Vol.49, No.1 (2021)
【 目次 】
強制通風気化システムにおけるアルカリ性条件下での次亜塩素酸とモノクロラミンの揮発性と殺菌作用
- 表題:
- 強制通風気化システムにおけるアルカリ性条件下での次亜塩素酸とモノクロラミンの揮発性と殺菌作用(原著論文)
- 著者:
- 中村 幸翼,加藤 稜也,福﨑 智司(三重大学大学院),林 智裕,石田 陽子,堀切 茂俊,吉田 真司(パナソニックエコシステムズ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.3-9(2021)
強制通風気化システムにおける次亜塩素酸とモノクロラミン(NH2Cl(g))の揮発性と殺菌作用をアルカリ性条件下(pH 8.5)で検討した。モノクロラミン水溶液は,撹拌条件下で同量の1M NH4Clと14mM NaOClをpH 8.5で混合して調製した。NH2Cl(g)の揮発量は,気体状HOCl(g)より約13倍も高かった。HOCl(g)とNH2Cl(g)の放散過程は,各々零次および一次速度論に従うことが示された。湿潤寒天平板上のVibrio parahaemolyticusとCladosporium cladosporioides胞子に対するHOCl(g)とNH2Cl(g)の不活化効果は,各々の濃度と時間の積に依存した。NH2Cl(g)への暴露の初期に,死滅の遅延期が見られた。NH2Cl(g)の不活化効果はHOCl(g)と比較すると低いけれども,揮発NH2Cl(g)が相対的に高濃度なので暴露時間を延長すればHOCl(g)と同等の効果を得ることができた。
Key words:Gaseous monochloramine(気体状モノクロラミン)/Gaseous hypochlorite acid(気体状次亜塩素酸)/Volatility(揮発性)/Air stripping(通風放散)/Forced-air vaporizing system(強制通風気化システム).
JIS Z 2911:2018かび抵抗性試験方法改正のポイント
- 表題:
- JIS Z 2911:2018かび抵抗性試験方法改正のポイント
- 著者:
- 土屋 禎((一財)日本食品分析センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.11-15(2021)
JIS Z 2911かび抵抗性試験方法は,1957年に制定された歴史のある規格(試験方法)であり,これまで幅広い分野で利用されてきた。2018年の改正においては,対応する国際規格の最新版,試験に用いるかびの種類の最新情報,及び読みやすさが考慮された。この規格は,製品群として7種類を対象にしており,それぞれ用いるかびの種類,培養期間など方法が異なるため,複雑な構成となっている。また,かびの発育状況の判定方法については,国際規格に対応した附属書A~Cでは顕微鏡を用いた5又は6段階の評価であるのに対し,附属書以外では肉眼観察のみの3段階評価である。今回の改正において,かびの種類など最新情報が反映されているが,複雑な構成となっている試験方法を,より読みやすく変更されている点は試験実施者のみならず,データを活用する者にとっても有意義と思われる。特に,国際規格に規定されている,試験の「原理」又は「概説」が加えられたことで,試験結果が示す意味についても理解されやすくなったといえる。
Key words:JIS Z 2911/かび抵抗性試験方法/ISO 846/Evaluation of the action of microorganisms.
紫外線を用いた水処理技術
- 表題:
- 紫外線を用いた水処理技術
- 著者:
- 橋口 亜由未(島根大学 生物資源科学部 環境共生科学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.17-25(2021)
紫外線による殺菌や微量汚染物質の分解では,近年紫外線を発するLEDや新規の酸化処理に関する研究等新しい試みがなされている。本稿では,水の紫外線殺菌技術や関連の技術について,①紫外線殺菌に関する最近の研究,②微量汚染物質の分解(直接分解,新規UV/AOP),③消毒副生成物の制御について最新の国際学術誌を中心に研究事例やその課題を解説した。最終的には,近年の研究について以下のようにまとめた。紫外線殺菌では,LEDやエキシマランプの利用が進められており,照射条件や菌種ごとのUV感受性等など考慮すれば実用段階に踏み込める有用な研究が多く進められている。微量汚染物質の分解については,UV/AOPについて多くの研究がなされており,生成ラジカルや共存物質等による分解への影響,処理水の毒性評価が研究の主流となっている。消毒副生成物の制御に関しては,紫外線技術の応用だけではそのリスクの低減が難しく課題が残る。
Key words:Ultraviolet(紫外線)/Water treatment(水処理)/Advanced oxidation process(促進酸化法)/Disinfection byproducts(消毒副生成物)/UV-LED(紫外線発光ダイオード).
環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [4]院内感染事例-輸液の微生物汚染-
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [4]院内感染事例-輸液の微生物汚染-
- 著者:
- 尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.27-30(2021)
投与中の輸液が微生物汚染を受けると,敗血症性ショックなどの重篤な事態を招く。しかし,輸液の微生物汚染は目視では分らない場合が多いため見過ごされてしまうことが少なくない。言い換えれば,輸液の微生物汚染による院内感染が見逃されているのが現状であろう。そこで本稿では,筆者が経験した輸液の微生物汚染の4事例について報告して注意を喚起したい。また,その汚染がATPの測定により迅速に判定できることについても報告する。
Key words:Nosocomial infection(院内感染)/Sepsis(敗血症)/Infusion(輸液)/Candida parapsilosis(カンジダ)/Serratia marcescens(セラチア)/Bacillus cereus(バチルス)/ATP.
食品・医療・環境分野での感染制御 [3]室内でのウイルスや細菌に対する感染対策
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [3]室内でのウイルスや細菌に対する感染対策
- 著者:
- 嶋崎 典子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.31-42(2021)
2020年1月,我が国で初めての新型コロナウイルス感染症の患者が確認されたあと,感染が徐々に全国に拡大し,国民が総力をあげて感染対策に取り組まざるを得なくなった。遭遇する室内の状況に応じて,適切な感染対策を行うには,感染症の原因となる病原体自体や感染対策への科学的理解が欠かせない。本稿では,新型コロナウイルス感染症に加えて,代表的な呼吸器系感染症で,既存研究が豊富なインフルエンザと結核を例に挙げながら,室内でのウイルスや細菌に対する感染対策について概説する。特に,微生物学的視点と理工学的視点の両方から理解することが重要と捉え,感染様式,マスク着用,換気,空気清浄機について詳細に解説した。新型コロナウイルス感染症に対する感染対策は,まだ研究の発展途上であり,今後,実証を含めた感染対策に関する科学的研究と感染対策技術の開発が望まれる。本稿が皆様の理解の一助になれば幸いである。
Key words:COVID-19(新型コロナウイルス感染症)/Influenza(インフルエンザ)/Tuberculosis(結核)/Mode of transmission(感染様式)/Mask(マスク)/Ventilation(換気)/Air cleaner(空気清浄機).
食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [2]食品衛生7Sの定義「整理・整頓」
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実踐的な活用 [2]食品衛生7Sの定義「整理・整頓」
- 著者:
- 山口 花梨((株)イムテス 環境事業部 技術部門)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.43-49(2021)
食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践は,製造現場を「微生物レベルの清潔さ」にする活動であり,「整理・整頓」から始まる。整理が進むと,製造現場では不要な物がなくなり必要な物だけになる。整頓は,置き場所・置き方・置く量を定めるので,要る物を早く探すことができる。製造現場で使用する器具,機械や原材料をルールに従って管理するので,異変が気づき易くなる。製造現場での実践を通じて,現場レベルから衛生意識が上がり,異物混入対策や作業効率も良くなる。整理・整頓は,微生物制御を行う清掃・洗浄・殺菌の製造環境を整え,作業時間の短縮や清浄度を高めることになる。整理・整頓の実践は,食品衛生7Sの実践活動の1段階であり,一般衛生管理の運用をサポートすることなどを本講座にまとめる。
Key words:Food hygiene(食品衛生7S)/Seiri(整理)/Seiton(整頓)/Food safety and security(食の安全安心)/HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point).
特定酵素基質培地による飲料水からのLegionella pneumophilaの検出
- 表題:
- 特定酵素基質培地による飲料水からのLegionella pneumophilaの検出
- 著者:
- 石﨑 直人,古畑 勝則(麻布大学 生命・環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.1,pp.51-53(2021)
給水54試料,給湯水6試料,井戸水3試料,湧水77試料の合計140試料を対象に,レジオラート(Legiolert,IDEXX)を使用して飲料水検査用プロトコール(100mL法)に準拠し,Legionella pneumophilaの検出を行った。その結果,140試料中38試料(27.1%)で陽性を示したが,これらについて確認したところ,1試料を除く,37試料(26.4%)の陽性はL. pneumophilaによるものではなく,いわゆる誤陽性であった。試料の種類別では,給水・給湯水の上水系試料では誤陽性はまったくなかったが,井戸水・湧水の地下水系試料では80試料中37試料(46.3%)で誤陽性が認められた。これらの同一試料について10mL法によりもう一度試験したところ,誤陽性は16試料(20.0%)に減少した。これら誤陽性の原因となる微生物を同定したところ,腸内細菌ではSerratia marcescensが9試料(20.0%)と最も多かった。ほかにMorganella morganiiやProvidencia alcalifaciensなどであった。また,S. marcescensの陽性菌量を検討したところ,100mL中に3CFUの細胞が存在すればレジオラートで検出可能であることがわかった。
Key words:Legionella pneumophila(レジオネラ)/Drinking Water(飲料水)/Legiolert(レジオラート).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その25)』…新井 一義…目次裏
『防菌防黴学会との関わり』…鈴木 裕之…16
『細菌の環境適応を研究する私自身の環境適応の軌跡』…佐々木 秀明…26
海外文献抄録 …坂上 吉一…50
会報 …54
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.1 (2021)
Vol.49, No.2 (2021)
【 目次 】
肺炎予防を目的とした口腔ケア剤有効成分のIn vitroにおける効果検討
- 表題:
- 肺炎予防を目的とした口腔ケア剤有効成分のIn vitroにおける効果検討(短報)
- 著者:
- 刈田 綾美(文京学院大学大学院),眞野 容子,古谷 信彦,神作 一実
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.55-59(2021)
口腔ケア剤を用いた口腔ケアにより肺炎の発生率が低下したことが海外で報告されているが,肺炎予防は口腔ケア剤本来の目的ではない。本研究では,口腔ケア剤の様々な有効成分が肺炎起炎菌の増殖をコントロールできるかを調査した。既成製品濃度に従い,グルコン酸クロルヘキシジン,塩化セチルピリジニウム,及び1,8-シネオールをミュラーヒントンブロスに添加した。培養後,細菌懸濁液を108 CFU/mLに調整し,口腔ケア剤有効成分添加MHBに添加,600 nmで1時間ごとに吸光度を測定,増殖曲線を作製し,その静菌効果を評価した。粘膜適用可能低濃度であっても,口腔ケア剤有効成分は肺炎起炎菌増殖を効果的に抑制した。増殖抑制効果が最も高い成分は,細菌種によって異なった。したがって,口腔ケアは標的細菌種に基づいて有効成分を選択することで,より効率的な肺炎予防に繋がると考えられる。
Key words:Oral care(口腔ケア)/Pneumonia prevention(肺炎予防)/Chlorhexidine gluconate(グルコン酸クロルヘキシジン)/Cetylpyridinium chloride(塩化セチルピリジニウム)/1,8-cineole(1,8-シネオール).
真菌の分類と同定 [7]酵母の分類と同定
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [7]酵母の分類と同定
- 著者:
- 永塚(半田) 由佳(福山大学 薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.61-70(2021)
酵母はカビ・キノコと同じ菌類でありながら,形態学的特徴が乏しい点において細菌と共通しており,細菌と似た分類・同定の歴史を辿ってきた。一方で,真核生物である酵母には,性に基づく生物学的な種の概念がある点において,細菌とは大きく異なる。そして,酵母の分類・同定手法,分類体系は,科学の進歩に伴い変遷してきた。本稿では,酵母の分類の背景,種レベルの同定法として一般的になっている生理・生化学的性状試験,DNA塩基配列解析,最新のMALDI-TOF MS法,さらに“One Fungus=One Name(1F=1N)”に伴う二重命名法廃止と統一名の導入の影響などを概説する。
Key words:Yeast(酵母)/Taxonomy(分類)/Identification(同定)/Polymorphic life cycle(多型的生活環)/1F=1N.
食品・医療・環境分野での感染制御 [4]生食用食肉について
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [4]生食用食肉について
- 著者:
- 石﨑 直人(麻布大学 生命・環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.71-76(2021)
我が国における食肉の喫食量は年々増加傾向である。近年はこれら食肉を生で喫食する消費者も増え,種類としてはユッケ,鳥刺し,馬刺しなどが挙げられる。しかし,食肉には多くの危害要因が存在するため,各種病原体に汚染された感染源(食肉)を生で喫食した場合,食中毒へ繋がる可能性がある。病原体には腸管出血性大腸菌,カンピロバクター属菌,E型肝炎ウイルス,寄生虫などが挙げられる。今講座では各種食肉に存在する危害要因,これらを制御するための法的整備および検査法について解説をする。
Key words:Raw Consumption Meat(生食用食肉)/Standards and Criteria(規格基準)/Hazard(危害要因)/Food Poisoning(食中毒).
食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [3]食品衛生7Sの定義「清掃・洗浄・殺菌」
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [3]食品衛生7Sの定義「清掃・洗浄・殺菌」
- 著者:
- 青森 誠治(SEITA食品安全コンサルティング)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.77-83(2021)
2020年6月から全ての食品等事業者を対象にHACCPの制度化が始まり,食品の安全性に対する注目度が高まっている。微生物レベルの清潔を目的とした食品衛生7Sの中でも微生物の制御に大きく関わるのが清掃・洗浄・殺菌である。また,アレルゲンのコンタミネーションによる食品事故を防ぐためにも清掃や洗浄は重要な要素となる。清掃・洗浄・殺菌の対象となる汚れや微生物は種類が非常に多く,それぞれ特性が異なるため,微生物やアレルゲンを除去又は許容可能な水準まで低減させるためには効果的な方法を採用する必要がある。また,手作業で行うことが多いため,作業者間でのブレにも気を付けなければならない。本稿では清掃・洗浄・殺菌に関わる様々な要素について解説し,効果的にかつ効率的に行うための方法や手順の文書化について考察した。
Key words:Food Safety(食品安全)/Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Hygiene management(衛生管理)/Sweep(清掃)/Cleaning(洗浄)/Sanitation(清潔).
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [1]野菜サラダ製造におけるハードルテクノロジー
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [1]野菜サラダ製造におけるハードルテクノロジー
- 著者:
- 佐藤 順(東洋大学食環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.85-89(2021)
ハードルテクノロジーについてはかねてより,具体例を多く示して欲しいとの要望が食品業界より寄せられていた。本講座はこれらの背景を念頭に入れ,ハードルテクノロジー의 基本的な考え方の再認識および各種食品におけるそれらの具体例について紹介するものである。本稿は連載講座「ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御」(全10回)の第1回として,ハードルテクノロジーの概要と,野菜サラダへのハードルテクノロジーの応用例を示した。消費期限を従来品よりも延長できる野菜サラダの製造工程には1)野菜の殺菌,2)ガス置換包装,3)低温保蔵3つのハードルが必要である。本講座において示されるハードルテクノロジーの考え方に再認識がなされ,食品業界の各製造業種での微生物制御に役立つことを期待したい。
Key words:Hurdle technology(ハードルテクノロジー)/Microbiological control(微生物制御)/Vegetable salad(野菜サラダ)/Growth curve(増殖曲線).
