Vol.48, No.1 (2020)
【 目次 】
東日本大震災被災地における避難施設内真菌叢に関する研究
- 表題:
- 東日本大震災被災地における避難施設内真菌叢に関する研究(原著論文)
- 著者:
- 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所),横瀬 英里子(PCAT),小沼 ルミ((地独)東京都立産業技術研究センター),入倉 大祐(国立医薬品食品衛生研究所),小林 直樹(麻布大学),角 泰人(PCAT),原田 奈穂子(PCAT),大橋 博樹(PCAT),小西 良子(国立医薬品食品衛生研究所),工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所),高鳥 浩介(NPO法人カビ相談センター),矢内 勝(石巻赤十字病院),鎌田 洋一(国立医薬品食品衛生研究所),林 健太郎(PCAT)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.3-9(2020)
東日本大震災被災地の4避難施設において,真菌叢調査を行った。その結果,室内空気中の浮遊真菌数は,真菌汚染の基準とされる1,000 CFU/m3以上となった施設は無く,ヒト危害性の高い菌種の検出濃度も低かったことから,直接的な健康被害の原因となる真菌の異常発育は確認されなかった。しかし,Aspergillus属菌の菌数および菌種は,一般家屋室内と比較して異常な状態を示し,注意が必要と考えられた。また,避難施設の清掃ボランティアチームの衛生活動と施設内の真菌叢変動との関連性について検討したところ,本活動は,避難施設内の真菌叢正常化に対して一定の効果をもたらしたことが示された。しかし,効果の継続性はなく,定期的な清掃が必要不可欠であることが明らかとなった。避難施設は真菌叢が変化しやすい環境であることを認識し,衛生状態に留意しなくてはならない。
Key words:Mycoflora(真菌叢)/Temporary shelter(避難施設)/Public health(公衆衛生).
エンドトキシンよもやま話(その2) エンドトキシン試験法のバリデーション再考
- 表題:
- エンドトキシンよもやま話(その2) エンドトキシン試験法のバリデーション再考
- 著者:
- 土谷 正和(Charles River, Microbial Solutions)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.11-15(2020)
エンドトキシン試験法のバリデーションの考え方は,1987年に米国食品医薬品局(FDA)が発行したガイドラインを基に,各国局方やAAMI(Advancing Safety in Medical Technology)規範に引き継がれている。内容としては,測定手法が正しく実施されていること,各試料の測定条件が正しく設定されていること,日常試験における測定が,設定した条件で実施されていることの3点である。本稿ではこれら3点について解説し,再バリデーションにおける要件,測定条件の設定,サンプリングについて考察する。これらの情報は,新しくエンドトキシン試験を行う場合のみならず,試薬,試験条件や製造工程の変更に伴うエンドトキシン試験法の再バリデーションにおいて有用と思われる。
Key words:Bacterial Endotoxins Test(エンドトキシン試験法)/Endotoxin(エンドトキシン)/Validation(バリデーション).
物理的微生物制御技術の今とこれから[10] 固着による拡散防止技術を用いたウイルス汚染の制御
- 表題:
- 物理的微生物制御技術の今とこれから[10] 固着による拡散防止技術を用いたウイルス汚染の制御
- 著者:
- 中山 鶴雄((株)NBCメッシュテック)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.17-25(2020)
ウイルスを固着して不活化する制御技術は,ウイルスが拡散して感染症が拡大するリスク低減を目的に,一価銅化合物のナノ粒子と疎水性モノマーで修飾した無機ナノ粒子を複合化することで開発され,防護服やマスクなどに展開された。この技術を応用した防護服やマスクはウイルスを短時間で固着し,エンベロープの有無に関わらず,感染価が106以上のインフルエンザウイルスやネコカリシウイルスを60分間で検出限界以下まで減少させ,細菌に対しても高い不活化効果を示した。また,ウイルスや細菌の不活化メカニズムはヒドロキシラジカルが関与することが明らかになった。さらに,一価銅化合物のナノ粒子は塗料やアルコール製剤に応用された。これら開発品は付着したウイルスを3分以内に99.99%不活化した。また,一価銅化合物ナノ粒子を含む塗膜を被覆したPE製不織布は人工唾液や血液汚れが存在しても抗ウイルス・抗菌性などの消毒効果が維持されることが確認された。
Key words:Virus pollution(ウイルス汚染)/Control(制御)/Fixation(固着)/Inactivation(不活化)/Monovalent copper compound(一価銅化合物)/Hydroxyl radical(ヒドロキシラジカル).
損傷菌[9] 人工透析における細菌汚染と損傷菌
- 表題:
- 損傷菌[9] 人工透析における細菌汚染と損傷菌
- 著者:
- 大薗 英一(越谷大袋クリニック,日本医科大学 微生物免疫),本田 和美(越谷大袋クリニック)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.27-31(2020)
血液透析を行っている病院や診療所では,透析液を大量に製造している。透析液の製造及び供給システムの微生物汚染の原因は,ヒトの手による配管部位の開放系作業時や施設納入前の透析機器の組立作業時などの汚染を起源としたバイオフィルムによるものとみられる。このため初期洗浄による汚染の低減が最も重要で,その後の維持には清潔操作と透析と透析の間の洗浄消毒が必須となる。培養法による検出では,洗浄消毒によりいったん菌は検出されなくなるが数時間~数日で同一菌種・株の菌が再度分離されるようになる。この間,DNA蛍光染色では菌数の変化が観られない。バイオフィルム内の菌叢は完全には殺滅されず,一過性の培養不能な損傷を誘導したことにとどまっている可能性が示唆された。
Key words:Biofilms(バイオフィルム)/Hand hygiene(手の衛生)/Rapid measurement(迅速計測)/Fluorescent staining(蛍光染色法).
化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [6]細菌バイオフィルムの形成機構と制御法 -単細胞生物が演じる一大生命劇とその舞台での闘い-
- 表題:
- 化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [6]細菌バイオフィルムの形成機構と制御法 -単細胞生物が演じる一大生命劇とその舞台での闘い-
- 著者:
- 土戸 哲明(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.33-40(2020)
バイオフィルムは,近年微生物制御において問題視されるようになり,その形成機構と制御法について解説した。そのライフサイクルは以下の4つのステージからなる。①界面での細胞付着に始まり,②その表面での増殖集団のマイクロコロニー形成,さらに③細胞密度感知システムや微小環境での生態学的な分化システムが作動し,多くの遺伝子やその産物が関与してバイオフィルム構造が形成されて成熟する。そして,④その一部が離脱分散して移動し,新たな生活の場をほかに求める。最初の付着過程では,線毛が特に重要な働きをする。次の増殖過程では,可逆的付着から不可逆付着に移行して増殖する。そしてマイクロコロニー形成過程では,形質分化が起こり,バイオフィルム形成における「協力」,「特化」,「分業」の3つの役割を果たす。これにはc-di-GMPやクォラムセンシング機構など多様な制御システムが働き,Pseudomonas aeruginosaではキノコ状のバイオフィルムを形成する。そしてさらにバイオフィルムの分散が起こり,内部から生じた新生細胞が外に出て新たな表面を求めて移動する。最後に,この形成・分散機構をもとに開発されているバイオフィルム制御法について解説した。
[Image of biofilm formation cycle]Key words:Biofilm(バイオフィルム)/Bacterium(細菌)/Quorum sensing(クォラムセンシング)/Cyclic-di-GMP(環状ジグアノシン-1-リン酸)/Control(制御).
食にまつわる有害微生物 〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [6] セレウス菌
- 表題:
- 食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [6] セレウス菌
- 著者:
- 太田 美智男(名古屋大学 名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.1,pp.41-47(2020)
セレウス菌(Bacillus cereus)は易感染患者に日和見感染を起こすとともに,下痢型と嘔吐型の食中毒を起こす。日本では大部分が嘔吐型食中毒であり,喫食後短時間で発症する毒素型食中毒であり,ほとんどの場合発症後24時間程度で軽快する。しかしまれに急性肝不全や中枢神経障害を起こして死亡することもある。原因食は炒飯やスパゲッティなどのデンプン食が多い。原因毒素は低分子環状ペプチドcereulideで,セレウス菌に汚染された食品中に分泌される。cereulideは耐熱性,疎水性で100℃加熱にも失活せず,カリウムイオノフォアとしてミトコンドリアの呼吸を阻害する。産生遺伝子はプラスミド上に存在し,セレウス菌の中の一部の菌株のみが保有する。食品中のcereulideを簡便・高感度に検出する方法が無いので,検出キットの開発が望まれる。
Key words:Bacillus cereus(セレウス菌)/Spore(芽胞)/Emetic type food poisoning(嘔吐型食中毒)/Emetic toxin(嘔吐毒素)/Enterotoxin(エンテロトキシン)/Cereulide/Potassium ionophore(カリウムイオノフォア)/Vacuolation of Hep2 cells(Hep2細胞空胞化)/Bacillus anthracis(炭そ菌).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その13)』…新井 一義…目次裏
『弱酸性次亜水の活用方法について』…阪中 郁…16
『化粧品の防腐技術者と日本防菌防黴学会の架け橋に』…目片 秀明…26
海外文献抄録 …坂上 吉一…32
会報 …48
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.1(2020)
Control of Virus Pollution using Diffusion Prevention Technology by Fixation
Bacterial Contamination in Hemodialysis System and Damaged Cells Induced by Washing-disinfection
Mechanisms of Formation of Bacterial Biofilms and Control Methods -A Magnificent Life Drama and Its Battle on the Stage-
〜From a Basis to the Latest Knowledge of the Causing Microorganisms〜 (6) Bacillus cereus
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Fumi SAKANAKA…16
…by Hideaki MEKATA…26
Abstracts from Overseas Journals …by Yoshikazu SAKAGAMI…32
Society Activities …48
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.2 (2020)
【 目次 】
LC-MS/MSによる米飯およびチャーハン中のセレウス菌嘔吐毒,セレウリド試験法
- 表題:
- LC-MS/MSによる米飯およびチャーハン中のセレウス菌嘔吐毒,セレウリド試験法(原著論文)
- 著者:
- 鎌田 洋一(甲子園大学,岩手大学),藤田 和弘,福沢 栄太((一財)日本食品分析センター),佐藤 信彦,佐野 勇気,橘田 規,高橋 洋武((一財)日本食品検査),大城 直雅,岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所),五十君 靜信(国立医薬品食品衛生研究所,東京農業大学),白藤 由紀子,山﨑 朗子(岩手大学),梶田 弘子(岩手県食肉衛生検査所),上田 成子(女子栄養大学),奈賀 俊人(東洋食品工業短期大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.49-56(2020)
市販の合成セレウリドを定量用標準品として用いてLC-MS/MSによるセレウリド試験法を検討した。米飯およびチャーハンからメタノールおよびメタノール:水(7:3)を用いてセレウリドを抽出し,ポリマー系カートリッジカラムで精製した。LCによるセレウリド分離は,C18カラムを用い,ギ酸アンモニウム含有ギ酸溶液とギ酸アンモニウム含有メタノール溶液で実施し,MS/MSにおけるイオン化は,ESIポジティブモードで実施した。2試験室における試行から,米飯およびチャーハンとも良好な真度,併行精度,および室内精度が得られた。米飯に接種した菌はセレウリドを産生し,本報告で記述した方法で,高濃度のセレウリドを検出できた。開発したLC-MS/MSによるセレウリド試験法は,嘔吐型セレウス菌食中毒の原因食品におけるセレウリドの検出,また,一般市販米飯やチャーハンのセレウリド汚染の調査とその安全性を検証する方法として,今後用いることができると考えられた。
Key words:Bacillus cereus emetic toxin(セレウス菌嘔吐毒)/Cereulide(セレウリド)/Cooked rice(米飯)/Fried cooked rice(チャーハン)/LC-MS/MS(液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置).
損傷菌[10] 加熱損傷菌-大腸菌における損傷・回復機構-
- 表題:
- 損傷菌[10] 加熱損傷菌-大腸菌における損傷・回復機構-
- 著者:
- 土戸 哲明,坂元 仁(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.57-65(2020)
大腸菌の加熱損傷と修復機構について,著者らのこれまでの成果を中心に最近の知見を交えて解説した。損傷とその修復の実態解明は個々の細胞分子や素子のレベルだけでなく,細胞全体の恒常性維持のためのネットワーク的な制御系と機能分子・組織間の関係性が問題になる。本稿では,①細胞外膜・ペリプラズム,②細胞質膜(内膜),③細胞質タンパク質・酵素,④エネルギー生成系と活性酸素発生,⑤DNA・RNAとリボソーム,⑥ストレス応答系とトレランスの各重要機能分子・組織の損傷と修復について論じ,それらがどのように細胞の生存性に関係するのかについて考察した。これら分子・機能組織レベルでの解析結果を統合的視点から検討することによって,加熱損傷大腸菌の細胞レベルの損傷・回復機構が理解されるだろう。
Key words:Injured microorganism(損傷菌)/Heat injury(加熱損傷)/Escherichia coli(大腸菌)/Membrane injury(細胞膜損傷)/Protein homeostasis(タンパク質恒常性)/Microorganism control(微生物制御).
化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [7]化粧品工場における微生物管理と制御
- 表題:
- 化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [7]化粧品工場における微生物管理と制御
- 著者:
- 猪野 毅(アース環境サービス(株) 彩都総合研究所 分析センター東日本)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.67-73(2020)
多くの化粧品メーカーが化粧品GMPへの積極的な取り組みを進めているが,一方で依然として微生物汚染(一次汚染)を受けた製品が市場に出て自主回収している。カビの発生や酵母による異臭などの真菌類による腐敗・変敗や芽胞形成菌汚染やグラム陰性菌汚染などが問題となっている。バイオフィルムの形成や防腐剤の影響下で増殖可能な酵母やグラム陰性菌も汚染リスクとして十分考慮すべきである。
化粧品の製造現場において「ハード」・「ソフト」・「ヒューマン」に起因する様々な要因から発生する微生物汚染のメカニズムや製造工程や製造環境の管理ポイントと対策,微生物モニタリング法と微生物汚染源・汚染経路の特定,最も重要な課題である作業者の教育訓練についても説明する。
Key words:Microbial contamination (Primary contamination)(微生物汚染(一次汚染))/Risk management(リスク管理)/Microbial monitoring(微生物モニタリング)/Education and training to workers(作業者の教育訓練)/Source of contamination(汚染源の特定)/Biofilm(バイオフィルム).
食にまつわる有害微生物 〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [8] ビブリオ科細菌
- 表題:
- 食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [8] ビブリオ科細菌
- 著者:
- 古下 学(水産大学校 食品科学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.75-80(2020)
ビブリオ科細菌は,100種類以上知られている。日本において行政上の食中毒として扱われているのは,腸炎ビブリオ(V. parahaemolyticus),コレラ(V. cholerae),ナグビブリオ(NAG Vibrio),ビブリオミミカス(V. mimicus),ビブリオフルビアリス(V. fluvialis)およびビブリオファーニシイ(V. furnissii)である。
近年,腸炎ビブリオは年間3~36件の食中毒発生件数であるが,1990年代は年間800件を超えており,食品衛生法改正および漁港市場への殺菌海水の導入により,食中毒発生件数が激減した。コレラとナグビブリオによる食中毒発生は,散発的であり,コレラに関しては2008年に発生した食中毒以降,発生していない。ビブリオ科細菌による食中毒は,基本的に魚介類の摂食により引き起こされる。すなわち,食中毒の防止には,水産食品の生産から消費に至るフードチェーン全体に病原性ビブリオの管理が重要となる。生食用鮮魚介類の場合,漁獲直後から消費に至るすべての過程での10℃以下の温度コントロールが重要となってくる。また,使用される水は,浄水である必要がある。食品衛生法の改正によりHACCP(危害分析重要管理点)が義務化となる。これにより,さらなる病原性ビブリオによる健康被害を減少させることが期待できるが,今後,さらなる衛生管理の充実が求められる。
Key words:食中毒/Vibrio/食品衛生.
