くなり,抗原感作が繰り返されることによって,アレルギーを発症することがある。食品を汚染し問題となる真菌には,食品の可食性を損なう腐敗真菌と,食品上での生育に伴い食品中にカビ毒を蓄積するカビ毒産生菌が挙げられる。気温や,食品の水分活性,pH,栄養条件等の影響から,真菌の食品における生育可能範囲は細菌よりも幅広い。これらの病原真菌および食品危害真菌について,具体的例を示しつつ,解説する。
Key words:Fungi(真菌)/Infection(感染)/Allergy(アレルギー)/Food spoilage(食品腐敗)/Mycotoxin(カビ毒).
近年の細菌性およびウイルス性食中毒の特徴と予防法
- 表題:
- 近年の細菌性およびウイルス性食中毒の特徴と予防法
- 著者:
- 横山佳子(京都女子大学家政学部食物栄養学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.405-416(2023)
食中毒は,主に食品を介して病原微生物や化学物質を経口的に摂取することにより,下痢や腹痛などを呈する健康被害である。近年,国の様々な衛生管理対策により,食中毒発生件数の減少傾向が見られるものの,依然として事件数,患者数が多い状況が続いている。本稿では,病因物質の中でも特に細菌とウイルスに焦点を当て,事件数,患者数,死者数が多い微生物による食中毒を取り上げる。具体的には,サルモネラ属菌,ぶどう球菌,腸炎ビブリオ,腸管出血性大腸菌(VT産生),その他の病原大腸菌,ウエルシュ菌,カンピロバクター・ジェジュニ/コリ,ノロウイルスを取り上げ,それぞれの食中毒の傾向を述べる。また最近の健康志向を踏まえた食生活と微生物性食中毒において気をつけるべき点を述べる。
Key words:Bacterial food poisoning(細菌性食中毒)/Viral food poisoning(ウイルス性食中毒)/Statistics of food poisoning(食中毒統計)/Dietary habits(食生活)/Health consciousness(健康志向).
抗菌剤の作用機序と最新情報
- 表題:
- 抗菌剤の作用機序と最新情報
- 著者:
- 冨岡敏一(関西大学 化学生命工学部 非常勤研究員)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.417-423(2023)
抗菌・抗ウイルス加工製品に使われている薬剤は,生活環境に清潔性をもたらす化学物質であるが,その作用機序を充分発揮できる用い方が重要である。製品の使用環境中での使われ方,製造過程での工程環境,効果を最大限に引き出す添加助剤などを考慮した最適薬剤を配合するべきと考える。さらに,目に見え難い抗菌性能が,量産製品のどの部分でも均質に効果の持続性を含めて発揮することで,消費者に満足してもらえる効果を発揮しなければならない。日常生活の清潔性を向上させる製品の企画にあたっては,例えば物理的除菌技術も視野に入れた,薬剤の安全性を第一に配慮し,消費者の信頼を裏切らない「抗菌抗ウイルス製品」を常に念頭に,製品企画を心掛けたい。
Key words:Antibacterial(抗菌)/Mechanisms of action(作用機作)/Guideline(ガイドライン)/Microbial control(微生物制御).
ウイルス感染症に対する治療薬の作用機序と最新情報
- 表題:
- ウイルス感染症に対する治療薬の作用機序と最新情報
- 著者:
- 佐々木正大(大阪大学微生物病研究所ウイルス感染制御分野),谷口 暢(サラヤ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.425-431(2023)
2019年12月に中国で初めて報告された新型コロナウイルスはパンデミックを引き起こし,2023年3月現在も流行が完全には収まっていない。一方で,この期間に世界中の研究者が最新の科学技術やウイルス学に関する知見を総動員し,ワクチンや治療薬が短期間で開発され,臨床現場で使用されるまでに至っている。このような短時間でのワクチンや治療薬の開発および臨床への応用は,これまでの歴史においても類を見ない速さであった。一方で,開発された薬剤は副作用や薬剤耐性ウイルスの出現などの問題もあり,引き続き改良した薬剤の開発が求められている。昨今,新型コロナウイルス感染症以外の新興・再興感染症の出現も危惧されており,今回の治療薬開発の経験を基に,単に新たな作用機序の抗ウイルス薬を開発するだけでなく,国際共同研究ネットワークの形成や国際共同治験のシステム構築などのグローバルな臨床開発環境の整備が必要不可欠である。
Key words:Antiviral drug(抗ウイルス治療薬)/COVID-19(新型コロナウイルス感染症)/Antibody pharmaceuticals(抗体医薬)/Emerging and reemerging infectious diseases(新興・再興感染症).
金属銅の抗菌・抗ウイルス性能と実用例
- 表題:
- 金属銅の抗菌・抗ウイルス性能と実用例
- 著者:
- 笹原武志(北里環境科学センター研究開発部・北里大学医学部),小澤 隆(一般社団法人日本銅センター広報部兼技術開発部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.433-445(2023)
遷移金属元素である銅及びその合金はさまざまな病原微生物に対して微量金属作用により活性酸素分子種を生成し抗菌・抗ウイルス性能を発揮する。これらの優れた抗菌・抗ウイルス性能は米国環境保護庁(EPA)より金属材料では初めてとなる「公衆衛生における抗菌特性」として認められている。驚くことに,造幣年代の古い十円硬貨や人工的酸化処理銅材や大気暴露銅材はこれらの特性がより強く発揮される傾向がある。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)汚染が高頻度に確認される医療環境に銅及び銅合金を導入すると当該菌感染者数と分離株数はかなり減少する。院内感染予防対策には感染源や感染経路となる院内環境汚染の低減化が不可欠であるが,日々の定期的な清拭・清掃で環境汚染菌を適宜除菌するには限界がある。銅及び銅合金製品が環境整備の衛生補完材として活用され,安寧な医療環境の提供に役立つことがますます期待される。
Key words:Copper and its alloys(銅及び銅合金)/Dynamicaction of minute quantity(微量金属作用)/Reactive oxygen species(活性酸素分子種)/Antibacterial and antiviral properties(抗菌・抗ウイルス性)/Sustainable hygiene complementary materials(衛生補完材).
ナノ材料を用いた微生物制御
- 表題:
- ナノ材料を用いた微生物制御
- 著者:
- 伊藤 健(関西大学システム理工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.447-453(2023)
微生物が好み増殖する場所は,固体,液体の2相界面やそれらと気体を含む3相界面で生じることが多い。21世紀に入り電子顕微鏡の普及やナノテクノロジーを利用したセンシング技術の進化により,このような界面における微生物の理解が進んだ。本稿では,ナノテクを使った界面を評価するセンシング技術や新しい抗微生物技術について紹介する。
Key words:Antivirus(抗ウイルス)/Antibacterial(抗菌)/Bactericidal(殺菌)/Nanostructure(ナノ構造).