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [1]開講にあたって
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [1]開講にあたって
- 著者:
- 谷口 暢(サラヤ(株)・丹後フーズ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.91-92(2021)
近年,食品の製造・貯蔵技術は飛躍的に進歩し,腐敗・変敗は激減し,さらに,従来頻繁に発生していた古典的な細菌性食中毒の事件数・患者数はいずれも激減した。一方では,少数ではあるが大型で広域な集団食中毒事件が発生し,食品の衛生管理に対する関心は依然として高いことから,製造業者は消費者が求める安全・安心な食の提供に努めなければならない。従来の食中毒に関する講座の多くは,個々の病原微生物の各論を網羅することが多かったが,本講座では,食品製造現場における微生物危害および衛生管理,環境微生物のモニタリング,加熱に頼らない新規殺菌法,食品の保存技術など「食の安全・安心」に直結する視点での解説も多く取り入れることにした。
Key words:食の安全・安心/微生物危害/衛生管理/殺菌法/保存技術.
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [2]食品製造現場における潜在的微生物危害要因
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [2]食品製造現場における潜在的微生物危害要因
- 著者:
- 土屋 禎((一財)日本食品分析センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.2,pp.93-97(2021)
食品製造現場には,多くの微生物学的な汚染源が存在する。特に環境からの微生物汚染は潜在的で,見逃しやすい。一般衛生管理事項のうち,「施設の衛生管理」及び「設備等の衛生管理」を徹底することは,環境からの微生物汚染を防ぐために重要である。本講座では,環境からの微生物汚染に焦点を絞り,潜在的な微生物危害要因(主に構造上の危険源)及び衛生リスクを低減するための対処策について,関連する法規,規格及び国際的なガイドラインを基に紹介する。潜在的な危険源として,「微生物が増殖しやすい環境」及び「微生物が製品(食品)に混入しやすい環境」がある。食品残渣及び水が意図せず存在する箇所,それらを洗浄し難い箇所,製品上方部の汚れや結露は代表的な危険源といえる。危険源が存在する(衛生リスクが高い)ケースと,危険源による影響を減じている(衛生リスクが低い)ケースを対比することで,より良好な衛生環境を維持する手段を考えることができる。
Key words:Food processing environment(食品製造環境)/Microbiological hazard(微生物学的ハザード)/Hygienic design(衛生設計).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その26)』…新井 一義…目次裏
『感染看護の道-安全な感染防護具の研究へ向けての挑戦-』…森本 美智子…84
海外文献抄録 …坂上 吉一…90
図書紹介 『食品衛生法対応HACCP制度化にまつわるQ&A 現場の困りごとを解決!』…近藤 武志…98
会報 …100
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.2 (2021)
Vol.49, No.3 (2021)
【 目次 】
過酸化水素ガスを用いた安全キャビネットの除染方法の検討
- 表題:
- 過酸化水素ガスを用いた安全キャビネットの除染方法の検討
- 著者:
- 石川 浩介(大和製罐(株) メディカルサイエンス部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.101-105(2021)
安全キャビネットはクリーンベンチと異なり,検体から作業者を守り,かつ検体を清浄空間で取り扱うことを目的とした実験装置である。1種~3種病原体の使用施設は年に1回以上の点検を行うことが義務化されている。JIS K 3800により,定期検査・保守点検前にキャビネット内部の微生物汚染を取り除くことが推奨されており,附属書にてホルムアルデヒドくん蒸による除染方法が掲載されている。近年ホルムアルデヒドの規制が強化されており,代替方法の研究が盛んになされている。本稿では,第十七改正日本薬局方に収載されている過酸化水素ガスを用いて安全キャビネットの代替除染方法を検討したため,方法と結果について一部解説する。
Key words:Low Concentration Vapor Hydroxy Peroxide(低濃度過酸化水素ガス)/Biosafety Cabinet(安全キャビネット)/Decontamination(除染).
シングルセル解析の防腐処方設計への応用
- 表題:
- シングルセル解析の防腐処方設計への応用
- 著者:
- 宮原 佳子(花王(株) 安全性科学研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.107-113(2021)
化粧品のような複雑な処方系では,微生物の挙動も多様である。適切な防腐力を有する頑健な防腐処方の設計には,防腐剤をはじめとする処方成分が微生物に対してどのように影響を及ぼすのか,正しく理解する必要がある。しかしながら,微生物学分野における従来の解析手法は,その大半が集団の平均値に基づくものであり,微生物の細胞個々の挙動を解析することはできない。これに対し,マイクロデバイスとタイムラプス顕微鏡を組み合わせたシングルセル解析技術は,個々の細胞の多様性の解析が可能である。本解説では,シングルセル解析の概要とその特長,解析に必要なマイクロデバイスの作成法や得られた画像の解析手法,及びシングルセル解析技術の製品防腐設計への活用法について,我々が得た実験データを示しながら紹介する。
Key words:Single-cell analysis(シングルセル解析)/Microdevice(マイクロデバイス)/Time-lapse imaging(タイムラプス観察)/Photolithography(フォトリソグラフィ)/Preservative formulation design(防腐処方設計).
食品・医療・環境分野での感染制御 [5]住環境とアレルギー問題
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [5]住環境とアレルギー問題
- 著者:
- 鎌田 洋一(千里金蘭大学生活科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.115-122(2021)
アレルギーは,生後離乳食の摂取による食物アレルギーから始まり,室内大気を呼吸する際に取り込む空中アレルゲンが原因のアレルギー疾患が次に続く。アレルゲンを含むハウスダスト(室内塵)が室内空間に放散し,呼吸によってアレルゲンが取り込まれる。湿度の高い日本の気候では,ダニとカビは永続するアレルゲンソースとなる。室内飼育が通例となったペットもアレルギーを引き起こす。意外なのが室内昆虫で,ゴミとしての固形物以外に,多量のダニの死骸・糞・カビがペットのフケと一緒にハウスダスト中に混入する。外気から混入する花粉も室内大気中に分布するが,住環境アレルゲンとしては,花粉は注目度は低い。小児喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,Aspergillus属のカビが原因の肺炎,アトピー性皮膚炎,成人喘息等,病態を変化させながら発症を続けるアレルギー疾患に留意する必要がある。その制御は対症療法とアレルゲンの忌避以外にない。
Key words:Indoor environment(住環境)/Allergy(アレルギー)/Airborne allergen(空中アレルゲン)/House dust(室内塵・ハウスダスト)/Mite(ダニ)/Fungi(真菌)/Worm(昆虫)/Pet(ペット)/Allergy march(アレルギーマーチ).
食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [3]食品製造現場におけるバイオフィルム
- 表題:
- 食の安全・安心科学-食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [3]食品製造現場におけるバイオフィルム
- 著者:
- 生貝 初(鈴鹿工業高等専門学校名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.123-128(2021)
食品製造設備で使用されている金属材料やプラスチック材料に対するバイオフィルムの形成について,筆者の研究をもとに概説した。前半は,食品工場でバイオフィルムを形成する細菌やバイオフィルムの構造,形成機構について述べた。後半は,鉄系材料である炭素鋼とステンレス鋼の表面に形成された緑膿菌のバイフィルムを比較しながら,ステンレス鋼はバイオフィルムが形成されにくい優れた材料であることを説明した。さらに種々のプラスチック材料表面にバイオフィルムを形成する細菌についても記述した。
Key words:Biofilm-forming bacteria(バイオフィルム形成細菌)/Carbon steel(炭素鋼)/Stainless steel(ステンレス鋼)/Microbiologically influenced corrosion(微生物腐食).
持続社会での木材の長期使用 [1]開講にあたって
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [1]開講にあたって
- 著者:
- 今村 祐嗣((一財)建築研究協会 京都大学名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.129-136(2021)
近年,豊富な森林資源を背景に国産材の利用促進が積極的に行われつつあり,従来の認識を越える木造建築物や使われ方も都市で目にする機会が増えてきました。また,木材のもつ炭素貯蔵効果や長期使用による地球温暖化防止への環境貢献も注目されています。このように持続型社会に向けての木材利用が注目されている中で,木材の劣化防止に視点を当てて本講座を企画しました。すでに当学会においては,2010年に「木材保存の現状と将来」,2014年に「木材劣化の現状とその対策」と題する講座が開設されています。今回は,木材の微生物劣化について森林と生活空間から説き起こし,最近増加している都市での新しい木材利用に視点を当て,その耐久性の向上について木材と劣化微生物の関係を考察し,最新の木材腐朽の化学を解説し,また,新しい保存処理法について紹介するとともに,長期使用の上で重要な劣化診断と保守について解説します。
Key words:Wood(木材)/Durability(耐朽性)/High-performance(高耐久)/Service-life(耐用年数)/Protection(保存)/Preservation(保存剤)/Decay(腐朽).
微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [1]微生物による材料の劣化-概要-
- 表題:
- 微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [1]微生物による材料の劣化-概要-
- 著者:
- 川上 洋司(大阪市立大学大学院工学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.137-148(2021)
本稿では微生物による材料の劣化について概観した。その後,繊維,金属材料,コンクリート,木質材料,紙およびパルプ,文化財のそれぞれの微生物による劣化について簡単に述べた。特にコンクリートと金属材料については,微生物劣化を理解するのに有益であると思われる基礎的な事項についても記述した。最後に,齲歯および無機ガラスの微生物劣化についても簡潔に述べた。
Key words:Deterioration(劣化)/Fiber(繊維)/Metals(金属)/Concrete(コンクリート)/Wood(木材)/Paper and pulp(紙,パルプ)/Cultural heritage(文化財)/Bacteria(細菌)/Fungi(カビ).
食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [4]食品衛生7Sの定義「ドライ」
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [4]食品衛生7Sの定義「ドライ」
- 著者:
- 岡村 善裕((株)ライモック 代表取締役)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.3,pp.149-155(2021)
飲食店の厨房や食品工場で作られる食品の品質には,食中毒や異物混入による健康被害を起こさないために,「衛生管理」が重要な項目となる。その食品の衛生管理を行う上で,食品衛生7Sの整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔の実行が大切である。ドライは,食品衛生7Sの中にはないが,食品の衛生管理を行う上で重要なキーワードである。ドライ化の定義は,水を使用しないことではなく,「不要な水(湿気)のない状態にする」ことである。そして,ドライ化は,「微生物制御」による食中毒などの健康被害を引き起こすリスクを軽減できる。また,ドライ化による作業環境の改善は,衛生面だけなく,作業効率も上がる。食品衛生7S活動に取り組んでいる食品等事業者はドライ化も実践し,効果を上げており,多くの食品等事業者において,ドライ化に取組むことが望まれる。
Key words:HACCP/食品製造現場/食品工場/食品衛生7S/ドライシステム/ウエットシステム/微生物制御/作業環境改善.
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その27)』…新井 一義…目次裏
『新型コロナウイルスの流行について思うこと』…桑原 知巳…106
海外文献抄録 …坂上 吉一…114
会報 …156
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.3 (2021)
Vol.49, No.4 (2021)
【 目次 】
短波長紫外線によるエンドトキシン不活化法の開発
- 表題:
- 短波長紫外線によるエンドトキシン不活化法の開発
- 著者:
- 鈴木 浩子(ウシオ電機(株) 開発設計部門),福井 千恵,蓜島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部),藤巻 日出夫(一般財団法人民生科学協会),菊池 裕(千葉県立保健医療大学 健康科学部栄養学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.157-161(2021)
エンドトキシンはグラム陰性細菌の細胞壁外膜に局在する耐熱性の菌体抗原である。血中に入ると,微量であっても,発熱やショック等の種々の生体反応を引き起こすことが知られている。エンドトキシンは,250℃・30分以上の乾熱処理により,完全に不活化できるが,耐熱性に劣る合成高分子や天然由来材料等には適用できない。一方,既存滅菌法によるエンドトキシン不活化率は,72-95%程度であることが報告されている。そこで我々は,キセノンエキシマランプから放射される172 nmの真空紫外光(Vacuum Ultra Violet Light:VUV光)を利用して,エンドトキシンを簡便且つ短時間に不活化する方法を開発した。本技術は,材料自体の特性にも大きな影響を与えないことから,高度な清浄性が要求される器具類の製造工程等の脱パイロジェン法として活用されることが期待される。
Key words:Endotoxin(エンドトキシン)/LPS(リポ多糖)/Pyrogen(パイロジェン)/Excimer Lamp(エキシマランプ)/Vacuum Ultra Violet(真空紫外線).
食品・医療・環境分野での感染制御 [6]医療従事者における手指汚染リスク要因について
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [6]医療従事者における手指汚染リスク要因について
- 著者:
- 菅原 えりさ(東京医療保健大学大学院)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.163-166(2021)
COVID-19のパンデミックに遭遇し,現在かつてないほど「手指衛生」が注目されている。人々の手指衛生行為が向上するとともに,それを背景に,通常流行する感染症が極端に低減している。それが手指衛生行動の高まりが要因の一つとなっていれば,その効用が証明されたともいえる現象である。それは医療施設内でも同様の状況が推測される。今回これを機に,医療従事者の手指の汚染を考える上で,皮膚の構造や生理,常在菌叢と一過性細菌叢について,そして,医療現場で手が汚染される場面を確認し,手指衛生の適切なタイミングを紹介した。「侮るなかれ手指衛生」,この言葉が心に響く昨今。今回概観した基本的知識について,感染制御を専門とするものとして,改めて肝に銘じたい。
Key words:Hand hygiene(手指衛生)/Skin structure and physiology(皮膚の構造と生理)/Skin contamination(手の汚染)/My five moments for hand hygiene(手指衛生の5つのタイミング).
食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [5]食品衛生7Sの定義「躾・清潔」とは
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実踐的な活用 [5]食品衛生7Sの定義「躾・清潔」とは
- 著者:
- 佐古 泰通((株)石田老舗 品質管理室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.167-173(2021)
2020年6月の食品衛生法改正より全ての食品等事業者を対象にHACCPの制度化が始まった。食品業者は清潔な製造環境を整備し適切なルールに従って食品を製造することで消費者により安全で安心できる製品が届けることをこれまでよりもより一層求められるようになった。食品衛生7Sは,目的が「清潔」であり,微生物レベルの清潔を目指すことである。食品衛生7Sにおける「清潔」とは,「整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌」が「躾」で維持し,発展している製造環境」と定義される。食品衛生7Sの維持継続の対策である「躾」と実践する最終目標の「清潔」が達成されると,食品安全が確保できる製造環境が構築され食品企業の発展に繋げられると考える。本稿では目的である「清潔」と扇の要とも言える「躾」について解説し,食品製造現場の基礎作りとして,一般衛生管理やHACCPに取り組むための助けになるツールとなるようまとめる。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Prerequisite Programs(一般衛生管理)/Microorganisms Level of cleanliness(微生物レベルの清潔).