ここまできている微生物試験迅速化技術 [4]ロボットアームでの自動化による細菌検査の迅速化
- 表題:
- ここまできている微生物試験迅速化技術 [4]ロボットアームでの自動化による細菌検査の迅速化
- 著者:
- 植竹 康勝((株)HERO 営業部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.81-86(2020)
近年,政府が力を入れている外国人渡航者増大によるインバウンド効果をはじめとして,2020年東京オリンピック以降も製造業の生産増大が見込まれている。それに伴い,細菌検査,作業環境測定などの検査の増大も間違いない。その増大に反比例して生産人口数は減少の一途をたどっていることから,その増大に対応すべく試験の迅速化,効率化を進めることが急務となっている。そのような中で,各種検査部門におけるルーティンワークの活人省力化,自動化による効率化が最大のテーマの一つであると考えられる。
当社は,細菌検査機関各所の皆様からのアドバイスを得て,検査自動化ロボットの実現にこぎつけることができた。この経験を検査員不足に悩んでいる方々にご紹介し,迅速化ロボットへの訴求に広くご賛同を募るものとして本項のまとめを行なった。
Key words:労働人口の減少/活人省力化/協働/働き方改革/効率化.
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [1]建築物衛生法
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [1]建築物衛生法
- 著者:
- 杉山 順一((公財)日本建築衛生管理教育センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.2,pp.87-92(2020)
建築物衛生法は不特定多数の人が利用するビルを清潔な状態で利用できるように,空気,給排水衛生,衛生(清掃・廃棄物処理,防除作業)についての管理項目を定めて,建築物の衛生的な環境の確保を図るよう規定されている。用途としては興行場や百貨店,店舗,事務所,旅館等であり,その規模は特定用途に使用される延べ面積3,000平方メートル以上となっている。この法律は「特定建築物」の所有者,占有者らに求められた法律であり,所有者らは「建築物環境衛生管理基準」に従って維持管理しなければならない。本稿では建築物環境衛生管理基準や室内空気管理に関する事項を解説した。
残り8回の講座で,建物の空調システムの基本的構造や空気を介した微生物感染事例,各空調システムの働きと微生物汚染,抑制対策等について解説いただく。
Key words:Law for environmental health in buildings(建築物衛生法)/Standards for environment and health management of buildings(建築物環境衛生管理基準)/Adjustment of the air quality(空気環境の調整).
日本防菌防黴学会誌投稿規定 …93
日本防菌防黴学会誌執筆要項 …96
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その14)』…新井 一義…目次裏
『しょうゆ品質の管理向上』…花江 佳孝…66
『安心・安全な食品のお届けを目指して』…上松 智子…74
会報 …100
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.2(2020)
Heat-Injured Cells-Mechanisms of Injury and Recovery in Escherichia coli
Microbe Management and Control in the Cosmetics Factory
〜From a Basis to the Latest Knowledge of the Causing Microorganisms〜 (8) Vibrio
Acceleration of Microbial Examination by Automation with Robot Arm
Building Sanitation Law
Information for Authors …93
Notes for the Contribution …96
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Yoshitaka HANAE…66
…by Tomoko UEMATSU…74
Society Activities …100
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.3 (2020)
【 目次 】
スパイラル型ROモジュール透過水における細菌数の経時変化と影響因子の評価
- 表題:
- スパイラル型ROモジュール透過水における細菌数の経時変化と影響因子の評価(原著論文)
- 著者:
- 阿瀬 智暢(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)),大河内 由美子(麻布大学 生命・環境科学部 環境科学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.101-110(2020)
逆浸透(RO)膜は医療用水のみならず,超純水や飲料水,下水再生水の製造に広く使用されている。RO膜は細菌細胞サイズより小さい孔径を有するにも関わらず,RO透過水中に細菌が存在することが報告されてきた。本研究では,RO透過水中の細菌の起源解明を目的としてスパイラル型RO膜モジュールを連続運転し,流入側の細菌負荷を変動させて透過水中の従属栄養細菌数変化を調べた。循環流路にUF膜を増設して流入負荷を下げると,運転開始後短期間は透過側濃度も低下し,流入側からの漏出の可能性が示された。また,RO膜による細菌阻止率は消毒直後の5 log以上から経時的に低下した。流入側,透過側の各細菌群の増殖速度を比較した結果,透過側で約4倍大きい値を示し,両者の増殖速度の違いが阻止率低下を招いたと考えられる。以上の結果から,RO透過水では消毒直後には流入側からの漏出細菌が,運転継続すると透過側で再増殖した細菌がそれぞれ優占すると考えられる。
Key words:Reverse osmosis(RO)membrane(逆浸透膜)/Spiral-wound RO modules(スパイラル型ROモジュール)/Heterotrophic plate count:HPC(従属栄養細菌)/Log removal values:LRV(細菌阻止率)/Regrowth(再増殖).
欧州標準試験法による殺菌・消毒薬の抗微生物活性評価について
- 表題:
- 欧州標準試験法による殺菌・消毒薬の抗微生物活性評価について
- 著者:
- 梶浦 工,植田 知文(吉田製薬(株) 研究開発本部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.111-115(2020)
欧州では,欧州標準化委員会のメンバー国が様々な分野の欧州標準試験法(EN試験法)を共同で策定している。殺菌・消毒薬に関しても,統一規格に関する指針が1998年に刊行されて以来,現在に至るまで複数のEN試験法が公表されている。本解説では殺菌・消毒薬に関するEN試験法について,全体の特徴を簡単に解説するとともに,筆者らの実施経験を踏まえ,代表的な試験法を概要し,さらには我が国におけるEN試験法の参照事例についても紹介する。
Key words:European Standards(欧州標準試験法)/Chemical disinfectants and antiseptics(殺菌・消毒薬)/Antimicrobial activity(抗微生物活性)/Suspension test(浮遊試験)/Surface test(表面試験).
化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [8]工場での衛生管理と洗浄技術
- 表題:
- 化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [8]工場での衛生管理と洗浄技術
- 著者:
- 福﨑 智司(三重大学大学院生物資源学研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.117-122(2020)
人が摂取する食品や肌に直接接触する化粧品の製造工場では,製造環境の清浄度を常に高く維持して異物・薬品の混入や,製品間の交差汚染,有害微生物による汚染を防ぐ必要がある。化粧品は無菌性を要求される製品ではないが,微生物汚染による品質トラブルは避けなければならない。この衛生状態の維持において,周期的に繰り返し行う洗浄の持つ役割は極めて大きい。洗浄の効率化においては,各種の洗浄力要素をいかに有効に組み合わせるかが本質的な課題となる。本稿では,化粧品製造工程での微生物汚染対策として,食品産業における一般的な衛生管理に関する基本的な考え方を述べた後,微生物を含む有機物汚れの洗浄除去に広く用いられているアルカリ剤,次亜塩素酸ナトリウム,界面活性剤の洗浄力の有効性を解説した。
Key words:Hygiene management(衛生管理)/Cleaning(洗浄)/Cosmetics(化粧品)/Microbial contamination(微生物汚染)/Hypochlorous acid(次亜塩素酸).
食にまつわる有害微生物 〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [7] 病原性大腸菌
- 表題:
- 食にまつわる有害微生物〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [7] 病原性大腸菌
- 著者:
- 横山 佳子(京都女子大学家政学部食物栄養学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.123-130(2020)
わが国では,ベロ毒素産生性大腸菌とその他病原大腸菌による食中毒が多発しており,毎年多数の患者が発生している。大腸菌は環境やヒトの腸管内に生息しており,本来ヒトにはほとんど無害であるが,プラスミドの獲得やファージ感染により病原性に関わる遺伝子を獲得した結果,ヒトに重篤な疾患を引き起こす大腸菌が出現している。病原性大腸菌は下痢原性大腸菌と尿路感染や髄膜炎などを起こす腸管外病原性大腸菌に大別されるが,本稿では,食との関わりから下痢原性大腸菌について取りあげる。具体的には,腸管病原性大腸菌(EPEC),腸管毒素原性大腸菌(ETEC),腸管出血性大腸菌(EHEC),腸管侵入性大腸菌(EIEC),腸管凝集性大腸菌(EAEC),分散接着性大腸菌(DAEC)の6種類の大腸菌について,宿主細胞への付着・定着メカニズム,分泌装置,エフェクタータンパク,毒素などの病原性に関わる因子について解説する。
Key words:EPEC(腸管病原性大腸菌)/ETEC(腸管毒素原性大腸菌)/EHEC(腸管出血性大腸菌)/EIEC(腸管侵入性大腸菌)/EAEC(腸管凝集性大腸菌)/DAEC(分散接着性大腸菌).
ここまできている微生物試験迅速化技術 [5]蛍光染色法を用いた微生物の迅速検出
- 表題:
- ここまできている微生物試験迅速化技術 [5]蛍光染色法を用いた微生物の迅速検出
- 著者:
- 井手 真作(光洋産業(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.131-136(2020)
蛍光染色を用いた,微生物の迅速検出に関して,2002年発売の「バイオプローラ」の技術を紹介していく。決して新しくはない技術ではあるが,感度・精度を高め,かつ検査スピードや簡便さを犠牲にしないため,いたるところに工夫が盛り込まれており,これまであまり公にはなっていなかったその内容をお示しし,原理や特性の理解の助けとしたい。また,実際の運用上避けては通れない「偽陽性」の対処法についても紹介し,現実的なレベルでの知見となればと期待する。さらにシンプルな構造で,向き不向きも比較的はっきりしていることから,向いている検体の推察や,この方法の発展性について,考えて頂く機会になればと思い,書き進めてある。十分ではないかもしれないが,数多ある迅速法を,原理や特性を理解し,運用の可能性をイメージする助けとなれば幸いである。
Key words:Fluorescent staining method(蛍光染色法)/Process management(工程管理)/Process inspection(工程検査)/High accuracy(高精度)/High sensitivity(高感度)/Background noise(バックグラウンドノイズ)/Special coating filter(特殊コーティング)/Intuitive operation(感覚的).
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [2]建物の空調システムにおける空気の動きと室内空気による微生物汚染
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [2]建物の空調システムにおける空気の動きと室内空気による微生物汚染
- 著者:
- 長谷川 兼一(秋田県立大学システム科学技術学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.137-142(2020)
一般に,建物内では常に空気の流れが生じている。これらは,換気や暖冷房のための空気循環であり,外気を取り入れて室内に供給される。従って,外気由来の微生物は,空気の流れに沿って室内に入り,環境条件が整い繁殖すれば汚染が顕在化する。自然換気のみであれば,室内の環境条件を適切に整えることで,汚染を防除することになろう。しかしながら,空調システムが設置されるような一般建築物や住宅の場合,空調システムそのものが汚染源になる可能性があるため,特段の配慮が求められる。
建物の室内空気環境が適正に維持・管理するためには,空調システムを介して空気がどのように室内に供給され,微生物汚染が発生する可能性がどこにあるかを理解することは重要である。本稿では,①一般的な空調システムの空気の流れを解説し,②中小規模建物の空調システムと室内環境の実態を紹介するとともに,③住宅において観察される真菌汚染の実態を調査事例を通じて示す。
Key words:Air conditioning systems(空調システム)/Microbial contamination in indoor air(室内空気の微生物汚染)/Building and housing(非住宅建築と住宅).
損傷菌[11] 加熱損傷菌-カンピロバクター
- 表題:
- 損傷菌[11] 加熱損傷菌-カンピロバクター
- 著者:
- 小林 弘司(福岡女子大学 国際文理学部 食・健康学科 食品安全科学研究室)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.3,pp.143-149(2020)
Campylobacter jejuniの制御法を確立する上で,加熱損傷菌体の性質を知ることは重要である。二重平板培養法による損傷評価の結果から,C. jejuniは加熱損傷により各種選択剤に対して感受性化するのではなく,活性酸素種消去能が低下すると考えられた。また,加熱損傷C. jejuniは食品中では,25℃,6時間保存後には損傷から回復した。一方,4℃では損傷から回復はしなかったが,二次損傷による菌数の減少も認められなかった。さらに,マウスを用いた実験により加熱損傷C. jejuniは感染能を失わないことも報告されている。これらの結果は,従来考えられていた以上に損傷菌を生み出さないための確実な加熱条件,仮に損傷菌が生じたとしても二次損傷により死滅させる条件の設定が重要であることを示している。
Key words:Foodborne illness(食中毒)/Campylobacter jejuni(カンピロバクター ジェジュニ)/Heat injury(加熱損傷)/Oxidative stress(酸化ストレス).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その15)』…新井 一義…目次裏
『化粧品における微生物迅速試験機の可能性』…脇山 心一…116
会報 …150
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.3(2020)
Hygiene Management and Cleaning Technology in a Factory.
〜From a Basis to the Latest Knowledge of the Causing Microorganisms〜 (7) Pathogenic Escherichia coli
Rapid Microbial Cell Counting by Fluorescent Method
Indoor Air Movement in Air Conditioning Systems and its Microbial Contamination
Heat Injured Microbe-Campylobacter
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Shinichi WAKIYAMA…116
Society Activities …150
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.4 (2020)
【 目次 】
タイのレストランおよび屋台で提供される飲食物の細菌汚染状況
- 表題:
- タイのレストランおよび屋台で提供される飲食物の細菌汚染状況(短報)
- 著者:
- 佐藤 順(東洋大学食環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.4,pp.153-156(2020)
タイのレストランおよび屋台合計30店舗で提供される飲食物の細菌学的品質を調査した。その結果,加熱調理品,未加熱調理品および飲料で生菌数の平均値は各々,4.2 log CFU/g,6.7 log CFU/g,3.2 log CFU/mlであった。また,大腸菌群の平均値は各々,2.1 log CFU/g,4.9 log CFU/g,1.8 log CFU/mlであった。さらに,黄色ブドウ球菌数では各々,2.4 log CFU/g,5.0 log CFU/g,1.5 log CFU/mlとなり,大腸菌群数での結果とほぼ同様の傾向が認められた。また,加熱調理品でセレウス菌数の平均値は1.1 log CFU/gであった。以上のことから,タイで提供される飲食物においては,黄色ブドウ球菌も大腸菌群と同様に,衛生管理の指標として使用できる可能性が示唆された。今回の調査結果は,現地の高温多湿な気候および調理現場での衛生管理の実情を反映したものであると考えられた。
Key words:Thailand(タイ)/Restaurant(レストラン)/Street food stand(屋台)/Bacterial examination(細菌検査)/Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌).
住環境への適用に向けた抗菌材料技術
- 表題:
- 住環境への適用に向けた抗菌材料技術
- 著者:
- 宮崎 真理子((株)日立製作所 研究開発グループ)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.4,pp.157-163(2020)
住環境に用いられる従来の抗菌製品の多くは,銀等の金属元素を用いた表面処理により,材料に抗菌性を与えている。この方法では,抗菌被膜の強度やコストの問題があるため,表面における抗菌性金属の分散量を過度に増大させることができない。また,金属元素を用いる方法は,菌を化学的に殺すことを目的とするが,実際には,菌は単体では人体に悪影響を及ぼすことは少なく,菌が成長し,バイオフィルムを形成することで人体に悪影響を及ぼすことが多い。従って,表面で菌がバイオフィルムを形成する過程を遮断できれば,抗菌材料として非常に有益である。一方,サメ体表を覆う微細構造(楯鱗)に抗菌効果があることが明らかになっている。本稿では,楯鱗と同様の機能を再現できる微細構造を設計し,設計した微細構造体を部材表面に設けることで菌のバイオフィルム形成が抑制されることを実証した例について解説する。
Key words:Biofilm(バイオフィルム)/Antibacterial effect(抗菌効果)/Biomimetics(バイオミメティクス)/Microstructure(微細構造)/Dermal denticles(楯鱗)/Bacterial culture(菌培養).