光触媒による抗微生物効果
- 表題:
- 光触媒による抗微生物効果
- 著者:
- 石黒 斉(地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所・研究開発部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.455-458(2023)
光触媒は強い酸化還元反応により,有機物を分解する機能を持っている。それを応用して,細菌やウイルスを始め,様々な微生物を分解する抗微生物製品の開発が進められている。特に,2020年から広がったSARS-CoV-2の感染により,様々な抗ウイルス光触媒加工材料や製品の研究開発が急速に進められた。我々や他の研究グループは光触媒がSARS-CoV-2を不活化するかを検討した。その結果,紫外光や可視光に応答する光触媒がSARS-CoV-2を不活化することが明らかとなった。このことから,光触媒材料を用いた製品開発が感染リスクを下げることが可能と考えられる。ここでは,光触媒とその抗ウイルス性能を利用した研究開発状況と性能評価方法の標準化について紹介する。
Key words:Photocatalyst(光触媒)/Titanium dioxide(酸化チタン)/SARS-CoV-2(新型コロナウイルス).
帯電微粒子水(ナノイー)技術を用いた空気質の改善
- 表題:
- 帯電微粒子水(ナノイー)技術を用いた空気質の改善
- 著者:
- 石上陽平(パナソニック(株)くらしアプライアンス社)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.459-467(2023)
室内環境の改善は,日々生活する中で注目度が高い。新型コロナウイルスの蔓延の影響などにより家庭内で過ごす時間が増えたこともあり,日常空間の微生物制御への関心が高まっている。微生物制御の手段として,これまで検討を行ってきた帯電微粒子水技術を示す。帯電微粒子水技術は,微細な水粒子を空間に浮遊させることで,空間内の微生物であるウイルス,菌,真菌に対して抑制することが可能である。これまで進めてきた機序解明・抑制効果について説明する。
Key words:Charged nano water particle(帯電微粒子水)/Microbial suppression(微生物制御).
住宅環境で使用される抗微生物加工製品の実態
- 表題:
- 住宅環境で使用される抗微生物加工製品の実態
- 著者:
- 藤本嘉明((一社)抗菌製品技術協議会(SIAA))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.469-475(2023)
抗菌製品技術協議会(SIAA)は,信頼し,安心できる抗微生物加工製品を消費者が市場で選択できるよう,製品の性能基準,安全性基準,表示規定等を定め,これに適合した製品を認定し,独自の認証マークを表示する認証制度を運用している。この制度の概要について説明すると共に,認証登録が認められ公表された抗菌加工製品,防カビ加工製品,抗ウイルス加工製品の製品数,用途,加工方法,使用薬剤の種類について調査し解析した。この結果,住宅環境で使用される抗微生物加工製品の2022年末の認証製品数は約15,000であり,1年半前と比べるとほぼ2倍に増えており,今後も市場への増大が期待できること,抗微生物加工製品の用途分野,加工方法,加工薬剤の主成分は抗菌・防カビ・抗ウイルス加工製品によってそれぞれ特徴があり,各製品の機能に応じて使い分けられていることが明らかになった。
Key words:Residential environment(住宅環境)/Antibacterial-treated product(抗菌加工製品)/Antifungal-treated product(防カビ加工製品)/Antiviral-treated product(抗ウイルス加工製品)/Certification system(認証制度).
繊維製品による微生物制御
- 表題:
- 繊維製品による微生物制御
- 著者:
- 射本康夫((一財)日本繊維製品品質技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.7(記念号),pp.477-485(2023)
日常生活や医療現場などにおける種々の材料の衛生,清潔さがより一層求められている近年において,抗菌性,抗カビ性,抗ウイルス性などの様々な微生物制御技術を施した繊維製品が開発されてきた。これらの技術の有効性を正しく評価するためには適切な性能評価方法が必要である。JIS規格やISO規格などの統一試験方法は,同種の製品の性能を同じ条件で画一的に評価できるという観点から,非常に有意義な試験方法と言える。また,規格試験を応用してSARS-CoV-2に対する抗ウイルス性能を評価するなど,適正な対策技術を社会実装するためには,基礎研究結果に基づいた性能評価方法を確立する必要がある。繊維検体の抗微生物性能を正しく評価するためには,それぞれの試験方法の特徴や対象となる微生物の微生物学的特徴,検体の特性を考慮し,最適な試験方法を選択することが重要である。
Key words:Antibacterial(抗菌性)/Antifungal(抗カビ性)/Antiviral(抗ウイルス性)/SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)/Textile products(繊維製品).
会報 …486
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.7 (2023)
50th Anniversary Commemorative Special Issue ②
Vol.51, No.8 (2023)
【 目次 】
エゴマ種子とエゴマ油を対象にした微細水滴を含んだ過熱水蒸気処理による殺菌と品質への影響
- 表題:
- エゴマ種子とエゴマ油を対象にした微細水滴を含んだ過熱水蒸気処理による殺菌と品質への影響(短報)
- 著者:
- 土佐典照,小川哲郎(島根県産業技術センター 浜田技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.8,pp.487-491(2023)
エゴマ種子は,野外の農地で栽培されているので土壌細菌などの含有が高く,食品に直接用いる場合には殺菌が必要である。しかしエゴマ種子を原料とする油は,熱安定性が低く自動酸化が進みやすいので加熱調理に適さないとされている。そこでアクアガス加熱装置により,エゴマ種子中の油の酸化を進めずに殺菌を行うことができるのか検討した。この結果,アクアガス加熱装置は,蒸し器,レトルト装置と同様に10分間の処理で一般生菌数が不検出となった。また種子中の油の過酸化物価には変化がなく,油の劣化は認められなかった。さらに薄膜状態のエゴマ油についてアクアガス加熱装置で試験を行ったが,60分処理しても過酸化物価の値に変化はほぼなかった。このことによりアクアガス処理は,低酸素雰囲気により油の酸化を抑制することが示され,またレトルト装置よりも加工時間が短いこと,蒸し器よりも加工後の品質の保存性で優れていることも示された。
Key words:Perilla seeds(エゴマ種子)/Perilla oil(エゴマ油)/Aqua-gas treatment(アクアガス)/Viable cell count(生菌数)/Peroxide value(過酸化物価).