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [2]牛乳・乳製品製造におけるハードルテクノロジー
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [2]牛乳・乳製品製造におけるハードルテクノロジー
- 著者:
- 田中 孝((株)明治 研究本部 品質科学研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.175-180(2021)
牛乳・乳製品製造におけるハードルテクノロジーについて紹介した。牛乳では加熱殺菌と殺菌後の二次汚染防止技術として,ESL技術について紹介した。また,乳製品として,乳酸菌で発酵するヨーグルトについて紹介した。ヨーグルトの発酵前は,牛乳と同じようにpHが中性であり,細菌が主な危害微生物となるが,発酵後はpHが低くなり,カビ・酵母が主な危害微生物となる。
Key words:Heat sterilization(加熱殺菌)/Extended Shelf Life(ESL)/Acidification(酸性化).
持続社会での木材の長期使用 [2]森林・生活空間における木材と腐朽菌との関係
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [2]森林・生活空間における木材と腐朽菌との関係
- 著者:
- 桃原 郁夫((国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 関西支所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.181-187(2021)
樹木が他個体との生存競争に打ち勝ち,より多くの光エネルギーを獲得するために創り出した仕組みが樹木である。樹木は木材にリグニンを付与することで,木材の耐久性を高め,カビなどの微生物から攻撃から自身を守ることに成功した。一方,そのリグニンに守られた木材を分解できるように進化したのが木材腐朽菌であり,両者は1億年以上にわたって,それぞれが進化しながら森林内で関係を結んできた。木材腐朽菌は通常森林内で生活し,胞子や菌糸の形で森林内を移動するが,近年の生活空間の拡大により森林と生活空間との境界を越えて胞子が生活空間に侵入することもある。生活空間における空気をサンプリングし,その空気の内にある木材腐朽菌の活性を調べた結果,東京の中心部であっても胞子が存在していることや札幌市と熊本市とでサンプリングした空気内に含まれる木材腐朽菌の活性に大きな差がないことなどが明らかになった。
Key words:Forest(森林)/Urban(都市)/Wood(木材)/Wood-decay fungi(木材腐朽菌).
はじめに
紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 1.水道法に基づく水質検査及びその精度管理への取り組み
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 1.水道法に基づく水質検査及びその精度管理への取り組み
- 著者:
- 木下 輝昭(東京都健康安全研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.191-199(2021)
水道によって供給される水が備えなければならない水質上の要件は,水道法第4条水質基準として規定されており,その要件に係る基準の具体的事項については「水質基準に関する省令」で定められている。平成15年における水道法の大幅な改正後の逐次改正方式により,現在では水質基準項目は51項目,水質管理目標設定項目は27項目,要検討項目は45項目が設定されている。水道法に基づく水質検査は,水質の状況を把握し,その異常を早期に発見するためにも,定期的に実施される必要があり,検査機関は,信頼性を確保するため,精度の高い検査が求められている。東京都では,検査機関の技術向上に資する基礎資料を収集し,水質検査の信頼性を一層高めることを目的として,水質検査精度管理を実施している。
Key words:Drinking water quality tests(水質検査)/Drinking water quality standards(水質基準)/Validation guideline(妥当性評価ガイドライン)/External drinking water quality control program(水道水質精度管理).
紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 2.排水処理設備における微生物コントロール
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 2.排水処理設備における微生物コントロール
- 著者:
- 知久 治之(住友重機械エンバイロメント(株)・環境プラント統括部・環境技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.4,pp.201-207(2021)
排水処理設備の中でもその中核となる「生物処理」における微生物のコントロールの概要について解説した。「生物処理」には「好気処理」と「嫌気処理」があり,排水処理のプラントとしてメリットが出るよう,上手に「好気処理」と「嫌気処理」を使い分けて設計する必要がある。「生物処理」の主要コントロール要因には排水投入量(負荷,HRT),栄養源,pH,温度,MLSS,DO,ORP,阻害防止対策等がある。これらコントロール要因の中で最も注意すべき要因は「好気処理」「嫌気処理」を問わず有機物負荷と微生物量のバランス,つまりF/M比と考える。生物処理設備を運転管理するものは,その現場ごとの適正なF/M比を把握し,それを管理することが最も重要である。
Key words:F/M ratio(F/M比)/Activated Sludge(活性汚泥法)/UASB/EGSB.
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その28)』…新井 一義…目次裏
『技能試験試料の調製』…齋藤 明美…162
『微生物検査業務について』…玉田 愛…174
図書紹介 『ずかん ウイルス』…坂上 吉一…188
会報 …208
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.4 (2021)
Vol.49, No.5 (2021)
【 目次 】
繊維製品の抗菌活性測定へのカロリメトリー法による生育遅延時間解析法の適用
- 表題:
- 繊維製品의 抗菌活性測定へのカロリメトリー法による生育遅延時間解析法の適用(短報)
- 著者:
- 髙橋 和宏(岡山県工業技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.209-212(2021)
繊維製品の抗菌性の定量的試験方法として,JIS L 1902:2015では,菌液吸収法,トランスファー法,菌転写法が規定されている。これらの方法では,試験布からの生菌の洗い出しと,洗い出された生菌の計数により抗菌活性が測定される。洗い出し操作と計数操作は煩雑な操作であるため,安定した抗菌活性値の算出には操作者の熟練を要する。本研究では,カロリメトリー法を利用した生育遅延時間解析法を菌液吸収法による抗菌活性測定に適用したところ,洗い出し操作なしで抗菌活性の測定ができることを確認した。またカロリメトリー法で得られたデータは装置付属のソフトウェアを利用することで数分~10分で解析できた。また必要となる消耗資材も削減された。以上のことから,この方法を適用すれば,抗菌活性測定が省力化すると考えられた。
Key words:Calorimetry(カロリメトリー法)/Growth-delay analysis(生育遅延解析)/Growth thermogram(増殖サーモグラム)/Antibacterial Activity Measurement of Textile products(繊維製品の抗菌性測定)/Absorption method(菌液吸収法).
食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [6]食品衛生7Sとペストコントロール
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [6]食品衛生7Sとペストコントロール
- 著者:
- 小田島 有希,松尾 博之((株)環境コントロールセンター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.213-221(2021)
環境整備を基本とし殺虫剤等の使用を優先しないIPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)管理によるペストコントロールは,食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践が有効的な手段である。整理整頓は,有害生物の住処や隠れるところが少なくなる。清掃は,有害生物の食べ物を確実に無くすことができる。また,食品衛生7Sの目的は「清潔」であり,微生物を繁殖させない手段として「ドライ」を推奨している。微生物が発育する3つの条件「温度,栄養,水分」のうち「水分」を除去できる。カビによる食品の汚染を防止し,チャタテムシやヒメマキムシなどの発生原因を無くすことできる。有害生物の駆除に使用する殺虫剤を減らし,製造環境内で効果的な運用ができる。食品衛生7Sの実践は,ペストコントロールが目指すIPM管理に有効な手段であることを,事例をもちいて本講座まとめる。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Pest Control(ペストコントロール)/HACCP institutionalization(HACCP制度化)/Integrated pest management(総合的有害生物管理)/Prerequisite Programs(一般衛生管理).
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [5]食品製造現場・食品における芽胞形成細菌
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [5]食品製造現場・食品における芽胞形成細菌
- 著者:
- 阪口 義彦(北里大学 医学部 微生物学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.223-228(2021)
本講座では,食品製造現場・食品における芽胞形成細菌について記載した。概要として,1.芽胞形成細菌の予防,2.芽胞形成細菌の種類と分布,3.食品衛生上問題となる芽胞形成細菌,4.食品製造現場・食品による汚染について解説した。「3.食品衛生上問題となる芽胞形成細菌」については,食中毒や食品変敗の原因となる(1)ボツリヌス菌,(2)ウエルシュ菌,(3)セレウス菌,(4)枯草菌の4菌種を例にあげ,それぞれの菌種について説明した。芽胞は,土壌や水系環境など自然界に広く分布していることから,様々な食材に汚染する可能性がある。食品製造や調理の現場において,食材の洗浄,調理および加熱殺菌などの工程を経て食品を製造しても食品中に芽胞が生存することがあり,芽胞が食中毒や食品の変敗(酸敗)の原因となり大きな問題となる。そこで,食品製造現場での芽胞の汚染対策および殺菌・消毒法などについて記述した。
Key words:Food manufacturing floors(食品製造現場)/Food(食品)/Spore-forming bacteria(芽胞形成菌)/Contamination(汚染)/Sterilization(殺菌).
持続社会での木材の長期使用 [3]都市の外装木材の劣化とその抑制
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [3]都市の外装木材の劣化とその抑制
- 著者:
- 矢田 茂樹(横浜国立大学名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.229-234(2021)
近年,新国立競技場に見られるように,都市の建造物に木材を現わしで使用する例が増えている。こうした空間では耐久性のみならず木材の美装性の維持が喫親の課題となっている。ここでは,都市における木材の使用事例を紹介した上で,美装劣化の実態を提示しつつ,その抑制策の現状と課題を論考する。
Key words:Degradation(劣化)/Weathering(ウェザーリング)/Exterior wood(外構材)/Discoloration(変退色)/Surface texture(表面性状).
微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [2]微生物による金属の劣化と対策
- 表題:
- 微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [2]微生物による金属の劣化と対策
- 著者:
- 若井 暁(国立研究開発法人海洋研究開発機構・超先鋭研究開発部門)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.235-241(2021)
微生物が金属を腐食する現象は古くから知られているが,未だに腐食性微生物の全容は明らかになっておらず,診断技術や防食技術も開発途上である。本稿では,微生物腐食の歴史や腐食性微生物の最新の情報を更新すると共に,今後の診断や防食技術開発の可能性について言及する。2000年以降様々な新規腐食性微生物が発見され,電気化学活性を持った微生物による直接的な腐食の研究が進んでいる。同時に遺伝子解析技術の発展に伴い,様々な腐食環境での微生物群集構造動態が明らかになりつつあり,腐食診断への遺伝子解析が導入され始めている。一方で,迅速で正確な診断技術の開発は未達であり,微生物腐食に特化した防食技術の開発も進んではおらず,腐食性微生物の情報に基づいた最適化された技術開発が今後は必要であるだろう。
Key words:Corrosion(腐食)/Microorganism(微生物)/Genetic analysis(遺伝子解析).
紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 3.透析医療の水の衛生管理
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 3.透析医療の水の衛生管理
- 著者:
- 大薗 英一((医)信英会 越谷大袋クリニック,日本医科大学 微生物学免疫学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.243-249(2021)
血液透析関連で使用される医療機器は,生命維持装置として多彩な機能を来すために内部構造が複雑である。出荷前に行われる通水試験時の水が,施設搬入時に残っており,初期洗浄時の汚染が最も高度で分離される菌種も多く多彩であった。装置間にUF膜を設置して区画化し,清潔操作で二次汚染を防いだうえで,臨床使用後毎日洗浄消毒しても,確率論的に菌は分離された。その多くはMethylobacterium属で,どの装置も初期洗浄時と同じ菌種が分離され,装置内の部品や配管にバイオフィルムとして棲息していると考えられた。透析用装置に使用される高濃度の消毒剤を長時間反応させても,バイオフィルム内の菌は殺滅されず遺残した。蛍光染色法と培養法で,洗浄初期や未消毒の配管から採取される溶液中の菌数はほぼ等しい。しかし洗浄消毒により,両者の差は2~3桁に広がる。消毒による損傷で培養不能となっても死滅していないと考えられ,汚染度の評価に蛍光法などの迅速法の併用が必要になると考えられた。
Key words:Biofilm(バイオフィルム)/Disinfectant(消毒)/Flushing(洗浄)/Methylobacterium sp.(メチロバクテリウム属).
紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 4.新しい大気圧低温プラズマと表面処理および液中殺菌への応用
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅡ 〜水の衛生管理〜 4.新しい大気圧低温プラズマと表面処理および液中殺菌への応用
- 著者:
- 沖野 晃俊(東京工業大学 未来産業技術研究所),高松 利寛(東京理科大学 生命医科学研究所,国立がん研究センター 先端医療開発センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.5,pp.251-256(2021)
物質の第4の状態であるプラズマは物理的・化学的に高い活性を持つため,さまざまな分野で応用されている。例えば,10,000℃以上の高温を容易に実現できる事を利用した廃棄物処理や核融合などへの応用,気体に固有の波長の光を発する事を利用した光源や元素分析などへの応用があげられる。さらに,反応性の高い粒子や高速の粒子が生成されることを利用し,半導体プロセシングには不可欠な技術となっている。これまで,各種の産業応用には減圧下で生成されるプラズマが広く使用されてきたが,21世紀に入った頃から,大気圧下で生成されるプラズマが注目を集めるようになってきた。これは,ガス温度が室温程度の低温な大気圧プラズマ源の開発が進んだ事と,一様で安定な大気圧プラズマを大面積もしくは大容量で生成する技術が大きく進歩した事が要因である。低温の大気圧プラズマは直接手を触れることもできるが,ガス温度が低いだけであって,プラズマ中のラジカルなどは減圧下と比較してむしろ高い密度で生成されるため,高い反応性や処理能力を持つ。つまり,減圧チャンバに入れられない大型の物質や生物試料,熱に弱い素材をプラズマ処理できるようになり,表面処理による高機能化や接着性の向上などが期待されている。さらに,大気圧プラズマは液体に照射したり,液中にバブリング導入できるため,液体の処理や液体の殺菌などへの期待も高まっている。本稿では,いくつかの新しい大気圧低温プラズマ装置と表面処理および殺菌への適用例について紹介する。
Key words:プラズマ/表面処理/殺菌/ラジカル/温度制御.
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その29)』…新井 一義…目次裏
『図書館と黴』…遠田 智江…222
『これまでの業務経験について』…廣瀬 建太郎…242
海外文献抄録 …坂上 吉一…257
会報 …258
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.5 (2021)
Vol.49, No.6 (2021)
【 目次 】
山梨県のアルカリ性(pH10程度)温泉におけるモノクロラミン消毒の有効性の検討
- 表題:
- 山梨県のアルカリ性(pH10程度)温泉におけるモノクロラミン消毒の有効性の検討(原著論文)
- 著者:
- 栁本恵太,堀内雅人,山上隆也,植松香星,久田美子(山梨県衛生環境研究所),杉山寛治,田中慶郎((株)マルマ),茶山忠久,市村祐二(ケイ・アイ化成(株)),泉山信司(国立感染症研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.261-267(2021)
遊離塩素消毒が困難なpH9〜10程度のアルカリ性温泉3施設における浴槽水の消毒実証試験を行った。全ての施設でレジオネラ属菌,アメーバ,大腸菌群が検出されず,一般細菌数は遊離塩素管理時と比較し,同等または減少傾向にあった。一方で,従属栄養細菌数の増加が1施設で認められた。従属栄養細菌は一度増加すると減少させるのが困難であったことから,増加前から対策を講じることが重要であると考えられた。
Key words:Monochloramine(モノクロラミン)/Alkaline hot spring(アルカリ性温泉)/Legionellaspecies(レジオネラ)/Heterotrophic bacteria(従属栄養細菌).