室内環境におけるかび対策
- 表題:
- 室内環境におけるかび対策
- 著者:
- 李 新一((株)衛生微生物研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.4,pp.165-167(2020)
細菌とかびはどちらも肉眼で見えないほど小さい生物(微生物)であり,試験操作をはじめ同様の扱いを行うことも多いが,生物としては大きな違いがあり,増殖形態にも大きな差がある。本解説では我々の生活環境の中でも特に室内環境でのかび発生やその対策について解説を行う。具体的な方法論や対策に用いる薬剤の選択について解説するのではなく,室内環境においてかび発生に寄与するポイントとして温度,水分について解説を行っていく。また,かびが発生する期間(時間)について,かび発生対策や除去に与える影響を解説していく。
Key words:Indoor environment(室内環境)/Relative humidity(相対湿度)/Fungal growth(かび発生)/Antifungal agent/Fungicide(防かび剤)/Material(基質).
損傷菌[12] 高圧損傷菌
- 表題:
- 損傷菌[12] 高圧損傷菌
- 著者:
- 山本 和貴(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.4,pp.169-176(2020)
食品高圧加工では最小加工法として,高圧殺菌に向けて利用されることが多い。高圧処理における微生物の不活性化因子として,蛋白質変性,細胞膜傷害,酸化ストレス等があるが,耐圧性は,微生物の種類,菌株,食品組成等に影響を受ける。とりわけ細菌は,致死的に殺菌されるのみならず,亜致死的に損傷することが知られ,その損傷・回復挙動については不明な点が多い。高圧損傷菌の検出をより確実なものとするためには,低温での培養,検出培地の選択に注意が必要である。また,高圧損傷菌の特性を把握する上では,膜傷害評価,活性酸素の影響低減,耐圧性の向上考慮,リボゾームの構造変化,メタボローム解析,コロニー出現挙動等の視点で研究を深化させる必要がある。細菌以外にも,酵母の損傷回復等が調べられているが,ウイルス,真菌類,寄生虫を含め,食品高圧加工で問題となる生物学的危害要因の損傷回復については知見が極めて限られている。
Key words:High hydrostatic pressure(高圧力)/Injury(損傷)/Recovery(回復)/Bacteria(細菌)/Detection(検出).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その16)』…新井 一義…目次裏
『防菌防黴と職務経歴』…佐藤 祐…164
『富山県衛生研究所における細菌検査』…金谷 潤一…168
会報 …196
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.4(2020)
High Pressure Injured Microbes
Rapid Microbiological Test Solution by Time-lapse Shadow Image Technology
Microbial Contamination in the Aerial Duct and its Restraint Measures
〜From a Basis to the Latest Knowledge of the Causing Microorganisms〜 (9)
Campylobacter
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Yu SATO…164
…by Jun-ichi KANATANI…168
Society Activities …196
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.5 (2020)
【 目次 】
分岐型脂肪酸によるコナヒョウヒダニの防除効果
- 表題:
- 分岐型脂肪酸によるコナヒョウヒダニの防除効果(原著論文)
- 著者:
- 丸岡 明希,尾畑 夢歩,南山 美音(北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科),好田 年成(日産化学(株)),森田 洋(北九州市立大学 国際環境工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.197-203(2020)
コナヒョウヒダニを用いて,炭素数の異なる分岐型高級脂肪酸及び高級アルコールによるダニ防除効果の検討を行った。殺ダニ試験および忌避試験の結果より,イソパルミチン酸(iso-C16)が濃度6.3%(2.0×102mM)で補正死亡率100%,濃度2%(50mM)で80%以上の忌避率を示し,最も高いダニ防除効果を示した。走査型電子顕微鏡(SEM)による表皮観察より,iso-C16処理後に表皮の紋理模様が消失し,毛根が詰まっている様子が見受けられたことから,皮膚呼吸を阻害する可能性が考えられた。また,iso-C16処理後の毒性症状,ミトコンドリア膜電位差測定の結果より,iso-C16は呼吸系を標的とし,ミトコンドリア膜電位を低下させることでダニ防除効果を示すことが示唆された。また,畳表を用いた簡易実証試験において,iso-C16は濃度13%(4.2×102mM)で生数の減少及び逃数の増加が認められたことから,畳表のダニ防除剤としての利用可能性が広がった。
Key words:Dermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)/Mite control effect(ダニ防除効果)/Branched fatty acids(分岐型脂肪酸).
エンドトキシンよもやま話(その3) リムルス試薬の特異性とリコンビナント試薬
- 表題:
- エンドトキシンよもやま話(その3) リムルス試薬の特異性とリコンビナント試薬
- 著者:
- 土谷 正和(Charles River, Microbial Solutions)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.205-208(2020)
エンドトキシン試験法に使用されるリムルス試薬の活性化機構に関して,最近大きな進展があった。エンドトキシンに感受性のFactor Cは,エンドトキシン凝集体上で分子間相互作用によって活性化されることが明らかになった。また,Factor Bも同じエンドトキシン凝集体上で分子間相互作用によって活性化され,これらの反応が,リムルス試薬のエンドトキシンに対する特異性を向上させていると思われた。シグナル増幅は,プロクロッティングエンザイムの活性化以降で起こると考えられる。最近話題になっているリコンビナントFactor C試薬は,Factor Cのセリンプロテアーゼ活性を測定するもので,リムルス試薬でFactor Bを活性化する反応とは異なるものである。しかも,シグナルはFactor C의活性を蛍光で増幅していることから,プロテアーゼや阻害物質の影響を受けやすいと考えられる。実際に,天然水中のエンドトキシン測定で,リコンビナント試薬の結果が低く出ている例もあり,リコンビナント試薬の使用には,更に実検体の測定データを取り,慎重に判断する必要がある。
Key words:Limulus amebocyte lysate(リムルス試薬)/Endotoxin(エンドトキシン)/Recombinant Factor C reagent(リコンビナントFactor C試薬).
損傷菌[13] 紫外線・放射線損傷菌
- 表題:
- 損傷菌[13] 紫外線・放射線損傷菌
- 著者:
- 古田 雅一(大阪府立大学大学院工学研究科量子放射線系専攻)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.209-212(2020)
紫外線・放射線滅菌の現況を簡単に述べ,損傷菌発生の有無の検討の必要性について述べた。さらに紫外線・放射線の細胞致死のメカニズムをゲノムDNAの損傷と修復の視点から解説し,損傷菌が生じる可能性としてゲノムDNAの修復と細胞増殖の回復時の動態解析の必要性について論じた。
Key words:UV(紫外線)/Ionizing radiation(放射線)/Genomic DNA(ゲノムDNA)/Damage(損傷)/Repair(修復)/Injured microorganism(損傷菌).
化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [9]歯磨剤とカビ・酵母
- 表題:
- 化粧品の防腐技術者のための講座part 2 [9]歯磨剤とカビ・酵母
- 著者:
- 高鳥 浩介,富坂 恭子,宮崎 知佳,高鳥 美奈子,久米田 裕子(NPO法人カビ相談センター),太田 利子(相模女子大学 栄養科学部),村松 芳多子(高崎健康福祉大学 健康福祉学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.213-220(2020)
化粧品の分野では歯磨剤とカビ・酵母に関しての文献や情報は少ない。そこで歯磨剤と共に使用される歯ブラシも含めてカビ・酵母とのかかわりを紹介した。最初に歯磨剤と微生物の関係について概要を述べ,歯磨剤が歴史上どのように使われてきたかなど世界および日本での使用法や改良法について述べた。さらに歯磨剤と深い関係がある歯ブラシについて国内での使用や改良の歴史をまとめた。次に,現代の歯磨剤に焦点を合わせ,市民へのアンケート結果と歯磨剤や歯ブラシの衛生に関する調査結果をまとめた。その結果見えてきたのは,歯磨剤や歯ブラシに関して,カビ・酵母とのかかわりは少ないということであった。そこで日常使用している歯磨剤や歯ブラシについて,カビ・酵母の汚染の実態を調べた。さらに市販歯磨剤の資化性と抗カビ活性についても調べた。以上の調査結果より,口腔衛生においても,カビ・酵母汚染に注視する必要があると考えられた。
Key words:Toothpaste(歯磨剤)/Toothbrush(歯ブラシ)/History(歴史)/Mold(カビ)/Yeast(酵母)/Contamination(被害)/Anti-mold property(抗カビ性).
ここまできている微生物試験迅速化技術 [7]電気計測・流体制御技術を用いた微生物のリアルタイムモニタリング
- 表題:
- ここまできている微生物試験迅速化技術 [7]電気計測・流体制御技術を用いた微生物のリアルタイムモニタリング
- 著者:
- 森田 智士((株)AFIテクノロジー ELESTA事業部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.221-226(2020)
我が国においては食品衛生法改正案が発表され,HACCPが2020年に制度化されることが決定したことを受け,製造工程中で汚染リスクを判断できる迅速検査装置への関心が高まっている。このニーズに応えるべく,AFIテクノロジー社では独自の微粒子分離技術AMATARを搭載した微生物汚染リスクモニタリングシステム【ELESTA™】を商品化した。本文において,拭き取り検査(環境微生物試験),ミネラルウォーター(低濃度検出),カット野菜(自家蛍光物質),低温殺菌牛乳(タンパク質コロイド粒子)など様々なサンプルでの添加回収試験による事例を紹介している。また,当社では,本システムを微生物迅速検査装置として世界標準化とすることを目標としており,その第一歩としてAOAC-PTM認証を2020年1月14日に取得した〔取得カテゴリー:飲料水〕。また,濃縮・精製・回収機能を応用し,次世代シーケンサーや飛行時間型質量分析計の前処理としても展開している。AFIテクノロジー社は微粒子分離技術AMATARをコアバリューとし,様々な業界課題に革新的なソリューションを提案することで社会貢献を目指し,前例のない「フードプロテクション・プラットフォーム」構築の実現に向けて,各協力企業および研究機関のご指導を仰ぎながら邁進していく所存である。
Key words:AMATAR, Particle sorting(微粒子分離)/Electric filtering(電気フィルター)/Microbiological monitoring(微生物モニタリング).
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [4]空調用エアフィルタの働きと微生物対策
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [4]空調用エアフィルタの働きと微生物対策
- 著者:
- 奥山 一博,山本 協(進和テック(株) 営業本部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.227-233(2020)
エアフィルタは粒子を捕集する効率グレードで種類を区分することができ,大きく分けて,粗じん用エアフィルタ,中高性能エアフィルタ,HEPAフィルタの3つに分類される。微生物がじん埃などに付着して空調機内へ侵入することもあるが,エアフィルタの構造上,微生物が中高性能フィルタ以上の捕集率を有するエアフィルタをすり抜けて屋内へ拡散することはなく,じん埃などと一緒にエアフィルタでの捕集が見込める。ただし,微生物がエアフィルタを構成するろ材繊維の中で増殖することで,微生物がエアフィルタの空気流出側に抜け出て二次汚染を引き起こすことが懸念される。そのため,微生物対策にあたり,ろ材繊維上での微生物の増殖を防ぐために,ろ材繊維に抗菌剤を塗付する手法,装置内を陰圧に制御して微生物が対象の空間内から流出しないようにする手法をとることとなる。
Key words:Air filter(エアフィルタ)/Microbe(微生物)/Antibacterial agent(抗菌剤).
真菌の分類と同定 [1]開講にあたって ゲノム時代の真菌の分類体系と形態観察法の約説
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [1]開講にあたって ゲノム時代の真菌の分類体系と形態観察法の約説
- 著者:
- 伴 さやか(千葉大学真菌医学研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.235-241(2020)
2019年末時点で菌類の総数は14万種が記載され,最大200万種の存在が見積もられている。また,菌類の約1800種のゲノム配列が公開されており,全ゲノム配列を用いた系統解析により再検討された菌界の分類体系は8門,12亜門に分けられた。これら最新の分類体系について簡単に紹介する。迅速同定技術に必要な遺伝子情報等は揃いつつあるが,それでも種の同定を確定させるための形態観察を欠かしてはならない。本講座で予定される各分類群の分類・同定法の前座として,光学顕微鏡を用いた顕微鏡観察法の基本と簡略的なプレパラート作製法を軽く紹介する。
Key words:Kingdom Fungi(菌界)/Classification System(分類体系)/Whole Genome Sequence(全ゲノム配列)/Morphological Observation(形態観察).
褐色腐朽メカニズム研究の最新の知見
- 表題:
- 褐色腐朽メカニズム研究の最新の知見
- 著者:
- 近藤 里沙子(東京農工大学 連合農学研究科),築田 理華子(東京農工大学 農学府),吉田 誠(東京農工大学 農学研究院)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.5,pp.243-245(2020)
日本では古くから木材を様々な建築物に利用してきており,現在でも戸建て住宅の多くは木造である。さらに近年,大規模建築物にも木材を使用することが可能となったことや,土木分野における木材の利用拡大などの流れを受け,木材を利用する上での品質管理がますます重要性を増している。木材はそれを利用する過程において様々な劣化を受けるが,その中の主要な劣化の一つが腐朽である。腐朽とは木材に顕著な強度低下を引き起こす真菌類による劣化を指し,その原因真菌類が木材腐朽菌である。本稿では,はじめに木材腐朽菌の中でも特に激しい腐朽を引き起こす真菌類である白色腐朽菌と褐色腐朽菌について,その腐朽の特徴や腐朽機構について概説する。さらに,我が国の木造建築物の最も主要な劣化原因の一つである褐色腐朽菌により焦点をあて,腐朽メカニズム研究の最新の知見について紹介する。
Key words:Wood rotting fungi(木材腐朽菌)/White-rot fungi(白色腐朽菌)/Brown-rot fungi(褐色腐朽菌).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その17)』…新井 一義…目次裏
『カビという生き物』…一色 淳憲…234
海外文献抄録 …坂上 吉一…242
会報 …246
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.5(2020)
Specificity of Limulus Amebocyte Lysate and Recombinant Factor C Reagents
Induction of Injured Microorganism by UV or Ionizing Radiations
Relationship between Toothpaste and Fungi
Real-time Monitoring of Microbe using Electrical Measurement・Fluid Control Technology
Movement of Air Conditioning Filter and Measures of Microbe
The Recent Taxonomy of Fungi by Whole Genome Sequences and Brief Introduction of Morphological Observations.
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Atsunori ISSHIKI…234
Abstracts from Overseas Journals …by Yoshikazu SAKAGAMI…242
Society Activities …246
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.6 (2020)
【 目次 】
次亜塩素酸のシリコーンゴムへの透過挙動と殺菌作用
- 表題:
- 次亜塩素酸のシリコーンゴムへの透過挙動と殺菌作用(原著論文)
- 著者:
- 吉田すぎる,福﨑 智司(三重大学大学院生物資源学研究科),浦野 博水,岩蕗 仁(岡山県工業技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.247-253(2020)
純水を充填したシリコーンチューブをpH調整NaOCl水溶液に浸漬した。透過した遊離有効塩素(FAC)の量は,NaOCl水溶液の非解離型次亜塩素酸(HOCl(aq))濃度と温度に依存した。この結果は,HOClは濃度勾配と温度を駆動力として拡散によって透過することを示した。HOClが収着したシリコーンチューブを純水に浸漬すると,HOClは酸化力を保持したまま純水中に再移行した。さらに,NaOCl水溶液を充填したシリコーンチューブからは,HOCl(aq)濃度に依存して気体状HOCl(g)が気化した。シリコーンチューブを透過したHOCl(aq)とHOCl(g)は,Staphylococcus aureusに対して優れた殺菌作用を示した。本研究で得られた結果から,シリコーンチューブの選択的透過性は,液相および気相に殺菌剤としてHOClを供給する新たな方法として有効であることが示唆された。
Key words:Hypochlorous acid(次亜塩素酸)/Silicone rubber(シリコーンゴム)/Permeation(透過)/Bactericidal action(殺菌作用)/Mass transfer(物質移動)/Solution-diffusion mechanism(溶解-拡散機構).