-日本防菌防黴学会英文誌の名称変更について-
前処理加熱と2種類の培養温度条件を利用した疎水格子フィルター法による活性汚泥中の好気性芽胞形成細菌の挙動の推定
- 表題:
- 前処理加熱と2種類の培養温度条件を利用した疎水格子フィルター法による活性汚泥中の好気性芽胞形成細菌の挙動の推定
- 著者:
- 伊与 亨(北里大学医療衛生学部保健衛生学科),堀内昌樹,青木正治(第一公害プラント(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.8,pp.497-501(2023)
前処理加熱条件や培養温度を変えた好気性芽胞形成細菌の活性汚泥中の存在率を推定する手法を提言し,汚泥再生処理センター等から採取した活性汚泥試料を測定した。その結果,好気性芽胞形成細菌を優占化させる運転を行っている汚泥再生処理センターの活性汚泥では,栄養型好気性芽胞形成細菌の存在率の増加が観察された。
Key words:Activated sludge(活性汚泥)/Aerobic endospore-forming bacteria(好気性芽胞形成細菌)/Vegetative cells of endospore-forming bacteria(栄養型芽胞形成細菌)/Sludge Treatment Center(汚泥再生処理センター).
オーラルケアの基礎知識および除菌評価試験
- 表題:
- オーラルケアの基礎知識および除菌評価試験
- 著者:
- 鈴木利彦(ピジョンホームプロダクツ(株) 事業推進G)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.8,pp.503-507(2023)
現在 オーラルケア製品の開発依頼が多々あります。背景として,産官学の発展,オーラルケアにより虫歯予防することは寿命を延ばすことに影響するため開発依頼が多く生じていると考えています。オーラルケア関係の市場は活発化されていますが,今一度「歯,歯みがき剤(化粧品,医薬部外品:効果効能,有効成分・添加物目的),虫歯菌(緑膿菌,ミュータンス菌)」について調査し情報をまとめてみました。また,殺菌剤・除菌剤を固定し添加物の成分によって虫歯菌の除菌効果がどうなるか調査をしました。本情報を一般開示し正しい製品開発や製品購入知識向上を促し産業の発展を促進することを目的としています。
Key words:Toothpaste(歯みがき剤)/Disinfectants(殺菌剤・除菌剤)/Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)/Feline enteric coronavirus(ミュータンス菌)/Sterilization evaluation test(除菌試験).
食品の微生物危害要因と対策 [3]食肉製品製造における微生物危害とその対策
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [3]食肉製品製造における微生物危害とその対策
- 著者:
- 中島誠人(一般社団法人 食肉科学技術研究所 微生物部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.8,pp.509-516(2023)
食肉製品は,1993(平成5)年3月に行われた食品衛生法施行規則及び食品添加物の規格基準の一部改正の中に含まれ,表示基準及び規格基準が改正された。その要点は,近年わが国における食肉製品の嗜好の多様化,製造技術の進歩,低温流通の進歩等により,これまでわが国で製造,販売が認められていなかった製品について,新しい規格基準を設定するとともに,既存の規格基準についても一部改正を行った。また,2014(平成26)年には非加熱食肉製品の微生物基準の一部(リステリア・モノサイトゲネス)が改正され,国際規格と整合性が保たれる規格基準となった。このことは,諸外国の食肉製品の円滑な輸入と流通に大いに役立っている。本講座では,安全な食肉製品を提供するために数次改正された,食肉製品の規格基準の概要を紹介し,併せてウインナーソーセージの製造方法を例示し,各工程における微生物の制御方法等衛生管理のポイントを紹介する。
Key words:乾燥食肉製品/非加熱食肉製品/特定加熱食肉製品/加熱食肉製品.
食品の微生物危害要因と対策 [4]清涼飲料水の製造における微生物(細菌芽胞)の危害と対策
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [4]清涼飲料水の製造における微生物(細菌芽胞)の危害と対策
- 著者:
- 長田 隆(南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.8,pp.517-525(2023)
多種多様な,清涼飲料水について細菌芽胞の危害と対策についてまとめた。特に,酸性飲料は,芽胞細菌種の増殖限界pH領域にあることから,それらの耐熱性データを収集して,現実的な加熱殺菌条件を算出することは,大変な労力が必要であるが,重要であることから,その実験手法について紹介した。また近年は,遺伝子解析による微生物同定で,生物学的な性状が一致しなくても,同属や異なる種に分かれるといった分類の再編が進み,食品に関連する微生物情報の検索を困難にし,混乱を招く状況にある中で,読者に分かりやすく,清涼飲料水で問題となる芽胞細菌種と対象となる製品群を照合する形で整理した。その上で,細菌芽胞汚染の少ない原材料を用い,製造工程における細菌芽胞の増加を防止するために設備を衛生的に維持することが求められる。さらに今後は,地球温暖化で夏場の気温が40℃を超える地域が増えることから,これまでは問題にならなかった流通上での高温菌種の増殖危害への対策として,この常温に対する管理の考え方を改めることは喫緊の課題である。
Key words:Spore-forming bacteria(芽胞形成細菌)/Heat sterilization(加熱殺菌)/Soft drinks(清涼飲料水)/Low acid beverage(低酸性飲料)/Acidic beverage(酸性飲料).
図書紹介 『食品のカビ検索図鑑 自然環境・室内環境調査にも役立つ』 …伴 さやか…502
会報 …530
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.8 (2023)
Vol.51, No.9 (2023)
【 目次 】
密閉高圧容器内における高温・塩素の作用によるレジオネラ属菌に対する不活化効果
- 表題:
- 密閉高圧容器内における高温・塩素の作用によるレジオネラ属菌に対する不活化効果(原著論文)
- 著者:
- 守川 彰,豊島正樹,志賀 彰,勝又典亮(三菱電機(株)),長谷川浩巳,岩松俊哉,藤縄剛史((一財)電力中央研究所),古畑勝則(麻布大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.531-537(2023)
ビルや病院の給湯器や加湿器などの人工水において,レジオネラ属菌の増殖によるレジオネラ症の感染リスクが高まることが懸念されている。ヒートポンプ式給湯機は,65℃以上の温水でありレジオネラ症の感染リスクは低いが,省エネルギーのために低温で沸き上げとすると感染リスクが高まる可能性がある。そこで本研究ではレジオネラ属菌の高圧,水温,残留塩素濃度依存性を調査し,以下の結果を得た。①圧力0.17MPaG以上,温度30℃以上,水道法で規定されている残留塩素濃度0.10 mg/L以上の密閉容器内において,Legionella pneumophilaは10分以内に3 log以上不活化した。②大気圧0 MPaG,温度46~55℃,初期塩素濃度0.05~0.40 mg/Lにおいて,高温と塩素による相乗的な不活化効果が得られた。③密閉高圧(0.17 MPaG,0.28 MPaG)では初期塩素濃度が低いほど,高温と塩素に加えて,さらに相乗的に不活化が促進した。
Key words:Legionella(レジオネラ)/High temperature(高温)/High pressure(高圧)/Inactivation of chlorine(塩素不活化)/Hermetically seal(密閉).