環境管理による院内(病院)感染防止 -最新情報をふまえて- [5]清掃分野を中心とした環境管理の現状
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止−最新情報をふまえて- [5]清掃分野を中心とした環境管理の現状
- 著者:
- 嶽本剛平((株)ウィング)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.269-273(2021)
清掃の目的は清潔で衛生的環境を常時維持するために行われる。病院においては患者へ提供する安全な医療行為を担保することにある。それぞれの環境の使用目的に合った清潔度を判断すること,無駄なコストを省く知識(情報)・努力も大切である。今回,諸外国の病院等の医療施設,および日本国内の事務所等のビル管理面での清掃の現状について,日常清掃,定期清掃,および臨時清掃面を中心に解説した。欧米では,病院等での医療施設等での感染症予防対策としての清掃等のスキルは確立され,責任者の意識は高いが,一般的に現場作業員は社会的に恵まれていない移民の人々で占められている場合が多く,そのため指示通りに行うのは難しいと思われた。清掃効果の評価は各清掃資材開発および製造会社内で行われ,共通した評価方法が確立されてないために,カタログ内容では各会社間の清掃資材の評価が出来にくいのが現状と思われる。また,院内感染症を考慮した研修制度が十分確立されることが必要かと思われた。
Key words:In-hospital cleaning(院内清掃)/Wet cleaning(湿式清掃)/Cleaning materials(清掃資材).
食品・医療・環境分野での感染制御 [7]麻痺性貝毒とフグ毒 -生物学的分布,食中毒防止対策と分析法-
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [7]麻痺性貝毒とフグ毒 -生物学的分布,食中毒防止対策と分析法-
- 著者:
- 佐藤 繁(北里大学海洋生命科学部 応用生物化学講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.275-280(2021)
麻痺性貝毒とフグ毒は致死的な食中毒を引き起こすことから,食品衛生上の重大な問題となっている。本稿では,これら2種の海洋生物毒の性状と生物学的分布,類似点を紹介する。食材中のこれら2種の毒は従来,マウス試験法で定量されてきた。しかし近年,同法に対しては動物実験に関わる様々な問題点が指摘されており,これに替わる毒の分析の開発が急務となっている。ELISA法はその第1候補である。これらの毒をハプテンとするモノクローナル抗体が既に開発されているものの,多数の関連成分からなるこれらの毒成分の一部しか認識せず,これに基づくELISAキットは使用に制約が多かった。本稿では筆者らが新たに開発した,それぞれの毒の関連成分を広く網羅するポリクローナル抗体の開発とその応用について,併せて概要を記載する。
Key words:麻痺性貝毒/フグ毒/ELISA/貝毒モニタリング/分析法.
食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [7]食品衛生7Sの導入事例
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [7]食品衛生7Sの導入事例
- 著者:
- 金山民生(東洋産業(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.281-287(2021)
2020年6月より改正食品衛生法の施行により全ての食品関連事業者に対しHACCP制度化がスタートした。このHACCPを有効に機能させるためには環境を清潔にし,安全な食品が製造できるようにするため前提条件プログラム(PRP)が確実に構築されなければならない。NPO法人食品安全ネットワークでは,PRPに相当し食品の安全を確保する基本的な活動となる「食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)」を提唱している。今回はこの食品衛生7Sを製造現場に導入した二社の事例を紹介する。この中では,継続的活動が実現するために必要な事項として,トップマネジメントの意欲と理解,現場主動型の活動となる仕掛,衛生管理に対する意識の形骸化を防ぐ具体的な取り組みについて述べる。二社ともに,食品衛生7Sの導入成果として業界団体HACCPの認証取得が実現できたが,このことからもHACCPを構築する上で食品衛生7Sの重要性が理解できる。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Prerequisite Program(前提条件プログラム)/HACCP(ハサップ)/In the supermarket Process center(スーパーマーケットのプロセスセンター)/Meat processing(精肉加工)/Fresh fish processing(鮮魚加工)/Side dish manufacturing(そうざい製造)/Bento manufacturing(弁当製造).
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [6]食品製造現場における環境微生物検査
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [6]食品製造現場における環境微生物検査
- 著者:
- 横山 博((株)マルマ 検査部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.289-293(2021)
HACCP制度化によって,食品の衛生管理は工程毎の一般的管理プログラムによって実施されることになった。しかし,HACCPに沿った衛生管理の中でも微生物検査が必要になる場面が多々ある。特に,2次汚染の管理においては,環境微生物検査が有用である。HACCPの中で環境微生物検査は,妥当性確認,検証,原因究明の3つの目的で使用される。環境微生物検査では,食品微生物検査のように検査項目,基準値などが食品衛生法や衛生規範で定められていることが少ないため,基本的には自社基準を設ける必要がある。その際に使用されることの多い微生物として,汚染指標菌(一般生菌,大腸菌群,黄色ブドウ球菌)がある。また,サンプリング方法としては,物の表面の微生物を対象とする付着菌検査(拭き取り法,スタンプ法),空気中の微生物を対象とする落下菌検査および浮遊菌検査が用いられる。
Key words:Food manufacturing facility(食品製造施設)/Environmental microorganisms(環境微生物)/Adhesive Microorganisms(付着菌)/Airborne microorganisms(空中微生物).
持続社会での木材の長期使用 [4]木材・木造構造物と劣化微生物
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [4]木材・木造構造物と劣化微生物
- 著者:
- 酒井 温子(奈良県森林技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.295-303(2021)
木材を劣化させる微生物のなかで,木材の強度低下を引き起こす木材腐朽性担子菌に焦点を当て,腐朽木材からの菌の分離・同定方法,分離菌の生育温度や木材分解力の検証方法を解説した後,実際の木造構造物の腐朽事例をあげ,腐朽を引き起こした原因菌と推定される担子菌について考察した。ここで紹介する担子菌は,オオウズラタケ,チョークアナタケ,シイサルノコシカケ,イドタケ,カワラタケである。一方,攻撃される木材の耐朽性についても解説を行い,担子菌と木材内の抗菌成分との戦いの結果,担子菌が強いと木材腐朽が起こることを説明した。また,今回のような菌の分離を前提とした研究手法について,有効性とともに解明できない事項があることにも注意を払うと共に,腐朽を予防する対策として,木材保存剤による防腐効果についても取り上げた。
Key words:Wood(木材)/Wooden structure(木造構造物)/Degrading microorganisms(劣化微生物)/Decay(腐朽)/Fungi(菌類).
はじめに
紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 2.梅酢ポリフェノールの抗ウイルス活性とその応用(呼吸器感染症予防)に向けた試み
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 2.梅酢ポリフェノールの抗ウイルス活性とその応用(呼吸器感染症予防)に向けた試み
- 著者:
- 池田 敬子(和歌山県立医科大学保健看護学部),辻本 和子,西出 充德(和歌山信愛女子短期大学食物栄養専攻),味村 妃紗,三谷 隆彦(和歌山大学食農総合研究教育センター),長尾 多美子(四国大学短期大学部人間健康科介護福祉専攻),Tsutomu Arakawa(Alliance Protein Lab.),桑原 知己(香川大学医学部),小山 一(和歌山信愛女子短期大学食物栄養専攻,和歌山県立医科大学医学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.6,pp.307-315(2021)
梅干しの生産過程では副生成物として多量の梅酢を生じる。この梅酢中には梅果実に含まれていたポリフェノールが多量に含有されている。このポリフェノールは三谷らにより梅酢ポリフェノール(UP)として工業的に精製され,我々はUPのウイルスに対する作用について調べてきた。インビトロの系での解析からUPが細胞毒性を示さない濃度でウイルス増殖抑制作用(抗ウイルス作用)やウイルス不活化作用(消毒作用)を示すことを見出し,さらに不活化作用に対するタンパク質による妨害作用の克服を目指して,UPと協働的に働く化合物についても検討した。また,これらの結果に基づいてうがい薬として用いた場合の呼吸器感染症への予防効果を臨床研究として調べ,感染防御効果として有意な結果を得た。本総説では,網羅的な記述を避け,組織障害作用が少ない消毒薬の意義とその応用について論じるとともに,我々がこれまで見出してきたUPの抗ウイルス作用とその応用に向けた研究を中心に紹介する。
Key words:Umesu phenolics(梅酢ポリフェノール)/Mucosa-friendly disinfectant(組織障害のない消毒薬)/Respiratory viral infection(呼吸器ウイルス感染)/Food-derived disinfectants(食物由来抗ウイルス活性)/Virus inactivation(ウイルス不活化).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その30)』…新井 一義…目次裏
『カビと私と油』…梶原 学…274
『学際』…太田 順司…294
図書紹介
『キトサンと木材保存 -環境適合型保存剤の開発』…坂上 吉一…288
海外文献抄録 …坂上 吉一…304
会報 …316
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.6 (2021)
Vol.49, No.7 (2021)
【 目次 】
新規な抗菌抗ウィルス剤を目的とする無機化合物ポリオキソメタレートの開発の現状
- 表題:
- 新規な抗菌抗ウィルス剤を目的とする無機化合物ポリオキソメタレートの開発の現状
- 著者:
- 飯島 淳(東京農工大学大学院工学府)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.317-321(2021)
我々人類が,現在の生活維持し,将来により便利な生活を営むためには,再興および新興感染症と上手に付き合わなければならない。そのために,従来の有機化合物だけでなく,幅広い化合物,物質を医療に応用することが必須である。その1つの候補として,ポリオキソメタレート(ポリ酸)と呼ばれる無機化合物を紹介する。ポリ酸は,合成・構造上の特性から,有機化合物にはない構造を生み出すことが可能であり,抗ウィルス,抗菌作用の医療への応用が期待されてきたが,現在その研究は国内外で足踏み状態である。そして既往の作用は,ポリ酸がキラルであってもラセミ体の作用で,キラルなエナンチオマーを単離することで,その作用は大きく向上する可能性がある。これまでの病原微生物と有機化合物医薬品との恒久的いたちごっこを解消すべく,キラルなポリ酸の無機医薬への応用が進んでいくことを望んでいる。
Key words:Polyoxometalate(ポリオキソメタレート)/Chirality(キラリティ)/Anti-Viral Activity(抗ウィルス活性)/Anti-Bacterial Activity(抗菌活性)/Life Epidemic Prevention(生活防疫).
環境管理による院内(病院)感染防止 -最新情報をふまえて- [6]歯科領域での環境管理の現状 -院内感染防止を踏まえて-
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [6]歯科領域での環境管理の現状 -院内感染防止を踏まえて-
- 著者:
- 藤田 真理,永野 恵司(北海道医療大学歯学部口腔生物学系微生物学分野)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.323-328(2021)
歯科領域における感染防止を目的とした,環境管理に関しては,優れた書籍やガイドラインが多数報告されている。そこで,本講座では,それらの報告を踏まえ,近年,歯科領域の環境管理で問題となっている事例についてまとめた。すなわち,歯科領域に特徴的な,飛沫の拡散,歯の切削機(ハンドピース)の汚染,および歯科診療台の給水系の汚染について,その防護策を含めて論じた。また,本年(2020年),世界中に甚大な被害をもたらしている新型コロナウイルスに対し,歯科領域における感染防止について述べた。
Key words:Dentistry(歯科)/Environment management(環境管理)/Dental aerosol(飛沫)/Handpiece(ハンドピース)/SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)
食品・医療・環境分野での感染制御 [8]職場での感染症対策について
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [8]職場での感染症対策について
- 著者:
- 新名 史典((株)Smart Presen)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.329-336(2021)
2020年からのCOVID-19による感染拡大によって,感染予防の知識を有しない一般事業所のような職場でも感染対策の必要性に迫られた。しかし,知識を有しないことと,様々な氾濫する情報の中で不適切な対応も多々見られ,正しい感染対策の知見を広めることの重要性が認識された。筆者は感染予防や衛生管理の教育普及に務めてきたが,現在は一般企業や自治体などの組織において研修講師業を営んでおり,専門的な知見をわかりやすく普及させる取り組みを行っている。その立場からこの1年で実感したどのような情報をどう伝えるべきなのかという観点から,一般事業所における感染対策の要点をまとめた。特に誤解されやすいこと,間違って普及している情報などを整理し,なぜそのような理解になるのか,何がわかりにくいのかをいったんは受け止めることが必要である。その上で,なぜそのような対策が必要なのかを具体的に説明していくことで,正しい感染対策の知見を普及させることができると考える。
Key words:Infection control(感染対策)/Office(一般事業所)/Workplace(職場)/Basic knowledge(基礎知識).
持続社会での木材の長期使用 [5]木材腐朽菌の科学
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [5]木材腐朽菌の科学
- 著者:
- 吉田 誠(東京農工大学 農学研究院)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.337-343(2021)
腐朽とは,木材腐朽菌と呼ばれる真菌類の一群が木材細胞壁構成成分であるセルロース,ヘミセルロース,リグニンなどを攻撃し,それによって木材の強度低下や損傷が引き起こされる現象である。これは言い換えれば,木材腐朽菌が木材細胞壁の成分を分解し,その分解物をエネルギー源として摂取し,最終的に木材構成成分が二酸化炭素と水にまで代謝されるプロセスとも言える。「木材腐朽菌の科学」では,腐朽という現象を,上記のような生物学的なプロセスとして捉えることで,木材腐朽菌がどのように餌となる木材細胞壁を攻撃するのか,その分子メカニズムについて,最新の知見を含めて概説する。
Key words:木材腐朽菌/白色腐朽菌/褐色腐朽菌.
微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [3]微生物によるコンクリートの劣化と対策
- 表題:
- 微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [3]微生物によるコンクリートの劣化と対策
- 著者:
- 森永 力(県立広島大学国際交流センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.345-348(2021)
コンクリートの劣化について,まず化学的な作用による劣化の種類や機構について述べた。つぎに,微生物による劣化について,代表的な下水道の例をあげ,その機構について説明した。そして,我々の実験,研究を紹介して,下水道のような嫌気的な条件でなくても,好気的な条件でもコンクリートの劣化が起こることを記述した。最後に,現在行われている微生物による劣化を防ぐための対策について,2,3の方法についても触れた。
Key words:Concrete(コンクリート)/Microbial deterioration(微生物劣化).
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [1]開講にあたって 芝崎 勲先生没後10周年・生誕100周年にあたり
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [1]開講にあたって 芝崎 勲先生没後10周年・生誕100周年にあたり
- 著者:
- 米虫 節夫(日本防菌防黴学会・名誉会長)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.349-350(2021)
「食品殺菌工学」を確立された芝崎 勲先生の没後10周年・生誕100周年を記念して,先生がいつも言われていた「微生物との戦いは永遠につづく!」と題した特集の第2弾を先生有縁の皆様の協力により組むことにした。
Key words:芝崎 勲/食品殺菌工学.