豚コレラ(豚熱)とアフリカ豚コレラ(アフリカ豚熱)
- 表題:
- 豚コレラ(豚熱)とアフリカ豚コレラ(アフリカ豚熱) -Classical swine fever (CSF) and African swine fever (ASF)-
- 著者:
- 篠田 純男(岡山大学インド感染症共同研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.255-269(2020)
1992年以後発生していなかった豚コレラCSFが,2018年に愛知,岐阜で再発生し,周辺の地域に広がり,沖縄にまで飛び火している。CSFにはワクチンがあり,推奨地域には接種が実施されているが,国際獣疫事務局:OIEのCSF清浄国認定には一定期間ワクチンなしでCSFが発生しないという条件があるので,長期のワクチン使用は好ましいことではない。CSFの病原体CSFVはRNAウイルスで,ブタ,イノシシに対する病原体であるがヒトには感染しない。一方でアフリカ豚コレラASFがアフリカ,東欧に拡がり,近年は中国,ベトナム,韓国などのアジア諸国でも見られるようなった。ASFはCSFと同様にブタとイノシシに対する感染症で,ヒトには起こらない疾患であるが,病原体のASFVはCSFVとは異なるDNAウイルスである。ASFは近隣アジア諸国で多発しているので,日本への侵入が懸念され,しかもワクチンがないので対応が難しい。
Key words:Classical swine fever(豚コレラ:CSF)/African swine fever(アフリカ豚コレラ:ASF)/Salmonella enterica subspecies enterica serovar Choleraesuis(ブタコレラ菌)/Transboundary animal disease(越境性動物疾病:TADs).
平成年代に発生した食中毒と行政対応
- 表題:
- 平成年代に発生した食中毒と行政対応
- 著者:
- 笈川 和男(元神奈川県食品衛生監視員)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.271-277(2020)
平成年代には多くの食中毒が発生し,重大な食中毒が発生すれば,再発防止のために,食品衛生法の規則改正などの行政対応がなされた。平成前期には鶏卵に関連するSE食中毒が多発し,三重県桑名保健所が全国の自治体の協力を得てSE食中毒対策をまとめ,殼付き鶏卵の品質保持期限(賞味期限)表示などが定められた。平成年代の2大食中毒は大阪堺市学童集団下痢症とY乳業低脂肪乳食中毒であり,堺市学童集団下痢症では大規模調理施設衛生管理マニュアルが定められ,Y乳業低脂肪乳食中毒では総合衛生管理製造過程(マルソウ)の,現場調査の導入と3年ごとの更新が必要となった。自治体による夏の食中毒警報・注意報の主たる目的は腸炎ビブリオ食中毒対策であったが,平成13年に生鮮用鮮魚介類等に対して規格基準が定められ,腸炎ビブリオ食中毒が大きく減少した。その他腸管出血性大腸菌食中毒などの事例を紹介したうえで,行政対応を整理した。
Key words:Foodborne Disease(食中毒)/Administrative response(行政対応)/Chicken egg measures(鶏卵対策)/Salmonella(サルモネラ)/EHEC(腸管出血性大腸菌)/Norovirus(ノロウイルス).
損傷菌[14] 細菌芽胞の損傷
- 表題:
- 損傷菌[14] 細菌芽胞の損傷
- 著者:
- 桑名 利津子(摂南大学薬学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.279-284(2020)
Bacillus属,Clostridium属細菌は環境変化に応じて芽胞(内生胞子,endospore)を形成する。芽胞は熱,紫外線,放射線,様々な化学薬品などに対して耐性を獲得した長期休眠細胞である。そのため,芽胞の殺菌は難しく,芽胞の制御は食品や医薬品の衛生管理において重要な課題の一つである。芽胞の研究は様々な分野に貢献している。食品製造分野では,細菌汚染による食品の変敗や食中毒を引き中毒を引き起こすため芽胞の殺菌は重要である。また生薬・漢方製剤は植物由来のものが多いため,医薬品製造分野でも同様である。芽胞を制御するためには,まず芽胞の構造や生化学的な特性を理解する必要がある。本稿ではBacillus属細菌の芽胞に着目し,芽胞の構造,芽胞形成にともなう耐性獲得機構や,殺菌処理にともなう芽胞の損傷,修復機構についても解説する。
Key words:芽胞(endospore,内生胞子)/長期休眠細胞/耐性/Injured bacterial cell(損傷菌)/Bacillus subtilis.
真菌の分類と同定 [2]子嚢菌類門の多様性と分類
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [2]子嚢菌類門の多様性と分類
- 著者:
- 星野 保(八戸工業大学 工学部),田中 和明(弘前大学 農学生命学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.285-290(2020)
子嚢菌類は菌界において門レベルでその種数が最大であり,本誌読者の興味の中心である多様な物質の劣化や環境汚染の原因となる代表的な菌類を含んでいる。子嚢菌類門においても分子系統解析の結果を反映し,その高次分類群に大きな変化が起きている。この解説では,子嚢菌類門における近年の分類体系を概説すると共に,対象とする菌類の同定に重要な有性・無性世代の形態的特徴を紹介する。
Key words:Apothecium(子嚢盤)/Cleistothecium(閉子嚢殻)/Conidium(分生子)/Perithecium(子嚢殻)/Pseudoperithecium(偽子嚢殻).
はじめに
水の衛生管理 1.東京都内の冷却塔水におけるレジオネラ属菌検出状況
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜 1.東京都内の冷却塔水におけるレジオネラ属菌検出状況
- 著者:
- 田部井 由紀子,武藤 千恵子,梅津 萌子,齋藤 育江,小西 浩之,守安 貴子(東京都健康安全研究センター薬事環境科学部環境衛生研究科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.6,pp.293-298(2020)
東京都では,1987年より特定建築物の冷却塔水等を対象としたレジオネラ属菌の検出状況について調査を継続して行っている。今回,2008年度から2017年度まで10年間に当センターに搬入された冷却塔水1,040件を調査対象として,レジオネラ属菌の検出状況について調査を行った結果,冷却塔水におけるレジオネラ属菌の検出率は,42.3%であった。また,冷却塔水におけるレジオネラ属菌の検出率は,年々減少傾向であった。検出されたレジオネラ属菌は,L. pneumophilaが最も多かった。検出されたL. pneumophilaの血清群については,1群が最も多く,次いで7群,5群及び13群が多かった。新規冷却塔の設置初期においては,レジオネラ属菌は検出されなかったが,年数の経過によりアメーバ類が冷却塔に定着し,その後,夏季を中心にレジオネラ属菌が増殖することが確認された。また,アメーバ類及びレジオネラ属菌は,定期的な清掃によって増殖が抑えられることが再確認された。
Key words:Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Cooling tower(冷却塔)/Legionella contamination(レジオネラ汚染).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その18)』…新井 一義…目次裏
『総合環境衛生管理業務の事例紹介』…筒井 正造…270
『敵は○○○に在り』…梅津 浩…278
海外文献抄録 …坂上 吉一…299
会報 …300
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.6(2020)
Foreword
Detection Situation of Legionella Genus Bacteria from Coolant Water in Tokyo Metropolis
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Shozo TSUTSUI…270
…by Hiroshi UMETSU…278
Abstracts from Overseas Journals …by Yoshikazu SAKAGAMI…299
Society Activities …300
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.7 (2020)
【 目次 】
徳島県内を流通する市販エビの細菌汚染状況と学術的分類
- 表題:
- 徳島県内を流通する市販エビの細菌汚染状況と学術的分類(原著論文)
- 著者:
- 岡崎 貴世,中津 桃子,篠宮 幸子(四国大学生活科学部管理栄養士養成課程)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.301-306(2020)
徳島県内を流通するエビの細菌汚染状況を調査した。無頭殻付きエビから一般生菌3.71-7.61 log CFU/g,低温細菌3.78-7.23 log CFU/gが検出された。特に殻がカットされたエビは初期腐敗と判定されるほど多くの菌が検出され,衛生管理面で何らかの問題があると推測された。殻付きエビとむきエビの一般生菌数と低温細菌数に差は認められなかったが,大腸菌群数は殻付きエビの方が有意に多く検出された。細菌汚染状況をエビの部位別で検査すると,体の外側の部位(腹肢,腹部第1-5節と第6節の殻,尾扇など)は内側(筋肉,みそ)と比較して有意に検出菌数が多かった。特に尾扇は多くの菌が検出されたため,調理の際は尾の部分も十分に加熱する必要があると考えられた。エビの学術的分類を行った結果,商品ラベルのエビの名称と標準和名は一致していた。一方,小エビは1パックに複数種類のエビが混ざっていることが確認された。
Key words:Shrimp(エビ)/Bacterial Contamination(細菌汚染)/Food Labeling(食品表示)/Academic Classification(学術的分類).
図書の真菌測定方法
- 表題:
- 図書の真菌測定方法
- 著者:
- 福島 由美子((株)ファインテック)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.307-309(2020)
図書の真菌を定量的に測定する方法(セロテープ法),真菌が紙に与える影響,浮遊菌に与える影響について解説した。セロテープ法はスワブ法と比較して精度よく採取することが可能である。真菌が紙に与える影響として,汚損の発生は湿度が高い環境では特に多くの種類が原因となる。また,汚損が発生していなくても真菌は残存しており,アレルギーや空調系統の二次被害の原因となる。セロテープ法での測定可能な真菌は表面に付着している場合の限定的であり,汚染が広がらないうちに表面付着菌の除去を行うことが望ましい。使用可能な場所や測定可能な菌数の範囲等欠点もあるが,真菌数の管理手法として有効な手段である。
Key words:Books(図書)/Fungi(真菌)/Qualitative evaluation(定性評価)/Sellotape(セロテープ)/Cleaning management(清掃管理).
微生物研究におけるメタボロミクスの活用展開
- 表題:
- 微生物研究におけるメタボロミクスの活用展開
- 著者:
- 山領 佐津紀(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.311-317(2020)
「メタボローム」は,アミノ酸やヌクレオチド・糖・脂質などを含む低分子量(概ねMW1000Da以下)代謝物質の総体として,個体の表現型を最もよく表す指標であり,動植物の組織や血液,尿などにおける代謝プロファイルから生体内で起こる多様な生理学的,病理学的な現象についての有用な情報が得られる(「メタボロミクス」はその代謝物質の構成やその濃度を測定した情報をもとに検体,または生体内での変化や原因を究明する分野である)。微生物は代謝研究のモデル生物として数多くの研究が行われており,メタボロミクスにおいてもその黎明期からの主要な研究対象である。オミクス解析が一般的に用いられ,“ポストゲノム時代”とも呼ばれる現在では,メタボロミクスを他のオミクスと組み合わせて多層的システムの一部として代謝を捉えるアプローチが行われている。ここではヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社が展開しているメタボロミクスサービスを中心に微生物研究への応用を紹介する。
Key words:CE-MS/メタボロミクス/微生物/腸内細菌叢.
食にまつわる有害微生物 [10] ヘリコバクター・ピロリ
- 表題:
- 食にまつわる有害微生物 〜原因微生物の基礎から最新の知見まで〜 [10] ヘリコバクター・ピロリ
- 著者:
- 瀬古 千佳子(京都府立大学大学院生命環境科学研究科),横山 佳子(京都女子大学家政学部食物栄養学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.319-326(2020)
Helicobacter pylori(ピロリ菌)の持続感染は,慢性胃炎,慢性萎縮性胃炎を経て胃がんに進展することが明らかとなっている。ピロリ菌は宿主の胃酸の攻撃を回避して胃粘膜上皮に感染し,様々な病原因子を産生して宿主細胞のシグナル伝達機構に影響を与え,また宿主の免疫機構を回避して持続的に感染する。自然界や生存に不利な環境下では球状(coccoid form)の形態で存在し,生きているが培養できない状態(VNC)となっている。また本菌の培養には特殊な環境が必要で容易に培養できないことから感染経路が明らかとなっていないが,水や食品,医原性,家族内感染が有力とされている。本稿では,ピロリ菌の概要,病原因子,形態変化と病原性について解説する。また胃がん発症には生活習慣,特に食事との関連が深いことから,食環境,特に食品中の本菌の存在や宿主側の要因である食事・栄養との関連についても解説する。
Key words:VacA/CagA/OipA/Coccoid form/VNC/食事・栄養.
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [5]業務用加湿器の種類と特徴・気化式加湿器の維持管理と衛生調査の報告
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [5]業務用加湿器の種類と特徴・気化式加湿器の維持管理と衛生調査の報告
- 著者:
- 星野 芳昭(ウエットマスター(株) 保守・サービス営業本部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.327-334(2020)
一言で“業務用加湿器”といってもオフィスビル等の一般空調(保健空調)から,工場や恒温恒湿施設では生産環境の湿度維持による品質管理,美術館や博物館などでは絵画や工芸品の保存・保管環境の維持を目的で使用されるなど多岐に亘っている。一般空調は,建築物衛生法が定める建築物環衛生管理基準の相対湿度40%以上を保つことで,そこで働き居住する人の健康と快適性を維持することを目的として使用されている。しかし,業務用加湿器は空調設備に組み込み使用されることが多く,一般的には目に触れることが少ない設備機器であることから,本稿では冒頭で業務用加湿器の種類と特徴を紹介した。さらに,消費電力が少なくコンパクトに設置できる等の特徴が評価され,オフィスビル等の加湿器の主流(90%以上)である気化式加湿器は,適切な維持管理がなされない場合,スケール付着による能力低下や,微生物由来の臭気(MVOC)を発生することがある。この点について,新築総合病院の気化式加湿器で生じた臭気発生事例と解決に向けた取り組み等について解説した。
Key words:Model of humidifiers(加湿器の種類)/Law for environmental health in buildings(建築物衛生法)/Evaporative humidifier(気化式加湿器)/Maintenance(メンテナンス)/Microbial Volatile Organic Compounds(微生物由来揮発性有機化合物).
水の衛生管理 2.黒湯からのレジオネラ属菌の検出状況
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜 2.黒湯からのレジオネラ属菌の検出状況
- 著者:
- 安齋 博文((公財)日本建築衛生管理教育センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.7,pp.335-341(2020)
Legionella属菌は冷却塔,温泉などの人工的な水利用施設から汚染されたエアロゾルを吸入することで感染し,致死性の肺炎を伴うレジオネラ症を引き起こす。一方,日本には黒湯とよばれる腐植質を多く含んだ温泉があり,「美肌の湯」とも称され,肌がつるつるになると言われている。しかし,黒湯に含まれる腐植質と塩素剤が反応し,遊離塩素が消費されてしまうことが懸念された。そこで,黒湯におけるLegionella属菌の汚染状況を調査し,次亜塩素酸ナトリウムによる黒湯中での殺菌効果が実際に低下いるか,基礎的検討を行った。黒湯中での次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌効果の低下が確認された。関東地域および北海道の入浴施設から計86試料の黒湯を試験に用いた。全体では培養法において11試料からLegionella属菌が分離され,PALSAR法において81試料から検出された。このように,両試験法の一致率はわずか18.6%に過ぎなかったが,培養法陽性の試料でPALSAR法陰性の試料は1試料もなかった。
Key words:Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Hot spring water(温泉)/Humus(腐植質).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その19)』…新井 一義…目次裏
『食品ロスと食品添加物』…近藤 克紀…310
海外文献抄録 …坂上 吉一…318
会報 …342
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.7(2020)
Helicobacter pylori
Types and Characteristics of Industrial Humidifiers – Maintenance and Reports on Hygiene Surveys of Evaporative Humidifier
Distribution of Legionella spp. From Kuroyu
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Katunori KONDO…310
Abstracts from Overseas Journals …by Yoshikazu SAKAGAMI…318
Society Activities …342
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.8 (2020)
【 目次 】
DEAMをカチオン性モノマーとしたポリマーの室内汚染カビに対する抗カビ効果
- 表題:
- DEAMをカチオン性モノマーとしたポリマーの室内汚染カビに対する抗カビ効果(原著論文)
- 著者:
- 西村 穂乃果(北九州市立大学大学院 国際環境工学研究科),逸見 暁子((株)日本触媒),森田 洋(北九州市立大学 国際環境工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.343-349(2020)
カチオン性モノマーのメタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEAM)を含むポリマーの室内汚染カビに対する抗カビ効果の検討を行った。その結果,DEAM/BAおよびDEAM/iso-BAのポリマーはC. cladosporioidesに対する胞子発芽阻害効果を示した。また疎水性モノマーとの組み合わせや疎水性含量を変化させることで,胞子発芽阻害効果に大きな影響を与えることが明らかとなり,ポリマー内の疎水性とカチオン性のバランスの重要性が示された。またDEAM/BAポリマーでは,C. cladosporioides胞子の発芽を阻害する濃度よりも低濃度で菌糸体の成長を阻害することがわかった。A. brasilliensisに対してはどのポリマーも胞子発芽阻害効果を示さなかったが,菌糸体の成長はDEAM/BA濃度2.5 wt%で完全に阻害した。顕微鏡による形態変化の観察より,ポリマーの影響で菌糸体が膨張したり,隔壁がなく変形している様子が確認され,菌糸体の数の減少も認められた。これらの結果から,DEAM/BAポリマーの室内汚染カビの菌糸体の成長阻害効果を有していることが明らかとなった。
Key words:Antifungal polymers(抗カビポリマー)/DEAM(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)/Cladosporium cladosporioides/Aspergillus brasiliensis/Antifungal effect(抗カビ効果).