芳香消臭剤を用いたトイレ模擬空間の床素材に対する抗菌性能評価法の構築
- 表題:
- 芳香消臭剤を用いたトイレ模擬空間の床素材に対する抗菌性能評価法の構築(原著論文)
- 著者:
- 石渡美紗樹,森永真衣,村木 毅(小林製薬(株)・日用品事業部),鳥井一宏,五味満裕(小林製薬(株)・中央研究所・基盤研究部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.539-547(2023)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大前後でトイレの掃除頻度が増えている一方で,トイレの床の掃除頻度の少ない家庭が多いことが明らかとなっている。床の掃除は手間がかかるため,揮発性の抗菌性能を持つ芳香消臭剤を用いることは洗うことのできない床で増殖する菌への対処方法の1つとなる。抗菌性能を評価する一般的な方法としては比較的小さな密閉空間を用いることが多い。本研究では,日本の一般家庭のトイレを調査し,容積が約2,500 L,換気回数が1時間で約9回のトイレ模擬空間を設定した。この模擬空間を用いて構築した芳香消臭剤の抗菌性能評価法では,試験ばらつきがなく経時的な抗菌効果の有無を評価し得ることを確認した。今回構築した評価法を基に,生活環境の変化に合わせて適切な評価指針を定め,芳香消臭剤を評価してくことで消費者が安心できる製品価値を提供することに繋がるだろう。
Key words:Bacterial growth prevention(細菌増殖抑制)/Spatial Volume(空間容積)/Ventilation(換気)/Fragrance component concentration(香気成分濃度)/Volatilization time(揮散時間).
焼成貝殻ナノ粉末含有する透明性を持った抗菌・抗ウイルス塗料の開発
- 表題:
- 焼成貝殻ナノ粉末含有する透明性を持った抗菌・抗ウイルス塗料の開発
- 著者:
- 澤井 淳(神奈川工科大学・健康医療科学部・管理栄養学科),中川芳高(NS技研)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.549-554(2023)
貝殻の主成分は,炭酸カルシウム(CaCO3)である。貝殻を高温で焼成することにより,主成分のCaCO3が酸化カルシウム(CaO)となり,このCaOが抗菌活性を発揮する。この焼成貝殻粉末(HSP)を含む内壁用塗料は既に販売されているが,濁度が高く用途が限られている。本稿では,ホタテ焼成貝殻粉末含む透明性が高く,抗菌活性が長期間持続する塗料の開発について解説した。ホタテHSPのマイクロ粒子をホタテHSPは粒径が0.1 µm程度のナノ粒子に粉砕し,優れた接着特性およびバインダー特性を有するポリビニルブチラール(PVB)と混合した。元素分析より,ホタテHSPは水酸化カルシウムとして塗料中に存在していることが分かった。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面は,高い抗細菌活性および抗ウイルス活性を示し,かつ長期間にわたって活性を保持することができた。ホタテHSP含有PVB塗料コーティング面の抗微生物活性は,表面の水和による強アルカリ環境の発現によるものであり,活性の長期間の保持はPVBがHSP粒子表面をカバーすることで,ホタテHSPと空気中のCO2やH2O分子との接触・吸収を大幅に抑制することに起因していると考えられる。
Key words:Heated seashell powder(貝殻焼成粉末)/Calcium oxide(酸化カルシウム)/Antibacterial activity(抗菌活性)/Antiviral activity(抗ウイルス活性)/Polyvinyl butyral(ポリビニルブチラール).
食品の微生物危害要因と対策 [5]菓子の危害微生物と衛生管理
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [5]菓子の危害微生物と衛生管理
- 著者:
- 日渡美世(あいち産業科学技術総合センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.555-562(2023)
菓子製造業は小規模の事業所によるものが多く,HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が中心である。菓子類の微生物的なリスクは,水分含量や原材料組成,製法により大きく異なる。菓子類のうち,特に水分含量が高く消費期限の短い生菓子では,細菌による変敗が問題となりやすい。本研究では,和洋生菓子を製造する小規模事業所の細菌の分布と製品との関連性を把握し,有効な衛生管理への手がかりを得ることを目指した。そのために,拭き取り試験とMALDI-TOF MS微生物同定システムを併用し,製造工程や製品から検出される細菌の傾向を調査した。その結果,和菓子工場及び洋菓子工場の採取箇所や製品の種類により,検出される細菌類の傾向に差異が認められた。本稿では得られた傾向を報告するとともに,衛生管理上の注意点について考察する。
Key words:Confectionery(菓子)/Food deterioration(食品変敗)/Microorganism identification(微生物同定)/MALDI-TOF MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析計)/Food hygiene management(食品衛生管理).
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [8]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その3)
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [8]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その3)-食品分野で汎用される各種保存剤等,ならびに食品工場等における殺菌消毒を中心として-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.563-567(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,「食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その3)-食品分野で汎用される各種保存剤等,ならびに食品工場等における殺菌消毒を中心として-」と題して,食品添加物としての各種保存剤,多方面で汎用されるヒノキチオール,食品工場等における殺菌消毒に使用される次亜塩素酸ナトリウム,および亜塩素酸水等を取り上げ,微生物制御の立場で解説する。また,同時に食品工場等で汎用されている過酢酸を取り上げ,バイオフィルム対策等についても合わせ解説した。
Key words:Preservative(保存剤)/Hinokitiol(ヒノキチオール)/Sodium hypochlorite(次亜塩素酸ナトリウム)/Chlorous acid solution(亜塩素酸水)/Peracetic acid(過酢酸).