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [2]微生物との闘争と共存における制御の概念 -テクノロジーへのサイエンスとシステムの協同の意義-
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [2]微生物との闘争と共存における制御の概念 -テクノロジーへのサイエンスとシステムの協同の意義-
- 著者:
- 土戸 哲明(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.351-358(2021)
人類はその長い歴史において常にウィルスや微生物と闘ってきたが,その一方では彼らとの共存・共生の意義も論じられている。ときまさにコロナ禍の中,微生物制御においてはどのような概念のもとに闘えばよいのか,制御の基本概念に立ち,今後の方向性について論じた。制御の基本要素は制御対象物や場,微生物,そして制御法の3つであり,実用にあってはそれらをとりまくいくつかの条件的な要素も関わる。微生物制御はテクノロジーであるが,将来的なその意義づけのために,制御の本質である制御機構の詳細が理解される必要がある。このためにはサイエンスの協同が欠かせない。またとくに食品の分野で普及するHACCPのようなシステム化の概念もより重要性を増しており,その信頼性や精密性の向上にはシステムの協同も不可欠である。本稿では,さらに生命論の視点からも微生物との闘争と共生の問題について論じるとともに,今後の制御の方向を考える上で,関係性,時代性,局所性の3つの適性要素を挙げて考察した。
Key words:Microorganism control(微生物制御)/Battle and coexistence(闘争と共存)/Technology(技術)/Science(科学)/System(システム).
紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 1.空気質家電の除菌技術
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 1.空気質家電の除菌技術
- 著者:
- 堀切 茂俊,稲垣 純(パナソニック エコシステムズ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.7,pp.359-366(2021)
清浄な室内空気質の維持は,健康な生活を維持するために重要であり,換気による外気導入によって実現される。一方,外気導入は温熱環境の快適性とのトレードオフとなるため,これを解決するためには,空気清浄機が有効である。室内の空中浮遊菌は,空気清浄機の集塵フィルタで除去され,さらに薬剤や紫外線,プラズマ放電などの各種除菌技術によってフィルタ表面で処理される。一方,近年,空気中に直接作用する新たな除菌技術が提案され,各種製品が上市されている。中でも,次亜塩素酸の水溶液を用いた空間除菌技術は,ミスト状,気体状で空気中の浮遊粒子や固体表面に直接的に作用することが確認されているほか,空間中における挙動についての解析がなされている。このような機器を用いた空気清浄機能の有効性および,今後の展望について述べる。
Key words:Air Purifiers(空気清浄機)/Indoor air quality(室内空気質)/Sanitize(除菌)/Hypochlorous acid(次亜塩素酸).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その31)』…新井 一義…目次裏
『化粧品工場における微生物管理』…大草 利行…322
『芽胞をナノレベルで解析する -芽胞菌制御や検査,研究の有力なツール 走査型プローブ顕微鏡』…中西 弘一…367
図書紹介
『最新版 ビジュアル図解 洗浄と殺菌のはなし』…坂上 吉一…344
会報 …368
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.7 (2021)
Vol.49, No.8 (2021)
【 目次 】
環境水から高頻度に分離されたIS1151プラスミド型エンテロトキシン(CPE)遺伝子保有ウエルシュ菌の人口集中地区への局在
- 表題:
- 環境水から高頻度に分離されたIS1151プラスミド型エンテロトキシン(CPE)遺伝子保有ウエルシュ菌の人口集中地区への局在(原著論文)
- 著者:
- 下中晶子,余野木伸哉,川津健太郎((地独)大阪健康安全基盤研究所微生物部細菌課),枝川亜希子((地独)大阪健康安全基盤研究所衛生化学部生活環境課)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.369-374(2021)
ウエルシュ菌の一部はエンテロトキシン(CPE)を産生し,食中毒や感染症の原因となっている。CPE遺伝子保有ウエルシュ菌はヒトの糞便検体から分離されることが多く,ヒトと関連して分布すると考えられる。本研究では環境水から分離されたウエルシュ菌についてCPE遺伝子の保有とその存在部位を調べた。さらに採水場所の周辺人口を確認し,人口分布とCPE遺伝子保有株との関連性を調査した。その結果,IS1151型のCPE遺伝子を保有するウエルシュ菌が,大阪府に位置する流域の異なる河川や湖沼に広く分布すること,都市的地域に局在することを明らかにした。
Key words:Clostridium perfringens(ウエルシュ菌)/Enterotoxin(エンテロトキシン)/IS1151(IS1151)/Environmental water(環境水)/Urban area(都市的地域)
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [4]惣菜製造におけるハードルテクノロジーの応用
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [4]惣菜製造におけるハードルテクノロジーの応用
- 著者:
- 濱中 大介(鹿児島大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.375-379(2021)
ライフスタイルの多様化から,中食である惣菜や弁当の市場は拡大している。原材料の種類や調理方法が多岐に亘るとともに,宅配や持ち帰りをはじめとして,温度管理を中心とした微生物制御が非常に難しい商品であると言える。惣菜の衛生管理を確実に行うためには,ハードルテクノロジーを有効に設定・運用することが求められる。すなわち,殺菌等の積極的な“やっつける”ハードルに加えて,低温,pH,水分活性,フィルム包装といった“つけない・ふやさない”ハードル,さらにはこれらのハードルが確実に実行されるための補助剤等のハードルを有効かつ有機的に連携させるとともに,一般衛生管理やその土台となる食品衛生7Sを導入することが重要である。本稿では,筆者らがこれまで実施した実験データを例示しながら,惣菜の安全性を高度に保つために必要なハードルテクノロジーに関して論述する。
Key words:Hurdle technology(ハードルテクノロジー)/Active microbiological control(積極的微生物制御)/High pressure processing(高圧処理)/Combined process(併用処理).
持続社会での木材の長期使用 [6]都市型外装木材の保存処理
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [6]都市型外装木材の保存処理
- 著者:
- 木口 実(日本大学生物資源科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.381-389(2021)
都市部における外装用木材や木質材料は,デッキやルーバーの他,店舗外装,外壁,道路施設等に使用されるようになってきている。これら都市型外装木材の保存処理では,耐朽性と共に美観維持のための耐候性,防耐火の面からの難燃性等が要求されている。また,都市部では特に木材は環境素材として使用される傾向があるため,環境や使用者への安全性も求められている。このような点から,本稿では都市型外装木材の保存処理として,木材を200℃以上で処理する熱処理,アセチル化等の化学修飾処理,フェノール樹脂やフラン樹脂等による樹脂注入処理,熱可塑性プラスチックとの複合化による混練型WPC(ウッドプラスチック)について解説する。
Key words:外装木材/耐久性/非薬剤処理/化学修飾/混練型WPC.
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [3]芝崎 勲先生の思い出
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [3]芝崎 勲先生の思い出
- 著者:
- 矢嶋 瑞夫(アサマ化成(株) 代表取締役)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.391-392(2021)
芝崎 勲先生とのご縁は,日本酒のポスト・サリチル酸として,卵白リゾチームを利用する研究で発酵工学雑誌(46巻10号(1968))に投稿した後,実用化に向けてご指導いただいたことから始まりました。先生には弊社の隔月発行技術情報紙「パートナーニュース」(PN)に1994年から2007年までの14年間,78回執筆していただきました。先生はPN #114(2006)の中で「人類と微生物との戦いは永遠に続く」と表現され,未知の微小生物が見いだされる可能性があるとして,1970年以降明らかにされた微小生物をまとめられ,ウイルス11種が重要な病原体であったことを指摘されています。先生の言われた,食品の保蔵性を高めるために「物理的処理の補完に防腐剤を使う」方法は,現在加工食品の主流になっているチルド流通食品(10℃以下保存)で,防腐目的として各種の食品添加物で補完されています。クリーンラベルの流れでしょうか。最近では醸造酢など食品素材で補完する方法も始まっています。先生のご指導された食品の保蔵法は受け継がれ,続きます。
Key words:Salicylic acid(サリチル酸)/Egg white lysozyme(卵白リゾチーム)/Virus(ウイルス)/Chilled distribution foods(チルド流通食品)/Clean label(クリーンラベル).
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [4]醗酵出身の私が,水産,食肉分野で行った品質に関する研究について
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [4]醗酵出身の私が,水産,食肉分野で行った品質に関する研究について
- 著者:
- 塚正 泰之(近畿大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.393-398(2021)
大阪大学工学部醗酵工学科(第3講座:芝崎 勲教授)を卒業した私は,卒業後に勤めた丸大食品(株)と近畿大学農学部水産学科において,水産食品,食肉製品の物性や呈味性などの品質に関する研究を行っている。加熱殺菌は微生物制御の主要な手段であるが,加熱条件によって品質は大きな影響を受けることから,加熱によって引き起こされる品質の変化とその原因,対策などを中心に,これまでの研究を紹介した。魚肉ねり製品の品質については,丸大食品時代から現在まで長く続けているテーマで,魚肉特有の坐り現象,戻り現象,副原料などが品質に及ぼす影響などを記述した。また,近畿大学が世界で初めて開発した完全養殖クロマグロの品質と安全性向上,冷凍魚の解凍後の品質保持,ウナギ風味のナマズの品質の他,畜肉製品の呈味成分と加熱の関係などについても紹介した。
Key words:Fish cake(魚肉ねり製品)/Seafood(水産食品)/Meat product(食肉製品)/Quality(品質).
微生物を利用した有用物質生産 [1]「何を原料として,何の菌を使用して,何を作るのか?」 -開演にあたって-
- 表題:
- 微生物を利用した有用物質生産 [1]「何を原料として,何の菌を使用して,何を作るのか?」 -開演にあたって-
- 著者:
- 森 美穂(近畿大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.399-403(2021)
現在,微生物を使用して作ることができる物質の種類は著しく増加し,バイオプラスチック,有用タンパク質,高機能化学品,バイオ燃料,食品用機能性物質,医薬品中間体など,多岐にわたる。日本政府が提示した「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」目標の中で,日本の微生物資源・生産資源,発酵技術の強みを生かしたバイオ生産システムにより,環境的にも経済的にも持続可能な社会を実現することが設定された。微生物のものづくりに必要な原料としては,カーボンニュートラルな資源である廃棄物系バイオマスと未利用系バイオマスが注目されている。物質生産に用いる微生物はすでに保存されているものを使用する場合と,探索源かスクリーニング方法を工夫して,自ら単離した優れた能力をもつ新規の菌株を使用する場合がある。本稿では,講座を開講するにあたって,微生物による物質生産に関する概要と最近の日本政府の取り組みについて紹介する。
Key words:Using microorganisms(微生物利用)/Useful compounds(有用物質)/Bioeconomy(バイオエコノミー)/Biomass(バイオマス)/Recombinant(遺伝子組換え株)/Smart cell(スマートセル).
紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 3.ホタテ貝殻焼成酸化カルシウム(BiSCaO)の殺菌・消毒剤としての有用性と安全性
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 3.ホタテ貝殻焼成酸化カルシウム(BiSCaO)の殺菌・消毒剤としての有用性と安全性
- 著者:
- 福田孝一,秦 裕樹,比留間寿美代,安藤尚子,石原雅之,中村伸吾(防衛医科大学校・防衛医学研究センター・医療工学研究部門),高山智宏(防衛医科大学校病院・歯科口腔外科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.405-411(2021)
ホタテ貝殻焼成酸化カルシウムであるBiSCaO(Bio-Shell Calcium Oxide)を基にした懸濁液,分散液,コロイド分散液及びBiSCaO Waterの消臭剤及び消毒剤としての効果を既存の焼成カルシウム製剤と比較した。その中で,BiSCaO Waterは,ウイルス,菌,真菌に対して高い抗菌効果を持ち,エタノール,BiSCaOおよびCa(OH)2懸濁液,プロビドンヨウ素,NaClOと比較しても,高い消臭・殺菌効果を示した。BiSCaO Waterは,病原微生物に対して,特にCOVID-19対策としても,安全で優れた消毒活動に適用することができると期待される。BiSCaO懸濁液やBiSCaO含有軟膏は緑膿菌や緑膿菌感染創に対して,従来の消毒薬と同等以上の殺菌・抗菌活性を有すること,細胞毒性を抑えつつ細菌数を抑制することができ,創傷・感染創傷治癒を促進することが示唆された。本研究で開発したBiSCaO利用法は広域除染に有効であり,⽣物由来のマテリアルのため環境負荷の低いことが期待される。
Key words:BiSCaO(貝殻焼成酸化カルシウム)/Scallop shells(ホタテ貝殻)/BiSCaO Water/Disinfectant(殺菌・消毒剤)/Wound Healing(創傷治癒).
温泉入浴施設での衛生管理における電解次亜塩素酸水の有用性
- 表題:
- 温泉入浴施設での衛生管理における電解次亜塩素酸水の有用性
- 著者:
- 古畑 勝則(麻布大学 生命・環境科学部),仁多見 武(クリーン温泉推進会議)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.8,pp.413-421(2021)
温泉浴槽水において,レジオネラ症をはじめ,種々の感染症を防止するためには塩素消毒することは必要不可欠である。しかしながら,塩素剤による臭気や泉質変化などの問題があり,本来の温泉水を維持することが困難な状況である。そこで,現行の次亜塩素酸に代わる消毒剤として電解次亜水に着目し,その有用性について種々検討を行った。その結果,温泉浴槽水の消毒に電解次亜塩素酸水を利用することは可能であるとの結論を得た。
Key words:Electrolyzed hypochlorous acid water(電解次亜塩素酸水)/Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Hot spring(温泉)/Hygiene management(衛生管理).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その32)』…新井 一義…目次裏
『防菌防黴学会に関する思い出』…嶋崎 典子…380
図書紹介
『食品製造・検査における芽胞・損傷菌とその検出・制御技術』…渡部 一仁…412
会報 …422
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.8 (2021)
Vol.49, No.9 (2021)
【 目次 】
micro-Drop接種法を用いたバイオバーデン試験における回収率の評価法の構築
- 表題:
- micro-Drop接種法を用いたバイオバーデン試験における回収率の評価法の構築(原著論文)
- 著者:
- 福山貞伸,武川哲也,越川富比古((株)コーガアイソトープ 滅菌研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.423-429(2021)
無菌ヘルスケア製品の製造において,製品上の微生物を評価するためにバイオバーデン試験を実施する。その際,その試験法に対してバリデーションを実施することが求められており,その結果は回収率として表されている。したがって,回収率の向上は,バイオバーデン試験の品質向上につながり,高品質な無菌ヘルスケア製品の製造に寄与することにつながる。回収率は,主に製品に付着した微生物を回収する効率に影響されるため,高い回収率を得るためには,製品と微生物の吸着相互作用を考慮し,適切な回収処理条件を選択する必要があるが,時間と労力を要するため,検討試験が実施されないことが多い。そこで,簡便かつ迅速な検討方法として,従来の微生物接種法を応用したmicro-Drop接種法を考案した。本方法は,1つの製品に1つの芽胞を接種することを目標とし,個々の芽胞の回収効率を評価することで回収率を算出する。本研究では,micro-Drop接種法が従来の試験と同等であることを示すと同時に,迅速に安定した回収率が得られることを明らかにした。また,製品と微生物の吸着相互作用について考察した。
Key words:Microbial inoculation method(微生物接種法)/micro-Drop inoculation method(micro-Drop接種法)/Bioburden recovery efficiency(回収率)/Langmuir adsorption model(ラングミュア吸着モデル)/Bacterial adhesion(微生物吸着).