紫外発光ダイオード(UV-LED)を用いた消毒技術
- 表題:
- 紫外発光ダイオード(UV-LED)を用いた消毒技術
- 著者:
- 小熊 久美子(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.351-354(2020)
紫外線照射による微生物の不活化は,有効な消毒技術として多様な分野で利用されている。近年,新規無水銀の紫外光源として紫外発光ダイオード(UV-LED)が登場し,その消毒技術への応用が世界的に注目を集めている。本稿では,特に水処理の話題を中心に,紫外線消毒の原理と水処理への導入状況,UV-LEDの光源としての魅力,UV-LEDを用いた消毒技術に関する国内外の研究動向などを解説し,最後に今後の展望を述べる。
Key words:Disinfection(消毒)/Light Emitting Diode(LED)/Ultraviolet Radiation(紫外線)/Water Treatment(水処理).
損傷菌[15] カビ・酵母における細胞損傷とその回復
- 表題:
- 損傷菌[15] カビ・酵母における細胞損傷とその回復
- 著者:
- 堀切 茂俊(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター,パナソニック エコシステムズ(株)),土戸 哲明(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.355-362(2020)
カビと酵母の損傷およびその回復について,比較的初期の研究から最近に至るまでの知見を概説した。カビでは胞子の致死的損傷について熱死滅反応への媒質や阻害剤共存の影響の検討例を概説するとともに,死滅反応における活性化エネルギー値の意義および生理学的な細胞内部の損傷部位について述べた。胞子の亜致死損傷とその修復ではストレス応答の関与について述べ,損傷カビ胞子の発育動態の解析によって2つの損傷様式の存在を提示した。菌糸の損傷では,Woronin体やストレス顆粒の関与を紹介した。次に酵母の損傷では,二重平板法による加熱損傷菌の計数例を呈示した。また細胞部位の損傷例を加熱,凍結,高圧,放射線について紹介した。今後の損傷研究では,ストレス応答とともに最近の細胞死研究にも注視する必要性を指摘した。
Key words:Injured cells(損傷菌)/Mold(カビ)/Yeast(酵母)/Microorganism control(微生物制御)/Repair(修復).
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [6]空気清浄機の働きと微生物対策
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [6]空気清浄機の働きと微生物対策
- 著者:
- 柳 宇(工学院大学 建築学部 教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.363-367(2020)
空気清浄機は室内の空気を循環させながら空気中の浮遊粒子をろ過する仕組みとなっている。従って,フィルタろ過式空気清浄機の浄化性能はフィルタの捕集率のみならず,その風量にも関係する。空気清浄機の浄化性能は風量と捕集率の積に比例し,室容積に反比例する。そのため,空気清浄の浄化性能の試験において,試験チャンバの大きさが重要なファクタとなる。本報に用いる試験チャンバと試験法は公益社団法人日本空気清浄協会の試験法に準ずるものである。試験の結果,空気清浄機による浮遊細菌と真菌の除去効果が認められた。また,実際のクリニックの待合室における実証の結果,空気清浄機は運転すれば,室内浮遊細菌濃度が抑制されることが明らになった。
Key words:Air purifier(空気清浄機)/Purification principle(浄化原理)/Test method(試験方法)/Bacterium(細菌)/Fungus(真菌)/Removal effect(除去効果).
真菌の分類と同定 [3]子嚢菌門のDNA配列を用いた同定
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [3]子嚢菌門のDNA配列を用いた同定
- 著者:
- 橋本 陽(理化学研究所 バイオリソース研究センター 微生物材料開発室(JCM))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.369-376(2020)
同定は生物種不明の標本や菌株を認識し名前を与える行為である。この論文では子囊菌門のDNAバーコードに焦点を当てた。DNAバーコードはDNA配列を使った同定方法の1つである。DNAバーコードの本質的問題を概説した。DNAバーコードに伴う実験技術の紹介を説明している。
Key words:Database(データベース)/Method(手法)/Identification(同定).
水の衛生管理 3.貯水槽水道で滞留した水道水からのレジオネラ属菌および関連微生物の検出状況
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜 3.貯水槽水道で滞留した水道水からのレジオネラ属菌および関連微生物の検出状況
- 著者:
- 大河内 由美子(麻布大学 生命・環境科学部),泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部),前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.377-382(2020)
大規模建物を中心に普及した貯水槽水道では,水質管理が適切でないと残留塩素が消失し,レジオネラ属菌に代表される有害微生物が増殖する。本研究では,貯水槽水道内の使用頻度の低い給水栓から初流水を採取し,レジオネラ属菌とその宿主である自由生活性アメーバの検出状況を調べた。その結果,約3割の給水栓からレジオネラ属菌が検出された。再増殖が起こりやすい場所を絞り込むため,検出頻度の高かった3つの受水槽について微生物調査を実施したが,いずれからもレジオネラ属菌は不検出,かつ内壁面のバイオフィルム形成も抑制されていたことから,汚染は各給水栓近傍で局所的に進行したと考えられる。レジオネラ属菌陽性試料では遊離塩素がほぼ消失していた一方,自由生活性アメーバは遊離塩素が0.4 mg/Lを超える試料からも検出されたことから,レジオネラリスク低減に向けて宿主となる自由生活性アメーバに関する情報蓄積も必要と考えられる。
Key words:Legionella spp.(レジオネラ属菌)/Free-living amoeba(自由生活性アメーバ)/Water distribution systems(給水システム)/Reservoir tank(受水槽)/Chlorine residual(残留塩素).
水の衛生管理 4.定量的微生物リスク評価を用いた水道水質管理
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜 4.定量的微生物リスク評価を用いた水道水質管理
- 著者:
- 橋本 温(県立広島大学 生物資源科学部生命環境学科)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.8,pp.383-391(2020)
本稿では,水道における定量的微生物リスク評価(QMRA)とリスク評価に基づいた水質管理について,健康に係る化学物質の管理の例と比較しながらその問題点,課題を整理した。現状では,リスクアセスメントに基づいて水道水質基準が制定されている化学物質と比較して,わが国の水道水質における水系感染症微生物にかかるリスク評価手法の導入は,微生物特有の様々な課題も多いことから,まだ発展途上の段階である。しかしながら,より安全で科学的な水道水質管理のためにはリスク評価の考え方を取り入れた管理や基準の制定を試みることは極めて重要なものであり,今後の進展の重要性を示した。加えて,水道におけるクリプトスポリジウムのリスク評価および浴槽水におけるレジオネラ菌のリスク評価を例に,QMRAの一例を示した。
Key words:Quantitative Microbial Risk Assessment(定量的微生物リスク評価)/Cryptosporidium(クリプトスポリジウム)/Legionella(レジオネラ)/Drinking Water Quality Standards(水道水質基準).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その20)』…新井 一義…目次裏
『微生物との出会いで変わったこと』…澤田 周二…368
会報 …392
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.8(2020)
Cellular Injury and Its Repair in Molds and Yeasts
Effective Operation of Air Washing Machine and Its Microbe Measures
Identification of Ascomycota using DNA Sequence
Detection Situation of Legionella Genus Bacteria and Its Related Microbe from Tap Water Stayed in Water Tank Channel
Management of Water Quality using Quantitative Microbe Risk Evaluation
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Shuji SAWADA…368
Society Activities …392
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.9 (2020)
【 目次 】
中型獣類におけるSalmonellaの分布状況
- 表題:
- 中型獣類におけるSalmonellaの分布状況(短報)
- 著者:
- 石﨑 直人,勅使河原 広季,古畑 勝則(麻布大学 生命・環境科学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.393-397(2020)
野生動物におけるSalmonellaの保有状況を知り,人獣共通感染症の発生の可能性を検討するため,2017年12月から2018年12月にかけて神奈川県および東京都で捕獲されたアライグマ44頭,ハクビシン19頭およびアナグマ2頭の計65頭を対象にSalmonellaの分離を試みた。また,分離同定された菌株について血清型別を行ったところ以下の成績が得られた。 全体では65試料中6試料(9.2%)からSalmonellaが分離された。その内訳は,アライグマ44試料中3試料(6.8%),ハクビシン19試料中2試料(10.5%)およびアナグマ2試料中1試料(50.0%)からそれぞれ分離された。地域別では,神奈川県では59試料中6試料(10.2%)からSalmonellaが分離されたが,東京都内で捕獲された4試料からはまったく分離されなかった。市町村別では,アライグマは,綾瀬市で11試料中1試料(9.1%)から,大和市では5試料中2試料(40.0%)から分離された。ハクビシンは,厚木市のみで7試料中2試料(28.6%)から分離された。またアナグマは,愛川町でのみ捕獲され,2試料のうち1試料(50.0%)から分離された。分離株の血清型別状況では,アライグマ由来株はS. InfantisとS. Thompsonに各1株該当したが,1株は型別不能であった。ハクビシン由来株はS. SchwarzengrundとS. Ruandaにそれぞれ1株ずつ該当した。また,アナグマから分離された1株は型別不能であった。
Key words:Salmonella spp.(サルモネラ属菌)/Common raccoon, Procyon lotor(アライグマ)/Masked musang, Paguma larvata(ハクビシン)/Japanese badger, Meles anakuma(アナグマ)/Beasts(獣類).
硬質表面の洗浄操作の効率化に関する界面化学的研究
- 表題:
- 硬質表面の洗浄操作の効率化に関する界面化学的研究
- 著者:
- 髙橋 和宏(岡山県工業技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.399-406(2020)
ステンレス鋼を大気中で300℃以上に加熱すると不動態皮膜中のFeの濃縮によりタンパク質の吸着親和性が増し,表面水酸基密度と負の表面電荷密度(σapp)の減少によりアルカリ洗浄性が低下した。硝酸処理は不動態被膜中のCrの濃縮によりタンパク質の吸着親和性を減少させる一方,負のσappの減少によりアルカリ洗浄性を低下させた。リン酸塩処理はステンレス鋼の正のσappを減少させる結果,タンパク質との吸着親和性を低下させ,アルカリ洗浄性を向上させた。PET試験片に吸着したP. fluorescensの脱着過程において次亜塩素酸ナトリウムが殺菌兼用の洗浄作用を示すことを示した。次亜塩素酸ナトリウムがアルカリ性で洗浄効果を示すのに対して亜塩素酸は酸性で洗浄効果を発揮した。
Key words:Cleanability(洗浄性)/Stainless steel(ステンレス鋼)/Surface charge density(表面電荷密度)/Sodium hypochlorite(次亜塩素酸ナトリウム)/Sodium chlorite(亜塩素酸ナトリウム).
医薬品における微生物管理の問題点について
- 表題:
- 医薬品における微生物管理の問題点について
- 著者:
- 島﨑 光臣(アース環境サービス(株) 学術部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.407-413(2020)
医薬品の製造現場では,個々の製造品目の特性や構造設備に応じた明確なGMPを構築し,その運用により現場の清浄度を保子,製品や原料,室内の装置や構造設備の汚染の予防に努めている。そのため,医薬品の製造現場では,取り扱う医薬品の微生物汚染が発生する可能性は極めて低いと考えられるが,その一方で,決められた手順やルールの不備,装置や設備におけるハード面での不備などに起因する,製造環境の微生物数が突発的に増加するケースや,取り扱う製品,原料および資材にて基準を逸脱するレベルの微生物汚染も確認されている。これらの背景には,工場における微生物汚染のリスク分析に基づく予防管理プログラムの確立が行われておらず,現場作業者への周知が不十分であることが予測される。そこで,実際に弊社で管理している現場での事例を参考に,医薬品工場での微生物汚染につながる現象とその原因について説明し,継続的に微生物汚染を予防するための考え方について説明する。
Key words:Pharmaceutical factory(医薬品工場)/Microorganism contamination(微生物汚染)/Structural equipment(構造設備)/Monitoring(モニタリング)/Preventive management program(予防管理プログラム).
損傷菌[16] 食品中における損傷菌の試験法・評価法
- 表題:
- 損傷菌[16] 食品中における損傷菌の試験法・評価法
- 著者:
- 川崎 晋,細谷 幸恵(農研機構 食品研究部門),工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.415-419(2020)
食品を取り扱う上で損傷菌の問題が注目されている。多くの損傷菌評価法が開発されているが,食品に直接活用するには食品残渣や雑菌が混在するため測定自体が難しい。本講座では,食品中での損傷菌評価のため,リアルタイムPCR法による増殖遅延測定法での評価法について解説した。食品中の菌の加熱および食塩濃度による損傷について,リアルタイムPCR法による増殖遅延測定法が損傷の評価に有用であることを,例をあげて紹介した。増殖遅延測定法による本評価法は菌体の損傷進行過程を包括的に捉えていると考えられ,これまで難しかった食品中で発生する損傷データの取得を可能とし,食品環境および加工処理における微生物の損傷解析に有用であるとされている。
Key words:Real-time PCR(リアルタイムPCR)/Growth delay analysis(増殖遅延測定法)/Bacterial injury level(損傷評価)/Foodborne pathogens(食中毒菌).
ここまできている微生物試験迅速化技術 [8]リアルタイムPCRによる細菌および真菌の迅速検出
- 表題:
- ここまできている微生物試験迅速化技術 [8]リアルタイムPCRによる細菌および真菌の迅速検出
- 著者:
- 長島 茂幸(ザルトリウス・ジャパン(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.421-424(2020)
細胞治療製品が微生物によって汚染された場合,患者に致命的な結果をもたらすこともあり得るため,患者に製剤を投与する前に微生物品質管理の結果を得ることは極めて重要であり,培養を用いない迅速アッセイ法の需要が急速に拡大している。そのため,高感度で幅広い微生物を検出できるシステムの包括的なバリデーションが行なわれた。このシステムはDNA抽出キットと,それに続くBacteria/Fungi/Mycoplasma検出キットを用いるリアルタイムPCRで構成されている。in silico塩基配列アラインメント解析では,Bacteria検出キットおよびFungi検出キットでそれぞれ94%以上および37%以上の細菌・真菌を検出できることが示唆された。さらに細菌および真菌のPCRアッセイの検出能力が公定書で定められた培養法と同等であることを示した。また,代表的な細胞株(Jurkat細胞,HPBMC細胞,CHO細胞)を用い,高密度の細胞バックグラウンドが存在しても本キット類により微生物汚染を検出できることが確認された。
Key words:Sterility Test(無菌試験)/Rapid Test(迅速検査)/Real-Time PCR(リアルタイムPCR)/Equivalency(同等性).
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [7]冷却塔における微生物汚染と抑制対策
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [7]冷却塔における微生物汚染と抑制対策
- 著者:
- 井上 浩章(アクアス(株) つくば総合研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.425-432(2020)
冷却等および冷却水系は適切な管理をしなければ様々な障害を起こす。金属が錆びる腐食障害,水中の無機物の析出が引き起こすスケール障害,および微生物の増殖がもたらすスライム障害が複合的に発生し,設備の正常な運転を妨げる。また,レジオネラ症の原因細菌であるレジオネラ属菌の増殖は,公衆衛生上の問題となるため適切な管理が求められる。本稿では,冷却塔および冷却水系の微生物障害およびレジオネラ汚染に主眼を置き,冷却塔의微生物汚染とその対策について解説する。
Key words:Cooling tower(冷却塔)/Legionella(レジオネラ)/Microbial contamination(微生物汚染).