家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [1]開講にあたって
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [1]開講にあたって
- 著者:
- 谷口 暢(サラヤ(株)・(株)ポエマ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.569-570(2023)
本講座は,前回の食品製造業者を対象とした「食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策-」(2021年2月~2023年5月)の第2弾の家庭編として企画された。家庭編ともなれば,その内容は多岐にわたる。従来の微生物汚染とその対策方法は,基本的に継続されるものであるが,そこへ新しい技術が導入された場合には,対策方法が再構築(再編成)される。少しではあるが,技術の「パラダイムシフト」が生じる。そこで,本講座「家庭の安全・安心科学」では,昨今のトレンド(家庭用ナローバンド光商品・ファインバブル商品・口腔ケア商品,ジビエ料理および感染症媒介虫対策など)もできる限り取り入れ,「パラダイムシフト」を科学的根拠(エビデンス)に基づいて解説し,それらが読者の理解度を深める一助となれば幸いである。
Key words:Safety and security science of food(食の安全・安心科学)/Safety and security science in home(家庭の安全・安心科学)/Paradigm shift(パラダイムシフト)/Scientific evidence(科学的根拠)/Knowledge vaccine(知識ワクチン).
会員の声 -培養-『近そうで遠い,「除菌」と「滅菌」の世界』 …井原 望…568
海外文献抄録 …坂上 吉一…579
会報 …580
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.9 (2023)
Vol.51, No.10 (2023)
【 目次 】
シリコーンゴムを透過した気体状モノクロラミンによる種々の微生物の不活化
- 表題:
- シリコーンゴムを透過した気体状モノクロラミンによる種々の微生物の不活化(短報)
- 著者:
- 髙橋和宏(岡山県工業技術センター),大村蒼志,福﨑智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.581-585(2023)
モノクロラミン(NH2Cl)のシリコーンゴム透過性とその微生物制御への適用について研究した。pH 8.5のNH2Cl水溶液またはpH 5.0の次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)水溶液を封入したシリコーンゴムチューブをポリカーボネート製の箱(PC箱)に設置した。気体状NH2Cl(NH2Cl(g))の濃度は時間に応じて増加し,その量は同条件での気体状HOCl濃度よりも高濃度であった。シリコーンゴムチューブを透過気化したNH2Cl(g)は生理食塩水寒天上のStaphylococcus aureus,Escherichia coli,Cladosporium sphaerospermumの胞子,Geobacillus stearothermophilus芽胞に対する優れた不活化効果を示した。NH2Cl(g)の不活化効果はNH2Cl(g)の濃度と作用時間の積に依存した。
Key words:Gaseous monochloramine(気体状モノクロラミン)/Silicone rubber(シリコーンゴム)/Pervaporation(透過気化)/Inactivation of microorganisms(微生物の不活化).
「パンデミックの歴史的概観」 1.COVID-19 Pandemic
- 表題:
- 「パンデミックの歴史的概観」 1.COVID-19 Pandemic
- 著者:
- 篠田純男(岡山大学名誉教授・元インド感染症共同研究センター長)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.587-601(2023)
人類は様々な感染症に悩まされてきたが,病原微生物学の進展,抗菌剤,抗ウイルス剤の開発等によって,20世紀後半になると先進国では感染症が起こっても致死率は低下しており,先進国での医療・公衆衛生上の問題は成人病・生活習慣病等が中心となっていた。しかし,途上国では感染症が未だに大きな脅威となっている。しかし,2019年末に中国武漢で発生したCOVID-19が欧米先進国で途上国以上の多数の感染者を出す事態となったので,改めて感染症の重要性を認識せざるを得ない状況となった。そこで、「パンデミックの歴史的概観」と題する3回程度の解説のシリーズを組み,本号では第1回としてCOVID-19を取り上げて,世界と日本の感染動向,医療体制等を概説する。そして,次号以降でスペイン風邪,天然痘,ペスト,コレラ,その他の歴史的な感染症を取り上げることにする。
Key words:Pandemic(パンデミック)/Epidemic(流行病)/COVID-19(COVID-19,新型コロナウイルス感染症)/Infectious disease(感染症).
食品の微生物危害要因と対策 [6]缶詰・レトルト食品,低酸性飲料の微生物汚染要因と対策
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [6]缶詰・レトルト食品,低酸性飲料の微生物汚染要因と対策
- 著者:
- 中野みよ((公財)東洋食品研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.603-609(2023)
食品における微生物汚染による事故は,①微生物性食中毒と②微生物による食品の変敗・腐敗に大別される。微生物性食中毒は,特定の病原微生物が食品中で増殖,また毒素を産生し,それを食べることにより健康被害を生ずるものである。他方,微生物による変敗・腐敗は,食品本来の味や香りが損なわれ,食べられなくなった状態を指すが,通常は特定の健康被害を誘発するものではない。しかし,一旦製造現場や品質検査などの現場で,異物混入や変色などのトラブルが発生すれば,その原因・対策の究明に多大な労力と経費が費やされ,市場においても同様で,企業は自主回収が避けられないなど甚大な経済的損失となる。本稿では,食品の中でも安価で優良な食品とされている,缶詰・レトルト食品・低酸性飲料について,主な汚染要因と対策について最近の内外の研究事情もまじえて解説する。
Key words:Canned food(缶詰食品)/Retort food(レトルト食品)/Beverages/Spoilage/Microorganisms/変敗/細菌/芽胞/カビ/胞子/低酸性飲料.
家庭の安全・安心科学 [2]家庭における潜在的微生物危害要因とその解明に向けた研究アプローチの現状
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [2]家庭における潜在的微生物危害要因とその解明に向けた研究アプローチの現状
- 著者:
- 矢野剛久(花王(株)安全性科学研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.611-614(2023)
何らかの経路を介して微生物が引き起こす,人の健康が損なわれる現象や,人を取り巻く環境の価値が損なわれる現象を総称して微生物危害と定義する。このうち,本項では特に家庭で生じる人の健康が損なわれる危害を中心に述べる。こうした危害は,食品に係る危害が最も馴染み深く,様々な知見が蓄積している。そこで,食品に係る危害を例に,家庭における微生物危害が生じる潜在的な要因について述べる。一方,食品以外の危害については,どのような微生物がどのように健康を損なうか知見が乏しい。しかし,次世代シーケンサーでその場のあらゆる微生物を一挙に解析出来るようになったことに端を発し,様々な技術の融合や創意工夫により,そうした知見も断片的ながら獲得できるようになりつつある。但し,こうした技術では,現状,微生物危害に係る因果を説明出来ないことが多い。そこで,これら研究アプローチの最新技術動向に触れることで,潜在的微生物危害要因の解明に向けどのような検討をすべきか論じる。
Key words:Microbial hazards(微生物危害)/Next generation sequencer(次世代シーケンサー)/Microbiome(菌叢)/Exposome(エクスポソーム).