微生物の同定法
- 表題:
- 微生物の同定法
- 著者:
- 猪野 毅(アース環境サービス(株) 彩都総合研究所分析センター東日本)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.431-435(2021)
微生物の「同定」とは,分離培養した純培養の形態学的性状,生理生化学的性状,菌体成分あるいは遺伝学的検査などを調べて,すでに「分類」されている既知のどの菌種に一致するあるいは近いかを決定する作業である。今では製造現場の微生物管理を進める上で,遺伝子解析技術を利用した同定手法が主流となってきているが,同定にあたっては微生物の分類の歴史的背景を十分に理解し,遺伝子型だけでなく表現型に関する特徴づけも重要であることも併せて理解すべきである。本稿では,微生物検査や微生物管理の目的,微生物の分類の歴史,同定の意義とその手法として簡易同定キットによる同定,遺伝子解析による同定および質量分析法による同定について説明する。同定検査の実際の取り組み例についても紹介する。微生物の同定は今や必須の技術であるが,事業所の検査室のレベルや目的に合わせた方法を採用すべきであり,検査員の方には微生物学の基本的な知識や技術を身につけ,多くの経験をしていただきたい。
Key words:微生物管理/分類/簡易同定キット/遺伝子解析/質量分析法.
セミの翅から殺菌,抗菌作用を導く
- 表題:
- セミの翅から殺菌,抗菌作用を導く
- 著者:
- 伊藤 健(関西大学システム理工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.437-441(2021)
セミの翅で発見されたナノレベルの凹凸が殺菌,抗菌効果を発現することに着想を得て人工的にシリコン基板を利用してその凹凸構造(ナノスパイク)を作り上げ,実際に殺菌,抗菌効果を得ることに成功した。この現象は,ナノ構造と細菌との物理的な相互作用の結果により発現すると考えられている。実際に,ナノ構造の高さを変化させると急激に抗菌性が向上することを確認した。また,物理的な作用であるから従来の無機,有機系の抗菌剤とは異なり薬剤耐性菌が生まれにくいと考えられている。そのため,医療現場はもとより広く世の中に普及できる技術として期待されている。
Key words:Bactericidal effect/Antibacterial effect/Nano-pillar/Nano-spike.
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [5]水産加工食品におけるハードルテクノロジーの利用について
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [5]水産加工食品におけるハードルテクノロジーの利用について
- 著者:
- 清水栄治,幅田貴之,石間正浩,山崎隆之(東洋水産(株) 総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.443-450(2021)
鮮度低下の速い魚介類を主原料とする水産加工食品において,素材の風味を生かし,かつ安全性も十分に確保した製品の開発を実現するためには,緩やかな微生物制御条件を複数組み合わせたハードルテクノロジーの活用が必須である。製品に負荷するハードルの種類や強度は,本来の風味や食感といった「おいしさ」を損なうことのないよう食品毎に検証が必要であり,バランスを考慮し適切に選択するのが望ましい。本講座では,幅広いハードルの組み合わせが可能な「たらこ(バラコ)」をモデル食品として,各ハードルにおける微生物制御への影響を検証した。ハードルとして,冷蔵保管,食塩添加,日持ち向上剤添加,低温殺菌を組み合わせた保蔵性評価及び食中毒原因菌の接種試験を行い,各条件での一般生菌数と食中毒原因菌の生菌数変化について得られた知見を報告する。
Key words:Hurdle technology(ハードルテクノロジー)/Processed seafood product(水産加工食品)/Pollock roe(たらこ)/Aerobic plate count(一般生菌数)/Bacteria causing foodborne disease(食中毒原因菌).
紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 4.L8020乳酸菌の健康および抗菌分野での活用
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅢ 〜殺菌・抗菌・除菌分野の新たな進展〜 4.L8020乳酸菌の健康および抗菌分野での活用
- 著者:
- 二川 浩樹,田地 豪(広島大学大学院医系科学研究科口腔生物工学研究室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.451-457(2021)
口腔内には,腸内同様に多種類の微生物,通常700〜800種類の微生物が生息しており,口腔内微生物叢,またはオーラルフローラ(Oral flora;口の中のお花畑の意味)と呼ばれている。口腔内に存在するオーラルフローラには,腸内フローラと同様に,いわゆる善玉菌と悪玉菌が存在している。悪玉菌としてはミュータンスレンサ球菌や歯周病菌などが代表的で,様々な口腔疾患や全身への感染などを引き起こすことが知られている。本解説では,う蝕罹患歴のない健常者の口腔内からミュータンスレンサ球菌や歯周病菌に高い抗菌性を示すLactobacillus rhamunosus KO3株をを分離し,L8020乳酸菌と命名した。このL8020乳酸菌を用いてプロバイオティクスをオーラルフローラに適用することで,う蝕や歯周病のリスクを抑えようとする試みを紹介する。
Key words:Lactic acid bacteria/Lactobacillus rhamnosus/Oral Health/Oral Flora/Probiotics.
紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 1.サーベイランス視点からの院内感染対策
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 1.サーベイランス視点からの院内感染対策
- 著者:
- 鈴木 里和(国立感染症研究所薬剤耐性研究センター 第1室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.459-465(2021)
薬剤耐性菌の多くは院内感染によって伝播するため,感染症発生動向調査の薬剤耐性菌感染症患者数推移から,我が国の院内感染対策を評価することができる。我が国の院内感染対策は,人材の育成に加え,診療報酬制度への反映といった行政的な枠組みでの整備が2000年代に大きく進んだ。それらを反映するように,代表的な薬剤耐性菌のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症患者数が2000年代後半から減少した。また,バンコマイシン耐性腸球菌や薬剤耐性アシネトバクターはそれぞれ2000年代および2010年代に世界的に流行し,多くの国で蔓延していったが,我が国ではその広まりを限定的に抑え込んでおり,対策に成功した国の一つといえる。一方,我が国は高齢社会を迎え,医療連携が推進される中で医療提供体制が変化しつつある。大規模医療機関を中心に整備されてきた我が国の院内感染対策であるが,今後は中小規模病院や高齢者施設におけるあり方も重要になると考えられる。
Key words:感染症サーベイランス/NESID(発生動向調査)/厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)事業/院内感染/薬剤耐性菌/メチシリン耐性黄色ブドウ球菌/多剤耐性緑膿菌/バンコマイシン耐性腸球菌/多剤耐性アシネトバクター.
紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 2.院内感染対策への建築環境工学的な取り組み -SARS-CoV-2の対策を中心に-
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 2.院内感染対策への建築環境工学的な取り組み -SARS-CoV-2の対策を中心に-
- 著者:
- 柳 宇(工学院大学 建築学部 教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.467-472(2021)
本稿を脱稿した時点(2021年1月3日)では,COVID-19による全世界の累積感染者数は8450万人以上,死亡者数は183万人以上,国内の感染者数は24万人以上,死亡者数は3300人以上とであった。本原稿の校正原稿を脱稿している現時点(2021年7月25日)では,それぞれ1億9千万人以上,414万人以上,86万人以上,1万5千人を超えている(出典:Johns Hopkins University & Medicine)。COVID-19はさらにスピードを上げて猛威を振るっている。本報は,「院内感染対策への建築環境工学的な取り組み」をテーマに,COVID-19流行の現状,感染経路,病院におけるSARS-CoV-2の拡散とCOVID-19の感染事例,院内感染の対策方法について述べた。原稿を脱稿した当時から半年間が経過しており,その間にWHO,CDCなどから多くドキュメント,国際ジャーナルから多くの論文が公開されている。従って,本原稿に述べている本質的なものは変化がないが,諸新しい情報に関しては反映できていない。読者の皆様に最新情報を含めて本報をご一読願う。
Key words:COVID-19/SARS-CoV-2/院内感染/換気/ろ過/UVGI.
紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 3.ワクチンによる院内感染予防
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅣ 〜多角的なアプローチによる院内感染対策〜 3.ワクチンによる院内感染予防
- 著者:
- 中山 哲夫(北里大学 大村智記念研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.9,pp.473-476(2021)
ワクチンにより制御できた疾患は天然痘のみであり,現在も多くの感染症が流行している。外来受診例,入院例から医療従事者に感染し院内感染の増幅,二次感染,三次感染により社会での感染を増幅する事例が起きてきた。医療従事者の健康を守り院内感染の拡大を予防し流行を制御するために積極的にワクチン接種による院内感染症対策が執られるようになってきた。日本環境感染症学会から医療関係者のためのワクチンガイドラインが出されており具体的なワクチンによる院内感染予防について概説する。
Key words:Nosocomial infection(院内感染)/Vaccine(ワクチン)/Serological examination(抗体検査)/Vaccine preventable diseases(VPD)(ワクチンで予防できる疾患(VPD)).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その33)』…新井 一義…目次裏
『コロナ禍における大学での研究ならびに教育活動』…冨田 信一…477
図書紹介
『Q&A122 化粧品の微生物試験ガイドブック』…目片 秀明…436
『レジオネラ属菌を知る』…杉山 寛治…442
海外文献抄録 …坂上 吉一…458
会報 …478
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.9 (2021)
Vol.49, No.10 (2021)
【 目次 】
アフラトキシン産生性のAspergillus属Flavi節の簡易迅速検出法
- 表題:
- アフラトキシン産生性のAspergillus属Flavi節の簡易迅速検出法(短報)
- 著者:
- 高橋由美,上原さとみ,千葉隆司,鈴木 淳,貞升健志(東京都健康安全研究センター・微生物部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.479-482(2021)
アフラトキシン(AF)は,Aspergillus属Flavi節に属する菌種が産生するカビ毒である。Aspergillus属Flavi節に属する菌種が食品の培養検査で検出された場合,AF産生性や,AF種類を識別するまでに従来法では,8日間の培養が必要となる。本研究では,メチル-β-シクロデキストリンを添加したポテトデキストロース寒天(PDA)培地を用い,AF産生簡易迅速検出法を検討した。AF産生株は,紫外線照射下で3日培養後のコロニー周辺部に青~青緑色蛍光を発した。さらに蛍光を発したコロニーからのAF抽出,TLC法によりAF種類の識別同定(B群およびG群)が可能であった。本法は,アフラトキシン産生性Aspergillus属Flavi節の検出に8日間必要であった検査日数を3日間に短縮可能な簡易迅速検査法である。
Key words:Aflatoxin(アフラトキシン)/Aspergillus section Flavi(Aspergillus属Flavi節)/Methylated β-cyclodextrin(メチル-β-シクロデキストリン)/Fluorescence(蛍光).
食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [8]食品製造現場の基本設計と食品衛生7S
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [8]食品製造現場の基本設計と食品衛生7S
- 著者:
- 名畑和永(明宝特産物加工(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.483-489(2021)
本稿は,HACCP構築から国際的な食品安全システムであるISO22000やFSSC22000の取得に際する食品衛生7Sの実践について纏めている。食品衛生7Sは,全社的な実践活動としてHACCP構築に必要な一般衛生管理の仕組みづくりとしてスタートした。食品衛生7Sは経営者が決意し導入したことから,弊社の衛生管理の根本的な活動となった。継続する食品衛生7Sは,さらにレベルアップしてISO22000やFSSC22000の国際認証規格の取得の推進力となった。食品衛生7S活動は,あまり関係ないと思われた新工場の基本設計にも効果的な影響を与えた。新工場建設中の経営陣,現場作業者と食品衛生コンサルタント,社外の設計者,施工業者などの立場・役割や視点から衛生管理の考え方や取り組みを紹介している。また,設計段階から建設完了までの内容だけなく,稼働直後から稼働後の数か月後に起きた問題点や状況も参考になればと思い書き加えている。食品衛生7Sの導入から運用の事例として新たに新工場の建設に着手する食品企業の参考になれば幸いである。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Food manufacture site(食品製造現場)/Fundamental planning(基本設計)/Designer(設計者)/Site worker(現場作業者)/Working efficiency(作業効率)/Strategy partner(戦略パートナー)/Proprietor(経営者)/Superintendent(現場監督)/Builder(施工業者)/Food hygiene consultant(食品衛生コンサルタント)/The building center(施主)/ドライ化.
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [6]菓子製造におけるアンヒドロフルクトースのハードルテクノロジーへの応用
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [6]菓子製造におけるアンヒドロフルクトースのハードルテクノロジーへの応用
- 著者:
- 吉永一浩,宮﨑直人,林 洋美((株)サナス),中西善裕,八丸珠恵,時村金愛(鹿児島県大隅加工技術研究センター),久保 満(鹿児島県水産技術開発センター),安部淳一(鹿児島大学農学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.491-496(2021)
アンヒドロフルクトース(1,5-AF)はでん粉の酵素分解で製造できる糖であり,微生物の増殖抑制作用を有し,加工食品に添加すればその日持ち性が向上する。菓子などへのショ糖の添加は水分活性を下げ微生物の増殖を抑制するが,それに1,5-AFを添加すると微生物の増殖抑制作用が相乗的に高まる。1,5-AFと醸造酢を併用すれば増殖抑制作用はさらに高まる。多くの微生物は1,5-AFを菌体内へ取り込み,それを菌体内でNADPHを補酵素とする還元酵素により還元するため,菌体内のNADPHが減少する。増殖に必要なNADPHの不足が1,5-AFの抑制メカニズムであると推定する。1,5-AFにはヒトに対する健康増進機能も見出されていることから,安全で安心に加工食品の日持ち性向上に寄与できる。
Key words:1,5-Anhydrofructose(1,5-アンヒドロフルクトース)/Growth resistant(増殖抑制)/Custard cream(カスタードクリーム)/Food preservation(食品保存).
微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [4]木材の劣化と対策
- 表題:
- 微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [4]木材の劣化と対策
- 著者:
- 小林智紀(ライオンケミカル(株) 開発部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.497-506(2021)
木材は再生可能な天然素材であり,加工性に優れた材料である。しかし,天然素材であるがゆえ,生物による劣化を受ける。特に菌類による劣化は腐朽と呼ばれ,主に担子菌による褐色腐朽や白色腐朽,不完全菌類等による軟腐朽は被害が甚大である。そこで薬剤による木材防腐処理が必要となる。防腐処理には建築現場で塗布,吹き付けなどを行う表面処理と,機械装置を用いて加圧注入を行う工場処理に大別される。現場処理では薬剤の付着量が少なく,効力持続期間が短く繰り返し処理が必要であるが,簡便であるという利点を持つ。有機ヨウ素系化合物とトリアゾール系化合物が主で,防虫剤にこれらを単独あるいは組み合わせた薬剤が主である。工場処理では大掛かりな装置を必要とするが,薬剤の吸収量が多く,効力持続期間が長いという利点を持つ。主な薬剤はJISあるいはJASに規定されているが,第四級アンモニウム化合物や銅化合物と他の化合物を混合した薬剤の他,有機化合物を混合した薬剤などがある。
Key words:Brown-rot(褐色腐朽)/White-rot(白色腐朽)/Soft-rot(軟腐朽)/Surface treatment(表面処理)/Pressure treatment(加圧注入処理)/Triazol compound(トリアゾール系化合物)/Quaternary ammonium compounds(第四級アンモニウム化合物).