真菌の分類と同定 [4]担子菌キノコ類の多様性と分類・同定
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [4]担子菌キノコ類の多様性と分類・同定
- 著者:
- 早乙女 梢(鳥取大学農学部附属菌類きのこ遺伝資源研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.433-439(2020)
キノコに代表されるような,大型で目立つ子実体を形成する菌類は「大型菌類」と呼ばれ,その大半はハラタケ亜門(担子菌門)に属する。担子菌キノコ類(大型菌類)は,形態的特徴が実に多様であり,従来,主に子実体の外部形態に基づいたグルーピングが行われてきた。本稿では,まず,担子菌キノコ類に含まれる6つの代表的な子実体タイプを概説し,次に,分子系統解析関係に基づき提唱されているハラタケ亜門の綱レベルの分類体系について簡単に解説する。担子菌キノコ類の分類と同定に重要な形態的特徴(肉眼的特徴および顕微鏡的特徴)について解説する。キノコ類の子実体に基づくタイプのうち,ハラタケ類と硬質菌類(サルノコシカケ類)を例に,形態的特徴に基づく同定アプローチを紹介する。最後に,分子生物学的手法を利用したキノコ菌種の検査や推定法について簡単に触れる。
Key words:Basidiomycota(担子菌門)/Macro-fungi(大型菌類)/Molecular Identification(分子同定)/Morphological Observation(形態観察)/Mushroom(キノコ).
水の衛生管理 5.汚染地下水の微生物による環境修復(バイオレメディエーション)と安全性評価
- 表題:
- 紙上ミニシンポジウムⅠ 〜水の衛生管理〜 5.汚染地下水の微生物による環境修復(バイオレメディエーション)と安全性評価
- 著者:
- 高畑 陽(大成建設(株) 技術センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.441-446(2020)
微生物を利用して揮発性有機化合物(VOCs)や油類で汚染された土壌や地下水を浄化するバイオレメディエーション技術が広く普及している。塩素化エチレン類で汚染された地下水に浄化材を供給して,地盤中の嫌気性脱塩素細菌を活性化する浄化試験を実汚染地盤で実施した。微生物分解性の高い浄化材を適量供給した結果,浄化に適した嫌気環境が形成され,浄化材が到達したエリアでは地下水中の塩素化エチレン類濃度が減少した。また,浄化完了後に有機物や窒素濃度は浄化開始時の濃度まで減少し,浄化期間中のメタンガスや硫化水素などの有害ガスの発生も抑えられた。次世代シーケンサーを用いて,浄化期間中の菌叢解析および有用菌・病原菌の検出を行った結果,浄化材が到達したサイトでは明確な菌叢の変化が確認できた一方で,有用菌・病原菌については検出精度が低く,現時点では定量PCR法などの併用による浄化管理が必要であることが示された。
Key words:Bioremediation(バイオレメディエーション)/Safety evaluation(安全性評価)/Chlorinated ethylenes(塩素化エチレン類)/Anaerobic dechlorinating bacteria(嫌気性脱塩素細菌)/Next-generation sequencer(次世代シーケンサー).
緊急特集版:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~
はじめに
摂南大学名誉教授 日本防菌防黴学会編集委員長 渡部 一仁…447
1.都市災害としてのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)とその他のパンデミック
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 1.都市災害としてのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)とその他のパンデミック
- 著者:
- 篠田 純男(岡山大学名誉教授 岡山大学インド感染症共同研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.449-457(2020)
日本での新型コロナウイルス感染症・COVID-19は,当初は北海道での流行の後,首都圏に移り,感染者の半数を東京,神奈川,埼玉,千葉の4都県で占めており,阪神間,愛知,福岡なども多い。しかし,その前に収束した季節性インフルエンザでは,大都市圏集中の傾向は見られず,過密都市が新たな感染症に弱いことを示している。同様なことは,世界でも見られ,当初は中国で発生したCOVID-19がヨーロッパ,さらに米国へと拡がり,G7の先進国では,いずれも多数の感染者が発生している。幸い,日本は例外的に感染者数が少ないが。一方で,一般的には感染症が多いとされている途上国の多くは,今のところは,感染者が低く抑えられている。今後どのようになるか不明であるが。
インフルエンザでは,季節性インフルエンザにより多数のかんじゃと死者を出しているが,毎年のことなので,あまり問題にされていない。2009年の新型インフルエンザや1918年スペイン風邪なども忘れ去られている。人類は,これまでもペスト,天然痘,麻疹など多くのパンデミックを経験しているが,今回のCOVID-19パンデミックにより,改めて感染症の問題点を認識しなければならない。
Key words:COVID-19/Coronavirus/PCR/都市災害.
2.新型コロナウイルスの基礎知識,集団予防および生存性・不活化
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 2.新型コロナウイルスの基礎知識,集団予防および生存性・不活化
- 著者:
- 野田 衛(麻布大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.459-466(2020)
2019年12月以降の中国の武漢市での集団感染に端を発した新型コロナウイルス感染症はその後急速に全世界に拡大し,WHOは3月11日にパンデミックを宣言し,各国に感染拡大防止策の強化を求めた。感染拡大防止策として各国でととられた社会的隔離政策は感染拡大防止策として有効である一方,社会的,経済的な損失も大きい。一方,マスク着用,手洗い,環境消毒を中心とする個人の感染予防の徹底は集団としての感染拡大防止に繋がる(集団予防)。政府が求めている「新しい生活様式」は,個人の予防対策を,より徹底し,社会のシステムとして実施することに他ならない。個人個人が有効な感染予防の習慣を身に付けるためには,新型コロナウイルスの感染の特徴,感染様式,環境での生存性,消毒剤等による不活化効果などを理解することが重要である。
Key words:SARS-coronavirus-2(新型コロナウイルス)/Social distancing(社会的隔離)/Personal hygiene(個人衛生)/Viability(生存性)/Inactivation(不活化)/Disinfectant(消毒剤).
3.ウイルス感染症の診断と検査方法
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 3.ウイルス感染症の診断と検査方法
- 著者:
- 加瀬 哲男(大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学(兼)感染症科学研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.467-471(2020)
感染症診断における微生物検査には,病原微生物が存在する臓器・部位の検体を採取すること,病原微生物が存在する病期に採取すること,診断あるいは治療方針の決定に際して最も適した検査方法を選択することが重要である。同様に抗体検査にしても,抗体が出現してきている時期に採血することと,検出された抗体の特性を知る必要がある。陽性の検査結果は,比較的その解釈が容易であるが,その感染症を疑って陰性結果を得た場合は,その解釈にはいろいろなことが想定できる。真に陰性であるという以外に,検体採取部位と検体採取時期に齟齬があり,他の検査機会があれば陽性であったかもしれないこと,検体の保管・保存あるいは検査手技等に問題があり偽陰性が生じたことなどが考えられる。たとえ微生物検査が陰性であっても疫学的リンクと症状から確定診断できることもある。本稿では,感染症診断においても,明確な検査目的が必要であることを述べてみたい。
Key words:Covid-19(新型コロナウイルス感染症)/Viral diagnosis(ウイルス診断)/PCR(ポリメラーゼ チェイン リアクション).
4.インフルエンザの予防とマスクの感染予防効果
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 4.インフルエンザの予防とマスクの感染予防効果
- 著者:
- 小林 寅喆(東邦大学看護学部 感染制御学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.473-475(2020)
インフルエンザは,一般的には冬に流行するインフルエンザウイルスによる感染症である。感染経路は主に飛沫感染と接触感染であり,感染対策はウイルスを排出する可能性がある感染者が飛沫を拡散させないためにマスクを着用する飛沫感染対策と,ヒトの手や環境に付着しているウイルスが手指を介して体内への侵入を防ぐための手指消毒,手洗いの接触感染対策である。マスクはほこりや花粉などの粒子が体内に侵入しないように用いるガーゼマスクと主に医療現場で用いられる不織布のサージカルマスクに分類され,感染対策としてのマスクは会話や咳,くしゃみなどから発生する飛沫を外に出さないよう,マスクで被い限りなく飛散させないようにすることが目的である。また,麻疹や結核など空気感染対策にはN95マスクを使用する。ただし,使用にあたっては相当なトレーニング(チェック)が必要である。マスクは基本的には,医療現場の特殊な環境を除き,感染者が着用するものでありマスクの感染予防効果を過信してはならない。
Key words:Influenza(インフルエンザ)/Droplet infection(飛沫感染)/Surgical mask(サージカルマスク)/N95 mask(N95マスク)/Fit-test(フィットテスト).
5.新型コロナウイルスに有効な消毒剤/除菌剤
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 5.新型コロナウイルスに有効な消毒剤/除菌剤
- 著者:
- 原田 裕(サラヤ(株) バイオケミカル研究所 サラヤ微生物研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.477-480(2020)
新型コロナウイルスに対して,エタノールや次亜塩素酸ナトリウムが有効であるといわれているが,最近ではその他除菌剤等も有効であると相次いで報告されている。ここでは,SARSコロナウイルスやインフルエンザウイルスに対する過去のエビデンス,および新型コロナウイルスに対する最新のエビデンスをまとめ,新型コロナウイルスに対して有効と推定される消毒剤/除菌剤について述べる。
Key words:COVID-19(新型コロナウイルス感染症)/SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)/Disinfectants(消毒剤/除菌剤)/Hand hygiene(手指衛生)/Environmental disinfection(環境消毒).
6.新型コロナウイルスパンデミック期における感染管理と看護
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 6.新型コロナウイルスパンデミック期における感染管理と看護
- 著者:
- 伊藤 道子(北里大学看護学部),林 俊治(北里大学医学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.481-486(2020)
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは看護の現場に大きな影響を与えた。そこで,このパンデミック期に発生した諸問題およびそれらの問題を解決するために行われた工夫について,感染管理認定看護師と看護管理者を対象に,聞き取り調査を行った。新型コロナウイルス感染症の診療を行うか否かにかかわらず,多くの病院で「3密の回避」「マスクの着用」「物品不足」が看護の現場に様々な影響を与えていた。また,「労務管理上の問題」が発生した病院も少なくなかった。帰国者・接触者外来を引き受けた病院では,医療従事者自身の感染を防ぐために,「業務の分担」「検体採取(特に小児からの検体採取)」「患者の院内滞在時間の短縮」などについて様々な工夫が行われていた。また,「外国籍患者の対応」や「行政への対応」に苦労した病院もあった。
Key words:Nursing(看護)/Infection Control(感染管理)/COVID-19(新型コロナウイルス感染症)/Pandemic(パンデミック).
7.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)地域感染期における看護の役割と看護体制のあり方の課題
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 7.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)地域感染期における看護の役割と看護体制のあり方の課題
- 著者:
- 住田 千鶴子(稲沢市民病院 看護局)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.487-491(2020)
2020年3月6日に1人目の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性患者を受け入れた。46床の一般病棟を感染症患者専用に切り替え,個人防護用具の着脱,手指衛生など感染対策の強化に加え,疑い患者を一般病棟に入れないトリアージ体制,診療科と看護師の配置変換,一般診療の縮小と病院管理者たちは,日々意思決定を行った。5月12日までの68日間,院内感染を発生することなく,陽性患者18名(延べ入院日数259日)を受け入れた。新型コロナウイルスは,世界中を急速なスピードで広がった。現場の看護師は,ウイルスの感染経路や感染力などに関する十分な情報がないまま標準予防策と疾患に応じた感染経路別予防策の遵守を頼りに未知のウイルスの対応をせざるをえなかった。今回の新型コロナウイルス感染症の対応から,私たちは,感染に対する不安だけでなく,看護業務の急激な増大と身体的,精神的な負荷の及ぼす危険性を学んだ。看護局の責任者として,これから起こりうる地域感染拡大に備えた組織の体制整備を進めたい。
Key words:新型コロナウイルス感染症/地域感染期/感染症看護の体制/身体的・精神的負荷/バンドル.
8.医療従事者における感染制御,特に感染防護服の現状における問題点からの研究成果をふまえた提言―将来への感染防護服の改良に向けて―
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 8.医療従事者における感染制御,特に感染防護服の現状における問題点からの研究成果をふまえた提言―将来への感染防護服の改良に向けて―
- 著者:
- 森本 美智子(岡山県立大学保健福祉学部看護学科),内田 幸子(高崎健康福祉大学健康福祉学部社会福祉学科),田辺 文憲(山梨大学大学院総合研究部基礎・臨床看護学講座人間科学領域),荒川 創一(三田市民病院)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.493-499(2020)
新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019,COVID-19)の患者ケアに携わる医療従事者は労働環境や感染防護服の不足により,全世界でその多くがCOVID-19に罹患する危険性を有していると指摘されている。新型コロナウイルス感染症患者の診療・ケア業務に従事するには個人防護具の着用が必須である。本稿では著者らが進めてきた感染防護服(フルカバー)の研究成果をまとめた。その要点は以下;①看護師へのインタビュー調査を行い,感染防護服による個人防護服の選択判断,設備不備,脱衣の教育訓練,汚染部特定の問題,素材の問題が挙げられた。②感染防護服の運動機能性,温熱的快適性については,看護動作時の運動機能性の不備や暑さ・蒸し暑さによる不快感動作時の心拍数増加が課題となった。③個人防護服表面へのMRSAやレンチウイルスの付着性の実験では,クラス6の感染防護服で,どちらの病原体も最も多く付着することがわかった。④看護動作時の汚染部位の特定実験では,胸腹部の汚染が多く,脱衣時の教育訓練の必要性が重要な課題に挙げられた。感染防護服の問題点を明確化したことにより,将来への改良に向けて解決策を提言した。
Key words:Infection-protective clothing(感染防護服)/Nursing care(看護ケア)/Doffing(脱衣)/Pathogen carryover(病原体キャリーオーバー)/Fabric(素材).
9.食品産業界におけるCOVID-19への対応-暫定ガイダンス-
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 9.食品産業界におけるCOVID-19への対応-暫定ガイダンス-
- 著者:
- 泉 秀実(近畿大学 生物理工学部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.501-507(2020)
世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が原因のパンデミックに直面して,WHO,FAO,FDA,FSAなどの機関からCOVID-19に対する食品事業用の安全性ガイダンスやドキュメントが発表されている。しかしながら,日本の食品産業界の関係者にとって,COVID-19対策として一貫したアプローチをするべきプロトコルは示されていない。そこで,内閣府の研究プロジェクトの一環として,世界の主だった衛生関連機関から発表されたガイダンスやドキュメントを基に,日本に適応した暫定ガイダンスを作成した。ガイダンスの内容として,COVID-19に対する基本的対策,フードチェーンの川上から川下におけるCOVID-19対策,並びに,COVID-19対策のための食品事業者および従業員の重要管理ポイントとチェックリストについて取り纏めたので紹介する。
Key words:COVID-19(新型コロナウイルス感染症)/Food industry(食品産業)/Personal hygiene(自主衛生慣行)/Personal protective equipment(人的防護用品)/Social distancing(ソーシャルディスタンス).
10.学会として期待される活動
- 表題:
- 緊急特集版 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)~防菌防黴の観点から~ 10.学会として期待される活動
- 著者:
- 篠田 純男(岡山大学名誉教授 岡山大学インド感染症共同研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.9,pp.509-512(2020)
防菌防黴学会は,その名だけを見ると細菌,真菌,糸状菌等の災害を防ぐことを目的としているような印象であるが,会則には,衣食住に関連する微生物およびそれに由来する物質を制御することが書かれており,ウイルスも含めた微生物災害全般의制御を目的としている。そして,他の学会以上に,民間とのつながりが重要であり,COVID-19問題も学会誌での論文執筆,年次大会等での講演のみならず,一般社会への啓蒙活動が重要である。日本での感染者数の50%は首都圏の4都県に集中しており,都市災害の様相を呈しており,三密状態を避けることの重要性が言われているが,要は一般の人達の認識不足である。ウイルスとはどのようなものか,マスクについての正しい認識など,このような呼吸器感染症についての啓蒙活動を行うことも,当学会としての活動として重要である。
Key words:COVID-19/季節性インフルエンザ/オンライン企画/マスク.