家庭の安全・安心科学 [3]窓・エアコン・洗濯機に棲みつくカビとその対策
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [3]窓・エアコン・洗濯機に棲みつくカビとその対策
- 著者:
- 浜田信夫(大阪市立自然史博物館・外来研究員)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.10,pp.615-620(2023)
住宅内のカビ汚染の代表的なホットスポットである窓,エアコン,洗濯機について,その汚染の特徴を明らかにした。3個所のカビ汚染の共通点は,水分が結露などによって大量に発生し,カビが著しく増殖することである。その中で,結露の発生が最も簡単に確認できるのが窓で,最も水分の付着やカビ汚染がふだんの生活では見ることができないのが洗濯機の内部である。清潔にするための生活必需品に,不潔の権化のようなカビの生えていることがユーザーにショックを与えた。一方,エアコンも洗濯機と同様に内部のカビ汚染は見えないが,そこから放出されるカビが,臭いを放ちアレルギーなどの健康被害の原因になる点が,他のカビの汚染個所と異なる。メーカーもカビ対策に取り組んでいるが,その成果と課題についての現状を解説した。
Key words:Condensation(結露)/Sash Window(サッシ窓)/Air Conditioner(エアコン)/Washing Machine(洗濯機)/Indoor Environment(室内環境).
家庭の安全・安心科学 [1]開講にあたって
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [1]開講にあたって
- 著者:
- 谷口 暢(サラヤ(株)・(株)ポエマ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.9,pp.569-570(2023)
本講座は,前回の食品製造業者を対象とした「食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策-」(2021年2月~2023年5月)の第2弾の家庭編として企画された。家庭編ともなれば,その内容は多岐にわたる。従来の微生物汚染とその対策方法は,基本的に継続されるものであるが,そこへ新しい技術が導入された場合には,対策方法が再構築(再編成)される。少しではあるが,技術の「パラダイムシフト」が生じる。そこで,本講座「家庭の安全・安心科学」では,昨今のトレンド(家庭用ナローバンド光商品・ファインバブル商品・口腔ケア商品,ジビエ料理および感染症媒介虫対策など)もできる限り取り入れ,「パラダイムシフト」を科学的根拠(エビデンス)に基づいて解説し,それらが読者の理解度を深める一助となれば幸いである。
Key words:Safety and security science of food(食の安全・安心科学)/Safety and security science in home(家庭の安全・安心科学)/Paradigm shift(パラダイムシフト)/Scientific evidence(科学的根拠)/Knowledge vaccine(知識ワクチン).
[1]開講にあたって
会報 …626
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【 English Contents 】 Vol.51,No.10 (2023)
Vol.51, No.11 (2023)
【 目次 】
室内塵中の好ケラチンカビ汚染と対策としての掃除
- 表題:
- 室内塵中の好ケラチンカビ汚染と対策としての掃除(原著論文)
- 著者:
- 御厨真幸,遠藤利恵,今西正博,荻野文敏((株)ダスキン・開発研究所),浜田信夫(大阪市立自然史博物館)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.627-632(2023)
室内塵中のカビ汚染に影響する環境要因を,DG18培地とマイコセル培地を用いて解析した。とりわけ,好ケラチンカビは日和見皮膚感染症の原因になるので注目した。一般カビは,乾燥しやすい環境である集合住宅の上層階,さらに新しい住宅で少ない傾向がみられた。一方,好ケラチンカビは,ペットを飼っている住宅で多く,ペットの体毛などの影響が認められた。とりわけ,イヌよりネコを飼育している場合に多い傾向があった。カビ汚染の制御のために掃除について検討した。掃除頻度の高い方が,好ケラチンカビを制御できた。また,その除去に拭き掃除は有効で,掃除機のみで床掃除をするより,カビ汚染をより抑制できると考えられる。
Key words:House dust(室内塵)/Keratinophilic fungi(好ケラチン菌)/Pets(ペット)/Wipe cleaning(拭き掃除).
食品の微生物危害要因と対策 [7]冷凍食品における品質劣化と微生物汚染
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [7]冷凍食品における品質劣化と微生物汚染
- 著者:
- 岡崎貴世(四国大学 生活科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.633-640(2023)
冷凍食品は,前処理,凍結,貯蔵,解凍の各段階で適切な管理が行われることで品質が確保され,このうち1段階でも不適切な取り扱いがあると品質は劣悪となり,場合によっては食中毒を引き起こすことがある。冷凍食品の品質劣化について,凍結方法(急速凍結と緩慢凍結)の違い,凍結貯蔵食品中の細菌数の変化,解凍方法について説明する。また冷凍食品で特に注意が必要と考えられるヒスタミン食中毒とリステリア食中毒を取り上げた。食中毒予防には,いずれも菌を増殖させない徹底した温度管理が求められる。さらに冷凍食品以外の冷凍・流通している食品である「そうざい半製品」の食中毒事例を紹介し,商品の利用方法について考察する。最後に,家庭においてホームフリージングする場合の注意点を説明し,市販冷凍食品を含む冷凍の食品の安全で適切な利用法を考える。
Key words:Frozen food(冷凍食品)/Frozen storage(凍結保存)/Thawing(解凍)/Quality deterioration(品質劣化)/Microbial contamination(微生物汚染).
家庭の安全・安心科学 [4]エアコンの微生物対策
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [4]エアコンの微生物対策
- 著者:
- 福島由美子((株)ファインテック)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.641-645(2023)
エアコンは構造上微生物汚染が避けられない設備であるが,汚染箇所が目視で確認できず,著しく汚染が進行している場合も多い。本講座では微生物の汚染メカニズムから対策商材までを解説する。エアコンの汚染原因として第一は熱交換器である。暖気と冷気が交差する構造上,結露が発生し,空気中の微生物や栄養分と共に微生物増殖の温床となる。第二はドレンパンである。熱交換器から落下した微生物がバイオフィルムを形成しうる。第三は熱交換器後の経路である。熱交換器から供給された低温高湿の空気により微生物汚染を引き起こしやすい。対策商材として3点紹介する。エアコン内部に流入する空気を清浄に保つフィルターであるプレプレフィルター。熱交換器に防カビ抗菌効果を付加するスプレーとしてエアーファイン。空気の流路に対するコーティング剤としてFT400を紹介する。
Key words:Air conditioner(エアコン)/Antifungal(防カビ)/Antibacterial(抗菌)/Heat exchanger(熱交換器)/Drain pan(ドレンパン).