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [7]過酢酸の基本的性質と殺菌の原理ならびに応用事例
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [7]過酢酸の基本的性質と殺菌の原理ならびに応用事例
- 著者:
- 坂上 吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.507-512(2021)
過酢酸(過酢酸製剤)は,海外ではかなり以前より各種殺菌消毒分野等で使用されている物質であり,アメリカ,カナダ,オーストラリア等では,過酢酸製剤はすでに食品添加物としても許可されている。日本国内でもその有用性が評価され,2016年(平成28年)には,食品添加物としての許可が出され,食品衛生分野に貢献している。また,以前より内視鏡や透析分野での殺菌消毒に汎用されている。今回,過酢酸の基本的性質と殺菌の原理ならびに応用事例と題して,過酢酸の性質,有用性,殺菌効果,使用上の注意,殺菌原理(メカニズム),および使用事例等についても合わせ解説した。過酢酸は有用な物質であり,ほとんど全ての微生物に対して効果的な消毒剤である。今後とも,食品衛生分野全般ならびに医療機器等の殺菌関連分野でのさらなる有効利用が望まれる薬剤である。今後の益々の発展が期待できる。
Key words:Peracetic acid(過酢酸)/Basic properties(基本的性質)/Bactericidal mechanisms(殺菌原理)/Food additive(食品添加物).
持続社会での木材の長期使用 [7]木材・木造の生物劣化診断と維持管理
- 表題:
- 持続社会での木材の長期使用 [7]木材・木造の生物劣化診断と維持管理
- 著者:
- 藤井 義久(京都大学大学院農学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.513-519(2021)
木造建築物の寿命を延ばす観点から,診断と補修からなる維持管理の技術について紹介した。腐朽の「見える化」として,木部表面に現れた症状から腐朽の範囲,程度や進行性を判定する診断の基本原理や注意点を解説し,さらに腐朽による強度低下や断面欠損の程度を非破壊的かつ定量的に評価する手法を解説した。非破壊診断技術については,超音波の伝搬速度(時間),電磁波の透過性やX線などを用いた手法,微小な破壊と伴うが,細い錐による穿孔時の抵抗を測定することで局所的な強度を評価する手法を紹介した。また腐朽を誘発する高含水率領域を検出する手法として誘電率や電気抵抗を利用した水分計(含水率計)や電磁波レーダを用いた手法を紹介した。また近年の木造の診断・インスペクションの背景,診断技術や人材育成の現状と課題を解説した。最後にITやIOTを活用した維持管理やAIを用いた診断技術の可能性についても触れた。
Key words:Inspection(劣化診断)/NDT(非破壊検査)/Maintenance(維持管理).
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [6]微生物と戦いは永遠につづく
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [6]微生物と戦いは永遠につづく
- 著者:
- 更家 悠介(サラヤ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.521-526(2021)
サラヤ(株)の創業は1952年だが,当時は赤痢の蔓延している中で,手を洗って消毒する石けん液と石けん容器を販売したのが企業のスタートになった。その後「微生物との戦い」において,手洗い,手指の消毒を中心に商品を開発し対応してきたが,ことに(アルコールベースの手指消毒剤)の製造販売には力を入れてきた。今,地球規模の人々の交流により,各地で発生した病気は,あっという間にまん延する時代となっている。パンデミックな流行に対して,ユニバーサルプリコーション,平たく言えば手洗い,マスク,ガウン,手袋などを上手に使い,病気を予防することは有効であり,大切な仕事である。サラヤはこのような基本的な感染予防策とこのための商品やノウハウの普及を,先進国のみならず発展途上国でも実践し,グローバルな展開を目指している。コロナが収束した後も,また新しい微生物によるパンデミックな病気が流行する可能性は高く,それがどこから起きるか予測は難しいが,その時に備えてサラヤは微生物の戦いを続けてゆく。
Key words:手洗い世界ナンバーワン/ウガンダ/ユニバーサルプリコーション/ポストコロナ.
微生物を利用した有用物質生産 [2]海洋細菌を用いたバイオリファイナリー
- 表題:
- 微生物を利用した有用物質生産 [2]海洋細菌を用いたバイオリファイナリー
- 著者:
- 田中 礼士(三重大学大学院生物資源学研究科,三重大学海藻バイオリファイナリー研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.10,pp.527-532(2021)
バイオリファイナリーは「再生可能資源であるバイオマスを原料にバイオ燃料や樹脂などを製造するプラントや技術のこと」であるが,注目されているのが大型海藻を用いたバイオリファイナリーである。大型海藻は多糖類を多く含み,その組成が比較的シンプルである。幸い,我が国は世界屈指の排他的経済水域を保有し,そのほとんどの海域で栄養塩が豊かであるため,これら非可食性の大型海藻を養殖することにより,運搬費やエネルギーロスを少なくして次世代化成品を生産するメリットがある。そこで本稿では,著者がこれまでに構築した非可食性の海藻類から機能性に富んだ物質を取り出す手法について,おもに緑藻,褐藻を用いた場合について解説する。中でも新規性の高いDEHと呼ばれる褐藻由来のアルギン酸単糖およびウルバンと呼ばれる緑藻由来の硫酸化多糖類について詳しく解説し,最後に三重大学海藻バイオリファナリー研究センターの活動について報告する。
Key words:Biorefinery/Alginate/Ulvan/DEH/KDG/Seaweed degrading bacteria.
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その34)』…新井 一義…目次裏
『医薬品製造と微生物管理』…大場 拓馬…490
『防菌防黴学会で広がる抗菌研究の世界』…藤田 真理…520
図書紹介
『ファインケミカルシリーズ 抗菌・抗ウイルス剤の最新動向』…古畑 勝則…533
会報 …534
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.10 (2021)
Vol.49, No.11 (2021)
【 目次 】
エアコン由来の浮遊カビの季節変動とその要因
- 表題:
- エアコン由来の浮遊カビの季節変動とその要因(原著論文)
- 著者:
- 塩本麻希,吉村俊樹((株)ダスキン 品質保証・リスク管理部),原田一宏,前田親男((株)ダスキン開発研究所),浜田信夫(大阪市立自然史博物館)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.535-540(2021)
室内の浮遊カビ汚染に対するエアコンの影響の季節変動を調査した。具体的には,2018年8月~2019年7月に大阪市及びその周辺の一般住宅(8世帯14部屋)で,毎月エアコン稼働前後の浮遊カビを採取した。その結果,稼働直後に,吹き出し口周辺の浮遊カビ数は指数関数的に増加することがわかった。また,冷房で使用する時期の方が,暖房で使用する時期よりカビ数が多かった。月ごとのカビ数の変化を見てみると,7月と10月にピークがあった。検出されたカビとしては,7月ではCladosporiumが多く,10月ではCladosporium以外のカビが多かった。また,エアコンの使用頻度等のアンケートを実施し,エアコン内のカビ汚染を助長する要因の解明を試みた。その結果,エアコンの使用頻度とエアコン周辺の湿度環境(月平均湿度や月降雨量)の影響が考えられた。
Key words:Air conditioner(エアコン)/Cladosporium/Fungal contamination(カビ汚染)/Moisture(水分)/Seasonal change(季節変動).
細菌の共存がAcanthamoeba castellaniiの増殖に与える影響
- 表題:
- 細菌の共存がAcanthamoeba castellaniiの増殖に与える影響(原著論文)
- 著者:
- 鈴木智恵,佐々木理衣,渡邊 愛,角出泰造((株)メニコン 総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.541-547(2021)
本研究では,細菌との共存がAcanthamoeba castellaniiの増殖に与える影響を明らかにするため,A. castellaniiをグラム陰性菌,グラム陽性菌,そしてハードコンタクトレンズ装用者のコンタクトレンズケースから単離された分離菌との共存下で培養し,その増殖性をin vitroで評価した。その結果,A. castellaniiはグラム陰性菌だけでなく,グラム陽性菌も栄養素として増殖する可能性が示唆された。また,分離菌との共存下においてもA. castellaniiは増殖したことから,レンズケース内の細菌汚染がアカントアメーバ角膜炎のリスクを高める可能性が示唆された。さらに,UV照射で死滅させたEscherichia coliやStaphylococcus epidermidisとの共存下においてもA. castellaniiは増殖したことから,コンタクトレンズケアにおいて,できる限りレンズケース内から細菌を除去し,コンタクトレンズやレンズケースを清潔に保つことが感染症のリスク低減に繋がることが示唆された。
Key words:Acanthamoeba castellanii/Coexistence(共存)/Gram-negative bacteria(グラム陰性菌)/Gram-positive bacteria(グラム陽性菌)/Contact lens case(コンタクトレンズケース).
マイクロプラズマ放電装置の抗菌薬耐性菌を含む各種細菌および真菌に対する殺菌作用に関する検討
- 表題:
- マイクロプラズマ放電装置の抗菌薬耐性菌を含む各種細菌および真菌に対する殺菌作用に関する検討(原著論文)
- 著者:
- 小林寅喆,勝瀬明子,金坂伊須萌,榎本美郷(東邦大学看護学部感染制御学),安藤 仁,小林士剛,榎本崇浩((株)カルモア 空気環境事業本部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.549-555(2021)
近年,プラズマ放電による空気中イオンが細菌やウイルスを殺滅することが報告され,市販の家庭用電気製品にも広く利用されている。しかし,これらの殺微生物効果は,限られた密閉空間での評価が多く,また,その主な作用はオゾンによるものと指摘されている。今回我々は,脱臭装置として利用されているオゾン発生のほとんどないマイクロプラズマ放電装置を用い327L空間での強制換気条件での各種抗菌薬耐性菌を含む医療関連施設感染の原因菌および真菌に対する殺菌効果について検討した。その結果,MRSA,ESBL産生E. coli,MBL産生S. marcescens,MDRP,B. cereusに対して直接,間接的暴露条件において経時的な殺菌効果がみられ,直接暴露条件では2時間の比較的短い時間で殺菌される傾向がみられた。C. difficileに対してもある程度の効果が確認された。今回検討に用いた脱臭装置は医療現場における環境からの接触感染経路による感染対策に応用が可能であると考えられた。
Key words:Plasma discharge(プラズマ放電)/Antimicrobial resistant organisms(抗菌薬耐性菌)/Acid-fast bacteria(抗酸菌)/Fungus(真菌)/Microbicidal effectiveness(殺菌効果).
生中華めんの長期保存に必要なエタノール濃度と製造工程での管理
- 表題:
- 生中華めんの長期保存に必要なエタノール濃度と製造工程での管理(原著論文)
- 著者:
- 長田 隆(南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科),松井 誠((株)久保田麺業 品質管理課)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.557-561(2021)
賞味期限が3ヶ月程度に設定されている長期保存可能な生中華めんについて,市販されている製品のエタノール濃度と微生物汚染度の実態を調べた。また,長期保存に必要なエタノール濃度と揮発しやすく管理しにくいエタノール濃度の製造工程における変化を明らかにし,その管理方法について考察した。その結果,市販生中華めんのエタノール濃度は1.4~1.7%であった。また,長期保存に必要なエタノール濃度としては0.8%以上が必要であった。しかし,製造工程では,エタノール濃度が低下するため,エタノールを含むかん水水溶液を長期保管せず,当日使い切りとし,めん成型工程で低下するエタノール濃度1.0%を考慮し,製品のエタノール添加濃度を2.0%程度に管理できれば,微生物的な保存性に問題はないと思われる。
Key words:Raw yellow alkaline noodles(生中華めん)/Alkalophilic microorganism(好アルカリ性菌)/Ethanol(エタノール)/Preservation(保存性).
再生医療における微生物汚染と二酸化塩素ガスを用いた新たな対策
- 表題:
- 再生医療における微生物汚染と二酸化塩素ガスを用いた新たな対策
- 著者:
- 曾川 甲子郎(大阪大学大学院 医学系研究科 空間環境感染制御学共同研究講座)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.563-568(2021)
近年,胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞などの幹細胞研究の急速な発展に伴い,再生医療における細胞培養が担う役割はますます増大している。細胞を製品とする場合,従来の医薬品のように最終滅菌法やろ過滅菌法にて製品を無菌化できないため,作業環境の衛生管理がより一層重要となる。現在,細胞培養加工施設の清浄度は,壁面の清拭と気流管理により維持管理が行われているものの,人や物に伴って侵入した微生物を完全には防ぎきれていないのが現状である。培養作業を行う人,培養する細胞,更には環境への影響がなるべく少なく,高い除菌効果を得ることが可能な薬剤の開発が望まれている。本項では,再生医療分野での衛生管理方法の現状をはじめ,新たな環境消毒剤として期待されている二酸化塩素(ClO2)の有効性と安全性に関する研究成果,更には,低濃度のClO2ガスを用いた細胞培養設備の衛生管理方法について解説する。
Key words:Chlorine dioxide(二酸化塩素)/Hygienic management(衛生管理)/Regenerative medicine(再生医療)/Mesenchymal stem cells(間葉系幹細胞)/Senescence(老化).
エンドトキシン試験法
- 表題:
- エンドトキシン試験法
- 著者:
- 大内 和幸((株)J. K. インターナショナル)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.569-574(2021)
ガブトガニC因子の組換えタンパク質(rFC)を用いたエンドトキシン測定試薬,および生物学的製剤で生じるLow Endotoxin Recovery(LER)の概要を紹介する。薬局方エンドトキシン試験の代替法としてrFC試薬を評価したこれまでの研究では,各種LPSに対する反応性,注射剤成分から受ける干渉の程度,ロット間の安定性について,rFC試薬の性能はLAL試薬と同等であることが示されている。2018年にFDAがエンドトキシン試験にrFC試薬を採用した製剤を承認し,2021年には欧州薬局方にrFC試薬を用いる試験法が追加されるなど,海外では原料を野生生物に依存しないrFC試薬の使用が広がりつつある。生物学的製剤ではエンドトキシンが検出されなくなるLERという現象が起こることがある。そのため,生物学的製剤の承認をFDAに申請する際,LERに関してガイドラインに従った試験データの提出が求められる。LERの機序について解明が進み,エンドトキシンを測定可能な状態に戻して測定する方法が考案されている。
Key words:Endotoxin(エンドトキシン)/Recombinant factor C(組換えC因子)/Low endotoxin recovery(エンドトキシン低回収).