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その21)』…新井 一義…目次裏
『保存効力試験における操作方法の重要性』…大塚 理恵…414
『世界で一番のクリスマスプレゼント~レジオネラ症対策に携わって~』…中臣 昌広…420
海外文献抄録 …坂上 吉一…440
会報 …514
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.9(2020)
Injury level Analysis Method for Foodborne Pathogens in Food Materials
Rapid Detection of Bacteria and Fungi using Real-time PCR
Microbial contamination and its Control in Cooling Tower
Morphological Diversity, Classification and Identification of Macro-fungi in Basidiomycetes
Bioremediation and its Safety Evaluation for Contaminated Groundwater
Special Issue: New Coronavirus Infectious Disease (COVID-19)
Preface …by Kazuhito WATABE…447
1. COVID-19 and Historical Pandemics …by Sumio SHINODA…449
2. Characteristics, Personal Hygiene, Stability and Inactivation of SARS-CoV-2 …by Mamoru NODA…459
3. Diagnosis of Viral Infectious Disease and its Method …by Tetsuo KASE…467
4. Prevention of Influenza Infections and the Efficacy of Masks in Preventing Infections …by Intetsu KOBAYASHI…473
5. Disinfectants Effective for SARS-CoV-2 …by Yu HARADA…477
6. Infection Control and Nursing during the COVID-19 Pandemic …by Michiko ITO, and Shunji HAYASHI…481
7. Role of Nurses and Issues of Nursing System in the Period of Community-acquired New Coronavirus Infection (COVID-19) …by Chiduko SUMIDA…487
8. Research of Infection Control for Healthcare Providers; Existing Problems of the Infection-Protective Clothing Based on the Results of On-site Analysis, and Suggestions for the Improvement …by Michiko MORIMOTO, Yukiko UCHIDA, Fuminori TANABE, and Soichi ARAKAWA…493
9. Strategy for COVID-19 in the Food Industry -Interim Guidance- …by Hidemi IZUMI…501
10. Activity as a Scientific Society on the COVID-19 Pandemic …by Sumio SHINODA…509
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Rie OTSUKA…414
…by Masahiro NAKATOMI…420
Abstracts from Overseas Journals …by Yoshikazu SAKAGAMI…440
Society Activities …514
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.10 (2020)
【 目次 】
環境水を用いた各種レジオネラ属菌迅速検査法の有用性の評価
- 表題:
- 環境水を用いた各種レジオネラ属菌迅速検査法の有用性の評価(原著論文)
- 著者:
- 金谷 潤一,磯部 順子(富山県衛生研究所・細菌部),山口 友美(宮城県保健環境センター・微生物部),武藤 千恵子(東京都健康安全研究センター・薬事環境科学部),淀谷 雄亮(川崎市健康安全研究所・呼吸器環境細菌),飯髙 順子(川崎市健康安全研究所・呼吸器環境細菌,現所属:川崎区役所地域みまもり支援センター・衛生課),佐々木 麻里(大分県衛生環境研究センター・微生物担当),田栗 利紹,蔡 国喜,川野 みどり(長崎県環境保健研究センター・保健衛生研究部),倉 文明,前川 純子(国立感染症研究所・細菌第一部)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.515-522(2020)
本研究では,レジオネラ属菌迅速検査法の普及に資するデータを提供するため,qPCR法,EMA-qPCR法,LC EMA-qPCR法,LAMP法およびPALSAR法について,浴槽水などの実検体を用いて,平板培養法に対する感度などの評価を行った。PALSAR法は,現時点では浴槽水および採暖槽水を対象として使用するのが望ましい結果であった。それ以外の各種迅速検査法は,全体として平板培養法と相関しており,検体中のレジオネラ属菌汚染を迅速に判定する方法として有用であると考えられたが,それぞれの方法の特性を理解した上で用いることが重要である。
Key words:Legionella species(レジオネラ属菌)/qPCR(リアルタイムPCR)/LAMP(ランプ)/PALSAR(パルサー)/Ethidium monoazide(エチジウムモノアジド).
化粧品の微生物限度試験及び微生物限度基準の留意点
- 表題:
- 化粧品の微生物限度試験及び微生物限度基準の留意点
- 著者:
- 大河 正樹(大河微生物研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.523-526(2020)
微生物は非常に多種多様のため,定型化された試験法や,ただ規格内に入ったから問題ないという判断だけでは,製品や原料等の微生物学的品質を確保できない場合がある。そこで本報告では,より適切な試験及び判断を行うための留意点として以下の項目について解説した。細菌の培養日数は3日では不十分な場合がある,W/O製品の直接塗抹は回収率が低い,特定微生物は1g陰性を保証する必要がある,培地性能の確認は重要,抗菌成分が中和できていないと間違った結果となる場合がある,グラム染色の重要性と正しく染色するためのコツ,生菌数は規格内だけを保証するだけでは不十分で菌が増えないことが重要,特定微生物陰性の意味(他の病原菌混入を否定),試験だけで微生物学的品質を確保できるわけではない。現在行っている試験や判断を今一度検証し,より適切な方法としていくための参考となれば,幸いである。
Key words:Microbial Limit Test Method(微生物限度試験法)/Microbial Limit Criteria(微生物限度基準)/Test Volume(試験量)/Culture Medium Quality(培地性能)/Neutralization(中和)/Gram Stain Method(グラム染色法).
紫外線(UV)殺菌技術について
- 表題:
- 紫外線(UV)殺菌技術について
- 著者:
- 木下 忍((株)アイ・エレクトロンビーム)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.527-533(2020)
紫外線(UV)殺菌は,非常に簡便な防菌防黴技術の一つの手法であり,本会誌でも多くの紹介がある。今回,UV殺菌技術を今後も有効に活用頂くには,本技術の本質を知る事が非常に重要であるので,基礎と応用事例の解説を行った。基礎では,一番重要なUVとは何なのかを知っていただき,そのUVで起こる殺菌作用は光化学反応によるものであるので,光化学反応の法則,UVの微生物内で起こる光化学反応殺菌のメカニズム,菌種ごとの殺菌に必要なUVエネルギー量および殺菌に有効なUV光源とそのエネルギー計測技術および応用技術について解説する。
Key words:UV-sterilization(紫外線(UV)殺菌・不活化)/UV-energy(UVエネルギー)/Photochemical reaction(光化学反応)/Light source for sterilization(殺菌(不活化)用光源)/UV-LED.
損傷菌[17] 損傷菌の標準化
- 表題:
- 損傷菌[17] 損傷菌の標準化
- 著者:
- 斉藤 美佳子(東京農工大学・大学院工学研究院生命機能科学部門),松岡 英明(東京農工大学・名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.535-540(2020)
コロニー形成速度は,培養可能な損傷菌の損傷の程度の指標の一つと考えられる。一例として,浸透圧ストレスとしてスクロース10~50%を含むTryptic Soy Agar(TSA)培地上で培養して得られたEscherichia coli ATCC8739コロニーから,二段階フローサイトメトリー法によって,コロニー形成速度の一様な損傷菌を分画する条件を求めた。スクロース10%の場合に得られた細胞画分では,100細胞中92個が等しいコロニー形成速度(健常菌より1時間遅れ)を示したので性質の揃った損傷菌であると判断された。残りの8個は死菌であったと判断された。したがって,この条件で食品試料などに,例えば10個の菌を添加した場合は,9.2個の性質の揃った損傷菌が添加されたことになる。微生物試験法のバリデーションの観点からは,このような考えに基づき,ストレスの種類や菌種の違いなど各々の条件に応じた損傷菌の標準化は可能ではないかと考えられる。
Key words:Standardization of injured bacterial cells(損傷菌標準化)/Osmotic stress(浸透圧ストレス)/Sucrose(スクロース)/Flow cytometry(フローサイトメトリー)/Validation of microbial test methods(微生物試験法バリデーション).
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [8]クールチューブにおける微生物汚染と抑制対策
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [8]クールチューブにおける微生物汚染と抑制対策
- 著者:
- 柳 宇(工学院大学 建築学部 教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.541-546(2020)
空気搬送系の省エネルギは,ZEB(Net-Zero Energy Building)の実現において極めて重要であり,外気負荷の低減方法の一つとしてクール/ヒートチューブがしばしば用いられている。しかし,クールチューブの場合,その内部で結露するため,微生物が増殖し,それによる室内空気質への影響が懸念されている。省エネルギと空気質の確保の両立が重要な課題となっている。本報は,空調空気搬送経路としてのクールチューブ,クールチューブ内の温湿度環境,クールチューブ内の細菌叢と真菌叢,クールチューブ微生物汚染の対策方法について述べるものである。とくに,次世代シーケンサーを用いたクールチューブ内の細菌叢と真菌叢の解析に関する部分は本邦初めて報告された研究成果である。
Key words:Cool tube(クールチューブ)/Bacterium(細菌)/Fungus(真菌)/Microbiome(マイクロバイオーム)/Contamination status(汚染実態)/Control method(対策方法).
真菌の分類と同定 [5]ツボカビ門
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [5]ツボカビ門
- 著者:
- 稲葉 重樹(製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.547-552(2020)
ツボカビ門はその生活環の中で後方に向く1本の鞭毛をもつ運動性の胞子(遊走子)を形成することで特徴づけられる菌類の1群である。室内環境ではまれにしか検出されないが,水圏や陸上の生態系には腐生菌または寄生菌として普遍的に生息している。最近の遊走子の微細構造観察と組み合わせた分系統学的研究の進展により,広義のツボカビ門は単系統群ではないことが明らかとなっており,狭義のツボカビ門,コウマクノウキン門,およびクリプト菌門の3門,もしくはそれ以上の門に分割されている。分子系統学的および微細構造学的研究にもとづくこれらの菌群の最近の分類体系と,同定手法について解説する。
Key words:Chytrids(ツボカビ類)/Molecular systematics(分子系統学)/Taxonomy(分類学)/Ultrastructure(微細構造)/Zoosporic fungi(鞭毛菌類).
環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [1]はじめに
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [1]はじめに
- 著者:
- 坂上 吉一(元 近畿大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.10,pp.553-557(2020)
院内(病院)感染防止は,人命を守る立場で重要である。その感染防止の取り組みについては,従前から種々検討されているが,依然として,問題の多い課題である。感染防止は,病院だけでなく,高齢者介護施設においても重要な課題である。病院の入院患者および高齢者介護施設等の入居者は,健常人に比べ免疫能が低下した易感染患者,あるいは,ある程度免疫能が低下した人々で,感染リスク面で,より注意が必要である。本講座では,院内感染防止を主として環境管理面から進めることについて解説する。テーマは,「高齢者介護施設における感染対策」,「感染制御における耐性菌と環境管理」,「院内感染事例」,「清掃分野を中心とした環境管理の現状」,および「歯科領域での環境管理の現状」の5つの題目である。なお,「はじめに」の項では,院内感染防止について,院内等で問題となっている薬剤耐性菌の現状,ならびに現在世界中で大流行(Pandemic)が問題となっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を中心に若干紹介する。
Key words:Prevention of nosocomial infection(院内感染防止)/Compromised host(易感染患者)/Antimicrobial resistant bacteria(薬剤耐性菌)/SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)/Pandemic(大流行).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その22)』…新井 一義…目次裏
『東京理科大学理工学部応用生物科学科』…宮島 誠…534
日本防菌防黴学会会則
日本防菌防黴学会細則
会報(第85回理事会議事録・第45回評議員会議事録・第48回通常総会議事録) …558
会報 …572
カレンダー …和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.10(2020)
Standardization of injured bacterial cells
Microbial Contamination and Countermeasures in the Cool Tube
Chytridiomycota
-On the Basis of the Latest Information-
(1) Preface
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Makoto MIYAJIMA…534
The Regulations of the Society for Antibacterial and Antifungal Agents, Japan
Detailed Rules for the Management of the Society for Antibacterial and Antifungal Agents, Japan
Society Activities
A Report of the 85th Board of Governors, A Report of the 45th Board of Council,
A Report of the 48th General Meeting …558
Society Activities …572
Calendar …Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.11 (2020)
【 目次 】
低温増殖性Paenibacillus属細菌芽胞の制御における有機酸および加熱処理の効果
- 表題:
- 低温増殖性Paenibacillus属細菌芽胞の制御における有機酸および加熱処理の効果(原著論文)
- 著者:
- 小林 哲也,山木 一史,東 孝憲,太田 智樹,八十川 大輔,川上 誠(地方独立行政法人北海道立総合研究機構・食品加工研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.573-580(2020)
有機酸でpH調整した培地において,芽胞として接種したPaenibacillus属細菌の増殖が抑制されるpHは,酢酸>乳酸>クエン酸の順となる傾向があった。高い耐酸性を示したP. terrae No.9の増殖は,芽胞として接種したジャガイモペーストにおいて,酢酸ではpH 5.4,乳酸ではpH 4.8で10℃,28日間抑制された一方,クエン酸ではpH 4.8でも抑制されなかった。pH調整のみで増殖が抑制されない条件でも,92.5℃で20~30分間加熱すると28日間増殖が抑制された。pH未調整(5.7)のペーストでは45分間加熱する必要があったことから,有機酸によるpH調整と加熱処理の併用は,各々を単独で用いた場合よりも穏和な条件でP. terrae No.9の増殖を抑制した。このことを活用すると低温増殖性Paenibacillus属細菌の芽胞を穏和な条件でも抑制でき,冷蔵食品,特に袋物惣菜の賞味期限延長において,風味や食感の保持が期待できる。
Key words:Psychrotrophic Paenibacillus spp.(低温増殖性パエニバシルス属細菌)/Spores(芽胞)/Organic acids(有機酸)/Heating(加熱)/Refrigeration foods(冷蔵食品).
感染症研究と計算科学の橋渡し:病原体の理解と制御に向けて
- 表題:
- 感染症研究と計算科学の橋渡し:病原体の理解と制御に向けて
- 著者:
- 佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.581-589(2020)
近年,人類がこれまで遭遇したことのないウイルス感染症が頻発し,社会に甚大な損害を与えている。グローバル化の進む現代では,地球上のどこかで発生した感染症は,たちまち世界に広がる。ウイルス感染症対策は,世界が共有する公衆衛生上の最重要課題の一つと位置付けられている。流行や重篤化のリスクの高い変異ウイルスの早期検知は,新しいウイルス感染症の制御の鍵を握る。我々の研究室では,コンピュータの助けを借りることにより,ウイルスに生じる変異の効果を構造レベルで解析し,得られた情報を変異ウイルスの理解と制御に生かすことを目指している。従来の感染症対策に「計算科学」の手法を取り入れることにより,ウイルスのリスク管理と制御法開発の新しい道が開かれると期待している。本解説では,まずウイルスの持つ陰陽の二面性を俯瞰し,次いで我々の研究を紹介する。微生物の理解を前提とする防菌防黴分野の研究の一助としていただければ幸いである。
Key words:Emerging and re-emerging infectious disease(新興再興感染症)/RNA virus(RNAウイルス)/In silico structural analysis(インシリコ構造解析)/Prediction of mutation effects(変異の効果予測)/Interdisciplinary study(学際研究).
損傷菌[18] まとめと損傷菌研究の今後の展望(閉講にあたって)
- 表題:
- 損傷菌[18] まとめと損傷菌研究の今後の展望(閉講にあたって)
- 著者:
- 土戸 哲明(大阪府立大学 研究推進機構 微生物制御研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.591-595(2020)
講座「損傷菌」の閉講にあたって,本稿を含む18編の講座解説の内容を概観するとともに,損傷菌研究の今後を展望した。全体構成は,①概念・方法論,②対象場(物),③制御法,④微生物,⑤評価論・応用展開・将来展望で,それぞれの視点から損傷菌研究に携わる専門研究者に執筆いただいた。損傷菌は食品で問題視されているが,医療や諸環境では一部の分野を除いてあまり関心がもたれていない。しかし,殺菌・滅菌・消毒の効果の評価や微生物試験の実施においては,基盤的問題として損傷菌が関わることが少なくないことから,今後も基礎・応用両面からの研究が必要である。それらの一面からではあるが,研究の方向性や展望について私見を述べた。
Key words:Injured microorganism(損傷菌)/Injury(損傷)/Recovery(回復).