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [2]超高齢社会の健康寿命を支える最新口腔微生物研究
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [2]超高齢社会の健康寿命を支える最新口腔微生物研究
- 著者:
- 濱田昌子(小林製薬(株)・中央研究所・基盤研究部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.647-654(2023)
超高齢社会日本において,歯牙の喪失防止は高齢者の介護予防にも関わる重要な課題である。日本人の永久歯の喪失原因は歯周病が第一位であり,その高い有病率から歯周病は国民病と言える。歯牙喪失を放置するとオーラルフレイルのリスクが高まるため,義歯を装着し咀嚼機能等を改善することが健康寿命を支えるために有効であり,義歯を清掃し正常な状態に保つことが必要不可欠である。本講座では,高齢者の健康寿命延伸において重要となるオーラルヘルスケアに関わる研究事例として,歯周病の有効成分であるHinokitiolのquorum sensing阻害を介した歯周病菌Porphylomonas gingivalisへの作用メカニズム研究及び,全部床義歯の優占菌種を用いたin vitroモデルによる義歯洗浄剤の有効性評価研究等,最新の口腔微生物研究事例を紹介する。
Key words:Porphyromonas gingivalis(歯周病菌)/Quorum sensing(クオラムセンシング)/Hinokitiol(ヒノキチオール)/Denture plaque model(義歯プラークモデル)/Denture cleaner(義歯洗浄剤).
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [9]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その4)-バクテリオシン関係全般-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [9]食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その4)-バクテリオシン関係全般-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.655-660(2023)
微生物制御とは,我々にとって脅威となる微生物を適切に抑える一方,我々にとって良いと思われる微生物を有効に管理することであると考えられる。今回,「食品全般ならびに関連分野における微生物制御(その4)-バクテリオシン関係全般-」と題して,バクテリオシンとは,乳酸菌が産生するバクテリオシンの分類,特徴および代表例,ナイシンの食品への利用,ナイシンについて,ナイシンの保存料としての使用基準,ナイシンの特徴について,ならびにバクテリオシン研究の最前線としての九州大学農学部微生物工学研究室の研究報告(抜粋)を取り上げ,微生物制御の立場で解説した。
Key words:Bacteriocin(バクテリオシン)/Preservative(保存剤)/Nisin(ナイシン)/Criteria(使用基準)/View of bacteriocin research(バクテリオシン研究の展望).
天然物とその利用 [1]植物由来抗菌・抗カビ活性天然物
- 表題:
- 天然物とその利用 -抗菌および抗真菌活性に関して- [1]植物由来抗菌・抗カビ活性天然物
- 著者:
- 飯田 彰(近畿大学農学部応用生命化学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.11,pp.661-666(2023)
抗菌薬および抗カビ薬と称されるもののほとんどが,微生物由来の天然物(抗生物質)かその誘導体あるいは天然物の構造に基づかない完全なる化学合成品である。そのため,植物由来の抗菌・抗カビ活性天然成分に関する知識は,生薬学や天然物化学に携わる研究者以外には十分知られていないかもしれない。本講座では,先ず天然物の定義から始まり,生薬に代表される歴史の古い植物由来の天然物のうち,主に局方生薬と食品に含まれる構造が分かっている抗菌・抗カビ活性成分を中心にまとめた。
Key words:Antibacterial activity(抗菌活性)/Antifungal activity(抗カビ活性)/Natural products(天然物)/Plants(植物)/Antibiotics(抗生物質)/Infection(感染症).
図書紹介 『バイオフィルム革新的制御技術』 …667
会報 …676
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.51,No.11 (2023)
Vol.51, No.12 (2023)
【 目次 】
現代アートに発生した真菌類の特徴
- 表題:
- 現代アートに発生した真菌類の特徴(原著論文)
- 著者:
- 川上裕司(東京家政大学環境教育学科 生物工学研究室),萩生田遼,広瀬 大(日本大学薬学部 病原微生物学研究室),小谷野匡子,大川美香((株)絵画保存研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.677-684(2023)
2014年に創作され,8年ほどシンガポールの倉庫で保管されていた現在アートに発生した真菌の分離・同定検査を行った。作品の真菌発生部位の一部は絵具が侵食され,欠損が認められた。分離した菌株について,形態学的およびDNAの系統解析による同定検査を行った。この結果,Restricti節に属する好乾性のAspergillus4種(A. penicillioides,A. clavatophorus,A. gracilis,A. verrucosus)と好湿性の黒色酵母様菌が1種(Aureobasidium leucospermi)が分離された。4種のAspergillusについては,保存作品に対してfoxing,stain,変色,亀裂,剥落などを引き起こす汚染・劣化の起因菌であった。黒色酵母様菌は,酵母に似た粘性のコロニーを形成した。真菌の発生原因として,作品の保管中および輸送中に温湿度管理の不備によって水分が供給されたことが推察された。
Key words:Contemporary art(現代アート)/Aspergillus(アスペルギルス)/Aspergillus section Restricti(レストリクティ節)/Foxing(フォクシング)/Art conservation(絵画保存).
化粧品保存効力試験の微量迅速評価方法
- 表題:
- 化粧品保存効力試験の微量迅速評価方法
- 著者:
- 植草奈津子,宮崎宗隆(東色ピグメント(株) 開発部),継國孝司((株)ウエルシーライフラボ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.685-693(2023)
化粧品業界では,一般に防腐力の指標のひとつとして,保存効力試験を行っている。この試験は時間と労力が掛かることが課題であった。そこで,これらの課題を軽減するために,微量迅速評価方法の開発を行った。手法としては薬剤感受性試験のMIC測定などに用いられる微量液体希釈法を応用した。細菌と酵母については,防腐剤などを含む液体培地中で増殖に伴う吸光度の変化を経時的に測定し評価を行った。カビについては,胞子の発芽や発芽前の微小な変化に着目し,胞子のSEM観察やCa濃度の分析結果から,増殖性の有無が短時間の培養においても評価できることを示した。さらに,より簡便に評価するために,細菌や酵母と同様に経時的な蛍光や吸光度測定での評価も行った。本手法を用いることで,化粧品の処方開発や防腐系の最適化を短時間かつ簡便に行うことが可能と考えられる。
Key words:Broth microdilution method(微量液体希釈法)/Cosmetic Preservation Efficacy Test(化粧品保存効力試験)/Growth curve(増殖曲線)/Microplate reader(マイクロプレートリーダー)/Absorbance measurement(吸光度測定)/Germination(発芽)/Yeast and Mould(真菌).