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [8]過酢酸による食品製造環境の殺菌技術
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [8]過酢酸による食品製造環境の殺菌技術
- 著者:
- 竹下 牧哉(イカリ消毒(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.575-576(2021)
昨今では,医薬品製造施設に留まらず,飲料製造施設の充填ラインや野菜工場,その他の食品でも製造ラインの無菌化が進んでいます。食品メーカーにとって製造ラインを無菌化にするメリットは,食中毒など食中毒菌(微生物)汚染による衛生的側面に対してだけでなく,消費期限のロングライフ化や製品の風味向上,廃棄ロスの低減など多岐に亘っています。そして,その背景には,環境に対する殺菌技術の向上やパッケージ技術の向上がその実現を可能にし,今後も無菌化ラインを導入する食品メーカーが増えることが見込まれています。環境中の殺菌をおこなう手法にはいくつか種類がありますが,ここでは幅広い業界で使用することができる過酢酸による,弊社の作業方法について,少しご紹介したいと思います。
Key words:過酢酸(Peracetic acid)
微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [5]微生物による紙の劣化と対策
- 表題:
- 微生物による劣化 -繊維,金属,木材,コンクリート,紙等- [5]微生物による紙の劣化と対策
- 著者:
- 古川 誠(大和化学工業(株) 営業部門 東京営業部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.577-580(2021)
IT社会の現代では紙自体を減らす方向にむかっており,微生物による紙の劣化を経験することはほとんどないのが現状である。しかしながら,海洋汚染に単を発し,脱プラスチック化が進み,プラスチックに代わるものとして紙が使われつつあり,紙製品を手にすることが今後,増加すると予想される。ここでは,紙の劣化について整理し,紙の種類,作り方,保管方法について解説し,劣化に関係する微生物,対策,抗菌剤や防カビ剤の種類について説明する。
Key words:Bacteria(細菌)/Mold(カビ)/Paper(紙)/Deterioration(劣化).
第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [7]芝崎先生の思い出と最近の研究内容
- 表題:
- 第2回:微生物との戦いは永遠につづく! [7]芝崎先生の思い出と最近の研究内容
- 著者:
- 宮尾 宗央(東洋食品工業短期大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.581-584(2021)
大阪大学最後の教え子として,芝崎先生に研究の楽しさを教えていただくと共に暖かく守られた学生生活を過ごすことができた。その後食品企業へ就職し,30年余り新製品開発一筋で過ごす中,著書である「新・食品殺菌工学」を通じて様々な微生物制御方法を用いる機会があった。2007年東洋食品工業短期大学へ赴任し,教員として戸惑いを感じながら研鑽を積む中,芝崎先生が,加熱殺菌だけでなく薬剤殺菌・除菌・HACCPと様々な分野で著作を残されていることがわかり,改めて偉大さを再確認できた。現在は,短大で食品製造実習・HACCP教育を担当すると共に,製品開発技法に関する技術伝承に努めている。また短大保有の貴重な缶詰製造に関する書籍を活用し,ボツリヌスクック(12Dコンセプト)の成立過程など食品規制の歴史に関する研究を行っている。学生一人一人の成長を促すことで,芝崎先生に少しでも恩返しできればと望む。
Key words:Botulinum cook(ボツリヌスクック)/12D concept(12Dコンセプト)/HACCP(ハサップ)/Food Packed in Containers and Sterilized by Pressurization and Heating(容器包装詰加圧加熱食品).
紙上ミニシンポジウムⅤ 〜微生物汚染から健康を守る切り札とは?〜 1.簡易迅速試験法は微生物汚染から健康を守る切り札
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅤ 〜微生物汚染から健康を守る切り札とは?〜 1.簡易迅速試験法は微生物汚染から健康を守る切り札
- 著者:
- 斉藤 美佳子(東京農工大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.11,pp.585-586(2021)
微生物汚染を心配しなければならない現場は多数あるが,本シンポジウムでは特に,再生医療関連,環境,食中毒菌の3分野に絞った。再生医療関連は無菌条件が厳格に要請される分野である。その確実さの担保は最高ランクでなければならない。環境分野ではどの場所からどの程度の頻度でサンプリングするか,ということが難題である。食中毒菌の場合は毒素の同定までが要請され,そのためにはリアルタイムPCR,あるいは免疫分析が不可欠である。予測微生物学はmmオーダーのコロニーになるのを待たずに,より早い段階で微生物細胞が生きていることを予測する方法論を提供する。以上の観点から,各々の分野のリーダー3名に,具体的な事例を示しながら簡便迅速法の現状と展望について,ご講演をお願いした。
Key words:Simple and rapid method(簡便迅速法)/Regenerative medicine(再生医療)/Environment(環境)/Food poisoning(食中毒)/Predictive microbiology(予測微生物学).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その35)』…新井 一義…目次裏
『友人の助言と人生の岐路』…佐藤 正広…548
図書紹介
『カビのおはなし 住まい編』…坂上 吉一…556
『食品事業者のための次亜塩素酸の基礎と利用技術』…白井 昭博…562
会報 …588
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.49,No.11 (2021)
Vol.49, No.12 (2021)
【 目次 】
靴下の不快臭の原因物質及び原因菌の解析
- 表題:
- 靴下の不快臭の原因物質及び原因菌の解析(原著論文)
- 著者:
- 濱田昌子,五味満裕(小林製薬(株)・中央研究所・基盤研究部),唐澤慧記(小林製薬(株)・日用品事業部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.589-594(2021)
本研究では,成人男性が着用した靴下のにおい嗅ぎGC/MS分析及び微生物の解析を行い,靴下の不快臭の一因はStaphylococcus epidermidisが産生するジアセチルである可能性を示した。靴下から単離したS. epidermidisを用いて抗菌加工繊維の抗菌効果を評価したところ,S. epidermidis株に対して2 log以上の抗菌効果を確認できた。このことから,抗菌加工靴下が靴下着用時にS. epidermidisの増殖を抑制し不快臭を防臭する可能性が明らかとなった。
Key words:Malodor(不快臭)/Socks(靴下)/Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)/Diacetyl(ジアセチル)/Antibacterial processed fiber(抗菌加工繊維).
人工股関節周囲感染の予防・診断・治療
- 表題:
- 人工股関節周囲感染の予防・診断・治療
- 著者:
- 増原建作((医)増原クリニック)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.595-601(2021)
破壊された股関節を人工物に置き換えて疼痛を軽減し可動範囲を拡げて本来の滑らかな歩容を取り戻す画期的な試みは1900年代に入ると盛んにおこなわれるようになった。数々の試行錯誤を繰り返した末に1960年前後には英国でCharnley卿により現行の人工股関節の原型に相当するインプラントが開発され科学誌Lancetに発表された。科学技術の進歩とともに人工股関節の耐久性は飛躍的に向上し30年以上の良好な長期生存率が順次報告されている。しかしながら生体とは異なり免疫能や抵抗力という自己防御能力を有さない人工股関節にとって最大の難点は術後長期間を順調に経過しても悪条件が重なるとしばしば人工股関節周囲の感染を発症することである。これを克服することは更なる臨床成績の向上に直結するので本講座では最新の知見を交えて人工股関節周囲感染の予防・診断・治療について概説する。
Key words:Periprosthetic joint infection;PJI(人工股関節周囲感染)/Extracellular polysaccharides;EPS(細胞外多糖)/α-Defensin(α-ディフェンシン).
池田菊苗と微生物死滅の定量的表現
- 表題:
- 池田菊苗と微生物死滅の定量的表現
- 著者:
- 榊 秀之(関西福祉科学大学健康福祉学部福祉栄養学科),米虫節夫(大阪市立大学大学院工学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.603-612(2021)
殺菌工程の設計においては,対象となる微生物の分離・同定と殺菌特性を検討することが必要となる。その過程で利用する試験方法や微生物死滅の速度論の多くは1800年代後半に研究が進み,現在では確立されたものとして我々は常用している。今回,化学薬品による微生物死滅の過程研究の揺籃期の研究成果をまとめることにした。その中で,死滅過程を初めて数式化することに成功した池田菊苗の功績をまとめることができた。殺菌理論が確立される初期の過程を知ることが,殺菌研究の幅を広げる一助となることを期待したい。併せて,生菌数計数の方法論が確立される初期の経過についても知見を示すこととした。HACCPを実践するにあたりCCPの決定において避けて通れない理論や方法論が誕生する経過を知ることで,基本の重要性を再認識するきっかけとしていただければ幸いである。
Key words:Infancy of Sterilization Research(殺菌研究の揺籃期)/Kikunae Ikeda(池田菊苗)/Formulating of Sterilization Process(殺菌過程の数式化)/Microbial Death(微生物死滅),HACCP.
食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [9]食品衛生7Sとマネジメントシステム
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [9]食品衛生7Sとマネジメントシステム
- 著者:
- 鈴木厳一郎(フードクリエイトスズキ(有))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.613-617(2021)
食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)は,それぞれの活動をマネジメント(運営管理)することで,その目的である「微生物レベルの清潔さ」をより効果的に達成できる。マネジメントとは,PDCAによる管理,つまり計画,実施,チェック,改善のサイクルをまわすことである。自社の衛生管理に関するルールを定め,定めたルールに従って全員が実施し,結果が適切かを科学的に評価した上で必要な改善に取り組むことで,製品クレームや事故の防止だけでなく,従業員の意識向上やコスト削減など,会社全体の管理レベルの向上につながる。本講座では,ISOのマネジメント規格のフォーマットであるAnnexSLを取り上げ,食品衛生7Sをマネジメントする際の考え方や事例についてまとめる。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Revised food hygiene law(HACCP制度化)/Prerequisite Programs(一般衛生管理)/Microorganisms Level of cleanliness(微生物レベルの清潔)/management(マネジメント)/management- system(マネジメントシステム)/ISO/ISO22000/FSSC22000.
食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [9]次亜塩素酸を基礎とする洗浄・殺菌の理論
- 表題:
- 食の安全・安心科学 -食品製造現場・食品にかかわる微生物汚染とその対策- [9]次亜塩素酸を基礎とする洗浄・殺菌の理論
- 著者:
- 福﨑 智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.619-625(2021)
次亜塩素酸(HOCl)は,1800年代の半ばから使用されてきた消毒剤であり,塩素消毒の活性因子として知られている。次亜塩素酸の代表的な工業製品の一つである次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は,水で適度に希釈され弱アルカリ性の水溶液として使用されてきた。昨今では,希薄な食塩水や塩酸を電気分解して調製する次亜塩素酸水や電解次亜水,次亜塩素酸ナトリウムと塩酸または炭酸ガスを水道水に混合希釈して安全に調製される弱酸性次亜水が使用されている。また,従来の次亜塩素酸水溶液の使用対象は設備・機器・食材などの「モノ」であったが,最近では浮遊菌・落下菌,付着菌対策として「室内空間」を対象とする微生物制御に適用する技術が普及し始めている。本稿では,次亜塩素酸水溶液の洗浄および殺菌・不活化機序について解説した後,水溶液から揮発した気体状次亜塩素酸の殺菌効果ならびに超音波霧化噴霧の安全性と有効性について述べる。
Key words:Hypochlorous acid(次亜塩素酸)/Cleaning and disinfection(洗浄・殺菌)/Ultrasonic fogging(超音波霧化)/Forced-air vaporizing(強制通風気化)/Safety and effectiveness(安全性と有効性).
ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [7]菓子製造におけるカビ生育防止のためのハードルテクノロジー
- 表題:
- ハードルテクノロジーによる食品の微生物制御 [7]菓子製造におけるカビ生育防止のためのハードルテクノロジー
- 著者:
- 関根 光太郎((株)明治 研究本部 品質科学研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.627-633(2021)
半生菓子製造における好乾性カビの生育防止のためのハードルテクノロジーについて紹介した。グミでは水分活性とpH制御による好乾性カビの生育抑制事例を紹介した。また,生チョコレートでは水分活性制御とアルコール添加による好乾性カビの生育抑制事例を紹介した。両事例とも製品表面へのカビの付着を防ぐために製造環境の清浄度を高めることが重要である。
Key words:Microbial control(微生物制御)/Xerophilic mould(好乾性カビ)/Water activity(水分活性)/pH/Alcohol(アルコール)/Gummy candy(グミ)/Chocolate(チョコレート).
微生物を利用した有用物質生産 [3]深海底泥からの有用細菌の探索,分類,生産物の特性解明
- 表題:
- 微生物を利用した有用物質生産 [3]深海底泥からの有用細菌の探索,分類,生産物の特性解明
- 著者:
- 倉田 淳志(近畿大学・農学部・応用生命化学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.635-640(2021)
地球には,その70%を占める海洋,さらにその90%を占める水深200 m以深の深海環境が存在する。深海環境は低水温,高圧,低栄養の特殊な環境であり,この環境に棲息可能な細菌が見いだされている。深海環境から見いだされる細菌は,生物ポンプや自然湧昇,深層海流,河川からの流入などの作用により多様性に富む。そのため現在,有用細菌の探索源として深海環境は注目されている。筆者は日本近海の深海底泥から見いだされる放線菌を分類して,抗菌物質や抗真菌物質の探索を試みた。さらに新種の細菌を深海底泥から分離して,分泌する酵素の特性を解明したので,これらを紹介する。
Key words:Deep-sea Sediments(深海底泥)/Antibacterial and Antifungal Compounds(抗菌・抗真菌化合物)/Bacterial Enzyme(微生物酵素)/Deep-Subsea Floor Sediments(深海底下堆積物).
紙上ミニシンポジウムⅤ 〜微生物汚染から健康を守る切り札とは?〜 2.再生医療等製品の微生物試験の現状と課題
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅤ 〜微生物汚染から健康を守る切り札とは?〜 2.再生医療等製品の微生物試験の現状と課題
- 著者:
- 栗山 伸一,橋本 せつ子((株)セルシード)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.49,No.12,pp.641-645(2021)
機能が低下した臓器を生きた細胞を用いて再生する再生医療が注目されている。再生医療では多様な生理活性を持った生きた細胞を「製品」としているために,これまでの医薬品とは異なる品質特性を持っている。例えば,製品の安定性を保証できる期間が2-3日と非常に短い。さらに,品質試験に供することができる試料の量が限られている。微生物試験に関しては,日本薬局方で求められている微生物試験に則り14日後に結果が出た時には製品はすでに患者さんに移植された後となってしまうなどの課題がある。今後,再生医療等製品が普及するには,微量な試料で安価に迅速に判定ができる試験法の開発が求められている。実績を積み重ねながら再生医療等製品の特徴に合わせたルールの見直しについて規制当局とのコミュニケーションも必要である。再生医療の産業化に向けて,微生物試験法の現状と課題について述べる。
Key words:Quick test(迅速試験法)/Sterility test(無菌試験)/Regenerative medicine(再生医療)/Cell sheet(細胞シート).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その36)』…新井 一義…目次裏
『アントニィ・ファン・レーベンフックの観察力』…小高 秀正…602
『これまでの防菌防黴との関わりについて』…田村 太…618
日本防菌防黴学会誌49巻総目次 …646
日本防菌防黴学会誌49巻著者索引 …648
会報 …650
カレンダー …和文目次裏