ここまできている微生物試験迅速化技術 [9]質量分析の技術を中心に
- 表題:
- ここまできている微生物試験迅速化技術 [9]質量分析の技術を中心に
- 著者:
- 松山 由美子(日本ベクトン・ディッキンソン(株))
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.597-600(2020)
この10年ほどで微生物試験が大きく変わった,と言われている。その大きな理由は,質量分析装置の微生物試験への応用である。質量分析の技術が微生物同定に応用できることが1990年代に発表されて以降,ハードウエア,ソフトウエアともに発展,改良が進み,ルーチンの試験で使用されるレベルにまで至った。これにより,遺伝子試験とほぼ同程度の精度で,従来では1日以上を要していたところを数分で同定結果が得られることになり,これが大きく微生物試験の迅速化を進めた。ここでは,質量分析技術の基本原理から最新の応用技術,さらには本技術に関する標準化の動きなども含めて紹介したい。
Key words:MALDI-TOF MS/Microbial identification/Rapid test.
建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [9]蓄熱槽における微生物汚染と抑制対策
- 表題:
- 建築物の空気関連の微生物汚染と対策等 [9]蓄熱槽における微生物汚染と抑制対策
- 著者:
- 赤井 仁志(福島大学 共生システム理工学類)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.601-607(2020)
天気任せの太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギー由来の電力が増え続ける中,余剰気味の電力を利用してヒートポンプを運転させて熱を生み出し,給湯の貯湯や暖冷房熱源の蓄熱をする必要性が生じている。貯湯や蓄熱は,技術も確立され,導入コストも安く,寿命も長い。蓄熱槽水がレジオネラ属菌に汚染された場合でも,居住者がレジオネラ症に罹患する可能性は低い。しかし,建築物保守管理者が蓄熱槽の清掃時等にレジオネラ症に罹患する可能性がある。蓄熱槽の調査で,システム基準で30システム中,14システム(46.7%)から培養法でレジオネラ属菌を検出した調査事例がある。また,他の水蓄熱槽の調査で,蓄熱槽水の温度範囲が14.9℃以下と15.0℃~24.9℃でレジオネラ属菌数が,35.0~44.9℃の菌数とほとんど変わりなかったこともあった。抗レジネオラ剤として,3.0~10.0 mg/ℓの濃度のチアゾリンを蓄熱槽水に投入した結果,投入から数日から数週間で蓄熱槽水と蓄熱槽壁面の拭き取り検体から,レジオネラ属菌が検出しなくなった試験結果がある。抗レジオネラ剤には鋼管や銅管を腐食させる成分が含まれることが多い。空調機や配管を損傷させるおそれがあるため,防錆剤を同時に投入することが必要である。
Key words:Legionnaires’ Disease(レジオネラ症)/Thermal Storage Tank(蓄熱槽)/Heating and Cooling Equipment(暖冷房設備)/Heat Pump(ヒートポンプ)/Use of Surplus Electricity(余剰電力利用).
環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [2]高齢者介護施設における感染対策(衛生管理を中心に)
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [2]高齢者介護施設における感染対策(衛生管理を中心に)
- 著者:
- 辻 明良(東邦大学名誉教授)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.609-613(2020)
高齢者介護施設は,感染症に対する抵抗力が減弱した高齢者が集団で生活する場であり,感染が起こりやすく,広がりやすい環境である。感染自体は完全になくせないことを踏まえ,被害を最小限に留めることが求められる。そのためには普段から感染に対する対策を実施し,いかに早く感染した人の異常に気付き,感染の拡大を防止することが重要である。本稿では,高齢者介護施設における注意すべき感染症(集団感染等)の特徴,感染対策の基礎(病原体の排除,感染経路の遮断,宿主抵抗力の向上),施設内における衛生管理(環境整備,トイレ等の衛生管理,嘔吐物・排泄物の処理等)について解説した。また,入所者,職員の健康管理や感染予防としてのワクチン接種や介護・看護ケアにおける手洗いおよび標準予防策についても記述した。
Key words:高齢者介護施設/感染対策・感染予防/施設内の衛生管理/健康管理.
食品・医療・環境分野での感染制御 [1]開講にあたって
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [1]開講にあたって
- 著者:
- 山本 恭子(園田学園女子大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.615-616(2020)
ヒトの周りには多くの微生物が存在しており,私たちはそれらをコントロールしてうまく付き合っていくことで,共存している。このような状況の中で,ヒトが安全に生活できるように,医療分野,環境分野,食品分野における感染制御がヒトの安全を目指すという同じ目的に向かって重要な役割を果たしており,分野を超えての研究成果の共有が必要である。今回の講座では,医療分野からは感染対策の最も重要な鍵となる医療従事者および地域住民の手洗いについて,環境分野から室内,浴室,職場での微生物とその制御,住環境とアレルギーについて,食品分野からキッチンの微生物汚染と制御,生食肉について取り上げた。
Key words:Infection control(感染制御)/Environmental hygiene(環境衛生)/Food hygiene(食品衛生).
食品・医療・環境分野での感染制御 [2]地域における感染対策~手洗い講習会~
- 表題:
- 食品・医療・環境分野での感染制御 [2]地域における感染対策~手洗い講習会~
- 著者:
- 山本 恭子(園田学園女子大学),茅野 友宣(兵庫県立大学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.11,pp.617-621(2020)
市中感染として流行するインフルエンザやノロウイルス感染症では,ほとんどの患者が自宅にて療養することから,地域における感染対策が重要である。本講座では,特に手洗いについて解説する。手洗い指導に必要な知識について,皮膚の細菌叢,医療現場における手洗いについてのガイドラインおよび石けん手洗いにおける除菌効果について述べる。そして,一般市民向けの手洗い講習会の効果について,講習会の内容,手洗い技術の修得,除菌効果に視点をおいて解説する。さらに,一般市民向けとは異なった特徴を持つ,高齢者施設における手洗い指導,保育所や幼稚園における手洗い指導について紹介する。
Key words:Hand-washing guidance(手洗い指導)/Infection control(感染対策)/Community(地域).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その23)』…新井 一義…目次裏
『ちょっと変わった生協の検査室の今までとこれから』…米原さおり…590
『安全な商品をお客様にお届けするために必要なこと』…星野 将隆…596
図書紹介
『食品変敗の科学-微生物的原因とその制御-』…坂上 吉一…608
海外文献抄録
…坂上 吉一…614
会報
…622
カレンダー
…和文目次裏
【 English Contents 】 Vol.48,No.11(2020)
A Challenge to Understand and Control Pathogens
An Overview and Future Prospects
On the Frontline of Rapid Microbial Test Technology–Focused on Mass Spectrometry–
Microbial Contamination and Control Measures in Thermal Storage Tanks
-On the Basis of the Latest Information-
(2)Infection Measures in the Elderly Person Nursing Facility (Mainly on Hygiene Management)
(1) Opening of a Course
(2) Infection Measures -Hand-Washing Class-
Member’s Voice-Cultivation-
…by Kazuyoshi ARAI…Reverse Page of the Contents
…by Saori YONEHARA…590
…by Masataka HOSHINO…596
Book Review
…by Yoshikazu SAKAGAMI…608
Abstracts from Overseas Journals
…by Yoshikazu SAKAGAMI…614
Society Activities
…622
Calendar
…Reverse Page of the Contents in Japanese
Vol.48, No.12 (2020)
【 目次 】
尿沈渣標本中に出現する顆粒状物質と尿路細菌叢との関連について
- 表題:
- 尿沈渣標本中に出現する顆粒状物質と尿路細菌叢との関連について(原著論文)
- 著者:
- 佐藤 妃映(北陸大学),横田 憲治,渡辺 朱理,苔口 進,衛藤 友美,髙阪 翔士
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.623-628(2020)
健常人の尿沈渣標本中に,ステルンハイマー染色にて青色の顆粒状物質が出現することがある。この物質の成分や出現背景等に関して詳細は明らかとなっていないため,検討を行った。その結果,顆粒状物質は,健常な女性15名中8名(53%)に出現していた。SDS-PAGEによる電気泳動では,15名中11名(73%)に75KDaの単一のバンドを認め,質量分析にてTamm-Horsfall protein(THP)(Uromodulin)と同定された。THPは尿路細菌叢が存在した10名中9名(90%)で検出され,尿路に細菌や真菌が存在しなかった4名中3名(75%)では検出されなかった。また,顆粒状物質が出現していた8名中,THPと尿路細菌叢の両方を認めたのは4名(50%)であった。明らかな傾向を統計学的に証明できなかったが,顆粒状物質は,THPや尿路細菌叢と同時に検出される場合があることから,何らかの自然免疫学的な応答に関与している可能性が示された。今後,検体採取条件を再検討し,この関連性について検証する必要がある。
Key words:Urinary sediment samples(尿沈渣標本)/Granule-formed material(顆粒状物質)/Tamm-Horsfall protein(THP);Uromodulin(Tamm-Horsfallムコ蛋白/ウロモジュリン)/Urinary tract microbiota(尿路細菌叢).
不織布を用いた乾燥タンパク質付着ステンレス鋼表面の拭き取り洗浄における水の界面での役割
- 表題:
- 不織布を用いた乾燥タンパク質付着ステンレス鋼表面の拭き取り洗浄における水の界面での役割(原著論文)
- 著者:
- 田中 恵祐,長谷 諒佑,福﨑 智司(三重大学大学院),成松 絢葉,落合 徹,新井田康朗,髙橋 和宏
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.629-634(2020)
レーヨンおよびPET不織布を用いた拭き取り洗浄によるステンレス鋼表面上の乾燥タンパク質の除去について,異なる荷重下で吸水量の関数として検討した。乾式拭き取りでは,有意な量のタンパク質は除去されなかった。タンパク質の除去率は,不織布への吸水量を高めると増加した。最大除去率を達成する最小の吸水量は,荷重を高めることで減少した。水の表面張力の低下は,最小吸水量を低下させた。往復拭き後のタンパク質の残存率は,片道拭き後の残存率よりも有意に高かった。以上の結果から,吸水量と荷重の組み合わせが不織布を用いた拭き取り洗浄の除去率を決める重要な因子であることが示された。
Key words:Nonwoven fabric(不織布)/Hard-surface cleaning(硬質表面の洗浄)/One-way and back-and-forth wiping(片道・往復拭き)/Water absorption(吸水)/Removal of dried protein(乾燥タンパク質の除去).
ダニが媒介する感染症
- 表題:
- ダニが媒介する感染症
- 著者:
- 弓指 孝博((地独)大阪健康安全基盤研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.635-644(2020)
ダニ類は非常に多くの種類を含んでおり,土壌中,植物上,水中などほとんどあらゆる環境に適応して生息している。その中には人や動物に寄生したり,アレルギー疾患の原因になるなど人に害を及ぼす種類も含まれるが,その最たるものが感染症を媒介するダニ類である。ここでは,我が国で患者発生数が多いツツガムシ病,日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)をはじめダニ媒介性脳炎,ライム病,その他の新しい紅斑熱リケッチア症などについて,その疫学,病原体,症状について概説した。また,媒介者であるツツガムシ,マダニについても,その種類や生態,それらの調査法や同定について簡単に紹介し,これらのダニや感染症に対する注意点も付記した。
Key words:Chigger mite(ツツガムシ)/Tick(マダニ)/Rickettsia(リケッチア)/Tsutsugamushi disease(ツツガムシ病)/Japanese spotted fever(日本紅斑熱)/SFTS(重症熱性血小板減少症候群)/Tick-borne encephalitis(ダニ媒介性脳炎)/Lyme disease(ライム病).
真菌の分類と同定 [6]Aspergillus属,Penicillium属,Talaromyces属
- 表題:
- 真菌の分類と同定 [6]Aspergillus属,Penicillium属,Talaromyces属
- 著者:
- 矢口 貴志(千葉大学真菌医学研究センター)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.645-651(2020)
Aspergillus,Penicillium,Talaromycesのこれまでの分類の変遷,すなわち形態的分類から近年の多遺伝子の塩基配列の分子系統解析に基づく分類体系の見直しを解説した。さらに,One Fungus/One Nameの方針による国際植物命名規約の改定に伴う,これら3属の有性世代,無性世代の統合名について述べる。
Key words:Genus Aspergillus(Aspergillus属)/Genus Penicillium(Penicillium属)/Genus Talaromyces(Talaromyces属)/Classification(分類)/Phylogeny(系統)/Multilocus Sequence Typing(多遺伝子解析).
環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [3]感染制御における耐性菌と環境管理(感染制御学の立場で)
- 表題:
- 環境管理による院内(病院)感染防止-最新情報をふまえて- [3]感染制御における耐性菌と環境管理(感染制御学の立場で)
- 著者:
- 小林 寅喆(東邦大学看護学部 感染制御学)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.653-663(2020)
世界の抗菌薬耐性菌による死亡者は年間およそ70万人と言われている。しかし,このまま何も対策をとらなければ2050年には1000万人へと爆発的に増加し,ガンによる死亡者数を上回ると警告されている。最近の調査結果から2017年の国内における耐性菌による死亡者は8000人以上と推計された。これらの耐性菌は医療関連施設における接触感染が主であり,感染対策は,医療従事者の手指を介した接触感染経路対策に重点がおかれ実施されてきた。しかしながら近年では医療の現場に精密な医療機器や携帯端末,さらには快適装備が導入され多く利用されている。その一方で,これらの装置・装備が医療関連感染を惹起する病原体の温床となることも事実であり,今までの概念では把握しきれない感染経路が存在することも明らかとなっている。すなわち医療従事者や患者にとって“ベンリ”や“カイテキ”なモノは常に感染伝播の媒介となることも認識しておく必要がある。したがって,医療現場の周辺,環境には病原体が付着し汚染されていることを前提に,医療従事者は患者ケアの直前の手指衛生ならびに限りなく汚染を少なくする環境管理が必要である。
Key words:Antimicrobial resistance(抗菌薬耐性)/Mobile phone(医療用携帯電話)/Warm-water bidet toilet(温水便座装置)/Pierced earring hole(耳ピアス孔)/Transmission(感染経路).
食品製造現場における食品衛生7Sの実践的な活用 [1]開講にあたって/食品衛生7Sの原点と基本的な定義と考え方
- 表題:
- 食品製造現場における食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)の実践的な活用 [1]開講にあたって/食品衛生7Sの原点と基本的な定義と考え方
- 著者:
- 奥田 貢司((株)食の安全戦略研究所)
- 掲載:
- 日本防菌防黴学会誌,Vol.48,No.12,pp.665-670(2020)
食品衛生7S(整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔)は,食品製造環境を「微生物レベルの清潔さ」にする実践的な活動である。食品衛生法改正によるHACCP制度化は,食品事業者が一般衛生管理に加えHACCPに沿った衛生管理計画を作成する。小規模事業者や一定の業種は,コーデックスHACCPを弾力的に運用する「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」になる。「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は,各食品等事業者団体が作成した手引書を参考に一般衛生管理を基本として,必要に応じCCPを設ける。多くの食中毒の発生原因が一般衛生管理の不備であると言われる。食中毒の予防には,一般衛生管理を確実に実践することが重要である。目に見えない微生物レベルの清浄化を目指すには,清潔を活動目的にする食品衛生7Sの実践が効果的である。食品衛生7Sの運用がHACCP制度化に対応し,一般衛生管理の仕組みづくりに有効であることを本講座にまとめる。
Key words:Food hygiene 7S(食品衛生7S)/Microorganisms Level of cleanliness(微生物レベルの清潔)/Prerequisite Programs(一般衛生管理)/HACCP institutionalization(HACCP制度化)/Ministry of Health, Labor and Welfare Handbook(厚生労働省手引書).
会員の声-培養-
『名誉会員・篠田純男先生の『回想録~大学生活60年~』を読みて(その24)』…新井 一義…目次裏
『企業研究からアカデミアへ,そして今COVID-19』…庭野 吉己…652
『防菌防黴学会での学びを振り返って』…中村 圭祐…664
日本防菌防黴学会誌48巻総目次/著者索引 …671 / 673
会報 …674
カレンダー …和文目次裏