食品の微生物危害要因と対策 [8]農産物の微生物危害要因と対策
- 表題:
- 食品の微生物危害要因と対策 [8]農産物の微生物危害要因と対策
- 著者:
- 西岡輝美(地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.695-702(2023)
食中毒の原因となる微生物の食品汚染は,輸送や加工,保存の過程だけでなく,原料となる農産物の生産過程にも存在し,土壌や家畜糞堆肥,農業用水,作物の種子が汚染源になる。さらに野生動物や農業資材,収穫を行う作業者なども汚染源になりうるため,注意が必要である。また,農産物に発生するカビには深刻な健康被害を引き起こすマイコトキシンを生産するものがある。マイコトキシンの1つ,アフラトキシンは,輸入農産物だけでなく国内の農産物でも検出されており,農産物の収穫後の湿度管理や衛生管理の重要性が指摘されている。また麦類に赤かび病という病気を引き起こすカビにも,デオキシニバレノールなどのマイコトキシンを産生するものがある。生産現場では,赤かび病に強い抵抗性品種や農薬の利用等,様々な対策がとられている。上述のような衛生管理や農薬散布などの他に,農産物の微生物汚染対策に有効と考えられるものにプラズマと次亜塩素酸水がある。著者らが取り組むこれらの技術についても紹介する。
Key words:Fresh produce(生鮮農産物)/Microbiological contamination(微生物汚染)/Control(対策).
家庭の安全・安心科学 [5]台所およびトイレにおける衛生対策
- 表題:
- 家庭の安全・安心科学 -家庭における微生物汚染とその対策- [5]台所およびトイレにおける衛生対策
- 著者:
- 原田 裕(サラヤ(株) サラヤ総合研究所 微生物研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.703-706(2023)
我々が生活する居住空間で微生物と関わりの深い場所は,台所,トイレ,洗面所,浴室などが挙げられる。特に台所は,菌が繁殖しやすい好条件が揃っており,我々が直接口にする料理の調理場所でもあるため,衛生対策が重要となる。一方トイレは,菌やウイルスが大量に含まれる人の排泄物が排出される場であり,トイレから菌やウイルスが広がって感染症・食中毒に発展する事例が数多くあることから,トイレの衛生対策も重要となる。本講座では,一般家庭における台所およびトイレの微生物汚染状況について述べ,有効な衛生対策について紹介する。
Key words:一般細菌/食中毒/環境衛生.
ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [3]黄色ブドウ球菌クオラムセンシングとアトピー性皮膚炎
- 表題:
- ヒト常在菌叢と健康・疾患に関する研究の最前線 [3]黄色ブドウ球菌クオラムセンシングとアトピー性皮膚炎
- 著者:
- 松岡悠美(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 皮膚アレルギー生体防御)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.707-711(2023)
S. aureusはヒトの常在細菌叢として存在する反面,様々な細菌感染症,食中毒,慢性炎症性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎の病態にも関与する。アトピー性皮膚炎は,皮膚バリア破綻,Th2免疫,環境因子が相互作用し病態が形成されるが,S. aureusは環境因子の1つとして,Agrクオラムセンシング下流の毒素を介して皮膚炎の発症・増悪に関与する。また,乳児皮膚から経時的にS. aureusを単離し全ゲノム解析を行うことにより,アトピー性皮膚炎をその後に発症する乳児皮膚では,Agrクオラムセンシングの遺伝子領域が変異を起こさずに機能が保存され,一方健康な乳児の皮膚ではこの領域に機能喪失型の変異が誘導され,排除されることが明らかとなった。
Key words:Atopic dermatitis/Staphylococcus aureus/Microbiome.
防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [10]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その1)-文化財の保存の歴史的経緯等をふまえて-
- 表題:
- 防菌防黴分野における微生物制御の歴史的経緯と現状 [10]文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その1)-文化財の保存の歴史的経緯等をふまえて-
- 著者:
- 坂上吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.713-717(2023)
文化財は先人が残した貴重な文化遺産であり,生物および微生物等による劣化を防止し,あるいは適宜修復等を実施し,後世に残していかねばならない歴史遺産でもある。長い年月の中で,カビ等の微生物を含めた生物等による劣化等にも対応しなければならないものである。今回,「文化財関係ならびに関連分野における微生物制御(その1)-文化財の保存の歴史的経緯等をふまえて-」と題して,文化財とは,国宝・重要文化財,博物館の概要,博物館法の一部を改正する法律の概要,博物館登録制度,文化財保存活用地域計画,IPMとは,および文化財IPMについて,微生物制御の立場を考慮し,若干解説した。
Key words:Cultural assets(文化財)/National treasure・Important cultural asset(国宝・重要文化財)/Partly revision of Museum act(博物館法の一部を改正)/Registration system of Museum(博物館登録制度)/Integrated Pest Management(IPM:総合防除).
天然物とその利用 [2]天然物由来の揮発性抗菌成分とそれらを活用した抗菌包材について
- 表題:
- 天然物とその利用 -抗菌および抗真菌活性に関して- [2]天然物由来の揮発性抗菌成分とそれらを活用した抗菌包材について
- 著者:
- 杉山祐樹,中嶋菜穂,坂入幸司,大日方野枝(TOPPANホールディングス(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.51,No.12,pp.719-724(2023)
食品ロスが世界的な課題となっており,その原因の一つとして微生物による汚染が挙げられる。微生物汚染を防ぐためには製造工程の適切な管理や包装形態の工夫が有効であるが,消費者の健康志向や食味向上の要望が高まっており,減塩食品や加熱処理を穏やかに行うことを要求される場面が増加している。こういった環境は微生物の残存や増殖を招きやすいため,保存料などの食品添加物を使用することで対応してきた。ところが,食品添加物に対する消費者の不信感は根強く,安全性への懸念を持つ消費者は多い。そこで,消費者へ受け入れられやすい物質として天然物由来の抗菌成分が注目されている。当社では,このような背景から天然物由来の揮発性抗菌成分を活用した抗菌包材の開発に取り組んできた。天然物由来の揮発性抗菌成分15種類を評価し,抗菌効果の高かった成分を使用して抗菌包材を作製したところ,カビや細菌の生育を抑制できることが分かった。
Key words:Food waste(食品ロス)/Microorganism(微生物)/Natural product(天然物)/Essential oil(精油)/Package(包装).
図書紹介 『室内環境の辞典-快適で健康な暮らしを支える科学』 …694
日本防菌防黴学会誌51巻総目次 …727
日本防菌防黴学会誌51巻著者索引 …730
会報 〔第51回通常総会議事録・第48回評議員会議事録〕 …731
会報 …738
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